週刊3Dプリンタニュース

大英博物館が収蔵品の3Dデータを無償公開

〜カジュアル3Dモデラ「MoI」などのセミナーが開催される

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、大英博物館が収蔵品14点の3Dデータの無償公開を開始したという話題と3DS主催の3Dツールのテクニカルセミナーについての話題をお届けする。

大英博物館が収蔵品14点の3Dデータを無償公開

大英博物収蔵品3Dデータ公開サイトでは、収蔵品14点の3Dデータが無償公開されている
モアイ像として知られている「Hoa Hakananai'a」を選択したところ。「DOWNLOAD」をクリックすることで、3Dデータのダウンロードが可能だ
XYZプリンティングのパーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ 2.0」で、先ほどダウンロードしたHoa Hakananai'aの3Dデータを出力した結果

 世界有数の規模を誇る大英博物館が収蔵品の3Dデータの無償公開を開始した。これまでにも、メトロポリタン美術館やスミソニアン博物館が収蔵品の一部の3Dデータを無償公開しているが、大英博物館の3Dデータ無償公開もこうした流れに乗ったものであろう。今回、3Dデータが無償公開されたのは、モアイ像やアメンホテップ3世の彫像など大英博物館の収蔵品の中でも、特に有名な14点であるが、今後、さらに多くの3Dデータが公開されることを期待したい。

 3DデータはOBJ形式で配布されているため、OBJ形式の読み込みに対応していないスライサーを使う場合は、STL形式に変換する必要がある。3Dデータの利用は非営利に限定されており、出典も明記する必要があるが、教科書にも登場するような有名な収蔵品のミニチュアを気軽に手に入れられるのは嬉しい。試しに、XYZプリンティングのパーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ 2.0」を使って、モアイ像(Hoa Hakananai'a)を出力してみた。OBJ形式からSTL形式への変換には、無料版のnetfabb basicを利用し、ラフトやサポートは無しで出力してみたところ、顔のディテールなども綺麗に出力できた。

3Dプリンタユーザーにもお勧めなソフト「MoI」「Geomagic Sculpt」の解説セミナーが実施

3DS主催のテクニカルセミナー「"Casual & Smart" 3D Tech-Siminar」が開催された
3Dで造形を行なう際のフロー。3DSはそれぞれの工程をサポートする3Dツールを提供している
3DSの製品ラインナップ。建築系3D CADの「Geomagic Design」、建築系3D CADの「SketchUp」、デザイン系3D CADの「Rhinoceros」、イメージデザインツールの「Geomagic Sculpt」と「MoI」がある
3DSの製品ラインナップの続き。フォトリアルレンダーの「KeyShot」、STL修正/最適化ツールの「Netfabb/Skinny3D」、パーソナル3D CAMの「VisualMill」、生産現場コミュニケーターの「WorkXplore」、デジタルコンテンツ管理ツールの「M-Files」がある

 2014年12月11日、東京国際フォーラムで、株式会社スリー・ディー・エス(以下3DS)主催のテクニカルセミナー「"Casual & Smart" 3D Tech-Siminar」が開催された。

 3DSは、CAD/CAM関連ソフトウェアの販売とサポートを行なっている会社であり、株式会社データ・デザインの子会社でもある。3DSが扱っている3D関連ツールは非常に多いが、今回のセミナーは、同社が扱うツールの中でも比較的低価格でカジュアルに使えるツールを中心に紹介が行なわれた。ここでは、セミナーで紹介されたツールの中から、特にパーソナル3Dプリンタユーザーにお勧めのツールである「MoI」と「Geomagic Sculpt」のプレゼンテーションを取り上げよう。

 MoIは、3D CADソフトの一種だが、他の3D CADに比べて、ユーザーインターフェースが分かりやすく、初心者でも直感的にモデリングできることが特徴だ。セミナーでは、MoIをカジュアル3Dモデラと呼んでいたが、まさにカジュアルに利用できるツールだ。初心者向きといっても、使いこなせば複雑な3Dモデリングも可能であり、価格も3万7800円(税込)と手頃なので、パーソナル3Dプリンタと組み合わせて使うにはぴったりのツールだ。

 MoIは、3D-GANが主催している親子向け3Dプリンタワークショップなどでも使われており、その使い勝手のよさは折り紙付き。また、メニュー構造やインターフェースがペンタブレットにも最適化されているため、ペンタブレットを使って3Dモデリングを行ないたいという人にも向いている。現在、3DSが販売しているMoIはバージョン2.0の日本語版だが、近日中にバージョン3.0の日本語版がリリースされるとのことだ。バージョン3.0では、全体的なブラッシュアップが行なわれ、速度や安定性などが向上しているだけでなく、写真などのイメージ映像を取り込み、それを元にモデリングを行なう機能も追加されている。

