パワレポ連動企画

Intel&AMD CPU一斉ベンチ -19製品を性能比較-

【勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!(5)】

DOS/V POWER REPORT 2015年8月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2015年8月号」の第一特集「Broadwellが来た! Godavariも来た!! 勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」を掲載する。

 前回まで3回にわたりIntelの新CPU「Broadwell」を解説してきた。今回は市場に流通している主要なCPUと、現在でも愛用している読者は多いと思われる「Core i7-2600K」を加えた19個のCPUを性能比較する。新しく自作PCを組むのにCPUで迷っている場合は、是非参考にしてほしい。

 なお、テストに当たり、LGA-2011v3プラットフォームの2製品は、CPUにグラフィックス機能を内蔵しないため、ビデオカード(AMD RADEON R7 250搭載カード)を増設している。ベンチマークのスコアや消費電力を比べる場合は、その点をご注意いただきたい。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年8月号は全国書店、ネット通販にて6月29日(月)に発売。新CPUを一挙に紹介する第一特集のほか、冷却も静音もバランスが大事!シチュエーション別に検証をする第二特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」、老若男女誰でも使える、安くてすごい小型のPC!「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」、余ったドライブをUSB 3.1で有効活用!「USB 3.1対応製品登場で新展開! 最新外付けドライブケース 40選」、見逃した番組も好きなときに観られる。そう、インターネットならね。「絶対加入しておきたい動画配信サービス」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は豪華二本立て。最新の略語まで一冊でカバー、明日からバリバリ使える知識満載の「最新 パソコン略語辞典 2015」と、最新のスラングまでバッチリ収録、ネット上でしか使えない知識満載の「30代以上のためのネットスラング辞典」だ。


- Intel&AMD CPU一斉ベンチ -19製品の性能比較- -


Broadwell-Cの実力は?
Intel&AMD CPU一斉ベンチ

 Broadwell-Cの登場に合わせ、現在流通している主要なCPU 18モデルおよびSandy Bridge世代の1モデルを加えた、合計19モデルの性能比較をしてみよう。最近のCPUは型番により得意とする分野が微妙に変わるのに加え、省電力性能なども大きく変化する。CPU選びを間違わないためにも、上下関係をしっかり把握しておこう。

総合性能の比較

CPUの馬力で負けてもGPUパワーで逆転する

 まずは「PCMark 8」から、家庭内での用途を模した「Home Accelerated」テストで各CPUのポジションを確認する。テスト環境は内蔵GPUに8GBのメモリ、SSD1基のシンプルな構成で、内蔵GPUを持たないLGA2011-v3のみメモリは16GB、ビデオカードは低価格なRadeon R7 250を組み合わせている。今回は比較用の旧モデルとしてSandyBridge世代のCore i7-2600Kも加えたが、OpenCLでテストが止まるため計測していない。

PCMark 8 v2.4.304を使った総合性能と、OCCT 4.4.1実行時のシステム全体の消費電力を比較

 結果は全体に順当でほぼ型番どおりの展開だが、とくにBroadwell-C(Core i7-5775C/i5-5675C)の高い性能に目を奪われる。PCMark 8のログからLGA1150版Haswell世代のトップCore i7-4790K/i5-4690Kとテスト結果を細かく比較すると、文書編集や写真編集といった一般実務処理ではほぼ同等なものの、DirectX 9相当の3D描画性能でBroadwell-Cが高スコアとなっている。

 また「OCCT 4.4.1」を使用し消費電力も測定した。LGA2011-v3勢はコア数が多くビデオカードの分不利だが、その次にCore i7-4790Kを筆頭にHaswell世代のCore i7やi5が続く。AMDのCPUはA10-7870Kが高い以外は、むしろ控えめと言える結果だ。Broadwell-Cは文句の付けようのない結果だ。


シングルマルチスレッド処理性能の比較

マルチコアが威力発揮、処理効率もよく分かる

CINEBENCH R15
オレンジ色で囲まれた領域一つにつき論理コア一つが描画を担当。当然この領域を多数用意できる多コアCPUほど高スコアが期待できる。さらにAdvanced Benchmarkを有効にすれば、コア1基だけを使った場合のスコアも取得できる。

 さきほどのPCMark 8はCPUもGPUも実際の使用時を意識した負荷での性能評価だが、ここで使用する「CINEBENCH R15」はCPUの純粋な性能を問うベンチマークだ。MAXON製のプロ向け3DCG作成ソフト「CINEMA 4D」がコアになっており、1枚の3DCG画像をレンダリングする作業時間からスコアを算出する。

