借りてみたらこうだった!

デレステとガンダムUCの音が別次元に、20万円のイヤホン「Westone W80」はとてつもなく高音質だった

ゲーム、CD、ハイレゾ音源でいろいろ聴き比べしてみた

Westone W80(WST-W80)

 税込約20万円の超高級イヤホン「Westone W80(WST-W80)」を借りることができたので、手持ちの機器で試聴してみました。

 個人的には外で音楽を聴くときは音質にこだわらないこともあり、大きな期待はしていなかったのですが、さすがは超高級機、別世界の音を楽しませてくれました(笑)。「知らない音が鳴っている、今まで聴いていた音はなんだったんだ??」みたいな感動が味わえたので、インプレッションをお届けします~。

 前もって凄く簡単にW80の音の傾向を紹介しておくと、解像感が高く音はクリア、かっちりとシャープに聴かせる最近のオーディオ機器らしい音です。

バランスド・アーマチュア型イヤホンでは最高級の一つ「W80」高級オーディオケーブルも付属

 Westone W80(WST-W80)はバランスド・アーマチュア型のドライバーを8基搭載したカナル型のイヤホン。

 国内保証が受けられる代理店版のものは税込で約20万円前後で販売されており、イヤホンでは最高級モデルの一つとなっています。

 ちなみに、バランスド・アーマチュア型のドライバーは、中~高音域の再現性が高く小型化が可能なものの、一つのドライバーでは再生周波数帯が狭いという弱点があります。高級機は低域、中域、高域と音域別にドライバーを搭載して再生周波数帯の狭さをカバーするもモデルが多く、今回のW80はそれぞれの音域に2基ずつドライバーを搭載している超豪華版。

 付属のケーブルはオーディオ好きな方なら名前は聞いたことがあると思われる「ALO audio」のものだったりと、手軽に音楽を聴くというよりは、しっかり聴き込むといった高級オーディオ路線のモデルになっています。

イヤホン部分
ケーブルは着脱可能
好みに合わせてカスタムできるようにイヤーピースなどが大量に付属
ケーブルはALO audio製のものが付属
ALO audioのマニュアルも入っていました
ケーブルはリモコン付きの標準的なものも付属しています
ケーブルやカスタムパーツなども収納できるポーチ
化粧箱はしっかりしたものになっています
パッケージ

ゲームの音楽が別物に、超高級イヤホンの恐ろしさの片鱗を味わう

手持ちのiPhone 6s
普段使用しているソニーのMDR-Q68LW、3千円前後のモデルとしては悪くありません

 それでは試聴に入ってみたいと思います!

 再生機器はiPhone 6s、比較に使うイヤホンは普段使用しているソニーのMDR-Q68LW。MDR-Q68LWは3千円前後で購入できるイヤホンとしては音に籠った感じがあまりないので、ここ数年は気に入って愛用中です。

 普段聴きなれている音とどう違うのか、まずはゲームでチェックしてみました。

アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージで比較

 音を比べるならやっぱり音ゲーだろ!ということで、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(以下デレステ)でまずは比べてみました。

 MDR-Q68LWの音はまあイヤホンらしい普通の音ですといった感じですが、W80の音は「あれ?ん?デレステの音って本当はこんなに良かったの?聴こえなかった音が聴こえる……今まで聴いてたのはなんだったんだー!」と別物に。

 曲は当然、効果音なども一気に高音質になった感があり、変化がありすぎるといった感じ。特に高音やキラキラした音は凄く綺麗になり、ツリーチャイムなどの音はたまりません。また、デレステは曲の終わりに観客の歓声が入るのですが、W80では歓声が無駄に高級感があるようにきこえて笑えます。

 「これが20万円の力か……恐ろしいわ」と高級機の実力に驚かされました。

ストリートファイターIV VOLTで比較

 続いては格闘ゲームの「ストリートファイターIV VOLT」。

 MDR-Q68LWと比べると当然W80の方が音は良いのですが、デレステほどの差は感じないかも……。ただ、オープニングで風が吹く時の音や、効果音などはW80の方が圧倒的によかったりはします。

