借りてみたらこうだった!

Z270のゲーミングマザーを早速テスト、チップセットとマザー世代の刷新で何が変わったか?

Kaby Lakeのi7は5GHzで常用できる? text by 坂本はじめ

Z270 GAMING M5

 第7世代Intel Core プロセッサ(Kaby Lake)にあわせ、新たなチップセットであるZ270が登場した。

 Kaby LakeはZ170でも動作するが、最新版であるZ270のほうがいくつかアドバンテージがあり、また、マザーボードの世代としても、Z270搭載品のほうが、より改良されているはずだ。

 今回、Z270を搭載したMSIのゲーミングマザーボード「Z270 GAMING M5」を試用する機会が得られたので、チップセットとマザーボードの機能を確認、さらに、オーバークロック耐性に注目があつまるCore i7-7700Kのオーバークロックにも挑戦してみた。オーバークロックの目標は5GHzだ。

 Kaby Lakeやその対応マザーボードが気になるならば、是非参考にして欲しい。

チップセット刷新でPCIeレーン数が増加、SSDをより速くする「Optane Technology」にも対応マザーの世代交代でメモリ周りやUSB 3.1が強化、VR対応やM.2スロットの冷却強化も

 まずはチップセットの進化点を簡単に説明しよう。

 Z270チップセットは、PCI Expressのレーン数が合計24レーン(PCI Express 3.0)とZ170から4レーン増加、3D Xpointメモリを使ったストレージ高速技術「Optane Technology」のサポートが大きな強化点。このうちOptane Technologyに関しては、本稿執筆時点で検証できなかったため、「将来に期待」としか言えないが、SSDのキャッシュとして使うことでSSDをより高速化することができるとされる。このほか、「Z270+Kaby Lakeの組み合わせはSkylake+Z170よりもオーバークロックしやすい」(MSI)のもウリという。

 また、Kaby Lakeプラットフォームとしては対応メモリも最大2400MHzに向上しており、プラットフォームとしてみた場合はここも異なる。

 さて、その搭載製品である「Z270 GAMING M5」だが、MSIの上級ゲーミング製品シリーズであるEnthusiast GAMINGに属する製品であり、基板上のパーツは独自の品質規格である「ミリタリークラス5」に準拠した高品質なものを採用している。フォームファクターはATXで、基板サイズは244×305mmだ。

 以下、主なポイントを見ていこう。

基板表面
基板裏面
バックパネルインタフェース。

 ゲーミング製品ということもあり、製品としての機能や進化点は数多いが、「世代」という点で印象深いのがメモリ周りの強化。

 具体的には、金属で樹脂スロットを補強する新機能「DDR4 Steel Armor」に準拠したDDR4メモリスロットが4基実装されている。

 この補強は物理的な損傷だけでなく、EMI保護といった側面もあるとされ、回路の最適化や基板での独立配線を旨とするメモリOC機能「DDR4 Boost」と組み合わせることで最大でDDR4-3800動作のオーバークロックメモリが利用できる(KabyLakeとの組み合わせ時)という。

 前述通り、Kaby Lakeでは公式に対応するメモリ速度も若干向上しており、それに合わせてメモリ性能にもよりフォーカスがあたりやすくなってきた、と言えそうだ。

 なお、サポートする最大メモリ容量は最大64GB(1本16GB)まで。

DDR4 Steel ArmorとDDR4 Boostに基づく4基のDDR4メモリスロット。補強材である金属パーツは4基のスロットをまとめて補強している。両ラッチ式でメモリの着脱も容易。

 また、USB 3.1についても「速度」「用途」の両面で機能強化。

 速度については、同社前世代モデル「Z170A GAMING M5」ではPCIe Gen3 x1レーン(8Gbps)だった外部USBコントローラの接続インターフェイスをPCIe Gen3 x2レーン(16Gbps)に強化され、USB 3.1のフル速度である10Gbpsを利用できるようになったほか、複数デバイス接続時でも速度に余裕が出やすくなっている。

 一方、用途については、時節にあった強化としてUSBインターフェイスの独自仕様「VR Boost」に対応したポートが用意された。このポートは、専用のリピータチップを搭載、USBポートの出力を強化しつつノイズの少ない信号を送り出す、というもの。VRでは、USB(とHDMI)でHMDを接続する関係上、3mを超えるような長いUSBケーブルを利用することがあるが、そうした場合でも信号損失が無く、安定して利用できるのがポイントだ。このほか、フロントUSB向けの20ピンコネクタも新たに搭載されており、、これは「新しいスタンダードになる」(MSI)という。

USB 3.1コントローラ「ASM2142」。PCI Express Gen3×2レーンで接続されているのがポイント
USB リピーター「ASM1464」とVR BOOST。
VR BOOSTは、長いケーブルを使用するVR環境でも安定してUSB機器と通信を行うための装備だ。

