パワレポ連動企画

PCパーツ100選 2015(5)

~PCケース部門~

DOS/V POWER REPORT 2015年2月号

 このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌2015年2月号の特集記事「PCパーツ100選 2015」をほぼまるごと掲載する。

 特集記事では、2014年を代表するPCパーツを集め、「CPU」、「マザーボード」、「ビデオカード」、「ストレージ」、「PCケース」、「電源」、「CPUクーラー」、「そのほか」の8ジャンルの主要製品をランク付けし解説する。

 第5回目の今回は「PCケース」編。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年2月号は、絶賛発売中。2月号では今回の特集のほか、USB/LAN/クラウドを活用したファイルバックアップ術や、スマートフォンやタブレットの充電に便利なUSB電源タップ 28製品の紹介、髙橋敏也氏による改造バカ一代など、多数の記事が載っている。また、特別付録として「保存版 PC自作スタートブック 2015」と「PC自作手帳 2015」が付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。


- DOS/V POWER REPORT 2015年2月号 Special Edition -
辛口格付け&怒濤のレビューで最高のCPUパーツが全て分かる PCパーツ100選 2015


バランス型優勢、Mini-ITXは大型化がさらに進む
-PCケース部門-

 昨年は、組み込むパーツの構成に合わせて性格を変更できる「バランス型」が市場で大きな支持を得た。この傾向はしばらく変わらないだろうが、Define R5が大幅に進歩させた「内部構造の自由化」というテーマを、各社がどうとらえるか注目したい。

バランス型の人気は変わらず、5インチベイへのアプローチに注目

2014年の主な出来事

 使いやすさと構成の自由度で高い支持を得ているのが「バランス型ケース」だ。基本は静音志向だが、簡単に冷却性能を向上させることもできるという万能タイプのケースである。価格比較サイトでも、多くのバランス型ケースが上位にランクインしており、執筆者個人のランキングでもバランス型が多く上位に入っていた。このトレンドはしばらく続くだろう。

 重要性が低下した5インチベイに、積極的に切り込むケースの登場にも注目だ。これまでにも小型ケースでは5インチベイを搭載しない製品はあったが、これがタワータイプのATXケースにまで波及してきている。Fractal Designの「Define R5」は、5インチベイを外すことで内部構造を自由に変更できるようになった。また、SilverStoneの「RAVEN 5」は5インチベイはスリムタイプのみ。さらにNXZTの「H440」は、5インチベイそのものをなくし、冷却性能を強化している。

 Mini-ITX対応ケースでは、ゲーミングPC向けの大型モデルがさらに増えた。レイアウトも洗練され、従来の泣きどころであった組み込みにくさもずいぶんと改善されている。ただし、こうしたゲームPC用ケースは、サイズ的にはmicroATX対応のミニタワーケースとほとんど変わらないこともある。従来のMini-ITX対応PCケースサイズのイメージで選ぶと、置き場所に困ることもある点に注意しよう。

[Text by 竹内亮介]

【注目すべきポイントはココだ!】

バランス型PCケースは多くのユーザーにオススメ
組み込むパーツに合わせて性格を変更できるバランス型は、構成に迷うユーザーにとっても強い味方になる。各社ともに力の入った製品を投入しており、その多くが高い人気を獲得している
シャドーベイ脱着機能の定着、内部レイアウトはさらに自由に
3.5インチシャドーベイをユニット化し、ビデオカード用のスペースを広げられる機能は一般的になった。さらに5インチベイも脱着可能にして、内部構造を自由に変更できるユニークなモデルも登場
大型Mini-ITXケースは置き場所に注意したい
大型のCPUクーラーやビデオカードを組み込めるMini-ITX対応PCケースが増えた。こうしたケースは内部も広いので、組み込み作業がしやすい。ただし置き場所にはそれなりのスペースが必要だ