 W80はかなり細かいところまで音が聴こえてしまうので、収録されている元々の音質が気になりました。W80は普通のイヤホンでは聴こえないようなところまで再現してしまい、場合によっては聴きたくない音もきこえてきたり……。高性能機ゆえに音のノイズなどにもシビアだったりします。

グラディウス―PC Engine GameBox―で比較

 ゲームの最後は「グラディウス―PC Engine GameBox―」。

 MDR-Q68LWでも遊ぶ分には当然問題のない音質で楽しめます。で、W80の方ですが、BGMの印象がかなりかわります。内蔵音源から、高音質化アレンジ版やCD版に切り替わったようと言えばよいでしょうか、質に決定的な違いがあり、レーザーの音も刺さるほどクリアになります。

 グラディウス好きな人であれば、「CDサントラ流しているみたいだ、すげー!」と結構感動するはず。同じ再生機器でもイヤホン一つで別物の音が体験できるので、それだけで結構楽しいです(笑)。これは凄い!

ぶっちぎりの解像感、CD音源でW80の音質をチェック高級イヤホンや廉価イヤホンとも比べてみた

左からWestone W80、Westone W20、ソニー MDR-Q68LW

 ゲームの段階でW80が凄まじく性能が良いのはわかってはいますが、一応CD音源でもイヤホンの性能差がどれだけでるのかチェックしてみたいと思います。

 W80の比較に使用するのはWestoneの下位モデルW20とソニーのMDR-Q68LW。再生機器はiPhone 6sを使用。

 W20はWestoneのイヤホンの中では下位よりのモデルですが、税込3.6万円前後と高級機の価格帯のモデル。ドライバーは低域用と高域用の2基を搭載しており、カジュアルリスニング向けとされています。

ONE OK ROCKの「Nothing Helps」で比較

人生x僕=(CD音源)収録のNothing Helps

 まずはロックで音質を比較してみました。使用したのはONE OK ROCKの「Nothing Helps」。

 MDR-Q68LWは自分のなかの標準ということもあり、普通に聴けます。

 W20は密閉型のヘッドホンのような音がしっかり詰まった濃いめの音質が楽しめます。ロックとの相性も悪くなく、MDR-Q68LWと比べると高級機といった感じの音で、高音から低音までしっかり聴かせてくれます。ただ、イヤホンなので、低音はちょっと弱い感じがするかも。

 W80は他のイヤホンとは別物でした……。まず解像感が段違いに高く、人によってはシャープすぎて刺さるという印象を持つかも。それぞれの音の分離が異常に良く、ほかでは聴き取りにくかった音もしっかりきこえます。音は高域から低域まで音がしっかり広がっており、W20を密閉型ヘッドホンとすると、W80は開放型の高級ヘッドホンといった感じです。

機動戦士ガンダムUC オリジナル・サウンドトラックの「LIFE & DEATH」で比較

機動戦士ガンダムUC オリジナル・サウンドトラック(CD音源)収録のLIFE & DEATH

 続いて試したのは機動戦士ガンダムUC オリジナル・サウンドトラックから「LIFE & DEATH」。オーケストラ調の曲で、このCDは音質もかなり良かったりします。

 まずは、MDR-Q68LWですが、この手の音源とあまり相性がよくありません。ほかと比較しなければ気になりませんけど、イヤホンいじめな曲です(苦笑)。

 W20は濃い感じの音なので、MDR-Q68LWよりはかなり良い音質で楽しめます。小型イヤホンゆえにという部分ですが、ちょっと音に窮屈な部分もあるので、オーケストラのような音に広がりのあるような音源とはそこまで相性は良くないかもしれません。

 W80はまた一つ凄さがわかる結果に。W80は他のイヤホンより音場が広いです。W20などと比べても音の鳴り方が別物で、低音の量感もアタック感も差を感じさせてくれます。イヤホンでもオーケストラがしっかり聴けて流石高級機!イヤホンの中では別格の音が体験できます。

