パワレポ連動企画

ITライターが作るスタンダードPC ~その2~

【金と銀のPC自作プラン(2)】

DOS/V POWER REPORT 11月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌11月号の特集記事「対決!金と銀のPC自作プラン」をほぼまるごと掲載する。

 今特集では、DOS/V POWER REPORTが掲示した4つのテーマについて、それぞれ2名のライターが独自の解釈でPCを作成、そのポイントを解説する。

 第二回目の今回は、予算15万円で製作する「スタンダードマシン その2」を紹介する。ITライター「竹内亮介」氏が拡張性と耐久性を重視して“3年使える”ことを目指した一品だ。なお、記事の末尾で読者投票を実施しているので、このPCが気に入った人はぜひ投票をして頂きたい。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 11月号は、絶賛発売中。11月号では今回の特集のほか、8月末に発売されたHaswell-Eの解説記事や、最新ビデオカードの特集、セミファンレス電源カタログ、新世代ベアボーンPC特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、PCケースを約160種集めた「PCケース パーフェクトコレクション 160」が小冊子として付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年11月号 Special Edition -


予算15万円で作るスタンダードマシン その2
拡張性と耐久性を重視した3年使えるスタンダードPC

製作者:竹内亮介

今回のテーマでは「3年前の状況」を思い返してみると分かりやすい。その世代のパーツと現行のパーツを比べてみて、どのパーツがどれだけ進化、陳腐化したかを考えれば、選ぶべきパーツが見えてくる。

将来性を重視して、コストをかけるべきパーツを見きわめる

 このテーマにおいて重要なのは、将来性があり、かつ陳腐化しにくいパーツを選ぶという点だろう。というのも、現在はエントリークラスのパーツ構成でも性能的に不足する場面が少なくなり、電力効率の重要度が高くなってきているからだ。たとえばIntelのメインストリーム向けCPUでは、Sandy Bridge以降消費電力は低下しているものの、性能のジャンプアップ幅は狭い。また、GPUも同じく低消費電力化が進んでいる。つまり、3年後を見据えるのであれば、これらのパーツはミドルレンジ~アッパーミドルクラスを選べば十分ということだ。

 陳腐化が激しいパーツとしては、SSDが挙げられる。ここ1年で一気に低価格化が進み、さらに新しいインターフェースであるM.2やSATA Expressが登場。コストを考えると現状ではSerial ATA 3.0対応モデルを選ぶのがベターだが、将来的には新インターフェースへの移行も考えたい。

PC内部の様子とベンチマーク・消費電力の結果。PCMark 8-Homeのスコアは4,192、3DMark-Fire Strikeのスコアは5,642、消費電力はアイドル時が43.7W、高負荷時が238.7W

 将来性にもっとも影響を与えるのが、マザーボードだ。とくにアップグレードの余地が大きいストレージに対応するためには、M.2などの最新インターフェースを搭載していることが望ましい。その条件を満たしているのが、Intel 9シリーズを搭載した製品だ。2015年に登場予定の新CPUへの対応が明言されており、さらにM.2スロットやSATA Expressに対応。これだけでも十分将来性を期待できるし、Z97であれば、アンロックタイプのCPUのOCも可能だ。

 このようにパーツごとに3年前と現在の状況を比較してコストも加味すれば、選ぶべきパーツはおのずと絞られてくるはずだ。

このPCのポイント
カテゴリー製品名実売価格
CPUIntel Core i5-4690K(3.5GHz)27,000円前後
マザーボードASUSTeK Z97-PRO(Intel Z97)21,000円前後
メモリCFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G
(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)
9,500円前後
ビデオカード玄人志向 GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT
(NVIDIA GeForce GTX 760)
25,000円前後
SSDMicron Crucial MX100 CT512MX100SSD1
( Serial ATA 3.0、MLC、512GB)
23,000円前後
HDDWestern Digital WD Red WD20EFRX
(Serial ATA 3.0、5,400rpm、2TB)
10,000円前後
PCケースAntec P100(ATX)9,000円前後
電源ユニットEnermax Revolution-X't ERX530AWT
(530W、80PLUS Gold)
11,000円前後
CPUクーラーサイズ 無限大(MUGEN MAX)5,500円前後
Blu-ray DiscドライブLG Electronic BH16NS488,500円前後


