買ってみたらこうだった!

Core i7-6700Kの常用最高クロックを探る、殻割り個体で限界に挑戦

text by 瀬文茶

 どーも、最近は殻割り芸人みたいになっている瀬文茶です。今回は、先日殻割りしたIntel Core i7-6700Kをオーバークロックしてみた結果をご紹介します。

 CPUのオーバークロック耐性はCPU毎に異なる上、通常のCPUよりも低い温度での動作が可能な殻割り済みCPUでのオーバークロック結果なので、Core i7-6700Kの全てで同じ結果が得られる訳ではありません。あらかじめご了承ください。

 また、殻割り・オーバークロックともにメーカー保証外の行為となるので、その点もご注意ください。

まずは個体の耐性を簡単にテスト、CHINEBENCH R15が完走する最高クロックを確認

 さて、まずは筆者のCore i7-6700Kがどの程度のオーバークロック耐性を持っているのか、ざっくりとチェックしていきます。

 チェック方法は、定番ベンチマークテストCHINEBENCH R15の完走を基準に、CPU倍率とCPU電圧を調整してクロックを上げていくというもの。テスト環境は室温を含めて殻割テスト時と同じで、Intel Core i7-6700KのヒートスプレッダとCPUダイ間のTIMには液体金属のLiquid Proを使用しています。

 テスト環境機材
 CPU IntelCore i7-6700K(殻割り済み、Liquid Pro使用)
 CPUクーラー CryorigR1 Ultimate(ファンフル回転)
 メモリ CrucialCT2K8G4DFD8213(DDR4-2133、8GB×2)
 マザーボード ASUSZ170-A(UEFI:0504)
 SSD OCZVTR-180-25SATA3-480G
 電源 SilverStoneSST-ST85F-G(850W)
 OS 日本マイクロソフトWindows 8.1 Pro Update(64bit)

 オーバークロックの設定は、ASUS Z170-AのUEFIで行います。

 基本的にチューニングする項目は「CPU倍率」と「CPU電圧」の2項目のみですが、オーバークロック時の共通設定として、CPU倍率制御方法「CPU Core Ratio」を使用中のコア数にかかわらずCPU倍率を一定に設定する『Sync All Cores』、高負荷時にCPU電圧が降下するのを防ぐ「Load Line Calibration」を『Level 6』、CPU電圧の調整方法「CPU Core/Cache Voltage」を設定値で固定する『Manual Mode』に設定しています。

CPU Core Ratioを「Sync All Core」にセットして、1-Coreに設定するCPU倍率を入力。これにより、使用するCPUコア数にかかわらず、上限クロックは入力したCPU倍率に引き上げられる。
CPU Core/Cache Voltageを「Manual Mode」に設定し、CPU Core Voltage OverrideにCPU電圧を入力。これにより、負荷の有無にかかわらずCPU電圧は入力値で固定される。
CPU Load-Line CalibrationはLevel6に設定。この設定は高負荷時にCPU電圧が降下するのを防ぐ項目で、高いレベルを選ぶほど電圧の降下を抑制できる。ただし、設定次第では、高負荷時に電圧が上がるようにもなるので、本来は設定毎に調整が必要。
今回の条件でCHINEBENCH R15を完走した最大クロックは4.9GHz。この時の電圧は1.46Vでした。

 さて、この条件でオーバークロックテストを重ねた結果、CHINEBENCH R15を完走した最大CPUクロックは4.9GHzとなりました。

 サクッと5.0GHzでのベンチマークスコアも出したかったのですが、UEFIのモニター機能でCPU過電圧と警告される1.55Vを加えてもテストが完走しなかったため、5.0GHzは断念することに……無念です。


 各動作クロックでの電圧、CPU温度、消費電力をまとめたものが、以下のグラフです。CPU温度はHWMonitro 1.28のCPU Package、消費電力はサンワサプライのワットチェッカーで測定しています。

CHINEBENCH R15の完走に必要だったCPU電圧
CHINEBENCH R15完走時のCPU電圧と最高CPU温度
CHINEBENCH R15完走時のCPU電圧と最大消費電力

 各クロックのベンチマーク完走に必要だった電圧をみると、4.4GHzから4.8GHzまでは、100MHzあたり0.04Vの昇圧でCHINEBENCH R15の完走が可能であることがわかります。

 ここまでは電圧によく反応するいい傾向なのですが、どうやら筆者のCore i7-6700Kには、4.8GHzと4.9GHzの間に壁があるようで、この100MHzの動作クロックアップには0.1Vの昇圧が必要でした。その結果、消費電力やCPU温度も4.9GHzでは大きく上昇してしまっています。

 各クロック毎にCHINEBENCH R15のCPUスコアをまとめたものが以下のグラフです。

CHINEBENCH R15 マルチスレッドテスト
CHINEBENCH R15 シングルスレッドテスト

 定格動作では自動オーバークロック機能のTurbo Boostが働いていますが、Core i7-6700Kの場合Turbo Boostでクロックが上昇するのは1コア使用時のみとなっています。このため、マルチスレッドテストのスコアでは、定格の4.0GHzに対して、ほぼクロック差の通りに性能が向上していることを確認できます。