Underground Resistanceの「Hi-Tech Jazz」で比較

Galaxy 2 Galaxy: A High Tech Jazz Compilation(CD音源)収録のHi-Tech Jazz

 CD音源最後はUnderground Resistanceの「Hi-Tech Jazz」。結構古めのテクノです。

 MDR-Q68LWでも普通にきけます。ほかを知らなければ特に音が悪いなどとは思わない気がします……。iPhone 6sのスピーカーよりは良いですし……。

 W20は音のまとまりも良く、安価なイヤホンとは違う音質の向上感が実感できます。高音寄りの音が綺麗にきこえ、音を聴いていて楽しい!といった感じです。

 W80ですが、ゲームのデレステの所でも触れましたが、高音寄りの音がキラキラきこえてかなり良いです。音がシャープなので、若干刺さってくる感じはありますが、ほかでは味わえない音を聴けます。テクノとはかなり相性が良いかも。高音域は本当に凄いです!

高級ヘッドホンにも負けない音質?据え置きのヘッドホンアンプに繋いでハイレゾ音源を聴いてみた

SENNHEISER H800と比較、ヘッドホンアンプはMBA-1 Platinum Edition

 CD音源での聴き比べて思った以上にW80の音質が良かったので、ちゃんとしたヘッドホンアンプを使用し、高級ヘッドホンと比べても戦える音質があるのかチェックしてみました。

 音源はハイレゾを用意。再生機器はPCで、USB DACにヘッドホンアンプを接続した環境でテストしています。比較に使用したのはSENNHEISER H800で、音場の広さと解像感がウリのハイエンドイヤホンの1モデル。W80の約20万円に対し、HD800は約19万円なので、価格的には同格同士の比較になります。

 なお、個人的にイヤホンにはあまりお金をかけていませんが、ヘッドホンにはこだわっていたりします。

Bill EvansのWaltz for Debby (take 2)(192kHz/24bit)で比較

Waltz For Debby(192kHz/24bit)収録のWaltz for Debby (take 2) (e-onkyo musicで販売中)

 ハイレゾの1曲目はBill EvansのWaltz for Debby (take 2)。超有名曲なので、ジャズ好きな方にはおなじみの曲なのではないでしょうか。今回は192kHz/24bitのハイレゾ版を使用しました。

 W80の方からですが、W80は高解像感が特徴でiPhone 6sで聴いたときは音が刺さるような部分もありましたが、アンプなど再生機器をしっかりしたものにすると、解像感はそのままに刺さる感じが和らぎます。外で聴くときもポータブルアンプなどを用意した方が良いかも。

 それぞれの楽器の音の分離も良く、ドラムの音も心地良く、ベースの響きなども気持ち良いです。今回使用しているWaltz For Debbyはライブ音源なのですが、音の分離が良いので環境音や観客の話し声などもしっかりきこえて、高解像な機器を使ったことが無い人は性能の高さに驚けるはず。思っていた以上に良い音です。

 HD800ですが、こちらは普段使用していることもあって特に感動する部分は無いのですが、音場の広さやゆったりリスニングできるといった点ではヘッドホンが圧倒的に有利。HD800はヘッドホンの中でも特に音場が広いので、この音場の広さに対抗するのはイヤホンでは難しそうです。音のまとまり自体もHD800が良いかなと。ただ、音の分離自体はW80の方が良く、音の味付けの違いはよくわかります。

μ'sの「Snow halation」(96kHz/32bit)で比較

Snow halation(96kHz/32bit) (e-onkyo musicで販売中)

 続いてはアニメ「ラブライブ」のユニットμ'sの「Snow halation」(96kHz/32bit)。μ'sの曲は高音質アニソンとして一時有名になりました。

 W80ですが、高音の伸びが良く、かなり心地良く聴けます。綺麗な高音が好きな人にはたまらない感じです。ヴォーカルもハモった時に一人一人の声が混ざるというよりは重なるといった感じで、分離がめちゃめちゃ良いです。楽器の音もかなり綺麗にきこえ、これは凄く相性が良いです。

