パワレポ連動企画
実践!! ファンセッティング
【10年使えるATXケース徹底紹介(9)】
(2015/2/18 12:05)
こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT 2015年3月号」の「10年使えるATXケース徹底特集」をほぼまるごと紹介するこのコーナーも残すところあと2回。第9回目の今回は「Fractal Design Define R5」を例に挙げ、バランス型ケースでのファンセッティングを検証する。密閉構造のATXケースであれば応用できる内容なので、冷却性能の改善に是非役立てて欲しい。
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今号の特別付録は「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」。ちょっと欲しい!今すぐ欲しい!がいっぱい!!の内容だ。
- ATXケースの選び方 2015年版 -
10年使えるATXケース徹底紹介
バランス型ケースの実践ファンセッティング
ここでは冷却性能と静音性を兼ね備えたバランス型ケースを使用して、ファンセッティングによるチューニング方法を研究した。
【内蔵GPU使用時】静音性を重視する
まずは内蔵GPUを使用する環境から。この環境ではパーツの冷却をそれほど強く意識する必要がないので静音性を重視したセッティングを追求していく。システムには、Core i7-4790KとZ97マザーボードをベースとしたものを採用している。おおまかな目安だが、CPU温度は高負荷時に70℃以下をキープできれば問題なしで考えて検証を進めている。
【内蔵GPU使用時検証環境】※1
CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)、マザーボード:ASUSTeK Z97-PRO(Intel Z97)、メモリ:Micron Technology Crucial BALLISTIX BLT2K8G3D1608ET3LX0(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)、グラフィックス機能:Intel Core i7-4790K内蔵(Intel HD Graphics 4600)、SSD:Micron Technology Crucial m4 CT128M4SSD2(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)、HDD:Western Digital WD Green 3TB WD30EZRX-1TBP(Serial ATA 3.0、5,400rpm、3TB)、電源:Enermax Technology Platimax EPM1000EWT(1,000W、80PLUS Platinum)、PCケース:Fractal Design Define R5、CPUクーラー:Thermalright SilverArrow IBEExtreme、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、室温:18.8℃、暗騒音:28.8dB、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:注記のないものはすべてOCCT 4.4.1のPOWER SUPPLY を12分間実行中の最大値、各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.26で、CPUはCPU TemperaturesのPackage、マザーボードはMotherBoardのMainboard、ビデオカードはVideo CardのTemperaturesの値、ケース内部の温度のみサイズ KAMA-Thermo どこでも温度計2で電源の上部付近を計測した値、動作音測定距離:ケースの前面から約10cm
※1 編集注 「DOS/V POWER REPORT 2015年3月号」誌面では【検証環境】となっていますが、Web掲載にあたり【内蔵GPU使用時検証環境】と変更しました。
step 0 ファン制御ユーティリティでチューニング
マシンの静音化にはマザーボード付属のファン制御ユーティリティを使うのが一番簡単である。ここでは、本誌の実証でもその有効性を何度も確認しているASUSTeKの「Fan Xpert 3」を使って静音化を試みた。
結果は以下のとおり、標準プロファイル適用時に、アイドル時1dB、高負荷時1.7dBの静音化を、サイレントプロファイル適用時に、アイドル時2.1dB、高負荷時3.1dBの静音化を達成できた。
気になるのはCPU温度の上昇だが、サイレントプロファイル適用時の高負荷時でも57℃で、非常に高い負荷をかけ続けるOCCT実行時の値であることを考えると問題のない範囲に収まっている。
ちなみに、より高度な静音化を試みて、フロントファンを取り外してサイレントプロファイルを適用してみたが、総合的な冷却能力が下がったことから各ファンの回転数が高くなり、逆に動作音が大きくなってしまった。
【ビデオカード使用時】冷却能力と静音性のバランスを取る
ここからはビデオカードを使用したシステムで冷却性能と静音性のバランスを取るセッティングを行なっていく。静音化は内蔵GPU使用マシンと同様、Fan Xpert 3で行なうが、内蔵GPU使用マシンの検証でハッキリしたように、Fan Xpert 3での静音化は総合冷却能力に大きく左右される。そこで手順としては、ファンの追加などで冷却性能を上げた後、Fan Xpert 3で静音化を図ることにする。なお、むやみにファンを追加してもコストがかさむだけなので、ファンの追加は2基までとし、最適なセッティングを探る。
【ビデオカード使用時検証環境】※2
ビデオカード:MSI N780 LIGHTNING(NVIDIA GeForce GTX 780)
