週刊3Dプリンタニュース

「溶ける素材」「曲がる素材」がMakerBotから発売、造形の自由度アップ

~3Dプリンタを俯瞰するムックも登場、機材からフィギュアまで~

 今週の週刊3Dプリンタニュースは、MakerBotが発表した3Dプリンタ用新素材に関するニュースと3Dプリンタに興味がある人にお勧めのムックを紹介したい。

 ムックは筆者も執筆しているもので、個人向けの3Dプリンタの活用例や、スペックの一覧、業務向けプリンタを利用できるプリントサービスのリスト、実際に飛ぶ模型飛行機の骨格作成やフィギュアといった活用例まで、幅広いジャンルを俯瞰して見られるのでオススメだ。

「曲がる素材」と「溶ける素材」が新登場造形の自由度やクオリティが大きく向上

 パーソナル3Dプリンタ「Replicatorシリーズ」で有名なMakerBotは、9月30日、2種類の3Dプリンタ用新素材の出荷開始と、同社のReplicatorシリーズ用ソフト「MakerWare」の新バージョンの公開を発表した。

 MakerBotが開発した新素材は、「Flexible Filament」と「Dissolvable Filament」と呼ばれるもの。前者はフレキシブルで弾力性があり、後者は、扱いが容易なリモネンによって溶けることが特徴だ。

弾力性のある3Dプリンタ用新素材「Flexible Filament」
Flexible Filamnetは、1kgあたり130ドル

 まず、Flexible Filamentは、先日お伝えした「3Dプリンタ製の着られるドレス」にも使われていた素材。これまで3Dプリンタ用素材として使われてきたABSやPLAとは違い、造形物を曲げられるほどの弾力を持つ。

 Flexible Filamentは、62℃という低い温度で融解するため、ノズル温度は100℃に設定する必要があり、その弾力性を活かすには、インフィル(充填率)を10%以下にする必要がある。

 なお、Flexible Filamentは、同時公開されたMakerWareの最新バージョンでサポートされたが、現時点では、Replicator 2専用(Replicator 2Xでは、Flexible Filamentの選択ができない)となっているようだ。弾力のある素材が使えるようになったことで、これまでとは違った分野での応用も考えられる。

リモネン溶液に浸けると溶ける「Dissolvable Filament」
Dissolvable Filamentは、1kgあたり65ドル
Replicatorシリーズ用ソフト「MakerWare 2.3」リリースに関するアナウンス。デュアルヘッドへの対応が強化され、Replicator 2Xの機能を最大限に活かせるようになった
パーソナル3Dスキャナ「MakerBot Digitizer」の出荷開始に関するアナウンス

 もう一方の、Dissolvable Filamentも画期的な新素材だ。

 Dissolvable Filamentは、ABSと同じ設定で利用できるが、(米国では)ホームセンターで容易に手に入るリモネン溶液に浸けることで、きれいに溶解してしまう性質を持つ。

 もちろん、必要な部分を溶かしてしまっては意味が無いが、Dissolvable Filamentを利用してラフト(土台)やサポート部分を出力すれば、造形後、ラフトやサポート部分を取り除く作業が非常に簡単になり、仕上がりもぐっとよくなる。

 つまり、デュアルヘッドを備えたReplicator 2Xで使えば、右のヘッドからABSで造形物を出力し、左のヘッドからDissolvable Filamentでラフトとサポートを出力することができるというわけだ。もちろん、これに対応した新バージョンのMakerWareも公開されている。

 溶解性の高いサポート専用材料でラフトやサポートを出力する機能は、数百万円以上の業務用3Dプリンタではサポートされている機能だが、十数万円~数十万円のパーソナル3Dプリンタでは、サポート部分も造形物と同じ材料で出力するのが一般的で、サポート部分を取り除く作業が大変だった。Dissolvable Filamantの登場によって、Replicator 2Xのデュアルヘッドの真価がようやく発揮できるようになったといえるだろう。

 Flexible FilamentとDissolvable Filamentは、すでに出荷が開始されており、1kgあたりの価格はそれぞれ130ドルと65ドルとなっている。

 また、8月22日にアナウンスされたパーソナル3Dスキャナ「MakerBot Digitizer」の出荷開始が10月1日になったことも合わせて発表された。

[書籍紹介]3Dプリンタの機材から活用まで全てを俯瞰!「3Dプリンタ デスクトップが工房になる」

 ここ数ヶ月の間に、相次いで3Dプリンタ関連の書籍やムックが発刊されたが、今回はその中から、インプレスジャパンのムック「3Dプリンタ デスクトップが工房になる」(2,310円)を紹介しよう。

 筆者も、いくつかの記事を執筆しているので、やや手前味噌となるが、本書は、3Dプリンタの現状とその実際の活用例、パーソナル3Dプリンタ4機種の比較レビュー、3Dモデルを作成し、3Dプリンタで出力するまでの手順など、3Dプリンタに関するさまざまな情報が、一通りまとめられている。

 3Dプリンタ活用の第一人者であるケイズデザインラボの原雄司氏とプロダクトデザイナー澄川伸一氏の対談や、サイエンスライター鹿野司氏による3Dプリンタの未来を考えるコラム、パーソナル3Dプリンタ先進国であるアメリカの「Maker Faire Bay Area」レポートなど読み物も充実しており、3Dプリンタに興味があるのなら、ご一読をお勧めしたい。

仕組みの解説
国内入手が容易な製品10種類のスペックが比較できる
主要製品の試用レビューも掲載
フィギュア製作者のインタビュー
3Dスキャンによるリアルフィギュアの製作例
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実際に飛ぶ飛行機の製作例
指輪製作例の紹介
業務機材を利用できるプリントサービスの紹介
プリントサービスのリスト
業務用機材で利用できる素材例

(石井 英男)