合計149,500円前後

ポイント1 土台が重要! マザーとCPUはケチらない

鉄板のZ97搭載マザーとOC対応のCore i5

【ASUSTeK Z97-PRO】
Intel Z97チップセットを採用するATX対応マザーボード。M.2スロットやSATA Expressポートなど、ストレージ用の最新インターフェースを装備する。CPUファンをより精密に制御できるファンコントロール機能「Fan Xpert 3」に対応する

 最新チップセットを搭載しながらも低価格なマザーボードは多い。しかし、3年以上メインマシンとして使うつもりなら、そういったものはオススメしない。下位モデルでは、使われている部品のクオリティや構成が上位モデルよりも一段低く、M.2などの最新インターフェースが省かれていることが多いからだ。さらに、UEFIがアップデートされず、新しいCPUに対応できない可能性がある。

【M.2対応の超高速SSDに対応】
Serial ATAポートの近くにM.2スロットを装備。10Gbpsの帯域を確保しており、Serial ATA 3.0対応SSDよりも高速なM.2対応SSDを利用できる
【次世代CPUの搭載も可能】
Z97チップセットを搭載しているので、コードネーム「Broadwell」と呼ばれる次世代のLGA1150対応CPUも利用できる

 今回選んだマザーボードは、Z97を搭載したアッパーミドルモデル「ASUSTeK Z97-PRO」。アンロックCPUと組み合わせることでOCも可能なので、CPU性能に少し不満が出てきたときには、自己責任にはなるがOCによる性能アップが可能だ。また、ストレージ用の新インターフェースであるM.2スロットとSATA Expressポートを搭載。将来対応ストレージへアップグレードすることもできる。また、電源回路やコンデンサの品質も高く、長く安心して使えるマザーボードだ。

 そしてCPUは「Core i5-4690K」を選択。こちらもIntel CPUの中ではアッパーミドルクラスに位置したモデルで、4コア4スレッド同時実行が可能。性能は上位モデルであるCore i7の4コア8スレッドよりも劣るが、コストパフォーマンスに優れる。動画のエンコードといった作業がメインでなければ十分な性能で、長く使っていくにはベストの組み合わせと言える。

【OCも可能なCore i5-4690Kを選択】
4コア、4スレッド同時実行が可能なCore i5の最上位モデル。アンロックモデルなので、Z97チップセットと組み合わせてOCも可能だ

ポイント2 ケースは万能タイプのバランス型

長く使うならメンテナンス性も考慮したい

バランス型と冷却重視型の違い

 現在のPCケースのトレンドは、基本は静音性重視だが、吸音材を外してファンを増設すれば冷却性能を強化することができる「バランス型」と、多数の大型ファンの搭載やメッシュ構造による強力なエアフローで高い冷却性能を備えた「冷却重視型」の二つに分かれる。どちらにもメリット・デメリットはあるが、長く使うという観点で考えると、やはりバランス型に軍配が上がる。

 発熱の大きいハイエンドビデオカードやCPUを、OCしながら常用したいなどといった用途でない限り、一般的にPCが静かであるに越したことはない。そしてPCを静かにしたいのなら、内部からの音漏れを防ぐ密閉構造が望ましい。一方、冷却重視型のPCケースは、冷却性能を上げるために前面や天板、側面などが風通しのよいメッシュ構造となっており、音が漏れやすい。このように、バランス型は簡単に冷却性能を強化できるのに対し、冷却重視型は静音性を向上させることが難しいのだ。その意味でも、両方の性格に対応できるバランス型は、非常に使い勝手のよいPCケースとしてオススメできる。

