ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

X1版『ゼビウス』、マイコン少年少女達へセカンドインパクトをもたらした名移植作品

大きく描かれたアンドアジェネシスと、ソルバルウが印象的なパッケージです。ソフトは4,300円でしたが、ジョイスティックとのセットでは5,900円という、破格のお値段でした。ジョイスティックは“ホリ電機特別設計”と、当時の広告に書かれていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、名作『ゼビウス』の2機種目の移植作にして、大勢のマイコン少年少女達を虜にしたX1版『ゼビウス』です。

 1983年にゲームセンターで名作『ゼビウス』が稼働を始めると、これを自宅のマイコン・パソコンで遊びたいと思う人が大勢現れました。その中でも、一番最初にその夢を実現したPC-6001用『タイニーゼビウス』は、まさにマイコン・パソコン界でのファーストインパクトだったと言えるでしょう。そして1984年5月25日、セカンドインパクトとして激震を与えたのが、X1版『ゼビウス』です。当時の月刊誌『マイコンベーシックマガジン』に掲載された画面写真は、X1を持っている人はもちろんのこと、それ以外の機種を所有していたユーザーだけでなく、俗に言う「ナイコン族(マイコン・パソコンを手に入れていなかった人々の総称)」の人にも多大なる影響を与えたのは間違いないことでした。

タイトル画面です。ここに操作方法が書かれているためか、マニュアルはロード方法について書かれたものだけになっています。

 『ゼビウス』は、1983年にアーケードゲームとして稼働をスタートさせたタイトルです。従来のゲームとは違う金属質なキャラクター、謎を含んだストーリー、隠しキャラといったフィーチャーなどを盛り込み、大ヒットをとばした作品として歴史に刻まれました。そんなアーケード版のパソコンへの移植は、当時は無理と言われていたのですが、それに果敢に挑んだのがマイコンソフトのなにわ氏です。83年末に発売された『タイニーゼビウス』の後、1月に発売された『マイコンベーシックマガジン』84年2月号にてX1用ゼビウスが近日発売とされ、4月号に予告と題した広告ページが登場します。そこに掲載された写真を見て、そのクオリティの高さに驚いたのは筆者だけではないでしょう。写真からは、アーケード版と遜色ないグラフィックに見えたこともあり、このときはX1を持っていないことを心底後悔しました。

アーケード版の縦画面を見慣れていると横に長い印象を受けますが、実際にプレイしてみると操作感覚はあまり変わらないのが分かります。ソルバルウが被弾した時に一瞬上下がひっくり返って表示されるという、アーケード版と同じ挙動も盛り込まれました。

 X1版は7カ月という期間で発売にこぎ着けたのですが、「キーボードでプレイしても本当の面白さは分からない」ということと、この当時X1用のジョイスティックとしては2トリガのものが無かったため、ジョイスティックも同時に開発・販売しています。これを使うことにより、臨場感がグッと高まったのは言うまでもありません。キーボードでプレイすると、5キーを押さない限り移動しっぱなしになってしまうなど操作性が落ちるので、今ならば豊富にあるアタリ仕様のジョイパッドを接続してプレイしたいものです。

画面内に出現するバキュラの枚数は4枚まで、なんてケチなことにはなっていません(笑)。もちろん、どれだけザッパーを撃ち込んでも破壊できません。

 4ドット単位でのスクロールは当時としては非常に滑らかで、少々横長の画面に合わせたためか敵や自機ソルバルウの移動速度などはアーケード版とは違っていましたが、それでもこのクオリティで『ゼビウス』を自宅で遊べるのであれば、X1システムを購入するために30万円を出費しても惜しくはない、そんな完成度でした。個人的には、今でもコンソール機版よりも出来が良かったと思うほどです。

アンドアジェネシスの登場です。エリア4ではバキュラ1枚が飛来し、ザカートの出現後に“ズゴゴゴゴ”という効果音と共に現れるので、迫力も満点。当然ながら、出現している間は浮遊しています。ブラスターでアルゴを破壊すると、爆発マークが描かれるためアンドアジェネシスの一部分が一瞬消えてしまいますが、プレイしていると全然気になりません。

 プレイしていて分かる大きな違いは、ブラスターの当たり判定がアーケード版よりも少し大きいことと、各エリアの境目となる森の部分では敵やオブジェクトが出現しないことです。ただし、エリア半ばでミスして森から再開、という時は、この限りではありません。また、全般的に難易度が低くなっているので、魔の16エリアもサクッとクリア出来てしまいます。ただし、X1版で16エリアを越えられたからといって、アーケード版でもクリア出来るかどうかは、また別の問題です(笑)。

ソルやスペシャルフラッグといった隠し要素も、すべて盛り込まれています。もちろん、ナスカの地上絵もドーンと描かれているので、砂漠地帯がのっぺらぼうということにはなっていません。

 テープ版の場合、最初にメインプログラムのロードが約5分間行われ、続けてエリア1から3までのデータを各25秒前後で読み込みます。そのため、最初の3面分はノーロードでストレスなく遊べる仕様となっていました。エリア3以降は、クリアするかエリアの75%を越えてからミスすると次のエリアのロードが始まるのですが、その時間もわずか25秒。16エリアをクリア後は、自動的にテープをエリア7まで巻き戻してから再びデータを読み込むので、当時はゲームだけでなく電磁メカカセットにも驚かされたものです。ちなみに、メインプログラムとエリア3までのデータは常に保持されているので、再プレイ時はロードレスなのも高ポイントでした。

珍しい、予告広告が掲載後に発売となったX1版『ゼビウス』。登場後の広告では「(前略)……フルキャラクター、フル画面、そして神秘をX1にプログラムしました。」と、謎多きタイトル『ゼビウス』にふさわしいキャッチを掲載していました。

 この時代において『ゼビウス』は、ハードを買うための大きな原動力となったこともあり、本作は間違いなくX1のキラータイトルだったと言えるでしょう。X1版『ゼビウス』をきっかけとして、X1シリーズはそれまで以上に市場での存在感を大きくし、ユーザー数を伸ばしていくこととなります。

【X1版『ゼビウス』 プレイ動画】
テープ版で、スタートからエリア4の終わりまでを撮影してみました。3エリアまではロードレスで、4エリアに入る森ではロードが入りますが、テープ版でもこれだけ快適にプレイ出来るのだから、X1というハードと『ゼビウス』というソフト、それぞれの完成度の高さが分かるというものです。

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