ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち

可愛らしい絵柄とは裏腹に歯ごたえあるアクションゲームだった「メルヘン・ヴェール」

正方形の大きなパッケージが特徴です。中央に大きく描かれた「Marchen Veil」の後ろには、「I」が付随していますが、続編となる「II」は残念ながらPC-9801版以外は発売されませんでした。

 想い出のレトロパソコンやゲームを写真とともに振り返る本コーナー。今回はシステムサコムのファンタジーアクションRPG「メルヘン・ヴェール」を取り上げます。

 システムサコムと言えば、元々はマイコン向けのハードウェアなどを開発していた会社でしたが、1983年にマーク・フリント氏の作品「ヴァリアント」を発売してからはゲームソフトへも足を伸ばしていきました。そして1985年に登場したのが、ファンタジー色の強いアクションRPG「メルヘン・ヴェール」です。

これは、システムサコムがハードウェアを中心にしていた時代の広告です。ロゴが変わっていないので、すぐに気づくでしょう。この時代はゲームソフトを発売していなかったので、ほとんど気にしていませんでした……。
こちらはメルヘン・ヴェールの広告です。青を基調とした、印象深いものが掲載されていました。PC-98版ではAMD-98という、システムサコム社製のPC-9801シリーズ用音源ボードを搭載することで、ゲーム中に美しいBGMが流れます。反面、これ以外のボードを載せていても、特定機種以外では音楽が演奏されませんでした。

 可愛らしい外見のキャラクターは、当時数少なかった女性のパソコンユーザーを取り込むためでしたが、その見た目に反して高い難易度が話題になりました。敵の弾が避けづらい反面、主人公が攻撃した弾はなかなか当たりづらく、更に崖に落ちるとスペースキーを連打しなければそのままゲームオーバーになってしまうなど、さまざまな部分でアクションゲームのテクニックが要求されます。防御に関しては、ゲームセンターで稼働していたタイトル「ドルアーガの塔」と同じシステムを採用していたため、アーケードゲームのプレイヤーにとっては難しくなかったという話を一部からは聞きました。

固定画面でのアクションゲームで、端に移動すると隣の画面へと移動します。主人公の攻撃には射程範囲があるので、ある程度近づかないと敵を攻撃できません。また、道以外の部分では主人公の移動速度が遅くなってしまいます。これらが、ゲームの難易度を歯ごたえあるものにしています。

 ステージ間に挿入される美しいグラフィックと、次のステージでなすべき事を物語として読ませる絵本のような演出は、当時としては秀逸だったと言えるでしょう。今プレイすると、アイテムのフロッピーディスクを取らないとセーブできないという仕様が、かなり厳しいですが(笑)。

美しいビジュアルと共に、次のステージでやるべき事が物語として表示されます。PC-8801版は、このメッセージがすべてカタカナなので、雰囲気が今ひとつなのが残念なところでした。

 本作により、システムサコムと言えば「マーク・フリント作品」と「メルヘン・ヴェール」シリーズという、2つの柱が出来たことは間違いないと思います。ちなみに、“高橋はるみ”さん、“つぐみ”ちゃんに並ぶ「実在するかどうかが不明」と今でも言われる“マーク・フリント”氏ですが、実在することが確認されています。