パワレポ連動企画
自作PCをよくするワザ、教えます(6) ~ビデオカード編~
(2014/11/11 12:05)
このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌12月号の特集記事「自作PCをよくするワザ、教えます」をほぼまるごと掲載する。
第六回目の今回は、ビデオカードに関する玄人ならではのワザを紹介する。これらのワザを使って、自作PCをもっと速く、もっと便利に使いこなしてほしい。
なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 12月号は、絶賛発売中。12月号では今回の特集のほか、最新UEFIの完全ガイド、ファイル送信サービス 10選、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、特別付録として「保存版 インターフェース図鑑 2014」と題した小冊子が付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年12月号 Special Edition -
自作PCをよくするワザ ~ビデオカード編~
ビデオカードはCPUに次いでチューニングの余地のあるパーツだ。オーバークロックで描画性能を稼ぐことはもちろん、画質や冷却力を極大化するなどさまざまなアプローチから攻められる。自分のPCに合ったテクニックはどれだ?
【初級ワザ】GeForce、Radeon専用ツールでゲームを簡単チューニング
ゲームのパフォーマンスを確保しつつ、画質も最大限に確保するには画質設定を吟味する忍耐力が必要だ。しかし現在のGeForceやRadeonのドライバには、ゲームの画質設定に通じていなくても、インターネットから最適な設定をダウンロードし、自分のPC上で手軽に利用できる「GeForce Experience」(GFE)、「AMD Gaming Evolved powered byRaptr」(AGE)というツールが搭載されている。どちらもゲームごとに「最適化」ボタンをクリックするだけと使い方は簡単だ。
ただしGFEとAGEでは最適化のアプローチが大きく異なる。GFEの最適設定はNVIDIAのテストラボが見付け出した結果なのに対し、AGEではゲーマー用SNSサービス「Raptr」のユーザーが使っているハードや画質設定と、実際のフレームレートのデータから最適な設定を算出する。テスターの数が圧倒的に違うため、対応ゲーム数に大きな差(AGEが311タイトルに対しGFEは195タイトル)が見られるほか、インディーズ系タイトルのカバー率はAGEのほうが高い。ただしRaptrでは、GeForce環境向けクライアントも配布しており、同等の機能が利用可能だ。
ちなみにGFEやAGEを導入すれば昨今のコアゲーマー必携のゲーム配信機能が利用できる。GFEは配信の安定性の高さに優れる一方、AGEはワンキーで直近5秒~ 20分までのリプレイをすぐ保存できたり、チャット画面をゲーム上にオーバーレイ表示できたりするなど、細かい部分での使い勝手がよい。
【中級ワザ】GPU Boostを長続きさせる
NVIDIAのGPUには、GPUコアに負荷がかかると「ブーストクロック」を目安にクロックを引き上げる「GPU Boost」と呼ばれる自動OC機能が搭載されている。右のグラフから分かるように、冷却性能により高クロックが持続できる時間が変わってくる。また、GPU温度に余裕があるとブーストクロック以上にOCされることもあるため、NVIDIAのGPUでは冷却がとくに重要とされる。
GPUの温度をなるべく上げないようにする方法としてすぐにできるのは、ビデオカードのファンの回転数調整だ。
MSIが配布しているビデオカードのカスタマイズユーティリティ「Afterburner」で、GPU温度が70℃を超えたらファン回転数が最大値の90%まで上がるように設定し、「トゥームレイダー」のベンチマークモードを実行したところ、GPUの温度は最高でも80℃まで、クロックは1,162.7MHzのまま30分以上の動作が可能だった。ただし、ファンの回転数が非常に高いため、風切り音が耳に付く。GPU Boostとゲームプレイ時の動作音とのバランスが悩ましいところだ。
自動OC機能の違いを知ろう
AMDのRadeonにも、GPUクロックのブースト機能が搭載されており、GeForceと同様にGPU温度が上がると最大クロックの低下が起きるが、冷却効果を上げても最高クロックは上昇しない。GeForceのブーストクロックは目安、Radeonのブーストクロックは最大値、と理解しよう。
【検証環境】
CPU:Intel Core i5-4690K(3.5GHz)、マザーボード:MSI Z97 GAMING 5(Intel Z97)、メモリ:Novax Technologies UMAX Cetus DCDDR3-8GB-1600(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:玄人志向 GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT(GeForce GTX 760)、SSD:Micron Technology Crucial MX100 CT512MX100SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、512GB)、PCケース:Corsair Components Obsidian 750D Full Tower ATX Case、電源:Cooler Master Technology V550 Semi-Modular(550W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:トゥームレイダーのベンチマークモード実行中の値、GPUクロックおよび温度計測:HWiNFO64、動作音測定距離:PCケースの正面から約30cm、騒音計:testo AR-815