PCパーツ100選 2015 PCケース部門 製品解説

Fractal Design Define R5(実売価格:16,000円前後)
【ベイを外して移動可能、自由度の高さが魅力】

バランス型の頂点再び>
内部構造を大幅に自由化
ATX / 静音志向 / 裏面配線
内部の様子

 基本は静音性重視だが、各所にファンを増設して冷却性能を向上できる「バランス型」の頂点を極めた「Define R4」の後継モデル。

 最大の特徴は、5インチベイやシャドーベイを取り外し、内部レイアウトをある程度自由に変更できるようにしたことだ。ベイをすべて外して、複数の大型ビデオカードや水冷クーラー用大型ラジエータを組み込むのもよいし、シャドーベイの位置を移動し、ファンの風がビデオカードなど熱源の近くに届きやすくするなどの工夫をしてもよい。一般的なミドルタワーケースで、ここまで自由度の高い製品は見当たらない。

 CPUクーラーの位置に合わせて背面ファンの位置をスライドして移動できる機能、底面の防塵フィルタを前面から取り出して清掃できる機能など、R4で不満だった部分についても細かく改良が加えられている。R4と同様、今後数年は頂点に君臨するであろう1台と言える

【DOS/V POWER REPORT編集長のひとこと】

・自由度の高さを理解した上で活かしてほしい

Defineシリーズは、PCケース自体の構成の自由度を大幅に高め、より自由な発想でPCを作ることができる点が最大のメリットです。Fractal Designはこの点を強く意識しているのでしょう。最新作のR5ではさらに自由度を高める方向に進んでいます。これは今や、ケース業界全体の流れとなり、付いてくることができなかったメーカーは存在感が薄くなってしまったほどです。

主な特徴
5インチベイも取り外せる
5インチベイまで外せるようになった。これにより水冷用のラジエータを天板、前面、底面の各所に装着できるなど、レイアウトの自由度が大幅に上がった
ヒンジを付け換えて両開きに対応
前面扉のヒンジを付け換えることにより、開く方向を変更できるようになった。R4の数少ない弱点を克服している
裏面配線用のスペースが広い
マザーボードベース裏側下部のスペースが広がったことで、裏面配線がさらにやりやすくなった
動作音と各部の温度

【Specification】

規格:ATX●カラー:ブラック、ホワイト、チタニウム●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5/2.5インチシャドー×8、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm 角×1と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×3(天板)、14/12cm角×2(底面)、14/12cm角×1(側面)●本体サイズ(W × D × H):232×521×451mm ●重量:11.2kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4.0GHz)、マザーボード:ASUSTeK Computer H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD 販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Samsung SSD 840 EVO MZ-7TE250B/IT(Serial ATA 3.0、TLC、250GB)、電源:Enermax Platimax EPM600AWT(600W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、室温:21.9℃、暗騒音:32.2dB、動作音測定距離:ケース正面から20cm、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLY テストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:CPUはHWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、GPUはHWMonitor 1.26のTemperatures

Lian Li Industrial PC-Q33(実売価格:14,000円前後)
【組みやすさ抜群の傑作小型ケース】

上部のエリアにフレームなし
大型CPUクーラーの設置もOK
Mini-ITX / 冷却志向
内部の様子

 小型でスタイリッシュなMini-ITX対応PCケースにチャレンジしたいと思っても、小型であるが故の組み立てにくさや、パーツ選択の難かしさから躊躇しているというユーザーにオススメしたいのが、このPC-Q33だ。

 背面の手回しネジを二個外すと、天板と一体化した前面パネルが前面側に大きく開くのが特徴。内部はマザーボードベースで上下に仕切られており、マザーボードやビデオカードを組み込む上部のエリアは、ほぼ障害物のない状態で組み込み作業が行なえる。

 また、マザーボードベースから天板までのスペースも大きく、高さ18cmまでのCPUクーラーに対応するほか、背面ファンを外せば簡易水冷型PCUクーラーのラジエータを装着することも可能だ。

 小型PCケース特有の組みにくさにおびえる初心者から、高性能な小型PCを組みたい上級者まで、あらゆるユーザーの要望に応えられる。Mini-ITX対応PCケースの決定版と言えるぐらいの傑作モデルだ。

【DOS/V POWER REPORT編集長のひとこと】

・高いメンテナンス性を実現する構造の先進性に注目

2014年のAAAランクから、最上位のSランクに昇格しました。現在のMini-ITXケースに求められる大きな要素は、パーツ選択の自由度、冷却性能、メンテナンス性です。そのすべてを高いレベルで実現しているPC-Q33は、小型PC自作の人気が高まる中、より市場にマッチした存在になったと言えるでしょう。