 また、普及の進むM.2関連の強化として、M.2 Shieldと呼ばれる放熱板を2番スロットに搭載。ヒートシンクを備えていないM.2対応SSDの冷却強化が行える。M.2 Shieldはスロットからの着脱が可能であり、標準でヒートシンクを備えているSSDを接続する際は取り外しておくことも可能。

 M.2スロットの1番スロットは42/60/80/110mm長のSSDに対応、「Optane Technology」用のキャッシュストレージ「Intel Optane Memory」を装着できるのも、この1番スロットだ。

 ちなみに、ストレージ用のインターフェースは、SATA 6Gbps×6基、M.2スロット×2基、U.2ポート×1基という構成。U.2ポートについては、金属で補強されたU.2 Steel Armorポートになっている。

拡張スロット間に配置されたM.2の2番スロット。
着脱可能な放熱板であるM.2 Shieldを搭載しており、ヒートシンクレスのM.2 SSDの冷却を強化できる。対応カード長は42/60/80mm。
M.2 Shieldは裏面に熱伝導シートが貼付されている。
CPUソケットに近い側に配置されたM.2の1番スロット。金属補強されたM.2 Steel Armorスロットで、42/60/80/110mm長のSSDに対応。
SATA 6GbpsポートとU.2ポート。
U.2ポートは金属で補強されたU.2 Steel Armorポート。PCI Express 3.0 x4接続に対応する。

 拡張スロットはPCI Express 3.0 x16 スロット×3基、PCI Express 3.0 x1 スロット×3基という構成。3基のPCI Express x16 スロットのうち、CPUソケットに近い側の2基は強化スロットのPCI-E Steel Armor スロットとなっている。なお、3基目のPCI Express x16 スロットはU.2スロットと排他利用となっている。

 LANコントローラはGigabit LAN対応のKiller E2500、オーディオコーデックにはRealtek ALC1220を装備。サウンドについては回路分離による高音質技術「Audio Boost 4」や軍用技術をベースとした音質向上技術「Nahimic 2」も搭載している。

 また、ゲーミングマザーボードの嗜みとして、発光色や発光パターンを変更可能なRGB LED「Mystic Light LED」を採用。チップセットクーラーやサウンド回路の分離部分が発光する。RGB LEDを搭載できる4ピンヘッダ「Mystic Light Extention」も搭載、外部のRGB LEDも制御できる。

拡張スロット。基板端部にはサウンド回路が実装されているが、樹脂製カバーで覆われている。
ビデオカードの接続が想定されるCPUソケットに近い2基のPCI Express x16スロットは、強化仕様のPCI-E Steel Armor スロットとなっており、重量級ビデオカードにも耐えられる。
LANコントローラのKiller E2500
オーディオコーデックのRealtek ALC1220
サウンド回路に採用されたケミコン製のオーディオコンデンサ
チップセットクーラーに内蔵されたMystic Light LED。発光色や発光パターンを任意で変更できる。

普段使いなら5GHzで常用可能?「AVX命令を使用しなければ」ベンチマークも完走

Core i7-7700K

 さて、では、もう一つのポイントとされているオーバークロック機能について見ていきたい。

 このマザーボードはゲーミング製品だが、オーバークロック機能も搭載しており、Intel Core i7-7700K(定格4.2GHz)などの倍率ロックフリーモデルと組み合わせることでより大きなアドバンテージを発揮できる。

 という訳で、今回はMSI Z270 GAMING M5とIntel Core i7-7700Kの組み合わせで、5GHz駆動にチャレンジしてみた。

 なお、今回は製品版のIntel Core i7-7700Kを用いてテストを行ってはいるが、CPUには少なからず個体差が存在するため、これから紹介する設定を適用しても同じ結果が得られるとは限らない。

 また、定格動作外となるオーバークロックはメーカー保証の対象外となるため、その結果製品が故障した場合、全てユーザーの自己責任となりメーカーの保証は受けられない。オーバークロックを嗜むユーザーであれば既にご承知のことと存じるが、この2点について改めてご留意いただきたい。

 5GHzを狙うオーバークロックで使用した機材は以下の通り。オーバークロック成功の可否を握るCPUクーラーには360mmラジエーターを備えたオールインワン水冷クーラーを利用している。

使用したCPUクーラーは、20mmファンを3基搭載する360mmラジエーター搭載オールインワン水冷クーラーSwiftech H320 CPU Liquid Cooling Kit
メモリはCrucial CT2K8G4DFD824Aを使用。DDR4-2400にネイティブ対応した8GBメモリ×2枚キット。メモリクロックのサポートがDDR4-2400に引き上げられたKaby Lakeに好適なメモリキットだ。

