パワレポ連動企画

CPUのオーバークロックやCステートに関するテクニック

【自作PCチューニング技術大全100(2)】

DOS/V POWER REPORT 2016年4月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年4月号」の第1特集「もう一手間、一工夫でアナタのPCがグッと使いやすく快適に!! 自作PCチューニング技術大全100」を掲載する。

 ちょっとしたことで自作PCの使い勝手が良くなる工夫を解説していく今特集の第2回は、CPUの電源設定や、水冷ラジエータの設置場所やグリスの変更による冷却効率の変化について解説する。

 本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年4月号は全国書店、ネット通販にて2月29日(月)に発売。第1特集のほか、第2特集は最新OSの現在の姿を解説する「リリース時とはもう違う。現在形、分かってる? Windows 10知っておきたい10のこと。」、まずはデータ保存から始めよう、低コストで導入できるモデルを紹介「転ばぬ先のバックアップ! 1万円台で買えるお手頃NASキット」、マルチディスプレイやライトゲームに、内蔵GPUからのパワーアップを目指す「チョイ足しアップグレードで効果大! 格安ビデオカードセレクション」、外出先でも2画面で!「いつでもどこでも手軽に使える モバイル液晶ディスプレイ大集合」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は「小型PC向けパーツ大百科」。メインマシンもサブマシンもコンパクトにまとめる時代です!


-自作PCチューニング技術大全100-
電圧調整や冷却効率に関するテクニック~CPU編 その2~


チューンナップして性能を引き出そう
CPU編

 最近のCPUはさまざまな機能が搭載されており、UEFIセットアップなどの設定によって性能や電力効率をさらに引き出す余地が残されている。

 ここではCPUのチューニングテクニックとともに、CPUの性能に大きく影響するCPUクーラーの使いこなし技を紹介しよう。

4. 電源リミッターを解除する   難易度★★★

UEFIセットアップで設定
各種電力制限値の設定はUEFIセットアップで行なうことができる

 IntelのTurbo Boostは、電力、電流、温度を監視し、一定の基準範囲内でTurbo動作する。逆に言えば、いずれかの状態が一定の基準値(リミット)を超えるとTurbo状態は継続しない。この電力や電流の基準は通常CPUのTDPによって決まっているが、OCをする際は(冷却やCPUの耐性が十分であっても)これが原因でOCが成功しなかったり、性能が向上しなかったりすることがある。OCの際はUEFIセットアップで基準値を上限まで引き上げておくのがセオリーだ。製品によっては最初から基準が緩い、OC設定と連動して自動で緩くされることもあるが、手動で設定しておくのが確実だろう。

 また、Turbo Boost関連以外の機能にもこうした電力/電流リミッター的項目があり、こちらもOC向けとされる設定が存在する。ここではASUSTeKのZ170-PROの設定例を掲載しておく。

 この例はあくまでもOCポテンシャルを上げるための設定なので、OCの目的(常用するなど)や冷却状態によっては必ずしも最適とは限らない点に注意してほしい。

リミッター解除設定例(ASUSTeK Z170-PRO)

5. LLCで省電力OCする   難易度★★

 LLC(Load Line Calibration)は、高負荷時にVRMから供給される電圧が降下しないよう調整する機能だ。製品によってレベルがいくつかあり、段階的に設定できる。高負荷時の電圧降下を防ぐことは、高負荷時のみ電圧を上昇させることと実質的に同じ効果があり、OC状態での高負荷時の安定性の向上にも寄与する。また、低負荷時の電圧には影響が少ないために、OC状態でのアイドル時の電力を削減することもできる。

設定には注意が必要
UEFIのデフォルトではセーフティな設定になっている。AutoではなくEnabledや一番深い(数字が大きい)ステートを指定する
UEFIセットアップでLLCのレベルを変更すると、高負荷時の電圧降下幅を減らすことができる

 実際にLLC設定による違いを示したのが下のグラフだ。自動設定(Level 5)では高負荷時の安定性が悪かったが、Level 4以下では安定した。しかし、高負荷時の消費電力はかなり大きくなるので注意して使いたい。

 ちなみに、Haswell世代以降から電圧調整の方法として、OC状態時のみ電圧を上昇させる「Adaptive Mode」設定機能を持つ製品があるが、Skylakeではうまく機能しない例が多い(FIVR廃止の影響と思われる)ので注意したい。

LCCレベルによる消費電力の違い(ASUSTeK Z170-PRO)

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)
メモリ:CFD販売 CFD-Panram W4U2133PS-8G(PC4-17000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
SSD:Samsung 840 PRO MZ-7PD256B/IT(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)
ビデオカード:ASUSTeK GTX750TI-PH-2GD5(NVIDIA GeForce GTX 750 TI)
電源ユニット:Sea Sonic Xseries XP2 SS-660XP ATX Power Supply(660W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
アイドル時:CINEBENCH終了5分後の値
高負荷時:CINEBENCH R15(CPU)実行中の最大値
電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

6. 水冷ラジエータの設置位置の最適化   難易度★★

テストに使用した簡易水冷クーラー
Enermax Technology
ELC-LMR240-BS
実売価格:23,000円前後

12cm角ファンを2基搭載する24cmクラスのモデル。350W以上のTDPに対応する強力な冷却性能がウリ

 最近のATXケースは冷却拡張性が高く、水冷ラジエータを天板だけでなく前面にも装着できる製品がある。性能や静音性は天板と前面ではどちらがよいのか、また、前面に搭載するとなるとラジエータのファンの向きはどちらがよいのか気になるところだ。