 HD800の方は、音全体で比べた場合はこちらが音質は上といった感じですが、W80と比べるとハモった時に声が混ざって濁るようにきこえる感じがあります。また、HD800はどちらかというと大人しい鳴りなので、勢いの良さなどもW80にちょっと負ける感じかも。楽しく聴くならW80の方がこの曲は良いかもしれません。

Linkin Parkの「Breaking The Habit」(96kHz/24bit)で比較

Meteora (Deluxe Version)(96kHz/24bit)収録のBreaking The Habit (e-onkyo musicで販売中)

 ハイレゾ3つめはLinkin Parkの「Breaking The Habit」(96kHz/24bit)。ラップロック・ラップメタルなどが好きな人にはおなじみの曲。

 W80はロックを楽しく聴かせてくれます。バスドラムの音がかっちりきこえて「おお!」っと驚かせてくれました。低音の分離も良く、ノリ良く聴かせる曲とは相性が良いです。

 HD800はヴォーカルの伸びなどが良いです。音が広がっていく感じが心地良く、その点はこちらが優位。ただ、低音の勢いなどはW80に負ける面があり、分離の良さから来るノリの良さなどもこちらの方が弱いので、音のどの部分にポイントを置くかで好みが割れそうです。

宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」(96kHz/24bit)で比較

Utada Hikaru Single Collection Vol.2 HD(96kHz/24bit)収録の誰かの願いが叶うころ (e-onkyo musicで販売中)

 最後は宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」(96kHz/24bit)。

 W80から行きますが、自分の1~2m前に奏者達が居る感じで、「W80らしい音」が堪能できます。音が混ざること無くきこえ、それぞれどの位置で演奏しているかがわかるような、「これがW80の音だ!」みたいな体験ができます。アコースティックギターの音も良いし、ヴォーカルもしっかり前に出てくる感じもあり、曲との相性も良い感じ。ただ、音が近いのが苦手な人はガチャガチャした印象を受けるかもしれません。

 W80が奏者の1~2mの距離だとすると、HD800はステージがちょうど見渡せる前列席に居る感じです。離れる分音のまとまりが良く、しっとり聴くならこちらが良いです。解像感があり、なおかつ広い音場を楽しめるので、はまる人ははまる音。

20万円のイヤホンは価格のインパクトに負けないとんでもない高音質イヤホンだった、

 といった感じでいろいろテストしてみましたが、「イヤホンだし、ヘッドホンには全面的に負けるだろ~」と思っていた印象をW80は裏切ってくれました。解像感はかなり高く、音の分離も凄まじく、音場の広さまで確保されていたりと、ただ者じゃ無いイヤホンです(笑)。

 小型ゆえに音の広がりやまとまり、オーケストラのような曲はドライバーの大きさという点でヘッドホンにかなわない面はありますが、音の分離や解像感などはかなりのもので、約20万円のイヤホンはぶっ飛んだ性能なんだな~と感じさせてくれます。

 下位のW20も音質的には良く、密閉ヘッドホンの音が好きならばコストパフォーマンスの高いモデルになるはず。ただ、W80はどちらかというとHD800のような高解像よりかつ音場が広い方開放型ヘッドホンのような路線なので、Westoneのモデルの中でも代わりが無い特殊な音色なのでは無いかと思います。

 一般ユーザーからしたら税込20万円は高価だと思いますが、「外に最高の音を持ち出したい」、「解像感が高く、分離が良い音をどこでも聴きたい」といったユーザーには割に合わない価格ではないはず。正直、この価格帯のイヤホン/ヘッドホンは好みに合うか合わないかが全てなので、購入前には絶対に試聴してもらいたいところですが、気に入ればかなり長い間愛用できます。そういった面では、イヤホン沼からスパッと抜け出したいユーザーにもお勧めしたいモデルです。