・テスト環境
 CPU Intel Core i7-7700K
 マザーボード MSI Z270 GAMING M5
 メモリ Crucial CT2K8G4DFD824A DDR4-2400 8GB×2
 SSD OCZ Vector 180 (480GB)
 電源 玄人志向KRPW-TI700W/94+(700W/80PLUS TITANIUM)
 OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)
 CPUクーラー Swiftech H320 CPU Liquid Cooling Kit
 室温 25℃

 まず結果から言えば、5GHzでの動作は可能だった。定番のCINEBENCH R15はもちろん、AVX2命令などを使用してH.265形式でのエンコード性能を測定するHWBOT x265 Benchmarkが実行可能で、定格動作からのパフォーマンスアップを確認できた。

CINEBENCH R15
HWBOT x265 Benchmark

 5GHz動作を実現するために行った設定は至ってシンプルで、「全CPUコアの倍率を50倍」と「CPU電圧を1.38Vに昇圧」の2つだ。これらの設定はMSI Z270 GAMING M5のUEFIメニューのOCタブから全て設定できる。操作した設定は以下の通りだ。

オーバークロック時に設定を変更した項目一覧
MSI Z270 GAMING M5のUEFIメニュー画面。MSI謹製のGUI「CLICK BIOS 5」を採用しており、OCタブを選択することでオーバークロックの詳細設定が行える。
CLICK BIOS 5には設定メニューをシンプル化した「Ez Mode」も用意されている。先のOCタブが利用できるメニューは「Advanced」で、2つのモードはF7キーで切り替えが可能。

 ベンチマーク中の消費電力とCPU温度をまとめたものが以下のグラフ。オーバークロックを行ったことにより、CPU温度は20℃前後、消費電力は40W前後、それぞれ上昇している。

ベンチマーク中のCPU温度
システムの消費電力。

 今回のオーバークロック設定は、ベンチマークテストだけでなくIntel Extreme Tuning Utility(XTU)やOCCTなど一部のストレステストを1時間程度通過できる程度の安定性はある。

 ただ、360mmラジエーターを備えたオールインワン水冷を駆使しても、AVX命令を使って極端にCPUを発熱させるPrime 95やOCCT Linpackなどを通そうとすると、CPU温度が100℃を超過してCPUの熱保護機能により動作クロックの低下が発生する。

現実的な負荷レベルで実行されるストレステストであれば、少なくとも1時間は安定動作することを確認できた。

 動作クロックを落とした4.8GHz(1.28V)設定であれば、超高負荷なストレステストもパスできるが、5GHz動作でこのレベルの負荷を通そうとするなら、冷却にもう一工夫必要だ。

4.8GHz動作であればCPUの要求電圧は1.28Vまで大きく低下。OCCT Linpackテストを余裕でパスできた。
4.8GHz動作時の温度は最大84℃。90℃以下に収まっているので、超高負荷がかかっても常用可能だ。

 今回オーバークロックを試して驚いたのは、意外なほどあっさり5GHzでの動作が可能だった点だ。

 今回の個体ではCPU電圧を1.3Vに設定した時点でOSの起動は可能であり、Skylake世代のCPUよりだいぶ良い手ごたえで設定を詰めることができた。最終的な設定でのCPU温度は確かに厳しいが、5GHzを達成できる高耐性なCPU個体だという確信があるなら、リスクを覚悟でヒートスプレッダとCPUダイ間のTIMを塗り替える「から割り」を試すという手が残されている。

 もちろん、今回使用したCPUが偶然にも抜群のオーバークロック耐性を持った個体であるという可能性は否定できないが、Intel Core i7-7700Kのポテンシャルにかなり期待の持てる結果だ。

 もともと高クロックCPUとしての魅力を備えている同CPUだが、Intel Z270 チップセット搭載マザーボードと組み合わせは、オーバークロックの可能性を開く有意義なものとなりそうだ。

アタリを引けば5GHz常用も見える?Kaby Lakeと合わせて選びたいゲーミングマザーボード

 今回はIntel Core i7-7700Kとの組み合わせでオーバークロックに挑戦してみたわけだが、大変簡単な設定で5GHz動作を実現することができた。流石にEnthusiast GAMING シリーズ製品、エンスージアストの名を冠するだけのことはあるといったところだ。

 ハイエンドGPUとの組み合わせで高いフレームレートを実現するため、あるいはCPU負荷が非常に高いオープンワールドゲームを快適にプレイするため、これからのゲームシーンではCPUに求められる性能はより高くなっていくことが予想される。そのような中で、Intel Z270 チップセット搭載マザーボードのオーバークロックという手段がアドバンテージになることもあるだろう。

 Kaby Lakeの優れたオーバークロック耐性を活用したゲーミングPCを構築したいユーザーにとって、MSI Z270 GAMING M5は実に魅力的な一枚となりそうだ。

[制作協力:MSI]