主な特徴
前面と天板が大きく開き、障害物が少なく組みやすい
前面と天板は一体化しており、大きく前面側に開く構造になっている。マザーボードベース周辺にはフレームがなく、ケーブル接続などが容易に行なえる
構成の自由度が非常に高い
高さ18cmまでの大型CPUクーラーや、長さ22cmまでの2スロット占有タイプのビデオカードを装着できる
背面にラジエータを組み込める
水冷用のパイプを通すための穴とファンマウンタの間に切り欠きがあり、簡易水冷クーラーの外付け設置も可能だ
動作音と各部の温度

【Specification】

規格:Mini-ITX●カラー:ブラック、シルバー●付属電源:なし●ベイ:3.5インチシャドー×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:なし●本体サイズ(W × D × H):229×240×328mm ●重量:2.18kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4.0GHz)、マザーボード:ASUSTeK H97I-PLUS(Intel H97)、メモリ:CFD 販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ZOTAC GeForce GTX760 2GB DDR5 TwinCooler ZT-70405-10P(NVIDIA GeForce GTX 760)、SSD:Samsung SSD 840 EVO MZ-7TE250B/IT(Serial ATA 3.0、TLC、250GB)、電源:Enermax Platimax EPM600AWT(600W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、室温:21.9℃、暗騒音:32.2dB、動作音測定距離:ケース正面から20cm、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLY テストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:CPUはHWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、GPUはHWMonitor 1.26のTemperatures

NZXT H440(実売価格:15,000円前後)
【5インチベイを完全排除した新機軸ケース】

ベースは冷却性能重視だが静音性重視にも対応できる
ATX / 冷却志向 / 裏面配線
内部の様子

 5インチベイを搭載せず、代わりに前面に3基の12cm角ファンを搭載するという冷却重視型のPCケースだ。昨今では主に光学ドライブを組み込むための5インチベイは重要性が相対的に低下してはいるものの、思い切った設計である。

 5インチベイがないため、ベイはトレイ式の3.5/2.5インチシャドーだけを装備。さらにトレイの隙間が大きく空いており、前面ファンの風を遮らず、CPUクーラーやビデオカード周辺に届ける工夫もなされている。

 基本的な構造は冷却重視だが、筐体自体は密閉型で、さらにサイドパネルには防音材も貼られている。ファンの回転数を調整すれば動作音をかなり抑えることも可能で、「冷却重視型から派生したバランス型」とも言えるユニークな製品である。

【選定理由】

・5インチベイよりもファンの数を重視
・ATXケースの新しいスタイルを示す

主な特徴
ファンのコネクタは接続済み
マザーボード背面に合計10基までのファンを接続できるコネクタを装備する。標準装備のファンはすべてここに接続済み
サイドパネルには防音材が貼られている
冷却重視型としてはめずらしく、サイドパネルには内部からの音漏れを防ぐ防音材が貼られている
バックパネル付近にLEDランプを搭載
背面のスイッチを押すと、バックパネル近くにある2基のLEDランプが光る。暗い場所でもケーブル接続をしやすくする工夫だ
圧倒的な吸気量を確保
各部の温度
前面に搭載する3基の12cm角ファンは圧巻の一言。サーバーケース並みの装備であり、実際の冷却性能も高い

【Specification】

規格:ATX●カラー:マットブラックアンドグロスレッド、グロッシーホワイト●付属電源:なし●ベイ:3.5/2.5インチシャドー×6、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×3(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14cm角×2(前面、12cm角×3と排他)、12cm角×1( 背面、14cm角×1と排他)、14cm角×2 / 12cm角×3(天板)●本体サイズ(W × D × H):220×475.3×510mm ●重量:9.75kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4.0GHz)、マザーボード:ASUSTeK Computer H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD 販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Samsung SSD 840 EVO MZ-7TE250B/IT(Serial ATA 3.0、TLC、250GB)、電源:Enermax Platimax EPM600AWT(600W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、室温:21.9℃、暗騒音:32.2dB、動作音測定距離:ケース正面から20cm、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLY テストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:CPUはHWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、GPUはHWMonitor 1.26のTemperatures