 Geomagic Sculptは、ボクセルと呼ばれる小さな立方体を用いてモデリングを行なうボクセル3Dモデラであり、専用触感デバイスのTouchを使って、粘土細工や彫塑を行なうようなイメージで直感的にモデリングできることが特徴だ。ボクセル3Dモデラとしては、Geomagic Freeformというツールが有名だが、新たに登場したGeomagic Sculptは、Freeformの下位にあたるツールで、よく使われる機能のみを厳選し、価格を下げたものとなる。Geomagic Sculptは、一から物体をモデリングするにも便利だが、3Dスキャンしたデータの修正にも最適だ。セミナー会場には、Geomagic Sculptのデモ機が設置されており、触感デバイスTouchを実際に体験することができた。

 また、3Dプリンタの種類や利用できる材料についての解説やMoIと組み合わせで使うことを提案しているムトーエンジニアリングのパーソナル3Dプリンタ「Value 3D MagiX MF-1000」の紹介も行なわれた。最後には質疑応答の時間が設けられたが、3Dプリンタや3Dモデリングへの関心は高いようで、突っ込んだ質問をする参加者が多かった。

 今回のセミナーは、約半日で行なわれたものだが、無料セミナーとしては内容も充実していた。3DSでは、今後もこうしたセミナーを積極的に開催していきたいとのことなので、興味のある方は同社のWebサイトなどをこまめにチェックしておくことをお勧めする。

【MoIの紹介】
カジュアル3Dモデラという、3Dモデリングツールの新しいスタイルが「MoI」である
MoIは、インターフェースが分かりやすく初心者でも簡単に扱える
MoIでは、テキストを3D化するのも簡単だ
MoIを使えば、複雑なモデルも3Dで表現できる
MoIには、「強力なNURBSサーフェス/ソリッドモデリング機能」「超・簡単な直感的操作メニュー」「マルチCAD/デザインデータの入力・出力」「Windows/MacOSへの対応」「スマートパッド/3Dマウス/ペンタブレットとの連携」という5つのアドバンテージがある
MoIを利用した3Dモデリングの例。手書きのスケッチ画像のイメージを元に3D化している
MoIを利用した3Dモデリングの例。デジカメで撮影した写真を活用してモデリングを行なっている
写真を活用してモデリングを行なっている様子
MoIの開発元サイトにはギャラリーがあり、ユーザーがアップロードしたデータが公開されている
【Geomagic Sculptの紹介】
Geomagic Sculptは、3Dモデリングツールの新しいスタイルである「ボクセル3Dモデラ」である
Sculptは、Touchと呼ばれる触感をダイレクトに伝達するデバイスを用いて、自由度の高いモデル形状をデザインするシステム
Sculptの主な特徴が、「強力で柔軟な工業デザインを実現」「タッチベースの触覚インターフェース」「3Dプリントのためのデザインの理想的な方法」「ハイブリッドモデリング」である
Sculptのワークフロー。スケッチ画像からモデリングが可能
Sculptは、3Dスキャンしたものをベースにモデリングするのも得意だ
さらに、CADファイルを読み込み、そこにテクスチャを張り付けてモデリングを行なうことも可能だ
Sculptは、SubDivisonモデリングをサポートしている
また、NURBS制御機能も備えており、柔軟なモデリングが可能だ
タグ機能による形状の盛り付けやパイプ昨日による模様の掘り込みも可能だ
また、スムージング機能も強力で、平準化やディテール表現に利用できる
【セミナーのそのほかの内容】
100万円を切る低価格パーソナル3Dプリンタが続々登場してきた
3D造形の手法は、積み重ねる積層造形と削り出す切削造形に大別でき、積層造形は光造形法、粉末法、熱溶解積層法、シート積層法に分類できる
積層造形の手法によって利用する材料が異なる。光造形法なら紫外線硬化型樹脂、粉末法なら樹脂系材料か金属系材料か石膏、熱溶解積層法なら熱可塑性樹脂、シート積層法ならシート状の紙や樹脂、金属を利用する
3Dプリンターは、価格やサイズによって、ハイエンド・ミッドレンジとパーソナルに大別できる
ムトーエンジニアリングのパーソナル3Dプリンタ「Value 3D MagiX MF-1000」の特徴
MF-1000はダブル冷却ファンを搭載しており、素早く造形物を冷却し硬化させることができる
MF-1000の造形例。積層レイヤーは0.1mmである
MF-1000で利用できるマテリアルは、ABSとPLAである
Sculptのデモ機も設置されており、触感デバイスの「Touch」を実際に体験することができた
MF-1000などの3Dプリンタの出力例も展示されていた

(石井 英男)