パワレポ連動企画

【Haswell Refresh徹底紹介(5)】Z97とZ87マザーはM.2以外どこが違う?

~新旧チップセットを比較~

DOS/V POWER REPORT 7月号

 自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新7月号の特集記事、「Haswell Refresh&Intel 9シリーズマザーボードを攻略せよ!」をまるごと掲載する当企画の5回目は、Z97/Z87マザーボードを比較して、新旧チップセットの違いを探っていく。

 比較は外観やブロック図による視覚的な違いから始まり、ベンチマークテストを実施することでデバイスレベルでの差異があるかなどを検証する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 7月号は現在発売中。7月号の内容は、約40ページにわたる今特集のほか、Windows 8.1 Updateの改良点や旧OSからのアップデートの解説、自作ユーザーのかゆいところに手が届く「逸品ケーブル図鑑」、髙橋敏也の改造バカ一台などが掲載。また、PC自作Q&A事典 2014とGIGABYTE POWER REPORTが付録として付いてくるなど、盛り沢山だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年7月号 Special Edition -


8シリーズと9シリーズチップセット搭載マザーボード、M.2以外はどこが違う?

 9シリーズチップセットで誰もが注目するのはM.2や次世代Coreシリーズへの対応。しかし、9シリーズに追加された機能はそれだけではない。目玉とは言えないかもしれないが、そうした新機能を本パートで地道に探っていこう。

Z87とZ97のM.2以外の変更点をチェック

Intel Z87とZ97の外見などを比較

 Intel 9シリーズと8シリーズは、ともにLGA1150のHaswellおよびHaswell Refreshに対応したチップセットだ。対応CPUが同じだけに、9シリーズは8シリーズのマイナーチェンジといった印象が強い。いや、もしかしたら同一のチップかもしれないと勘ぐる方がいてもおかしくない。

 まずは実物で比較してみると、チップのサイズやダイ周囲のチップ抵抗の位置などがまったく同じ。国内での販売予定はないというが、あるマザーボードメーカーでは8シリーズと9シリーズチップセットがピン互換であることから、既存の基板に9シリーズを搭載したモデルというものも存在する。ただし、チップ上の刻印は違うし、OS上からCPU-Zで確認してみても、Intel Z87とIntel Z97とそれぞれ表示される程度には違いがあった。

Z87とZ97のブロック図

 続いて、チップセットのブロック図で両チップセットを比較しよう。これも両者よく似ており、Z97では第5世代Coreシリーズへの対応が明記されている程度で、基本的な項目に変更はない。M.2のサポートに関係するのは「Intel Rapid Storage Technology for PCIExpress Storage」という部分。PCI Express接続のストレージをサポートするために追加された機能だが、M.2に限定するものではない。もう一つ追加されているのが「IntelDevice Protection Technology with Boot Guard」だ。こちらはオプションとして提供されるセキュリティ機能の一つ。あわせてIntel MEのバージョンが9.0から9.1へと引き上げられている。

Z87とZ97マザーでベンチマークを比較

MAXIMUS VI GENEと同VII GENEを比較

 新チップセットが登場する際、昔はたとえばシステムバス(FSB)のクロック引き上げなどで性能が大きく向上した。今回のIntel 9シリーズチップセットは、上記のブロック図のとおり、CPUとチップセットをつなぐDMIもバージョン2.0のままIntel 8シリーズから変わっていないことから、パフォーマンスには変化がないと思われる。ここをまずベンチマークで明らかにしておこう。

 用意したのは、できるだけ違いの少ないモデルをという点から、ASUSTeKのmicroATXマザーボードのMAXIMUS VI GENE(IntelZ87)と同VII GENE(Intel Z97)とし、そのほかのパーツ、OSはすべて統一した。MAXIMUS VI GENEにおけるUEFIのバージョンも、検証時点での最新版にアップデートしている。

ベンチマーク結果

 ベンチマークは、総合指標としてのPCMark 7のほか、CPU性能を見るためにCINEBENCH R15を、メモリ性能のためにSandra2014 SP2(Memory Bandwidth)を、3D性能のために3DMarkを、そしてストレージ性能のためにCrystalDiskMark 3.0.3bを用いた。

 結果を見ると、それぞれ誤差の範囲と言える違いしか確認できなかった。PCMark 7で多少の差が生じたが、少なくともデバイスレベルでのベンチマークに差は見られない。

UEFIやIntel製ユーティリティの変更点をチェック

9/8シリーズチップセットの主な機能。

 Intel 9シリーズチップセットでは、ストレージ関連のドライバおよびユーティリティであるRapid Storage Technologyに「PCI Express Storage」のサポートが追加された。また、休止状態からの高速復帰を実現するRapid Start TechnologyでもPCI Express関連のストレージに対するサポートが強化され、SSDをキャッシュに用いてHDDアクセスを高速化するSmart Response TechnologyではSSHDもサポートされた。こうしたサポートの拡大が、UEFIやOS上のソフトウェアに違いとなって現われるのかどうかを調査した。