【天板にファンを増設可能】
通常は吸音材で覆われているが、外すことで14/12cm角ファンを2基装備できる。簡易水冷クーラーを取り付けることも可能だ
【防塵フィルタの清掃が楽】
前面には防塵フィルタを装備。簡単に外れる構造なので、定期的に清掃を行なうことで、ホコリの侵入による故障リスクを減らせる

 そうした事情から、今回選択したバランス型ケース「Antec P100」は、密閉性の高い構造や音漏れを防ぐ前面扉、天板や前面の追加ファン用マウンタなどを装備した、典型的なバランス型ケースだ。さらに実売価格が9,000円前後と、バランス型の中では比較的低価格なのが魅力。低価格ながらフレームはがっしりとしており、コストパフォーマンスに優れる面を評価した。また、フロントや底面には、簡単に外すことができるフィルタを装備しており、長く使うのに重要な清掃などのメンテナンスがしやすい点もポイント。

【5年保証付きの80PLUS Gold電源】
電源も長く使うなら高効率で長期保証の付いた製品がオススメ。今回は「Enermax Revolution-X'tERX530AWT」を使っている
【使うケーブルは最小限に】
ATX電源とATX/EPS12V、PCI Express電源は直付けのセミプラグイン仕様。今回はSerial ATA電源ケーブルを1本だけ追加した

 電源ユニットは80PLUS Gold認証を取得した高効率電源「Enermax Revolution-X't ERX530AWT」を選択。電源ユニットも長く使うことが多いので、高効率な上に5年保証が付いている点も安心だ。

ポイント3 SSDは予算内で可能な限り大容量を

SSDは500GBクラス、HDDは信頼性を重視

【Micron Crucial MX100 CT512MX100SSD1】
容量128GB、256GB、512GBの3モデルをラインナップする。2.5インチSSDのプライスリーダー的存在で、高いコストパフォーマンスが魅力。シーケンシャルリード速度も550MB/sと、十分高速だ

 Serial ATA 3.0対応の2.5インチSSDの現在の売れ筋モデルは、容量250GBクラスで実売価格が1万4,000円前後のものだ。しかし、それはここ1、2年ほどの流れである。その点を踏まえると、今回の作例では陳腐化を防ぐために売れ筋の一つ上、容量500GBクラスの大容量モデルを選択したい。

【空き容量の違いは歴然】
SSDにOSやいくつかのアプリをインストールした後の空き容量。上が120GBで、下が512GB。その差は一目で分かるだろう
【HDDは信頼性を重視】
WD Redシリーズは、24時間の連続動作や複数台の搭載が前提のNAS向けにチューニングされたHDDだ。耐久性に優れ、高い信頼性が魅力

 250GBクラス以下のSSDをシステムドライブとして使うと、OSとよく使うアプリケーションをSSDに置き、データなどはHDDに振り分けるといった使い方がメインとなる。しかし、500GBクラスなら空き容量に余裕が生まれ、ゲームのデータなどもこちらに置くことで読み出し時間が短縮されて、より快適なプレイを楽しめる。

 そうした500GBクラスのSSDの中から、今回は「Micron Crucial MX100 CT512MX100SSD1」を選択。より高速なM.2対応モデルなども登場しているが、価格が高いのがネック。速度面ではSerial ATA 3.0接続のモデルでも十分高いパフォーマンスを持っている。その中でも突出して優れたコストパフォーマンスを持つMX100 CT512MX100SSD1が、第一の選択肢となるのは当然だろう。

 今回はさらにデータ保存用のHDDとして、「Western Digital WD Red WD20EFRX」を追加した。本来はNAS向けのモデルだが、その高い信頼性を加味して選択した。

