借りてみたらこうだった!

ゲームがよりなめらかに、FreeSyncで最高の描画品質を楽しむ

MSI R9 380 GAMING 4Gと144Hz対応液晶で効果を検証 text by 坂本はじめ

 今回、AMD FreeSyncに対応するビデオカードとディスプレイを合わせて借用する機会が得られた。

 登場から2年を経て、対応ディスプレイも徐々に増えてきたAMDの同期技術FreeSync。「画面描画を滑らかにする」技術であるということから、フレームレートを補完する倍速駆動的なものというイメージを抱きがちだが、実際は全く異なる技術だ。

 FreeSyncによって得られるのは、ディスプレイとPCの描画間隔の齟齬によるカクつきや破綻から解放されたスムーズな画面描画と、ディスプレイのリフレッシュレート以上のフレームレートを強いられないことで可能となる高い描画品質。プレイの質を高めたいゲーマーにとって利用しない手はない技術だ。

 今一度、FreeSyncの機能を確認しながら、最新ゲームでの効果のほどを紹介しよう。

GPUとディスプレイの「描画のズレ」を軽減するAMD FreeSync

AMDが公開している効果の一例

 これまで、ディスプレイは1秒間に60回というように決められたタイミングで画面を書き換えを行っていた。このディスプレイの画面書き換えのタイミングとPCが描画した画面情報を送るタイミングが一致しないと、ディスプレイが画面を書き換えている最中に描画すべき画面が変わってしまい、途中でズレて描画されるティアリングという現象が発生する。

 このティアリングには、PC側が描画した画面情報を送信するタイミングを、ディスプレイの画面書き換えに合わせる手法「垂直同期(V-Sync」で対処していたのだが、ディスプレイの画面書き換え回数(リフレッシュレート)が一定なのに対し、PCが描画する画面の枚数(フレームレート)は不定であり、リフレッシュレートをフレームレートが下回った場合、画面を書き換える枚数が足りず、同じ画面を複数回描画してしまうことによって画面がカクついて見えるスタッタリングという現象が発生する。

 AMD FreeSyncは、このリフレッシュレートとフレームレートの齟齬によって生じる問題に対し、ディスプレイのリフレッシュタイミングをPCのフレームレートに合わせることで対処する技術だ。

 実際に使用してみないと効果がわかりにくいのだが、FreeSyncのON/OFFでどう変化があるのか動画を撮影してみた。

 上がFreeSync ON、下がFreeSync OFFだ。小さい画面ではわかりにくいので、YouTubeのサイトで1080pや720p等にして確認してもらえると良いのだが、どちらもフレームレートに差はないものの、FreeSync ONの方は画面の破綻が抑えられており、よりスムーズな描画に見えるのではないだろうか。遠景などに注目してみると違いが判るはずだ。

【AMD FreeSync有効時の動画(アサシンクリード シンジケート)】
【AMD FreeSync無効時の動画(アサシンクリード シンジケート)】

FreeSyncの利用には対応GPUと対応ディスプレイが必須今回はMSI R9 380 GAMING 4Gでテスト

 FreeSyncを利用するためには、対応GPUと対応ディスプレイが必要となる。FreeSyncに対応したディスプレイはFreeSync対応をスペックとしてうたっているため理解がしやすい。FreeSyncに対応するGPU(およびAPU)は以下の通り。

・AMD Radeon R9 Fury/Nano シリーズ
・AMD Radeon R9 300 シリーズ
・AMD Radeon R7 360 シリーズ
・AMD Radeon R9 295X2/290X/290
・AMD Radeon R9 285
・AMD Radeon R7 260X/260
・AMD A10-7890K/7870K/7850K/7800/7700K
・AMD A8-7670K/7650K/7600
・AMD A6-7400K

 なお、対応GPUと対応ディスプレイの組み合わせであっても、FreeSyncをサポートした入出力端子で接続しなければFreeSyncは機能しない。HDMI接続でのFreeSyncに対応したディスプレイはレビュー執筆時点では存在せず、4月末に発売が予告されているLGの「MP68VQ」シリーズがHDMI接続FreeSync対応ディスプレイの第一弾になる見込みだ。このため、現在FreeSyncを利用するには、原則GPUとディスプレイ間を「DisplayPort」で接続する必要がある。

 今回、FreeSyncを試すにあたって、MSIよりRadeon R9 380を搭載したビデオカード「R9 380 GAMING 4G」、iiyamaより24インチのゲーミング液晶ディスプレイ「ProLite GB2488HSU-2」をそれぞれ借用した。

