借りてみたらこうだった!
GTX 1080搭載キューブPCは夏場を乗り切れる?「Shuttle SZ170R8」でハイエンドゲームPCを組んでみた
実用的な4Kゲーム環境や快適なVR環境が構築可能 text by 坂本はじめ
2016年7月12日 11:30
「小型でハイエンドなPC」、この題材にロマンを感じる自作PCユーザーは多いだろう。
今回、Shuttleのキューブ型ベアボーンキット「SZ170R8」を使って、最強スペックの小型PCを組むことにチャレンジしてみた。構成はCore i7-6700KにGeForce GTX 1080、最速のM.2 SSDと、ゲーム用としては申し分無い物だ。
小型筐体でハイエンド構成を狙う場合、そもそもハイエンドパーツが搭載できるのか、冷却性能は足りなくならないのか、電源容量は足りるのかといった点が問題になる。「SZ170R8」の特徴と合わせ、ハイエンド環境が構築できるのか、運用上問題となる点は無いのかといった部分を紹介しよう。
拡張性の高い「SZ170R8」、上位のビデオカードや3.5インチHDDを4台搭載可能
まずはベースとなる「SZ170R8」の基本的な特徴を紹介しよう。
このモデルは、Intel Z170 チップセットを採用したLGA1151対応のShuttle製キューブ型ベアボーンキット。
第6世代Intel Core プロセッサー(Skylake)をサポートするSZ170R8は、5インチベイを排した216×332×198mm(幅×奥行×高さ)のキューブ型筐体を採用。ストレージマシンとしての用途も想定したPCであり、3.5インチシャドウベイを4基備えている。
NASの構築などに適したハードウェア構成である一方、2スロット仕様でカード長267mmまでのビデオカードを搭載できる拡張スロットや、奥行GeForce GTX 1080の推奨容量を満たす500Wの80PLUS 認証電源、高速なNVMe対応SSDが利用できる32Gbps対応のM.2スロット(2240/2260/2280対応)を備えている。これらの仕様は小型ゲーミングキューブPCの構築にも適したものだ。
GTX 1080にi7-6700K、2GB/s超えのM.2 SSDも搭載可能ゲーム用ハイエンドPCを実際に組んでみた
それでは実際に小型でハイエンド構成のゲームPCを組んでみよう。
SZ170R8に組み込むのは、Founders Editionの名で呼ばれるNVIDIAリファレンス仕様のGeForce GTX 1080。
SZ170R8に組み込み可能な最大カード長267mmの制限をクリアし、電源ユニットが備える補助電源コネクタ(8pin×1 + 6pin×1)での動作が可能。さらにGPUの熱の大部分をブラケット部からケース外に放出する外排気仕様のGPUクーラーを備えている。GeForce GTX 1080 Founders Editionは、小型のキューブ筐体を採用するSZ170R8に適したビデオカードといえる。
このほか、CPUに4GHz動作の4コア8スレッドCPU「Intel Core i7-6700K」、ストレージにNVMe対応のM.2 SSD「SAMSUNG 950 PRO(256GB)」を搭載。どちらも現行のパーツではハイエンドクラスのものだ。
以下は実際にパーツを組み込んだ際の画像だ。ビデオカードの取り付けはスロットに挿し込み、電源ケーブルをつないでねじ止めするだけ。写真でもわかるとおり、特に干渉する部分や無理が出る部分も無く、ゆとりをもってハイエンドパーツを組込みこむことが可能だ。
GTX 1080のパフォーマンスを遺憾なく発揮、4KゲームやVRが実用的に遊べるスコアを記録ベンチマークテストで実力をチェックしてみた
さて、SZ170R8をベースに構築したゲーミングPCのパフォーマンスは如何ほどのものか、ベンチマークの結果を確認してみよう。
3DMarkのFire Strikeでは、フルHD(1,920×1,080ドット)の無印Fire Strikeで「16,955」、4K(3,840×2,160ドット)のFire Strike Ultraで「5,010」のスコアを記録。