 こういうテストでもっとも強みを発揮するのは、LGA2011-v3のようなコア数の多いシステムだ。もっとも高いスコアを出したCore i7-5960Xの場合、処理中の動作クロックはPentium G3258とほぼ同じ3.2GHz前後(タスクマネージャーによる実測値)だが、論理16コアという数の力が高スコアに直結している。しかしシングルスレッド処理に目を向けると、もっとも高スコアを叩き出したのは最大4.4GHzで動作するCore i7-4790Kだ。高クロック動作を背景にした処理性能はきわめて高く、Core i7-5775Cもおよばない。現行CPUの中でも異質な存在と言えるだろう。

 一方、PCMark 8では内蔵GPU性能の高さを背景に高スコアを稼いでいたAMD Aシリーズは、このテストでは残念な結果に終わっている。最新のA10-7870Kですらマルチスレッド処理性能はCore i3より下、シングルスレッド性能はCeleron G1840より厳しいスコアが出ている。コアの処理効率が今一つ振るわないBulldozerアーキテクチャの抱える弱点が露呈した形だ。

CINEBENCH R15による性能比較

 今回テストでもっとも優秀だったのはCore i7-5960Xだが、逆に遅さが実感できたのはAtom系の最新SoC「Braswell」を採用したCeleron N3150だ。CINEBENCHのスコアだけではなく、ウィンドウを開くような操作でも遅さを体感した。N3150は4コア4スレッドだが、コア数半分のPentiumにも負ける。プラットフォーム自体の価格(後述)は段違いに安いが、性能もそれなりなのだ。


内蔵GPU実力を評価する

内蔵GPU最強の座はBroadwell-Cへ

FF14の新ベンチマークソフト
DirectX 11対応になり、ベンチ実行時間も大幅に長くなった「蒼天のイシュガルド」準拠のベンチマーク。各シーンの読み出し待ち時間も集計されるなど、前バージョンよりもゲーミングPCとしてのパフォーマンスを評価するよう改善された
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 ここ数年のCPUは「内蔵GPUでも軽いゲームなら遊べる」という点もウリにしてきた。そこでここでは「3DMark」の“Fire Strike”および「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以降FF14ベンチ)の2本で描画性能を比較した。FF14ベンチは画質を“標準品質(ノートPC用)”に設定し、解像度を1,280×720ドットおよび1,920×1,080ドットに設定。内蔵GPUの設計が古いCore i7-2600Kを除き、DirectX 11モードで計測している。

 まず3DMarkのスコアに注目すると、Intel HD Graphics世代のスコア低迷とIris Pro Graphics 6200を内蔵するBroadwell-Cのスコアの高さが対照的だ。Broadwellでは内蔵GPUのEU(GPUのSPに相当するもの)数が増え、4次キャッシュとして128MBのeDRAMを搭載しているが、これが描画性能を著しく向上させているのだ。さきほどのPCMark 8では、Broadwell-CがCPUの動作クロックのハンデをGPU性能で挽回していたが、ここではGPU性能がより強調された形となった。

3DMark v1.5.915とファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマークによる性能比較

 次はゲームにおける現実的な負荷をかけるFF14ベンチでのスコアに目を向けよう。Haswell世代は画質を落とし1,280×720ドットでようやくプレイ可能なのに対し、Broadwell-Cは1,920×1,080ドットでも遊べる性能を確保。さらにCPUの負荷は少数のコア(2~4基)に集中するため、多コアCPUを使うメリットはあまりない。スコア首位はCore i7-5820KなどのLGA2011-v3勢だが、これはビデオカード(Radeon R7 250)の性能によるもの。内蔵GPUは強化されたが、いまだ低価格ミドルレンジGPUには勝てない。本格的ゲーミング環境を作るにはビデオカード必須というセオリーは健在だ。


動画エンコードRAW現像処理で比較

上位は安定のCore i7ファミリー、下位では意外な番狂わせも出現

MediaEspresso 7
QSVのほかにAMDやNVIDIAのエンコード支援機能にも対応する

 動画エンコードは「MediaEspresso 7」を使い、再生時間11分のAVCHD動画(H.264、1080p)をiPad2用MP4(H.264、720p)へ変換する時間を計測した。

 GPU支援のある状況では、QSVが使えるIntelのCPUが強い。Core i7-2600K/i7-4790K/i7-5775Cの3世代を比較すると、QSVありの変換では処理性能が世代を重ねるごとに速くになっている点に注目だ。CPUのみで変換するとコア数最多のCore i7-5960Xが最速となるが、クロックが低めのCore i7-5775Cがi7-4790を抜いて4番手に付けるなど、CPUの処理効率の高低も時間に影響している。

MediaEspresso 7による動画エンコード速度の比較
Lightroom CC 2015
今回のテストでは出力処理中に光沢紙向けシャープネスを追加(適用量は“標準”)した