Antec P100(実売価格:10,000円前後)
【要所を押さえ低価格、コスパに優れたバランス型】

Antec伝統の静音性重視ケース、初心者への配慮がうれしい
ATX / 静音志向 / 裏面配線
内部の様子

 AntecのPシリーズは、伝統的に静音性重視で設計されている。このP100もその流れをくむ1台だが、最近のトレンドを踏まえて天板にカバーで覆われたファンマウンタを搭載するなど、バランス型の特性も取り入れている。Antec伝統の頑強なフレーム、比較的低価格ということもあり、登場当初から価格比較サイトの売れ筋上位にランクインし続けているロングセラーだ。

 内部は広く、パーツ選択の自由度は高い。裏面配線用のスペースは2cmと広く、太い電源ケーブルをいいかげんに配線しても、右側板が閉じられなくなるようなことはない。光学ドライブや3.5インチHDDはネジ止めなしで固定できる。また汚れやすい防塵フィルタは、ツメを外せば手前に外れるので、簡単に清掃できる。組み立てやメンテナンスに慣れていない、初心者への配慮が光る1台だ。

【選定理由】

・バランス型としての完成度が高い
・ハデさはないがAntecらしい信頼感

主な特徴
すっきりとしたデザイン
ハデさはないものの、シンプルですっきりとしたデザイン。インターフェースは前面に配置されているので、机の上に設置する場合に使いやすい
シャドーベイは3.5/2.5インチ両対応
前面側に装備するシャドーベイは1基ごとに取り出せるトレイ式。3.5インチHDDと2.5インチSSDの両方に対応する
天板には2基の大型ファンを搭載可能
天板のカバーを外すことで、2基の14/12cm角ファンや、簡易水冷CPUクーラーを搭載できるようになる
各パネルには吸音材が貼られている
バランス型ケースらしく、前面扉やサイドパネル、天板のファンマウンタには吸音材が貼られており、静音性の向上が図られている。サイドパネルにはファンマウンタを搭載せず、冷却性能よりも静音性が重視された作りとなっている
動作音と各部の温度

【Specification】

規格:ATX●カラー:ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5/2.5インチシャドー×7●標準搭載ファン:12cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、14cm角×1(前面、12cm角×1と排他)、14/12cm角×2(天板)●本体サイズ(W ×D × H):220×523×484mm●重量:約7.3kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i5-4670K(3.4GHz)、マザーボード:ASRock Z87 Extreme4(Intel Z87)、メモリ:Team Group TED38192M1600C11DC-AS(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:ASUSTeK R9270X-DC2T-2GD5(AMD Radeon R9 270X)、SSD:Samsung 840 EVO MZ-7TE250B/IT(Serial ATA 3.0、TLC、250GB)、電源:Corsair Components RM650(650W、80 PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、室温:24℃、暗騒音:30dB前後、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:CPUはOCCT 4.4.0 CPU:OCCT 実行10分後の値、GPUはトゥームレイダーのベンチマークモードをUltimate設定で実行して10分後の値、各部の温度:CPUはHWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、GPUはGPU-Z 0.7.5のGPU Temperature、動作音測定距離:前面/左側/右側から約15cm

Fractal Design Node 804(実売価格:13,000円前後)
【最大10基のファンを搭載可能、小型ながら冷却拡張性は十分】

Fractal Designらしいデザイン、内部を分けたユニークな構造
microATX 冷却志向
内部の様子

 Fractal Designらしい、シンプルながらも美しいデザインを採用したmicroATX対応のキューブタイプケース。最大の特徴は、前面や天板、背面に合計10基ものファンや、大型の水冷用ラジエータまでも組み込めるという冷却拡張性である。場所を取る5インチベイを搭載せず、その分のスペースをファンやシャドーベイの設置スペースに転換した形だ。

 内部はマザーボードベースで左右に仕切られている。マザーボードやビデオカードなどのメインパーツは左、電源ユニットやストレージなどは右のエリアに組み込む。構造的にCPUクーラーやビデオカードへの干渉が発生しにくく組み込みやすいほか、前から後ろへ一直線のエアフローを作れるため、冷却効率にもよい影響を与える。発熱の大きなパーツも安心して運用できるのだ。