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでも、フルHDでは最高評価の「非常に快適」、4Kでも2番目の評価である「とても快適」を獲得しており、GeForce GTX 1080の持つ高いパフォーマンスを遺憾なく発揮している。
今後の普及が期待されるVRでのパフォーマンスを測定する「SteamVR Performance Test」もテストしてみたが、スコアは最高の「11」で、最高評価の「VR レディ」を獲得。VRマシンとしても高いパフォーマンスを期待できそうだ。
動作温度的にはハイエンドカードの常用も可能、電源容量も余力有りベンチマーク中のGPU温度と消費電力をチェック
ベンチマークテストではGeForce GTX 1080ならではの高いパフォーマンスを発揮した訳だが、これだけの小型筐体に収めるとなると、発熱や消費電力が気になる方もおられるだろう。そこで、ベンチマーク中に測定した温度と消費電力の結果もチェックしてみた。なお、検証は室温26℃の状態で行っている。
まずは温度の測定結果から。ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク実行中のGPU温度とファン回転数の推移をまとめたものが以下のグラフだ。
最高GPU温度は85℃で、ファン回転数は最高2,464rpm(最大値の59%)。ベンチマークテストが進むにつれGPU温度が上昇しているが、テスト終盤では84℃前後の温度を維持する形となっている。
このような結果となった理由は、GeForce GTX 1080 Founders Editionでは、GPU Boost動作の基準温度であるTemperature Targetが83℃に設定されており、この温度に到達した関係でGPU Boost動作が抑制されたためだ。
上のグラフはGPUクロックとGPU温度をまとめたもの。GPU温度が83℃を超えるあたりで、GPU Boostが無効化されてベースクロックまでGPUクロックが下がっている。
なお、上記のデータは筐体の外装カバーを取り付けた完全な組み込み状態でのテスト結果だが、外装を外して熱がこもらないオープンエアー状態にしても、GeForce GTX 1080 Founders EditionではTemperature TargetによるGPUクロックの低下は発生する。
下のグラフは筐体の外装カバーを取り付けた状態と取り外した状態を比較したものだ。
SZ170R8の小型筐体でオープンエアー並みにGPUを冷やすのは流石に厳しいが、極端な性能低下などは見られない。
GeForce GTX 1080の最大温度である94℃までには10℃以上の余裕があり、ファンも最大回転数の59%で動作している。小型筐体ながら、SZ170R8は冷却面ではGeForce GTX 1080 Founders Editionを十分に常用できる程度のマージンがあるといえるだろう。
最後に、ベンチマーク実行中の最大消費電力を紹介する。ピーク時の消費電力でも300W以下におさまっており、電源容量的にも十分に余裕があることが分かる。
コンパクトなハイエンドゲーミングPCを構築できるShuttle SZ170R8
SZ170R8にGeForce GTX 1080を組み込んだ今回のPCは、既存のゲームの高解像度環境はもちろんのこと、VRでも高いパフォーマンスが期待できる優秀なゲーミングPCに仕上がった。
タワー型ケースに比べて冷却面で不利なことは否めないが、外排気タイプのクーラーを搭載したビデオカードを使うなど、若干配慮すればGeForce GTX 1080のようなハイエンドカードもパフォーマンスを十分に発揮させることができる。最上位モデルであるGeForce GTX 1080をこれだけ動かせるなら、下位モデルであるGeForce GTX 1070やGeForce GTX 1060の組み込みも問題ないだろう。
筐体サイズを小型化するほど自作PCの難易度は上昇していくが、SX170R8とPascal世代のGeForce GTX 10 シリーズの組み合わせは、実に手軽にコンパクトなゲーミングPCを組み立てる手段と言える。小型で高性能なゲーミングPCを望むなら、この組み合わせはぜひとも選択肢に加えるべきだろう。
[制作協力:Shuttle]
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