 一方RAW現像は「Lightroom CC 2015」で100枚のRAW画像(16メガピクセル)から最高画質のJPEG画像に書き出す時間を計測した。RAW現像の上位グループはCINEBENCHのそれとほぼ一致するが、ここでは3世代前のCore i7-2600Kが健闘しているのに驚かされる。さらに下位グループではCorei5-4460のほうがPentium G3258より遅いという番狂わせも見られた。処理中にi5-4460のクロックが3.14 ~ 3.17GHzの間で細かく変動するのに対し、Pentiumはほぼ3.2GHzに貼り付くためである。負荷が中途半端に高いとCPUの省電力機能がマイナス側に働くケースもあるのだ。

Lightroom CC 2015によるRAW現像処理速度の比較

コストワットパフォーマンスを比較

AシリーズやCeleronなどの低価格勢の優位性が見られた

 最高のCPUを望めばその分出費もランニングコスト(消費電力)も増える。そこでコストパフォーマンスとワットパフォーマンスの両側面を比較してみたい。

 今回は算出基準として最初に掲載したPCMark 8のスコアをパフォーマンスの数値とし、ベンチマーク環境で使ったCPU+マザー+メモリ(メモリ価格のみ同規格の定番品を想定)と、高負荷時の消費電力をそれぞれ「コスト」と「ワット」として採用した。コストパフォーマンスは「コスト÷PCMark 8スコア」で“スコア1ポイントにかかる費用”を、ワットパフォーマンスは「PCMark 8スコア÷ワット」で“1Wあたりのスコア”を求めた。

 まずコストパフォーマンスは上位3製品はすべてマザーボードの安いAシリーズが占め、4万円以上の高額モデルの多いCore i7系は全体的に苦しい。Core i7-5775Cは最高スコアを叩き出したものの、実売5万円以上という値段が災いしてi7-4790Kより下という評価になっている。マザーボードの価格をLGA1150とFM2+で統一(1万8,000円想定)するとトップはCeleron G1840になるが、それでもAシリーズはCore i5よりもコストパフォーマンスで優位に立つことは変わりがない。

 ワットパフォーマンスでは、TDP 6WのCeleron N3150が大差で1位。G3258やG8140はBroadwell-Cと同レベルで、Broadwell-Cの電力効率の優秀さが分かる。逆にAシリーズは順位を落としている。A10-7870KはPCMark 8では一部のCore i7に並ぶスコアだったが、消費電力換算では下位のA8やA6に大きく差を付けられた。Aシリーズの持ち味を活かすという意味では、A8-7600のバランスのよさが光る。

コスト&ワットパフォーマンスを比較
【コストパフォーマンス計算時のパーツ価格】各CPUの実売価格に加え、LGA2011-v3環境:マザーボード40,000円(ASUSTeK X99-PRO)+メモリ40,000円(Micron Crucial CT4K4G4DFS8213)、LGA1150環境:マザーボード22,000円(ASUSTeK Z97-A/USB 3.1)+メモリ7,000円(Patriot Memory PSD38G1600KH)、Celeron N3150環境:マザーボード12,000円(ASRock N3150B-ITX)+メモリ7,000円(Team Group TSD3L8G1600C11DC)※ Celeron N3150はマザーボードにオンボード搭載のためCPUの価格は加算せず、FM2+環境:マザーボード10,000円(ASUSTeK A88XM-A)+メモリ7,000円(Patriot Memory PSD38G1600KH)

【各項目共通検証環境】

マザーボード:ASUSTeK X99-PRO(Intel X99)、ASUSTeK Z97-A/USB 3.1(Intel Z97)、ASRock N3150B-ITX(Celeron N3150)、ASUSTeK A88XM-A(AMD A88X)、メモリ:Micron Crucial CT4G4DFS8213×4(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×4)、Patriot Memory PSD38G1600KH(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、Team Group TSD3L8G1600C11DC(PC3L-12800 DDR3L SO-DIMM 4GB×2)、ビデオカード:ASUSTeK R7250-1GD5(AMD Radeon R7 250)、SSD:Micron Crucial BX100 CT250BX100SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、250GB)、電源:玄人志向 KRPW-PB500W/85+(500W)、OS:Windows8.1 Pro Update 64bit版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLYを10分動作させたときの最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO


[Text by 加藤勝明]


DOS/V POWER REPORT 2015年8月号は2015年6月29日(月)発売】

★第1特集「勢力図一変!? 最新CPUはこう使え!」
★第2特集「自作ユーザー志向別 冷却・静音チューンナップ指南」
★特別企画「超小型ARMコンピュータ Raspberry Pi最前線」「最新外付けドライブケース 40選」「絶対加入しておきたい動画配信サービス」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 特別付録小冊子「最新 パソコン略語辞典 2015」「30 代以上のためのネットスラング辞典」(紙版のみ別途付録、電子版では本誌末尾に収録)
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
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(AKIBA PC Hotline!編集部)