ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

富士通が生んだ衝撃のマシン「FM-8」

後に登場するFM-7と比べると、一回り以上大きいです。オレンジに塗られた特殊キーの色が目に飛び込んでくるため、強く印象に残るカラーリングでした

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、富士通が1981年にリリースした衝撃のマシン「FM-8」となります。

 1977年に学習用ワンボードマイコンとして登場した富士通のLKIT-8(CPUにモトローラ6800互換品となる1MHzの富士通MB8861Nを採用し、93,000円で発売)ですが、それらを経てFUJITSU MICROシリーズ第一弾としてリリースされたのが、1981年に誕生した富士通初の8ビットパソコンとなったFM-8です。

真上から撮影した写真です。後のFM-7などと違い、全体的に茶色い印象を与えるカラーリングが採用されていました

 640×200ドット8色カラーにくわえ、世界で初めて大型機並みの64キロビットDRAMを搭載し、64KBのメモリを内蔵という高いスペックを備えつつ、それでいて従来機種と比べて低価格となる驚きの218,000円だったため、当時は“高性能、超低価格”と評価され、雑誌によっては“衝撃のデビュー”などと書かれるほど、インパクトを与えたハードでした。

 この時期に市場に流通していた、似たようなスペックを持っていた機種の1つに、日立のベーシックマスターレベル3があります。解像度こそ同じ640×200ドット8色カラーだったものの、内蔵していたメモリは32KBで、それでいて価格は298,000円だったことを考えると、FM-8がいかに攻撃的な値付けだったのかが分かるのではないでしょうか。

FM-8発売時に掲載された広告です。そのスペックと価格に、当時見たときは本当に驚かされたものでした。富士通のキャッチコピーも今とは違い“信頼と創造の富士通”でした

 また、オプションのキャラクタセットを“プリント版に組み込むだけで”第1水準の漢字が使用できるようになったり、同じくオプションで32KBもの容量を持つバブルカセットが使えるなどの特長も持っていました。とはいえ、バブルカセットは1つ35,000円、それを取り付けるためのバブルホルダユニットは85,000円となかなかの価格だったので、思ったほどは出回らなかったようです。

この時期の機種らしく、ガワを外すとすぐに内部へとアクセス出来ます。左写真の青いソケットが目立つのは、漢字ROMが挿さった領域です。最初はここが空いていて、ユーザーがキャラクタセットを購入し挿し込むと漢字が使えるようになります。右写真は、その上に載っている8088カードです。型番はMB22404で、当時の価格は5万円でした。
内部の中央と右側に位置しているのは、当時自作されたカードです。中央の基板上にはHD68B09が搭載されていることなどから、『I/O』1982年10月号に掲載されている記事「FM-8 メインCPUの高速化 HERO-09の製作」を元にしたハードのようです。ここから左上に伸びている配線は、本体用の供給電源では不足する分を補うための電源コードの模様ですが、詳細については残念ながら不明です

 CPUには、モトローラの8ビットマイクロプロセッサMC6809とコンパチブルとなる富士通セカンドソース・MBL6809を2個搭載し、ビジネスやゲームなど幅広い分野で活躍させることができました。別売りのZ80ソフトカードを使用すれば、メインCPUをZ80Aにすることも可能です。音源に関しては、俗に言うブザー音しか内蔵していませんでしたが、これは後継機となるFM-7にて解決されました。CMTインタフェースやプリンタポート、RS-232Cポート、アナログ入力ポートといった各種インタフェースを、最初から標準で備えていたことも特長です。

背面は左からリセットボタン、アナログイン端子、CMT端子、カラーモニタ端子、グリーンモニタ端子、ディップスイッチ、拡張ポート、RS-232Cコネクタ、プリンタポートと並んでいます。

 当時は、工学社の月刊誌『I/O』や、アスキーの月刊誌『ASCII』にて特集が組まれるなど、非常に注目を集めていました。なお、81年10月頃にはNECが228,000円で、FM-8と似たようなスペックのPC-8801を投入してきます。このあたりを堺にして、8ビットパソコンの戦いが徐々に激しさを増していくこととなるのでした。