RSTやFast Bootに関するUEFI項目は新旧ほぼ同じで、SSHDを接続してもHDDを接続した際の表示と変わりなかった。
Windowsの起動時間を比較。

 まず、Z87を搭載するMAXIMUS VI GENEの最新版UEFIと同VII GENEのUEFIで設定項目を比較したが、ストレージに関する項目やブート関連項目においてとくに変更、追加された項目は見当たらない。

 ソフトウェア面でもこれといって違いがなかった。Z87のVI GENEにRapid Storage Technologyのバージョン12.9を、Z97のVII GENEに製品付属のバージョン13を導入し、SSHDを接続してみたが、何か表示が変わるといったことはなかった。VI GENEにバージョン13を導入することもできたが、速度に変化はなかった。おそらくSSHDのサポートという点では、単に接続するだけではなく、なんらかの設定が必要と思われるが、製品マニュアルにも記載がない。SSHDはあまり期待されていないのだろうか。

「Broadwell」こと第5世代Coreシリーズ対応でVRMに変化は?

MAXIMUS VI GENEと同VII GENEのCPU VRM周り
DIGI+ VRMとMOSFETの比較

 9シリーズチップセット搭載マザーボードでは、詳細未発表のコードネーム「Broadwell」こと第5世代Coreシリーズがサポートされる。8シリーズでは第5世代Coreシリーズはサポート外であり、ここが9シリーズマザーボードの大きなアドバンテージの一つだ。

 具体的には、8シリーズと9シリーズでは電源の設計が異なるとされる。一言で電源の設計と言っても、Intelによる設計ガイドラインとしての「VRD」や、それにもとづいたマザーボード上のコンポーネントまで幅広い。VRDが更新されたということもないようであり、今回はマザーボードの外見から分かる範囲での差異を調べてみた。

 今回用いたマザーボードは、どちらも8フェーズ回路で、レイアウトも似ている。周囲のコンポーネントを見ると、たとえばフェライトコアの形状が違うほか、ASUSTeK独自のデジタルVRM回路制御チップ「DIGI+ VRM」の刻印に違いが確認できた。ただし、フェライトコアはさほど違いを生むものではないし、DIGI+ VRMチップは仕様が非公開なので具体的な違いが分からない。MOSFETに関してはどちらも同じ型番だった。VRMまわりの仕様からは大がかりな設計の変更を思わせるところは見当たらなかった。

システム全体の消費電力

 実際に消費電力を計測したところ、アイドル時/高負荷時とも、Z97搭載機のほうがわずかに低かった。しかし、同シリーズとはいえ仕様は異なり、これが電源回路で生じた差と断言することはできない。ただし、Z97マザーボードはHaswell向けとしては第2世代にあたり、電源回路が効率化されている可能性は高いと言えるだろう。

結論

マザーボードの実装に大きな違いはないが9シリーズを選ばない理由もない

 Intel 8シリーズと9シリーズの変更点を見てきたが、PCI Expressストレージまわり以外の追加機能はわずかで、電源設計のハッキリした違いも確認することは難しい。ただ、UEFIなどのアップデートで状況が変わることもありそうだ。次世代CPUのBroadwellがサポートされるという点は9シリーズマザーボードのアドバンテージであり、今すぐ9シリーズマザーボードに乗り換えろ!というほどではないが、今後価格以外で8シリーズマザーボードを選ぶ理由はない。

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、メモリ:センチュリーマイクロ CK8GX2-D3U1600(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB ×2)、マザーボード:ASUSTeK MAXIMUS VII GENE(Intel Z87)、ASUSTeK MAXIMUS VII GENE(Intel Z97)、グラフィックス機能(ビデオカード):Intel Core i7-4770K 内蔵(Intel HD Graphics 4600)、ASUSTeK GTX760-DCMOC-2GD5(NVIDIA GeForce GTX 760)、システムSSD:PLDS Plextor SSD M2P PX-128M2P(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)、検証用SSD:CFD販売 CSSD-S6T128NHG6Q(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)、SSHD:Seagate Laptop SSHD ST1000LM014(Serial ATA 3.0、MLC 8GB、7,200rpm、1TB)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、電源:Enermax REVOLUTION87+ ERV750AWT-G(80PLUS Gold、750W)、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行中の最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts up? PRO

[Text by 石川ひさよし]



DOS/V POWER REPORT 7月号は5月29日発売】

★第1特集「Haswell Refresh&Intel 9シリーズマザーボードを攻略せよ!」はもちろん、第2特集「Windows 8.1 Updateの正しい出会い方」や髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載

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(AKIBA PC Hotline!編集部)