【選定理由】

・小型ケースの中ではバツグンのデザイン
・デュアルチャンバー構造で組みやすい

デュアルチャンバー構造で搭載パーツを分離
左の写真が電源ユニットやストレージなどを組み込むエリア、その反対側がマザーボードを組み込むためのエリアと、組み込むパーツを仕切ることにより、冷却効率を高めている。後ろ(右写真)から見るとちょうど半分くらいの位置で仕切られているのが分かる
標準でSilent Series R2を3基搭載
ファンコントローラを装備
フレームが黒く、羽根が白い同社の静音ファン「Silent Series R2」を採用している
合計3基までのファンを接続し、3段階で回転数を制御できるファンコントローラを搭載する
動作音

【Specification】

規格:microATX●カラー:ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチスリム×1、3.5インチシャドー×8、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×1(前面)、14cm角×1(背面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:12cm角×3(前面)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、14/12cm 角×4(天板)●本体サイズ(W × D× H):344×389×307mm●重量:6kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK H97M-E(Intel H97)、メモリ:Team Group TED38192M1600C11DC-AS(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:ASUSTeK R 9270X-DC2T-2GD5(AMD Radeon R9 270X)、SSD:Lite-On Plextor SSD M5 Pro PX-256M5P(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、電源:Antec EarthWatts EA-650 Platinum(650W、80PLUS Platinum)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、室温:27℃、暗騒音:30dB 前後、アイドル時:OS 起動5分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.0 CPU:OCCT 実行10分後の値、CPU温度:HWMonitor 1.25のCPU Temperatures のPackage、動作音測定距離:PCケースの側板およびベンチ台から約20cm

Corsair Components Carbide 330R Titanium Edition Silent Mid-Tower Case(実売価格:13,000円前後)
【大型マザーにも対応した低価格のバランス型】

内部が広く各種作業がしやすい、ファンコントロール機能も搭載
ExtendedATX / 静音志向 / 裏面配線
内部の様子

 Corsair ComponentsのCarbideブランドは、どちらかというと冷却重視型のPCケースが多い。しかし本機は、音漏れを防ぐ前面扉や密閉型の構造、カバーで隠された天板のファンマウンタなど、バランス型の特性を強く押し出す製品に仕上げられている。

 大型のExtendedATXマザーボードに対応しているため奥行きがあり、内部はかなり広い。天板スペースとマザーボード上端の隙間も広く、水冷ラジエータも固定しやすい。また、ビデオカード用のスペースも、45cm確保しているので、入らないカードはないだろう。このように内部にはかなりの余裕があり、組み立てや拡張作業、メンテナンスがやりやすいため、初心者にも向いている。

 3基のファンの回転数を3段階で調整できるファンコントロール機能も搭載しており、標準搭載の前面ファンと背面ファンを接続して最低回転数に設定すると、アイドル時の動作音は暗騒音以下まで下がった。

【選定理由】

・内部が広くて作業がしやすい
・ファンコン機能で静かな運用が可能

主な特徴
側板には防音材を装備
バランス型らしく側板には防音材が貼り付けてある。前面扉と同様、内部からの音漏れを防ぐための工夫で、その効果は大きい
天板にはファンを2基追加可能
通常はカバーで覆われている天板のファンマウンタには、14/12cm角ファンを2基、あるいは幅28cmクラスまでの水冷ラジエータを搭載可能
前面扉の開く方向を変更可能
ヒンジのパーツを付け換えることで、前面扉の開く方向を変更できる。置き場所に合わせてどちらに開くかを自分で設定できる
ファンコンで調整して静音化
動作音
スライドスイッチでファンの回転数を3段階で調整できるファンコントローラを、前面上部に装備する

【Specification】

規格:ExtendedATX●カラー:チタニウム●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×4●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×2(天板)●本体サイズ(W× D× H):210×495×484mm ●重量:約7.2kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4.0GHz)、マザーボード:ASUSTeK Computer H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD 販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Samsung SSD 840 EVO MZ-7TE250B/IT(Serial ATA 3.0、TLC、250GB)、電源:Enermax Platimax EPM600AWT(600W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、室温:21.9℃、暗騒音:32.2dB、動作音測定距離:ケース正面から20cm、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLY テストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:CPUはHWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、GPUはHWMonitor 1.26のTemperatures