【上級ワザ】ビデオカードを水冷化して静音&高性能を追求
「ビデオカードの水冷化」と聞くと、非常にハードルが高そうだが、NZXTのアダプタ「Kraken G10」を使えば、CPU用簡易水冷キットと組み合わせることで比較的容易に実現できる。GeForce GTX 760搭載カードで試したところ、高負荷時でもGPU温度は52℃。さらにコアクロック+150MHzのOC(実測最高クロックは1.306GHz)でも安定動作可能と抜群の効果。高負荷時の静音性も高く、高回転化したファンノイズほどポンプ由来のノイズは気にならなかった。
しかし、この手法の問題点は手間よりもコストで、Kraken G10と簡易水冷キットで約2万円ほどの費用がかかる。高性能なクーラーを搭載したビデオカードよりも、低価格でやや冷却性能が弱い製品の性能アップ向き。
【中級ワザ】ツールでビデオカードを徹底チューニングする
MSIが無償で配布する「Afterburner」はビデオカードチューニングの定番ツール。GPUのオーバー/ダウンクロックのほかファン回転数の調整機能も備えている。GPUのOCは、コアクロックとコア電圧の二つを徐々に上げて最適値を探していく作業なのだが、このとき「Power Limit」を最大値に設定するのが重要だ。Power LimitはGPUが消費できる電力の上限を決めるため、定格より増やしておかないと高クロックが維持できない。逆に省エネ設定にする場合はコアクロックを下げずPower Targetを下げるだけでも効果が望める。
Afterburnerを使うなら、監視ツールの「HWiNFO64」も併用したい。ゲーム画面上にGPUの温度やクロック、各種ハードウェア情報(CPUの温度やクロック、占有率など)をオーバーレイ表示できるため、チューニングの追い込みに役立つ。
【中級ワザ】Radeon公式ツールでOCに挑戦!
ミドルレンジ以上のRadeon搭載カードでは、ユーティリティ「AMD Catalyst Control Center」に組み込まれている「AMD OverDrive」(AOD)によるOCが可能だ。AODの設定画面は独特で、4分割されたグリッドのどこをクリックするかでGPUの動きが決まる。グリッド中央の点が定格を示し、縦軸がコアクロックの増減、横軸が電力制限(AfterburnerにおけるPower Limit)を示す。つまり中央より上ならどこでもOCとなるが、少しでも中央より左のポイントを指定すると電力制限がかかり、結果としてクロックが下がるようになる。性能確保目的なら中央より右上のブロックのどこかをクリックするのがコツだ。ただAODではコア電圧の調整ができないため、OCの限界を攻めるには向いていない。手軽さ重視のときに使うべきだろう。
また、画面下方にある「目標GPU温度」の設定を活用し、GPU負荷を抑えて発熱や動作音の低減を図ることも可能だ。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)、マザーボード:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)、メモリ:Corsair Components Vengeance Pro CMY16GX3M2A2133C11(PC3-17000 DDR3 SDRAM 8GB×2、※PC3-12800で使用)、SSD:Micron Crucial M550 CT512M550SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、512GB)、電源:FPS Group AURUM Pro AU-850PRO(850W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版
【上級ワザ】NVIDIA Inspectorでゲームの画質をチューニングする
ゲームの画質を上げるアンチエイリアスだが、ゲームによっては効果の低いものしか選べないこともある。こんな場合は、GeForce環境であれば、ドライバの挙動を変える特殊なデータも編集できる「NVIDIA Inspector」で設定を調整してみよう。
掲載した画面は「The Elder Scrolls V:Skyrim」の例。このゲームはアンチエイリアスの実装がイマイチのため、高品位なアンチエイリアスを指定していてもジャギーが出る。ところがNVIDIA Inspectorを使って「互換性フラグ」を変更すると高品位アンチエイリアスが適用され、美しい画面が楽しめる。
ただこの手法は互換性フラグなどの正しい設定データを簡単に見付け出す方法はない。ネットで同好の士による情報を探し当てるか、しらみつぶしで試すほかはない。
【初級ワザ】CPU内蔵のエンコード機能を利用する
Core iシリーズの内蔵GPUに組み込まれている「Quick Sync Video」(QSV)は、画質に制約はあるが、現在最速のH.264エンコーダだ。しかし、以前はQSVをビデオカードのある環境で通常は利用することができず、LucidLogixのGPU仮想化ツール「Virtu」を使う、内蔵GPU側にもディスプレイを接続しておく、といった力業が必要だった。
しかし、Windows 8/8.1ではツールも追加ディスプレイも使わずにQSVとビデオカードを共存できる。マザーボードのUEFIでCPU内蔵GPUでのマルチディスプレイ設定を有効化すると、Windows上でディスプレイに接続されていないデスクトップが2面検出され、検出されたデスクトップのうちの一つが内蔵GPUにつながっていることになる。この実際には“見えない”デスクトップを有効化することで、ビデオカードを使ったままQSVを利用することが可能になるのだ。
[Text by 加藤勝明]
【DOS/V POWER REPORT 12月号は10月29日(水)発売】
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