MSI R9 380 GAMING 4G

MSI R9 380 GAMING 4G

 MSI R9 380 GAMING 4Gは、4GBのVRAMを備えたRadeon R9 380搭載ビデオカード。店頭価格は税込30,000円前後。

 セミファンレス機能対応のオリジナルGPUクーラー「TWIN FROZR V」を備え、その優れた冷却能力によってRadeon R9 380をオーバークロック(OCモード時最大1,000MHz)して搭載した一枚。

 ゲーム時の騒音を抑えてくれる高性能GPUクーラーTWIN FROZR Vの存在が魅力的なことはもちろん、基板側の表裏を金属プレートで補強することでGPUクーラーの重量から基板を保護するなど、完成度の高さが光るビデオカードだ。

背面はバックプレート付きで、補助電源コネクタは6ピン2系統。
出力端子はDIV-D、DVI-I、HDMI、DisplayPort。
基板の表面側にも補強プレート兼ヒートスプレッダを搭載している。
ヒートシンクに固定された2基のファン。セミファンレス機能により、GPU温度が一定以下の場合は停止する。
6mm径2本、8mm径1本、計3本のヒートパイプを備えたヒートシンクを採用。
パッケージ

iiyama ProLite GB2488HSU-2

iiyama ProLite GB2488HSU-2

 iiyama ProLite GB2488HSU-2は、最大リフレッシュレート144HzのTNパネルを採用した24インチ液晶ディスプレイ。店頭販売価格は40,000円前後。

 非光沢のノングレアパネルを採用、応答速度1ms(G to G)、画面解像度は1,920×1,080ドット。FreeSync有効時のリフレッシュレートは45~120Hzとなる。

本体前面
本体背面
入力端子はDisplayPort、DVI、HDMI×2系統。FreeSyncが利用できるのはDisplayPortのみ。
本体側面
USB 3.0ハブ機能なども備えている。
パッケージ

FreeSyncを最大限活用するにはリフレッシュレートの調整が必要

 FreeSyncを利用するには、ディスプレイ側とGPU側でそれぞれFreeSyncを有効化する必要がある。手順としては、まずディスプレイ側でFreeSyncを有効化、続いてRadeon設定の「ディスプレイ」からAMD FreeSyncをオンにすれば完了だ。

ディスプレイのメニュー画面。あらかじめディスプレイ側でFreeSyncをオンにする必要がある。
Radeon設定の「ディスプレイ」。ここでFreeSyncをオンにする。

 これでFreeSyncは動作するのだが、FreeSyncは「フレームレートがディスプレイのリフレッシュレートを下回った時」に発生するティアリングやスタッタリングの抑制に効果を発揮する一方、逆にフレームレートがディスプレイのリフレッシュレートを超えた時に発生する画面描画の破綻には対処できない。

 FreeSyncの効果を最大に活用するには、垂直同期(V-Sync)を有効にするか、FRTC(フレームレートターゲットコントロール)で垂直同期を超えない範囲にフレームレートを抑制する必要がある。

垂直同期はゲームの設定画面から有効化する。ディスプレイのリフレッシュレートは設定可能な最大値にしておくと、FreeSyncがより効果を発揮する
FRTCはゲーム中の最大フレームレートを制限する機能で、Radeon設定の「ゲーム」から個別または一括(グローバル設定)での設定が可能。今回の環境では最大フレームレートを30~200fpsの範囲で設定可能だった。

ゲームの世界に浸るなら「FreeSync」、実際のゲームで効果をチェック

 それでは実際のゲームでFreeSyncを活用してみた結果をレポートする。

Star Warsバトルフロント

 まずは、Star Wars世界が舞台のFPS「Star Warsバトルフロント」。画面解像度1,920×1,080ドットで、描画プリセットを「高」では、60~90fps程度のフレームレートで動作した。

 三人称視点になることもあるStar Warsバトルフロントだが、基本は一人称視点だ。一人称視点では照準を合わせるたびに画面全体が動くため、そのたびにスタッタリングやティアリングが発生していては大きなストレスになってしまう。

 FreeSyncを有効にすると、視点移動でのカクつきや描画の破綻が無くなり、照準移動がスムーズに行えるようになった。また、Xウイングのような戦闘機を操るときも画面がカクついたりしない実にスムーズな画面描画が得られる。結果として、筆者のエイム力の無さと操縦下手を画面描画のせいに出来なくなってしまったのは皮肉である。

アサシンクリード シンジケート

 産業革命期のロンドンを舞台にアサシンを操作するアクションゲーム「アサシンクリード シンジケート」。画面解像度1,920×1,080ドットで描画プリセット「標準」に設定した際、フレームレートは50~70fpsとなった。