SilverStone Technology RAVEN 5 SST-RV05(実売価格:18,000円前後)
【2基の大型ファンで圧倒的な冷却性能】

冷却効率を高める倒立配置大型マザーボードにも対応
CEB / 冷却志向 / 裏面配線
内部の様子

 大型ファンとユニークな内部構造を採用することで、ほかのミドルタワーケースとは一線を画す冷却性能を実現してきたRAVENシリーズ。本機はその最新モデルだ。

 冷却重視型のPCケースらしく、底面には2基の18cm角ファンを装備。ミドルタワーケースとしては異例のファン構成だ。また、マザーボードのバックパネルを上向きに設置する「倒立配置」構造により、底面ファンの風がCPUクーラーやビデオカード周辺に届きやすくなっている。ゲームPC用の高性能ビデオカードやハイエンドCPUを、効率よく冷却するのに有効だ。

 おもしろいのが、通常サイズの5インチベイを搭載しないこと。その代わりマザーボード用のスペースを広く取っており、ATXマザーボードよりも大型の、CEBマザーボードの組み込みが可能だ。

【選定理由】

・RAVENの伝統を受け継ぐ強力な冷却性能
・ミドルタワーサイズだが大型マザーにも対応

主な特徴
バックパネルを上向きにして設置
マザーボードはバックパネル部分を上向きにして設置する倒立配置を採用。これにより、とくにビデオカード搭載時の冷却効率の向上が図られている
防塵フィルタは手前から外せる
ホコリがたまりやすい底面ファンの防塵フィルタは、手前側から引っ張ることで簡単に外して清掃できる工夫で、その効果は大きい
ファンコントローラを搭載
底面の18cm角ファンはそれぞれ2段階で回転数を調整できる。動作音は大きめなので、負荷が低いときは低回転モードで運用したい
ケーブルは背面から引き出す仕様
バックパネルが上向きなので、各種ケーブルは背面のスリットから引き出す
迫力の18cm角ファン×2
各部の温度
底面には2基の18cm角ファンが組み込まれている。「High」設定のときはもちろん、「Low」設定でも高い冷却性能を発揮する

【Specification】

規格:CEB●カラー:ブラック+ウインドウ●付属電源:なし●ベイ:5インチスリム×1(スロットイン)、3.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:18cm角×2(底面)●追加搭載可能ファン:12cm角×1(天板)、12cm角×3 / 14cm角×2(底面、18cm角×2と排他)●本体サイズ(W × D × H):242×498×529mm●重量:約7.6kg

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK Z97-PRO(Intel Z97)、メモリ:Team Group TED38192M1600C11DC-AS(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、グラフィックス機能:Intel Core i7-4770K内蔵(Intel HD Graphics 4600)、SSD:Lite-On Plextor SSD M5 Pro PX-256M5P(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit版、室温:26℃、暗騒音:30dB前後、アイドル時:OS起動5分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.0 CPU:OCCT実行10分後の値、CPU温度:HWMonitor 1.24のCPU Temperatures のPackage、動作音測定距離:PCケースの側面およびベンチ台から約15cm

AeroCool Advanced Technologies DS Cube Window(実売価格:11,000円前後)

前面に20cm径ファン
冷却拡張性が高い
microATX / 静音志向

 合計9色のカラーバリエーションを用意したコンパクトなミニタワーケース。

 前面には20cm径の大型ファンを標準で搭載するほか、天板に28cmクラスの大型ラジエータを搭載できる。

【選定理由】

・長さ32cmのビデオカードに対応
・大型ファン搭載による冷却性能の高さ

【Specification】

規格:microATX●カラー:ブラック、ホワイト、ブラック/ホワイト、レッド、オレンジ、ゴールド、ピンク、グリーン、ブルー●付属電源:なし●ベイ:5インチ×1、3.5インチ×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:20cm 径×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面、20cm径×1と排他)、14/12cm角×1(天板)●本体サイズ(W× D× H):265×381×411mm●重量:6.6kg

Corsair Components Graphite 760T Full-Tower Windowed Case(実売価格:25,000円前後)

圧倒的な冷却性能とメンテナンス性に注目
XL-ATX / 冷却志向 / 裏面配線

 各所に14cm角ファンを搭載し、ハイエンドシステムも安心して運用できるフルタワーケース。

 側板は扉のような構造で、簡単に開いて内部にアクセスできる。

【選定理由】

・内部が広く作業しやすい
・多数のファンを標準で搭載

【Specification】

規格:XL-ATX●カラー:ブラック、ホワイト●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×6、2.5インチシャドー×4●標準搭載ファン:14cm角×2(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:12cm角×2(前面、14cm角×2と排他)、12cm角×1(背面、14cm角と排他)、14/12cm角×3(天板)、12cm角×1(底面)●本体サイズ(W × D × H):246×564×568mm●重量:約10kg