 ここでは定番のDefine R5を使用して検証を行なった。システムはビデオカードを搭載してそれなりに発熱がある構成にしている。

ラジエータの設置場所による動作音と温度の変化
総合的には天板がベターか
CPUの冷却では前面が有利だが、静音性も加味すると、特に事情がなければ素直に天板配置がよさそうだ

 結果はご覧のとおりだ。冷却性能に関しては、意外なことにCPU温度はファンの向きにかかわらずラジエータを前面に搭載したほうがはっきりとよい。ファンの周辺温度が前面のほうが低いためだろうか。GPUの温度は天板搭載のほうが低いがCPUほど差はない。

 一方、静音性はどうか。前面ドアがあって遮音性も高いケースだが、ラジエータのファンは高負荷時に回転数が上がるため、前面にあるとやはり不利で体感でも分かる。

 総合的に考えると、サイズの問題など、とくに前面にしか配置できない事情がなければ素直に天板配置がよさそうではある。

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)
マザーボード:ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)
メモリ:CFD販売 CFD-Panram W4U2133PS-8G(PC4-17000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
SSD:Samsung 840 PRO MZ-7PD256B/IT(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)
ビデオカード:ASUSTeK STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5(NVIDIA GeForce GTX 970)
電源ユニット:Corsair CX600M(600W、80PLUS Bronze)
CPUクーラー:Enermax ELC-LMR240-BS
OS:Windows 10 Pro 64bit版
室温:17℃
暗騒音:30dB以下
アイドル時:OS起動10分後の値
高負荷時:3DMark ーFire Strike(Physics除く)を20分間ループ時の最大値
各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.28で、CPUはCPU Temperatures のPackage、GPUはTemperaturesの値
動作音測定距離:PCケース前面に向かって左端から45°の角度で5.5cm
騒音計:FUSO SD-2200、ラジエータのファンはサイレントモード(最大1,200rpm)
ラジエータ含むすべてのファンをFan Xpert 3(標準)で制御

7. グリスを変更して冷却効率を改善する   難易度★★

 CPUの冷却効率改善の手軽なアプローチとして、TIM(Thermal Interface Material)、いわゆるCPUグリスの変更という方法がある。CPUグリスはクーラーと、CPUの接触面の微細な隙間を埋めて密着させ、CPUの熱をCPUクーラーに伝えやすくするためのもので、理論上はCPUグリスの熱伝導率が高いほど冷却性能が向上する。

テストに使用したグリス
GELID Solutions
GC-2
実売価格:1,000円前後

GELIDの普及タイプのCPUグリス。容量は7g。熱伝導率は非公開
thermal grizzly
TG-K-001-RS
実売価格:1,500円前後

オーバークロッカーに人気の高性能品。容量は1g。公称熱伝導率は12.5W/m・K
アイネックス
akasa AK-450-SS
実売価格:700円前後

高熱伝導率のシルバーグリス。容量は1.5g。公称熱伝導率は9.24W/m・℃
グリスの違いによる温度の変化

 CPUグリスはさまざまな製品が市販されているが、ここでは定評のある3製品をピックアップ、その性能を比較してみた。もっとも結果がよかったのはTG-K-001-RSだ。オーバークロッカーの推奨品で12.5W/m・Kのスペックもダテではないと言える。

 公称熱伝導率9.24W/m・℃のAK-450-SSは、GC-2(熱伝導率非公開)と同じ結果で、クーラー付属品よりもOC時で1℃低かった。差が微妙な気もするが、ヒートシンクの性能がよりよい高価なCPUクーラーであればまた違った結果も考えられるだろう。

 低価格~中堅クーラーの強化策としては地味だが、グリスは経年劣化するため、付属品を長期間使っているなら検討してみるのもよいだろう。

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-6700K(4GHz)を4.4GHz(100MHz×44)で動作
マザーボード:ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)
メモリ:Micron Crucial CT4K4G4DFS8213(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)
SSD:Samsung 840 PRO MZ-7PD256B/IT(Serial ATA 3.0、MLC、256GB)
ビデオカード:ASUSTeK STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5(NVIDIA GeForce GTX 970)
電源ユニット:Sea Sonic Xseries XP2 SS-660XP ATX Power Supply(660W、80PLUS Platinum)
CPUクーラー:サイズ 虎徹
OS:Windows 10 Pro 64bit版
室温:17℃
暗騒音:30dB以下
アイドル時:OCCT CPU LINPACK終了5分後の値
高負荷時:OCCT 4.4.1 CPU LINPACKを15分間動作させたときの最大値
各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.28で、CPUはCPU Temperatures のPackage、GPUはTemperaturesの値
ファン設定:Fan Xpert 3(フルスピード)

[Text by 鈴木雅暢]


DOS/V POWER REPORT 2016年4月号は2月29日(月)発売】

★第1特集「もう一手間、一工夫でアナタのPCがグッと使いやすく快適に!! 自作PCチューニング技術大全100」
★第2特集「リリース時とはもう違う。現在形、分かってる? Windows 10知っておきたい10のこと。」
★特別企画「転ばぬ先のバックアップ! 1万円台で買えるお手頃NASキット」「チョイ足しアップグレードで効果大! 格安ビデオカードセレクション」「いつでもどこでも手軽に使える モバイル液晶ディスプレイ大集合」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」
★ 特別付録「メインマシンもサブマシンもコンパクトにまとめる時代です! 小型PC向けパーツ大百科」(雑誌のみ別途付録、電子版では本誌巻末に収録)

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(AKIBA PC Hotline!編集部)