 緻密な3D描写が魅力のアサシンクリードシリーズ。過去作でおなじみのフリーランに加え、ロープランチャーというダイナミックな移動方法が増えた本作では、画面全体を動かすシーンが増え、リフレッシュレートとフレームレートの齟齬による画面の破綻が目立ちやすくなった。

 FreeSyncはアサシンクリードでもその効果をバッチリ発揮してくれる。高所からロンドンの街並みをぐるっと展望するようなとき、戦闘中に周囲を確認するときなど、引っかかりを感じずに視点を動かせるのは実に気持ちがよい。

Life Is Strange

 スクウェア・エニックスのアドベンチャーゲーム「Life Is Strange」。画面解像度1,920×1,080ドットで描画設定を最高設定にしたところ、ゲーム中でのフレームレートは60~130fps程度と変動幅が非常に大きなものとなった。

 フレームレートの変動幅は大きいが、実際のところ、60fps程度までフレームレートが低下するシーンはごくわずか。このような条件でFreeSyncはその真価を発揮する。通常なら60Hzで垂直同期をとらざるを得なかったこのような条件でも、大部分のシーンで高フレームレートの滑らかな描写が楽しめ、フレームレートが落ち込むシーンでも画面描画が破綻しないという訳だ。

 リアルタイムレンダリングによるムービーシーンは、前後のプレイシーンから違和感なく切り替えるのに有効な手法だが、そこでフレームレートの低下によって画面がカクつくようなことがあっては、意識を描画の破綻に持っていかれてしまい元も子もない。ストーリーを楽しむゲームだからこそ、スムーズな画面描画と美しい画面描写を追求できるFreeSyncは有効なのだ。

World of Warships

 「World of Tanks」でその名を知られるWargamingの海戦ゲーム「World of Warships」。このタイトルは最大フレームレートが75fpsとなっており、1,920×1,080ドットの画面解像度では、描画プリセットを「最高」にセットしても70~75fps前後という結果となった。

 World of Warshipsでは周囲の確認が重要だ。敵艦にばかり気を取られて島に衝突、そこに集中砲火を浴びるようなことになっては目も当てられない。そのためにはカメラを動かし周囲を確認しながら戦う必要がある。……と、もうこれまでの流れでお分かりだろうが、画面を大きく動かすシチュエーションではFreeSyncの効果は大きい。

 スタッタリングによるカクつき、ティアリングによる画面の破綻は、それが目に入るとついついそちらに意識が行ってしまい集中力を奪われる。FreeSyncでスムーズな視点移動ができれば、集中を削がれることなく自分の本来の実力と向き合うことができるだろう。

League of Legend

 代表的なMoBAタイトルのひとつ「League of Legend」。画面解像度1,920×1,080ドットで最高の描画設定を適用した際のフレームレートは300fps前後。ディスプレイの最大リフレッシュレートの2倍以上という数値だ。

 このように、リフレッシュレートを遥かに超えるフレームレートを実現できる条件では、FreeSyncは何の効果も発揮しない。むしろ、FreeSyncを有効化することでディスプレイの最大リフレッシュレートが144Hzから120Hzに低下することはデメリットだ。

 ディスプレイの最大リフレッシュレートを常時上回る描画が得られる軽量なゲームでは、FreeSyncを無効にして、垂直同期のみを有効にすることで、より滑らかな描画を得られるだろう。

最高のゲーム画質を求めるユーザーに強くお勧めしたいFreeSync

 結論から言って、FreeSyncは間違いなく有用な技術だ。今回はじめてFreeSyncを体験した筆者だが、これが一刻も早く普及すべき技術であることを強く認識させられた。

 垂直同期でカクつきを抑えるためには、フレームレートの下限がリフレッシュレートを超えるよう、描画品質の妥協を強いられていた。とくに120Hz/144Hzという高リフレッシュレートに対応するディスプレイで垂直同期をとるには、描画品質を相当に妥協するか、かなりのハイエンドPCを用いる必要があったのだが、FreeSyncならディスプレイの最大リフレッシュレートを下回ってもスムーズで破綻のない画面描画が得られるため、より高い描画品質を設定できる。多くのゲーマーにとって、FreeSyncはプレイの質を高めてくれる技術と言えるだろう。

 今回借用したMSI R9 380 GAMING 4Gとiiyama ProLite GB2488HSU-2は、FreeSyncの魅力を存分に体験できる組み合わせだ。FreeSyncによる、より良いプレイ環境の構築を目指すなら、まずはこのラインを基準に製品を検討すると良いだろう。

[制作協力:MSI]

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