Corsair Components Obsidian 250D Mini ITX PC Case(実売価格:12,000円前後)

大型ビデオカードも
余裕で装着できる
Mini-ITX / 冷却志向

 長さ29cmまでの大型ビデオカードが装着できるキューブタイプケースだ。

 天板や側面など各所にファンを増設し、冷却性能を高めやすい。内部が広いので、組み込みやメンテナンスもラク。

【選定理由】

・小型ゲーミングPC向きの装備と機能
・内部スペースが広く作業をやりやすい

【Specification】

規格:Mini-ITX●カラー:ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチ×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(側面)●追加搭載可能ファン:20cm径/12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、8cm角×2(背面)、12cm角×1(側面)●本体サイズ(W× D× H):277×351×290mm●重量:約4.3kg

In Win Development D-Frame mini(実売価格:36,000円前後)

インパクト抜群の
フレームケース
Mini-ITX / 冷却志向

 アルミパイプと強化ガラスのみで構成するユニーク過ぎる小型ケースだ。

 フレームの隙間から外気をたっぷりと取り込めるので、冷却性能が高い。フレームを取っ手にして持ち歩くことも可能。

【選定理由】

・フレームで構成されたユニークな筐体
・冷却性能の高さ

【Specification】

規格:Mini-ITX●カラー:オレンジ、レッド、ブラック●付属電源:なし●ベイ:3.5/2.5インチシャドー×3、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:なし●追加搭載可能ファン:12cm角×2(底面)●本体サイズ:(W×D×H):230×501×405mm●重量:5.52kg

JONSBO SHENZEN TECHNOLOGY U2(実売価格:8,000円前後)

大型クーラーにも
対応する小型ケース
Mini-ITX / 静音志向

 高さは27.5cmと小柄ながら、電源ユニットの位置を工夫することで高さ17cmまでのCPUクーラーを装着できるキューブタイプケース。

 背面の12cm角ファンは3段階で回転数を調整可能。

【選定理由】

・パーツ選択の自由度が高い
・Mini-ITXならではの小型サイズ

【Specification】

規格:Mini-ITX●カラー:ブラック、シルバー、レッド●付属電源:なし●ベイ:3.5インチシャドー×1、3.5/2.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×1●標準搭載ファン:12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:12cm角×1(前面、3.5インチシャドー×1と排他)●本体サイズ:(W × D × H):208×233×319mm●重量:約2kg

Phanteks Enthoo Primo Ultimate Chassis(実売価格:37,000円前後)

水冷パーツを内蔵可能、究極の水冷対応ケース
EEB / 冷却志向 / 裏面配線

 ラジエータやポンプ、リザーブタンクなど本格水冷用のパーツを「内蔵」できる水冷特化型のフルタワーケース。

 ハイエンド構成に備え、2基のATX電源を内蔵できることも特徴。

【選定理由】

・本格的な水冷に挑戦できる
・ウルトラハイエンド構成にも楽々対応

SHARKOON Technologies SHA-BD28(実売価格:9,000円前後)

冷却性能重視の
低価格ケース
ATX / 冷却志向 / 裏面配線

 天板や前面にメッシュ構造を採用し、12cm角ファンを2基装備する低価格な冷却重視型PCケース。天板には最大18cm角の大型ファンを増設できる。

 3色のカラーバリエーションが用意されている。

【選定理由】

・低価格ながら冷却性能が高い
・カラーバリエーションが豊富

SilverStone Technology RAVEN RVZ01(実売価格:12,000円前後)

ブックサイズながら
大型ビデオカードに対応
Mini-ITX / 冷却志向

 ぱっと見は薄型のブックサイズケースだが、何と約33cmの大型ビデオカードが組み込めるゲームPC向きのMini-ITXケースだ。

 天板や底面に12cm角の大型ファンを搭載し、冷却性能も高い。

【選定理由】

・薄型ながら大型ビデオカードを搭載可能
・このサイズで冷却志向の製品は希少



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(AKIBA PC Hotline!編集部)