週刊3Dプリンタニュース

オートデスクの無料3Dアプリ「Autodesk 123D」ファミリーを使いこなそう(前編)

~全7種類+α、「演出付き」の3D CADまで~

 1月7日から米国でITおよび家電の総合展示会「2014 International CES」が開催されたが、今年のCESは、3Dプリンタ関連の展示も増えており、新製品も多数発表されたようだ。3Dプリンタの新製品に関するニュースは後日紹介するが、今回と次回は、オートデスクが提供している無料3D関連アプリ群について紹介する。

7種類もある無料3Dアプリ「123Dファミリー」

123Dファミリー専用サイト
123Dファミリーのアプリ一覧
SandboxではProject ShapeshifterとMeshmixerが公開されている

 オートデスクといえば、AutoCADで有名なCADソフトのトップベンダーであるが、数年前から、無料で利用できるAutodesk 123Dファミリー(以下、123Dファミリー)の提供を開始しており、注目を集めている。ただし、サイトやアプリの表記が英語であり、アプリの種類も多いため、123Dファミリーに興味があるが、どのソフトを使えばいいのか分からないという人も多いことだろう。

 そこで、オートデスク株式会社技術営業本部シニアマネージャーの塩澤豊氏に、123Dファミリーの位置付けやそれぞれのソフトの特徴について解説していただいた。今回と次回の2回に分けて、123Dシリーズをはじめとするオートデスクが無料で提供している3D関連アプリを紹介していきたい。

 123Dファミリーは、123Dファミリー専用サイトからダウンロードが可能だ。123Dファミリーのラインナップも次々と拡充されているが、2014年1月時点で公開されている123Dファミリーは、「123D Circuits」「123D Catch」「123D Creature」「123D Design」「123D Make」「123D Sculpt」「Tinkercad」の7種類である。

 また、123Dファミリー以外に、サイトにはSandbox(砂場)と呼ばれるエリアもあり、ここでは開発中のアプリを試すことができる。現時点でSandboxに公開されているアプリは、「Project Shapeshifter」と「Meshmixer」の2つである。ちなみに、123Dファミリーに一番最近追加されたアプリが123D Circuitsであるが、123D Circuitsの前バージョンのアプリもSandboxで公開されていた。

CADにモデリング、3Dスキャン、電子回路まで……対応プラットフォームは様々

 123DファミリーおよびSandboxには、さまざまなアプリが用意されているが、アプリによって対応プラットフォームが異なることに注意したい。そこで、アプリと対応プラットフォームをまとめてみた。

123Dファミリーと対応プラットフォーム
アプリ名用途WebWindowsMac OS XiPadiPhone
123D Design3D CAD×
Tinkercad入門者向け3D CAD××××
123D Creature「生き物」特化型モデリングソフト××××
123D Sculpt直感的に使えるモデリングソフト××××
Meshmixerメッシュベースのモデリングソフト×××
Project Shapeshifterパラメータ変更でモデルを作る自動モデリングソフト××××
123D Catch写真を撮って3D化×
123D Make3Dモデルを紙などで作れるように2Dにスライス
123D Circutis電子回路設計・シミュレーション××××

 表を見ればわかるように、123D Makeは、Webアプリを含むすべてのプラットフォームで利用可能だが、123D Creatureや123D Sculptは、iPadでしか利用できない(iPhoneも不可)。また、プラットフォームによって利用できる機能や画面構成が異なり、iPhone版やiPad版はサブセット的な位置付けとなっている場合もある。

非営利目的ならすべてのアプリが無料

 123DファミリーとSandboxで公開されているアプリは、コンシューマー向けとして位置づけられており、非営利目的なら基本的にすべて無料アカウントで利用できる。

 さらに、月額9.99ドル(年払いだと99.99ドル)のプレミアムアカウントもあり、こちらは、営利目的での利用も可能なほか、オートデスクが提供する高品質な3Dモデルを無制限にダウンロードできる(無料アカウントでは1カ月あたり10モデルまで)。さらに、年払いの場合は、1年に付き1回、無料で3D出力サービスを受けることが可能だ。

3D CAD「123D Design」はWebアプリとダウンロード版では機能や画面構成が異なる

スタンドアロン版の123D Design
Web版の123D Design。画面構成がスタンドアロン版とはかなり違う

 最初に取り上げるのは、123D Designである。123D Designは、いわゆる3D CADで、スタンドアロンで動作するWindows版とMac OS X版のほか、iPad版やWeb GLに対応したWebブラウザ上で動作するWeb版も用意されている。

 3D CADとしてはオーソドックスな作りで、スマートフォンのケースやブロックのパーツなど、正確な寸法が要求される物体のモデリングを行なうのに適している。アプリの表記はすべて英語だが、以前紹介した書籍「自宅ではじめるモノづくり超入門 ~3DプリンタとAutodesk 123D Designによる新しい自宅製造業のはじめ方~」では、123D Designの使い方が詳しく解説されているので、初めて3D CADに触れるという人は、そちらを教科書代わりに使うことをお勧めする。

 なお、ダウンロードしてインストールするスタンドアロン版とWeb版では、機能や画面構成が異なる。

 スタンドアロン版は、2次元の図をスケッチし、それを持ち上げて立体化する手法を主に使うが、Web版は3次元オブジェクトのプリミティブが多数用意されているので、それをベースに変形していくことでモデリングを行なう。

 塩澤氏によると、機能追加などを重点的に行なっているのは、Web版のほうとのことで、3Dプリンタ向けにモデリングを行うのならWeb版がお勧めとのことだ。

ゲーム的チュートリアルのある3D CAD「Tinkercad」インストール不要のWebアプリ

TinkercadはWebアプリなので、インストール作業は不要だ
Tinkercadのチュートリアル一覧。実際に操作を行ないながら課題に挑戦する
チュートリアルの課題を終えるたびに、完了を祝う演出がある。演出やカラーリングを意識したCAD、というのはなかなか印象的

 Tinkercadは、Webブラウザ上で動作する3D CAD。カラフルでポップな画面構成が特徴であり、チュートリアルが充実していることなどが魅力。

 CADという点では、「123D Design」とかぶるTinkercadだが、元々はオートデスクが開発したものではない。独自のサービスとして運営されており、無料で使えることや使いやすさから、ものづくりを愛好するMakerから高い支持を受けていた。しかし、2013年3月に開発とサービスの停止が発表、その後5月にオートデスクがTinkercadを買収し、再び利用できるようになった、という経緯を持つ。

 以前のTinkercadは、無料アカウント版と有料アカウント版での機能の違いが大きかったが、123Dファミリーとして新たに生まれ変わったTinkercadは、無料で従来の有料アカウント版とほぼ同等の機能を利用できるようになった。

 CADのチュートリアルは、単に操作手順を動画で見るだけというものが多いが、Tinkercadのチュートリアルは、ゲームソフトのチュートリアルのように、指示に従い実際に操作を行なうことで、操作を学ぶ仕組みになっている。すべてのチュートリアルをこなせば、Tinkercadの操作を一通りマスターできるので、独学で3D CADを学びたいという人にお勧めだ。複雑な機構を設計するには向かないが、3Dプリンタでの出力用に3Dモデリングを行なうなら、十分な機能を持っている。

(石井 英男)