CPUクーラー:CRYORIG R1 Universal
追加ケースファン:Corsair Components AF140 LED Quiet Edition(14cm角、1,200rpm)×2、
CorsairComponents AF120 LED Quiet Edition(12cm角、1,500rpm)
ほかは上記【内蔵GPU使用時検証環境】と同じ
※2 編集注 「DOS/V POWER REPORT 2015年3月号」本文では【p.51 ~ 53の検証環境】となっていますが、Web掲載にあたり【ビデオカード使用時検証環境】と変更しました。
step 1 密閉性の高いケースでもCPUの冷却には負圧がよいのか
Fractal DesignのDefine R5は標準で、前面に14cm角ファン(吸気)、背面に14cm角ファン(排気)を装備している。
DOS/V POWER REPORT本誌の過去の検証では、メッシュ構造の通気口の多いケースでは全排気(負圧:排気圧が吸気圧を上回っている状態。正圧はその反対)が一番CPUの冷却に効果があるという結果が出ているが、通気口の少ないDefine R5でも同様の結果になるのか、標準、負圧(前面ファン、背面ファンとも排気)、正圧(前面ファン、背面ファンとも吸気)の状態でまずテストしてみた。
結果は下の表のとおり。正圧よりも負圧のほうがCPU、マザーともに温度が低くなっているが、サイドフローのCPUクーラーを利用していることもあり、標準(前面吸気、背面排気)状態がもっとも、CPU、マザーの温度が低くなっている。そこでDefine R5のセッティングは標準のファン構成をベースとして行なっていくことにする。
step 2 CPUの温度を下げるにはどこにファンを追加するのが効果的か
下のテスト結果は、前面、天板(前方、中央、後方と増設できるうちの中央と後方)、側板、底面のどこにどのように(排気、吸気)ファンを追加するのがCPUの冷却に効果があるのかを試したものだ。参考値としてほかの部分の温度も掲載している。なお、ファンは14cm角ファン(1,200rpm)を使用、底面のみ設置スペースの問題から12cm角ファン(1,500rpm)を使用している。
この結果を見ると、CPUの冷却には、天板(中)、とくに排気方向でファンを追加するのが、一番効果があることが分かる。この結果を受け、1基は天板に追加することに決定。次のステップではビデオカードの冷却に効果的なファンの位置を考えてみる。
step 3 側面ファンのビデオカード冷却効果を追検証してみる
一般的にビデオカードの冷却には側面ファンの追加が有効とされているが、Step 2のテストでは、アイドル時の温度こそほかより低かったものの、高負荷時はOCCTで負荷がかかり過ぎて強制的にブースト時のクロックが下げられたためか、全パターンで横並びの80℃となった。そのため、側板ファンの追加の効果を、より実際のゲームに近い3DMarkで試してみることにした。
結果は表のとおり、側板にファンを追加したことで吸気、排気パターンともにデフォルト状態よりもGPU温度が2℃下がった。この結果から、側板へのファン追加はビデオカードの冷却に効果があることが確認できた。
ここまでで分かったこと
step 4 天板ファン(中)と側面ファンの追加で総合的な冷却性能を上げる
Step 2とStep 3の結果から、CPUの冷却には天板ファン(中)の追加が、ビデオカードの冷却には側面ファンの追加が効果があることが分かったが、この二つを同時に追加した場合、吸気、排気の兼ね合いから冷却性能に変化が現われることも考えられる。そのため、天板ファン(中)と側面ファンの吸気、排気の組み合わせ全パターンを検証してみることにした。
結果は表のとおり、天板(中)に14cm角ファン(排気)、側板に14cm角ファン(吸気)を追加するパターンが、各部の温度がもっとも低くなっており、一番冷却効果が高いことが分かった。CPU温度は高負荷時でも55℃までしか上がっておらず、かなり高い冷却性能を見せている。
step 5 静音化を試みる
Step 4までで冷却性能を向上させることができたので、その状態で静音化を図ってみる。まずは、Fan Xpert 3の、標準プロファイルとサイレントプロファイルを適用して、ファン増設前のデフォルト状態(Fan Xpert 3未使用)と2基のファンを増設後(Fan Xpert 3未使用)の状態と比べてみることにした。なお、Fan Xpert 3の「ファンの調整」を実行したところ、各ファンの回転数は右の表のとおり設定された。
標準プロファイル適用時が静音性と冷却性能のバランスがよい
テスト結果を見ると、サイレントプロファイル時がやはり抜群の静音性を発揮しているが、高負荷時にCPU温度がファンを2基追加する前の状態より高くなっている。ただ、これは70℃という目安の範囲内だ。一方、標準プロファイル適用時は、ファンを追加する前よりも静音性がかなり高まっている上に各部の温度も低くなっている。高負荷時のCPU温度こそFan Xpert3未使用より8℃高くなっているが、こちらも目安の範囲内。どちらを選ぶか迷うところだが、決断の前に下のテスト結果も見てほしい。
ビデオカードの性能は落ちていないか
Fan Xpert 3で静音化を図る上での心配事の一つは冷却不足によるビデオカードの性能の低下だ。そこで最後に3DMarkで性能の低下が見られないか試してみた。結果は以下のとおり、サイレントプロファイル適用時はGPU温度が上昇したせいかスコアが落ちてしまっているが、標準プロファイルのほうはGPU温度の上昇が抑えられておりスコアの低下も見られない。
冷却能力と静音性のバランスの取れたセッティングはコレだ!
側板に14cm角ファン(吸気)を追加し
Fan Xpert 3標準プロファイルを適用
[Text by 滝 伸次]
【DOS/V POWER REPORT 2015年3月号は2015年1月29日(木)発売】
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