ポイント4 より快適な環境を目指す

サイズ 無限大(MUGEN MAX)+Fan Xpert 3+GeForce GTX 760の組み合わせで、比較的新しい3Dゲームでも静かにプレイ可能

 売れ筋よりワンランク上という考えから、ビデオカードにGeForce GTX 760搭載モデルを組み合わせたので、ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア(FF14)のような、比較的新しい3Dゲームでも快適に動作するようになり、まさに万能型の看板に偽りないスペックのPCとなった。

 とはいえ、このPCは3Dゲームのプレイのみで使うわけではない。「普段の作業は静かに、ゲームプレイ時は冷却性能を強化」というようにできれば、さらに快適にPCライフを満喫できるというものだ。そこで、Z97-PRO付属のファンコントロールユーティティ「Fan Xpert 3」を使い、静音性と冷却性能を調整してみた。

 まず、標準モード時における各パーツの温度をチェックしてみたところ、動画再生時はCPUが42℃、GPUが41℃と低いが、FF14やOCCT実行時は、GPU温度が急上昇した。とはいえ、80℃前後なら大きな問題はなさそうだ。

【標準モード時の各部の温度】

 次に動作音だが、高負荷時はどのモードでもファン回転数がほぼ最大となるので、アイドル時のものをテストした。結果、「サイレント」と「標準」は体感的にほとんど変化を感じられず。ターボでは少し音が感じられるようになり、フルスピードは当然うるさいと感じるレベル。温度との兼ね合いから、標準に設定することがベストだと判断した。

【モード別アイドル時の動作音】

多彩なアップグレードパスを確保

今回の構成でも、用途によっては数年後に不満を感じる場面が出てくる可能性はある。しかし、マザーボードに搭載されているインターフェースが多彩なので、アップグレードは容易だ。とくに将来的に価格が下がってきたら導入したいのが、M.2対応SSDだ。現在のSerial ATA 3.0対応SSDと同価格帯まで下がってきたら、システムドライブとして使いたいところ。ゲームの動きに不満が出たら、ビデオカードとケースファンを強化すればよい。Z97-PROは合計で六つのファンコネクタを装備しており、P100も3基のケースファンを追加できる

【次世代の高速ストレージ】
高速なM.2対応SSDは、価格が下がってきたら導入を考えたいパーツの一つ。Serial ATA 3.0対応SSDよりも高速な転送速度が魅力
【より高精細なゲームを楽しむ】
より高性能で低消費電力なビデオカードが登場してくるので、負荷のかかるゲームをプレイしたくなったらアップグレードを考えたい
【冷却性能を強化】
長時間のゲームプレイなど、高負荷な作業を続けることがあるならケースファンの増設を考えたい。P100は前面と天板にファンを追加できる
【多数のファン用電源コネクタ】
Z97-PROは、標準で最大6基のケースおよびCPUクーラー用のファンを接続可能なので、気軽に追加が可能だ

 このPCの構成が良いと思ったら、以下のボタンを押して投票してください(一人1回まで)。

 投票は本ページと、DOS/V POWER REPORT 2014年11月号の読者アンケート(同誌購入者のみ投票可能)で行なっています。
 DOS/V POWER REPORTの読者アンケートから投票された方には、抽選で3名様に「Intel Pentium G3258」をプレゼントいたします。

 投票結果はDOS/V POWER REPORT 2015年1月号(11月29日発売)にて発表する予定です。

DOS/V POWER REPORT 2014年11月号 読者アンケート


受付は2014年10月25日(土) 23:59までとなります



DOS/V POWER REPORT 11月号は9月29日(月)発売】

★第1特集「対決!金と銀のPC自作プラン」はもちろん、8月末に発売された「Haswell-E」の解説や、最新ビデオカードの特集、セミファンレス電源カタログ、新世代ベアボーンPC特集、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 紙版は小冊子「PCケース パーフェクトコレクション 160」付き

★ 電子版は割安な税別926円、一部ショップでは税別700円の期間限定セールが9月29日(月)より実施
★ 電子版では小冊子の電子版も完全収録

【電子販売ショップ】

(AKIBA PC Hotline!編集部)