借りてみたらこうだった!
バリューSSD×4台でRAID 0に挑戦!OCZの「Trion 100」を試す
低コストSATA SSDで最新のNVMe SSDに迫る速度・容量を実現? text by 石川ひさよし
2015年11月25日 11:45
今回、OCZおよび代理店よりTrion 100 480GBモデルを都合4台借り受けることができた。
この台数が集まると試してみたくなるのがRAID 0でのパフォーマンス計測。昨今では、高速SSDと言うとPCI Express Gen3 x4接続のM.2 SSDや、U.2接続のSSDに注目を奪われてしまい、2.5インチSSD単体では既に速度が頭打ちという印象が強くなってしまった。
とはいえ、上位チップセットを搭載するマザーボードの多くはRAID機能をサポートしているので、今回はこの機能を活用してみようと思う。2.5インチSSDもRAID 0で運用したら「最新インターフェースのSSDに迫れるかも」、「価格はグッと抑えられるのでは」、そして「SSDとしてはバカみたいな大容量が実現できるのでは」というあたりを検証してみた。
東芝製TLC NAND搭載のTrion 100コスパの良さを活かしたRAID 0運用もアリ?
今回お借りしたOCZ Trion 100は、OCZとしては初めてTLCチップを採用した2.5インチSATA接続のSSDだ。OCZは東芝のグループ企業なので、Trion 100は東芝純正品に近いポジションのTLC SSDと見ることもできる。
NANDフラッシュメモリチップには、SLC、MLC、TLCとあるが、これらは1つのセルにいくつの値が格納できるかの違い。このなかで最大となる3値を格納できるTLCチップは、これからの時代のSSDの大容量化、低コスト化を担う技術である。
OCZ Trion 100も、120/240/480/960GBとラインナップがあるが、セグメントとしてはバリューゾーン向けの製品で、本来であればHDDからSSDへのアップグレードをより低コストで実現するといったコンセプトと言える。
Trion 100の仕様については、製品リリース時の僚誌PC Watchのニュース記事を参考にしていただきたい。Trion 100の容量ラインナップでは、シーケンシャルリードについては全容量モデル共通で550MB/sだが、シーケンシャルライトに関しては、最小容量の120GBがやや低めの450MB/s、240GBモデルで520MB/s、そして480/960GBモデルはシリーズ最速の530MB/sとなる。
自作PCもマニアの域に達すると、MLCとTLC、とくに信頼性の違いなどが気になるところ。そこでTLCならではの活用方法を考えてみようと捻りだしたのがRAID 0による超高速、大容量、低容量単価ドライブだ。
バリュークラスSSDの4台RAID 0を考えたのは、容量、速度、コストの3点。容量に関しては、例えばPCI Expressカード型のSSDでは2TBを超える大容量モデルも登場している。ただし、そうした製品は高価だ。
2.5インチというメジャーなフォームファクタの製品は容量単価が安い。RAID 0で束ねることで安価に大容量SSDを構築できる。速度の面では検証が必要だが、1台あたりのパフォーマンスでは、バリュークラスSSDと言えども既にシーケンシャルリードに関しては500MB/sクラスの大台に乗り、これを4台、RAID 0で束ねれば2GB/sに迫れるだろうという見積もりだ。
そして、Intel 100シリーズチップセットから、CPUとチップセットを結ぶバス帯域(DMI)が拡大された。これはPCI Express接続の話であって、例えばチップセット側に接続されるPCI Express拡張スロットがGen2からGen3へと進化したという点で、SATAに関しては直接言及されているわけではないが、こちらの帯域も拡大された可能性はある。
まあ、お金を出せば簡単に高速SSDを組み込める現在、SSDでRAID 0を運用している方はカジュアルというよりマニアと呼んでよいだろう。ただし、上位チップセットが標準対応している機能であるから、多くの方が潜在的に利用可能な状態にある。
Z170環境でSSD×4 RAID 0を構築シーケンシャルリードは2GB/sに迫る
では最初にIntel Z170マザーボード環境でテストしてみよう。ご存知のとおり、現行プラットフォームでRAIDをサポートするチップセットは、Intel Z170またはIntel H170となる。150系のチップセットでは対応しないので、この点に注意しよう。
用いたマザーボードは、MSI Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITIONだ。このSerial ATA 3.0の2~5番ポートにTrion 100 480GBモデルを装着し、チップセットのRAID機能を利用し構築した。
RAIDボリュームの構築は、まずBIOSに入りFast Bootを一時的にDisableとしたうえで、電源再投入後にCtrl+Iキーを押してRAIDセットアップに入る。既に運用中のPCで、Fast BootをEnableとしている場合は、OSの機能、あるいはマザーボードメーカーが用意しているBIOS進入ユーティリティやボタンなどを利用してFast Bootを一度Disable化しよう。
RAIDボリュームのセットアップは、Main Menuの「Create RAID Volume」から行う。Enterを押せば、RAIDボリューム作成画面に移るので、そこで「Name」を設定し、「RAID Level」では今回ストライピングを行うので、「RAID0(Stripe)」を指定する。
