ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

剣と魔法と煌めく世界観が眩しいRPGだった『ソーサリアン』

今回取り上げたPC-88版のパッケージは2種類ありますが、ここで掲載したのは最初に発売された、プログラムディスクVer.1.0バージョンになります。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、日本ファルコムの「ドラゴンスレイヤー」シリーズ第5弾として登場した有名なRPG『ソーサリアン』のPC-88版です。

 1984年にシリーズ第1作目となる『ドラゴンスレイヤー』が発売されて以来、同じ年に『ザナドゥ』、1985年には『ロマンシア』、そして1986年には『ドラスレファミリー』がリリースされてきました。そして1987年12月20日、満を持して登場したシリーズ第5作目が『ソーサリアン』です。今回は、その中からPC-88版を取り上げました。他機種版については、また別の機会を設けて解説したいと思います。

 起動直後に表示されるオープニングでは、英語で以下のような物語が語られました。「昔々、もはや記憶が存在しないほど昔……愛は人々の間で広まっておらず、力と魔法のみがその地を支配していました。そこに住む人々は、自らの強さと勇気を試すために、危険な冒険へと旅立っていきます。そんな冒険者達を、彼らはこう呼びました。“ソーサリアン”と……。」

広告バリエーションはいくつもありますが、最初に掲載されたバージョンでは「そして今……、最期の闘いが始まる」という意味深なキャッチが書かれていました。その後は、発売日が12月20日と書かれた種類のものが載ります。

 プレイヤーは、“ペンタウァ”と呼ばれるソーサリアンたちが住む世界にキャラクターを作り、最大4人でパーティを組み、冒険へと出かけていきます。冒険中はサイドビューのアクションゲームとして展開していき、出現する敵を攻撃したり迷宮にかけられた謎を解きつつ先へ進み、クリアを目指しました。そんな本作には、数多くの魅力があります。

 当時の一般的なRPGといえば、主人公がダンジョンなどを攻略しながら自身を成長させていき、最後に待ち受ける敵キャラと戦い勝利を収めてエンディングを迎える、という流れが主だったと思います。ところが『ソーサリアン』では、キャラクターを成長させるには冒険に出かけるよりもペンタウァで生活することが大事でした。暮らしを重ねればキャラクターとして年を取り、最終的には寿命で死んでしまうわけですが、そこで新しいキャラクターへと世代交代を行って能力を引き継ぐことで、少しずつ成長させることができます。こうしてある程度育成したところでパーティを組み、シナリオに挑戦するようになっていました。

タイトル画面とメニュー画面です。ここからキャラクターを作ったり、パーティを編成して冒険に出かけたり、または時間を進めてキャラを成長させます。

 そのシナリオも15本が用意されているだけでなく、クリア方法もボスキャラを倒す、ナゾを解く、特定のアイテムを持ち帰るなど多岐にわたっていました。また、冒険中は経験値は入るものの、道中でキャラクターが成長することはないというのもユニークな部分です。シナリオは本編とは別に後から追加することができ、後に40本以上が発売されました。これは“ソーサリアン・システム”と呼ばれていて、ある意味アペンド版ディスクの先駆け、と言えるかもしれません。

 さらに、マニュアルには120種類にも及ぶ役立つ魔法が書かれてるのですが、それを発現させるためには7つの要素を一定の順番で掛け合わせる必要がありました。ところが、例えばAの要素の次にBの要素をかけ、その後にC要素をかけると、A要素がD要素に変化するといった隠された法則があるため、そのルールを解析すべく日々を費やしたという人も多かったのではないでしょうか。

シナリオはディスク1枚に5本が収録されていて、シナリオディスク3枚で15本が遊べました。選択時には簡単な内容の紹介が表示され、選ぶとサイドビューのアクションゲームとなります。

 『ソーサリアン』の特徴は、それだけにとどまりません。全シーンに渡って奏でられる、60曲以上にも及ぶ美しいBGMに心奪われた人も続出し、それら名曲は後々まで語り継がれることになりました。あまりの曲の出来映えに、当時CDなどを買った人も大勢いるかと思います。

 もちろんすべてが完璧だったわけではなく、せっかく育成したキャラクターが老衰で世代交代してしまうということから、密かに仕込まれていた不老不死キャラが一般化してしまったという面などもありました。しかし、それらを差し引いても一時代を築いた作品だったということは、疑いようのない事実ではないでしょうか。

とある条件を満たすと、メニュー画面に「ドラゴンとたたかう」項目が表示され、これを選んで出現するドラゴンをすべて倒すとエンディングが見られます。

 今でも人気の高い『ソーサリアン』、後にコンソール機やWindows版なども発売されているので、今でも遊ぶことはできると思います。とはいえ、もし可能なら当時の実機+実ソフトでプレイしてほしいものです。苦労するキャラクター育成や、知恵を働かせて挑む15のシナリオ、“ドラゴンとたたかう”でキングドラゴンを倒してから見るエンディングなど、現代でも色あせない面白さをぜひ体感してください。

パッケージを開けると、これだけのものが収録されていました。PROGRAMディスクのほかに、PROGRAM Ver.1.1と書かれたディスクもあります。これは後に、いくつかの変更点がくわえられたプログラムディスクがリリースされた際、当時別途注文して入手したと思います。Ver.1.1で二段ジャンプが一気に楽になり、驚いた記憶が蘇ります。

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