ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

80年代中期のパソコン事情・その3 ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“80年代中期のパソコン事情・その3”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


80年代中期のパソコン事情・その3


中小ソフトハウスが数多く生まれた80年代初期から一転、淘汰の期間となった80年代中期、大ヒット作を生み出したハドソンソフトだが……

 1984年といえば、まだまだソフトハウスの群雄割拠が続いていた時代、そしてアドベンチャーゲームが盛り上がりを見せていた頃だ。

 市場には玉石混淆のアドベンチャーゲームが溢れ、ソフトハウスの名前で作品の善し悪しを決めるのもはやっていた。たとえば、T&E SOFTや日本ファルコム、エニックスの作品ならば当たりだろう、などなど。

 ところが、この年から徐々にRPGタイトルが増え出し、アドベンチャーゲームを中心にソフトを売り出していたメーカーは少しずつ消えていってしまう。

発売が延期になってしまい、旬を逃した感のあった『デゼニワールド』。

 特にハドソンソフトは、84年に『サラダの国のトマト姫』を発売し、同じタイミングで『デゼニワールド』もリリースするはずが、実際に登場したのは2年後の86年だった。

 しかし、世間は既にアドベンチャーゲームブームが去っており、あまり暖かく迎えてはもらえていない。85年という、アドベンチャーからロールプレイングゲームへの転換期にタイトルを出さずに終わってしまったのがその一因かもしれないが……。

 また、ハドソンソフトの場合、前年に発売された「ファミリーコンピュータ」のことも含めて考える必要があるだろう。ファミコン初のサードパーティーになり、84年の7月に『ナッツ&ミルク』と『ロードランナー』を出している。

愛らしいキャラクターとメルヘンチックなストーリーで、プレイヤーをグイグイと世界観に引き込んだ『サラダの国のトマト姫』。

 その後も、85年に登場したファミリーベーシックに携わるなど、様々な面で任天堂に帯同していたことを考えると、PCソフトの開発リソースが少なく、余裕がなかったのかもしれない。

雑誌に取り上げられて有名になったところも……

 ボンドソフトも、「タイム」シリーズで名を馳せたソフトハウスだが、その3作目をリリースすることなくパソコンゲーム業界から静かに去ってしまった。

 ネコジャラ氏の3作品『不思議の森のアドベンチャー』『タイムシークレット』『タイムトンネル』の知名度が高かった反面、のちに発売したロールプレイング・アドベンチャー『魔界王』、アドベンチャー『ロリータ姫の伝説』、SFアダルトアドベンチャー『LUNACITY殺人事件』はあまり知られておらず、広告戦略の失敗もあったのかもしれない。なお、1986年までは近日発売予定作品に『タイムシークレット3』も入っていた。

ボンドソフトといえば、『不思議の森のアドベンチャー』「タイム」シリーズがすぐに思い浮かぶ。しかし、『LUNACITY殺人事件』や『ロリータ姫の伝説』『脱獄』なども発売しているにもかかわらず、それらはほとんど話題にのぼらない。衰退したのは、その辺に原因があるのかもしれない。

 ほかにも『機動戦士ガンダム』のアドベンチャーゲームを発売していたラポート、『マイコンBASIC Magazine』で取り上げられ評判もよく『サザンクロス』で名を馳せたバンダイ、『魔女モヘカの館』や「ラグランジュ」シリーズを出していたコンパック、途中で発売中止になってしまう『首相の犯罪』などをリリースしていたCSKなどのソフトハウスが、相次いでフェードアウトしていく。

定期的にヒット作を生みファンを掴んだメーカーも

 反対に、頑なにアドベンチャーゲームだけを出し続けることで、80年代を代表する“アドベンチャーゲーム・ソフトハウス”になったリバーヒルソフトやシンキングラビットのようなソフトハウスもある。

ミステリアドベンチャー『殺人倶楽部』で一躍名前をあげたリバーヒルソフト。その後、ハードボイルドアドベンチャーゲーム路線を踏襲していく。
この時代に、硬派なソフトをリリースし続けたシンキングラビット。『道化師殺人事件』など、タイトルに“殺人事件”と名の付くソフトが多いのも特徴だ。

 リバーヒルソフトは「J.B.ハロルド」シリーズや「藤堂龍之介探偵日記」シリーズなど、ミステリアドベンチャーをリリースしヒットを飛ばす。

 シンキングラビットは、“××殺人事件”という「殺人事件」シリーズのタイトル作品が有名だが、『ザ・マン・アイ・ラブ』や『カサブランカに愛を』といった渋い作品も世に送り出し、一定の知名度を得ることに成功している。ただし、発売告知はあったもののお蔵入りしている『映画狂殺人事件』『映画「鍵穴殺人事件」殺人事件』もなぜか有名だ。

 栄枯盛衰という単語がピッタリ当てはまる84年中盤。ここで残れたソフトハウスは以降、80年代はソフトをリリースし続けていくことができた。

一部の画像は、書籍版とは異なるものを掲載している場合がございます。