次は「Disk」からRAIDの対象とするドライブを選択する。スペースキーを押すと、IDの頭に三角のマークが付くのでこれが目印だ。なお、例えば3台をRAIDボリュームに、1台をシステムドライブにするような場合は、製品のシリアルナンバーを控えておくと目印になる。「Strip Size」は128KBを指定した。RAID 0の標準的な設定である。最後に「Capacity」を指定しRAIDボリュームの作成は完了だ。
さて、今回はRAIDボリュームの速度を引き出すため、OS用に別途SSDを組み合わせている。RAIDボリュームにOSを導入しようという場合は、OSインストールステップの途中で、インストール先ドライブを指定する際に、RAIDドライバを充てる必要がある。
そのような場合は、事前にドライバを入れたUSBフラッシュメモリなどを作成しておく必要があるので注意しよう。今回のようにRAIDボリュームをDドライブ以降のデータドライブとして使う場合は、CドライブにそのままOSをインストール後、OS上から「ディスクの管理」を開き、フォーマットを行えばよい。
なお、現行プラットフォームは6ポートのSATAに対応している。例えば、OS用の1番ポートには信頼性重視のMLC SSD、2番~5番ポートに低コストなTLC SSDによるRAIDボリューム、そして6番ポートにはRAIDボリュームのバックアップ用としてRAIDボリュームと同容量のHDDを、といった構成も考えられるだろう。
パフォーマンスの計測は、CrystalDiskMark 5.0.2 x64版を利用した。非RAIDの1台の状態から、RAID 0の2台、3台、4台と台数を増やし、それぞれ転送速度を計測した結果が以下のスクリーンショットだ。
結果は、およそ3台までスケーラブルにシーケンシャルリードが向上している。4台時は、それ以前までと比べると伸び率が若干頭打ちになったものの、1977MB/sという2GB/sに迫る速度が得られた。
また、シーケンシャルライトもほぼ同等の1892MB/sを実現しているのがポイントだ。一方、4Kに関しては、1台時で355.3MB/s、2台時で421.3MB/s、4台時で463.7MB/sと、向上はするもののあまり伸びない。どちらかと言えばRAIDコントローラ側の制約という印象だが、ここは最新インターフェースのSSDに対して弱点となるかもしれない。
Haswell環境でもSSD×4台RAID 0でテストZ97環境は1.7GB/sあたりがチップセットの限界?
ではIntel Z97マザーボード環境(MSI Z97M GAMINGを使用)でもテストしてみよう。RAIDセットアップは同じなので省くとして、結果を見てみよう。
1台時と2台時に関しては、Intel Z170環境時とさほど変わらないが、異なるのは3台時以降だ。
まず3台時。シーケンシャルリードはIntel Z170環境時と比べ50MB/sほどだが下回り、シーケンシャルライトに関しては250MB/sほど下回った。そしてIntel Z97環境時の場合、3台時から4台時へのスコアがほとんど向上していない。つまり頭打ちになっている。
500MB/sクラスのSSDでRAID 0を構築する場合で、Intel Z97マザーボードの場合は3台で速度が頭打ちになるのに対し、Intel Z170マザーボードの場合は4台まで向上するという違いが確認できた。
では最後にこれをグラフとして視覚的に確認しておこう。
SATA SSDでもRAID 0で最新SSDに対抗できる安くて速い狙い目のバリュークラスSSD
M.2やU.2、PCI Expressといった新しいインターフェースの製品は、6Gbps SATAの壁を超え、2GB/sの壁を超え、さらにその先にたどり着こうとしている。しかし、今回、トラディショナルな2.5インチSSDを使っても、RAID 0によってそれらに迫るパフォーマンスが得られることが示せた。
M.2やU.2、PCI ExpressのSSDがポスト3GB/sに行ってしまうと追いすがることもできなくなってしまいそうだが、現状ではまだギリギリ太刀打ちできそうではある。ポイントとしては、シーケンシャル速度でIntel Z170環境であれば2GB/sあたり、Intel Z97環境であれば1.7GB/sあたりに帯域の上限があるようだということ。速度を求めるならば、Intel Z170環境のほうがよい。
しかも、M.2は別として、U.2やPCI ExpressのSSDと比べれば、容量単価をかなり抑えることができる。例えばU.2やPCI Express接続のIntel SSD 750の場合、1.2TBモデルで13万円ほどするが、バリュークラスのTrion 100 480GBモデルによる今回の構成では(ケーブル代を除き)2TBという容量でありながら10万円でお釣りが来る計算である。
同じ予算であれば2.4TBが実現できるわけで、容量単価は半分だ。ここは大きな魅力だろう。大容量という点では、M.2に対してもアドバンテージがある。現状、M.2 SSDの最大容量は512GBなので、2スロットのマザーボードでRAID 0を組んだとしても1TBが上限だ。Intel Z170/Z97チップセットのSATAポートは最大6基なので、960GBモデルを6台組み合わせれば6TBといった具合で夢が膨らむ。
このように、2.5インチSSDにもまだまだメリットが豊富なので、お手持ちのシステムに最適な高速ストレージを選んでみて欲しい。とくに、Trion 100の場合は、240GBモデルなら480GBモデルに対してシーケンシャルリードは同等、シーケンシャルライトも10MB/s差。それでいて単価はバリュークラスだけに12,000円前後なので、5万円でお釣りが来る。これで容量約1TB、シーケンシャル速度2GB/sクラスの爆速SSDが構築できるわけで480GBモデルよりも現実的な選択肢と言えるだろう。
[制作協力:OCZ]
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