週刊3Dプリンタニュース

電子工作向けの無料3D CADが公開

~Amazonが「3Dプリンタストア」をオープン~

 今週の週刊3Dプリンタニュースは、電子部品のネット通販で知られるRSコンポーネンツが3D CADソフトの無償提供を開始したというニュースと、Amazon.co.jpが3Dプリンタ関連商品を販売する「3Dプリンタストア」をオープンしたというニュースをお届けしたい。

電子工作/機械設計向けの無料3D CADが公開電子部品通販のRSコンポーネンツから

2Dのスケッチを描き、それを押し出すことで立体を作っていく
RSコンポーネンツが提供している電子部品などの3Dデータをインポートできる

 電子部品のネット販売で有名なRSコンポーネンツが、3D CADソフト「DesignSpark Mechanical」の提供を9月18日に開始した。

 このソフトは3D CADソフトベンダであるSpaceClaimと共同開発したもので、既存の基板設計図や電子部品の3Dモデルを使って3Dモデルを制作できるなど、電子回路との親和性の高さが特徴だ。

 3Dプリンタと3Dデータは、PCとソフトウェアとの関係にも似ており、3Dデータがなければ、せっかくの3Dプリンタも宝の持ち腐れとなる。したがって、3Dプリンタを活用するには、どうやって3Dデータを用意するかが重要になる。3Dデータを作成する方法はいくつかあるが、機構部品や筐体など、高い寸法精度が求められる3Dデータを作成するには、3D CADソフトによる3Dモデリングが適している(精度よりも柔軟な形状が重要なフィギュアなどの3Dデータ作成には3D CGソフトが適している)。以前の3D CADソフトは、高価な業務用向け製品が中心であり、個人が気軽に利用できるものではなかったが、最近は、Autodeskの「123D Design」やTrimbleの「SketchUp Make」など、無償ながら本格的な3Dモデリングが可能な3D CADソフトが登場してきており、気軽に3D CADソフトを利用できるようになった。

 今回、登場したDesignSpark Mechanicalもそうした無料3D CADソフトの一つであり、RSコンポーネンツが運営するエンジニア向けコミュティサイト「DESIGN SPARK」から入手できる。DesignSpark Mechanicalは、Windows XP以降のOSで動作し、32ビット版と64ビット版が提供されている。DirectX 9cへの対応が必要だが、現在の環境では特に重いソフトというわけではない。

 DesignSpark Mechanicalの利用には、DesignSpark.comのアカウントを作成し、ログインする必要がある(もちろん、アカウントの作成は無料)。DesignSpark Mechanicalのユーザーインターフェースは日本語化されており、わかりやすい。モデル上で直接操作を行うダイレクトモデリングと呼ばれる手法を採用しているため、直感的なモデリングが可能で、サイトには詳しいチュートリアルも用意されているので、初めて3D CADに触るという人にもお勧めだ。

 また、電子部品など、RSコンポーネンツが提供している38,000種類もの3Dデータを、オンラインで入手し、インポートできることも特徴だ。さらに、PCB設計ツールで設計した基板設計図もインポートできるため、いわゆるMaker的な試作にも向いている。筆者も少し触ってみたが、123D Designよりも素人にはわかりやすいと感じた。3Dプリンタでよく利用される共通フォーマットであるSTL形式での入出力にも対応しているので、例えば、3Dプリンタ用3Dデータ共有サイトからダウンロードした3Dデータを、DesignSpark Mechanicalで読み込ませてカスタマイズを行うことなども可能だ。

Amazon.co.jpが3Dプリンタ本体や関連商品を扱う「3Dプリンタストア」をオープン

Amazon.co.jpの「3Dプリンタストア」。3Dプリンタ本体と造形材料、CAD、関連書籍の各カテゴリが用意されている

 Amazon.zo.jpは、9月19日に3Dプリンタおよび関連商品の販売コーナーである「3Dプリンタストア」をオープンした。米Amazon.comでは、かなり前から同様のコーナーが用意されていたのだが、日本でも3Dプリンタ関連コーナーがオープンすることになった。

 パーソナル3Dプリンタは、海外メーカー品が多く、購入のハードルがやや高かった。最近は、3Dプリンタメーカーの正規代理店が家電量販店などでパーソナル3Dプリンタを販売するようになってきており、BRULEのように、海外メーカーの3Dプリンタを日本国内で販売するところも出てきたが、いよいよAmazonでも購入可能になったかっこうだ。

 現時点で販売されている3Dプリンタ本体は、CubeシリーズとCube Xシリーズのみで、本体以外のカテゴリでは、造形材料やCAD、関連書籍の各カテゴリが用意されている。造形材料カテゴリでは、Cube X用マテリアルのほか、汎用の3Dプリンタ用ABS樹脂フィラメント(直径3mmと1.75mm)やPLA樹脂フィラメント(直径1.75mm)が各色揃っている。CADは、PCソフトカテゴリーのCADカテゴリへのリンクであり、3Dプリンタに適した3D CADだけが抽出されるわけではない。3Dプリンタ関連書籍カテゴリでは、Amazon.co.jpが販売している本の中から「3Dプリンタ」というキーワードで検索をかけた結果が表示される(執筆時点では72件の表示)。

 現時点では、オープンしたばかりということもあり、3Dプリンタ本体、関連商品とも、品揃えが充実しているとはいえないが、Amazon.co.jpが本格的に3Dプリンタを取り扱うようになったことで、地方在住者でも3Dプリンタを購入しやすくなったといえるだろう。今後は、順次取り扱い商品を増やしていくとのことなので、期待したい。

(石井 英男)