常用オーバークロックには必須の「ストレステスト」完走に挑戦

 さて、筆者が殻割りした個体のオーバークロック耐性については、4.8GHzを超えるあたりから厳しくなるということが分かったわけですが、ここまで紹介したCHINEBENCH R15完走基準というのは、あくまでスコアを取得する、かっこよく言うとスコアメイクのためのオーバークロックです。これを実際に「常用」するためには、安定した動作が可能な設定に調整する必要があります。

 具体的に何をするのかと言えば、一般にストレステストと呼ばれる非常にCPU負荷の高いアプリケーションを実行し、ある程度の時間継続して安定した動作とCPU温度を維持できるよう、設定を見直していきます。

 多くの場合、より負荷の高いテストを、より長時間連続で動作した実績のあるオーバークロック設定ほど、安定した設定であるとみなせます。

 これは「CPUにとって厳しい高負荷状態である程度動作したのだから、それ以外の状態でも安定して動くだろう」という理屈で、オーバークロックしたCPUの安定性をユーザー自身の手で確認するための方法となります。

 オーバークロックが自己責任と言われるのは、製品仕様外での動作によって製品保証が失効し、CPUやマザーボードなどが破損するリスクを自分が負うためだけではなく、「安定して動作することを誰も保証してくれないから」という理由もあるのです。

OCCT 4.4.1。オーバークロックの安定性確認のためのアプリケーションで、ストレステストだけでなくCPU温度などのモニタリング機能も備える。ただし、Skylakeではモニタリング機能でCPU温度などが取得できませんでした。
OCCT完走時のスクリーンショット。ちなみに最低CPU温度が室温を下回っているのは、モニタリングソフトが不確実なTjunction(Tj Max)を基準にCPU温度を割り出しているため。仕組みについての詳細はこちら

 前置きが長くなりましたが、今回はストレステストの定番ソフト「OCCT 4.4.1」のCPU LINPACKテスト(AVX、全論理コア有効)で、1時間連続エラーなし動作を目指してチューニングを行いました。

 ちなみに、記事作成の都合上テスト時間はデフォルトの1時間ですが、筆者が自分のメインPCを常用オーバークロックするなら、連続24時間くらいを基準とします。いくら速くても安定していないPCは使えませんので……。

 あっさり完走できるつもりでテストに挑戦しましたが、ストレステストでも屈指の重さを誇るAVX対応版LINPACKを通すのはかなり厳しく、1時間連続ノーエラーでテストを完走できたのは、4.8GHz設定でCPU電圧を1.46Vまで引き上げたところでした。このテスト中に記録した最高CPU温度は82℃と、かなり厳しいものとなっています。

 負荷テストは異なりますが、殻割り前にPrime95 Small FFTsを実行した際は、4.6GHz@1.325V設定で88℃という温度を記録していました。

 殻割りしてLiquid Proに塗り替えたことで、200MHz高いクロックと電圧をかけるための猶予ができたと見ることができます。

 ちなみに、今回実行したOCCTのAVX対応LINPACKの負荷がどの程度のものなのか、CPU使用率が100%になるアプリケーションを4.8GHz@1.46Vで実行した際の消費電力を、ワットチェッカーとHWMonitorの「Powers:Package」(ソフトウェア計測のCPU消費電力目安)で測定してみました。

 正確にCPUが消費している電力はわかりませんが、基本的には消費電力の数値が高いテストの方がCPU負荷が高く、CPU温度も高くなりやすいと考えて差し支えありません。安定性を重視するなら、ストレステストにはOCCT LINPACK(AVX有効)やPrime 95 28.5 Small FFTsなどが適しているといえます。

ストレステスト実行時のピーク消費電力

筆者のi7-6700Kは4.8GHzが常用限界、まずまずな結果に満足

 というわけで、殻割り+Liquid Pro化を行った筆者のCore i7-6700Kは、空冷のハイエンドCPUクーラーを使った環境でなら4.8GHzでの動作を狙えそうな個体でした。ただ、温度はともかく1.46Vという電圧は少々高すぎる気がするので、4.7GHzくらいでもう少し電圧を絞るのが、この個体のベストなセッティングかもしれません。

 現段階ではCore i7-6700Kのオーバークロックに関する情報は乏しいため、今回使用した個体がアタリなのかハズレなのかは分かりませんが、ここ数年は耐性の低いハズレ個体を引き続けていた筆者としては、まずまず満足の行く結果です。

 あくまで筆者の所有する個体のデータで、なおかつ殻割り済みという特殊な状況でのテスト結果ではありますが、Core i7-6700Kのオーバークロックや、殻割りへの挑戦を検討されている方の参考となれば幸いです。

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