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「自由なVR」のための背負いPC「VR GO Backpack」をZOTACが披露、ZOTAC10周年記念イベントで

text by 関根慎一

 ZOTACは、10月に創業10周年を記念して新製品発表会ならびにeスポーツイベント、工場ツアーを香港で行った。今回、その発表会とイベント、工場ツアーを取材する機会があったので、前後編の2回にわけて紹介していきたい。

 前編となる今回は、発表会とイベント。流れとしては、まずCEOのTony Wong氏が壇上に立ち、同社の10年を振り返った。その後、ミニPC部門のJacky Haung氏、ビデオカード部門のDanny Wong氏がそれぞれ新製品を発表していた。

CEOのTony Wong氏
2006年に設立
最初に発売したのはGeForce 7300GTビデオカードなんだとか
小型PCに関してはかなり早い段階から手がけていた
水冷ビデオカードもいち早く発売
最近ではスマートホーム向けのデバイスなどもラインナップしているという

VR向けのバックパック型PC「VR GO Backpack」を解説

VR Go Backpack
HTC Viveと並べたところ。背面には排気口や電源インジケータがある

 さて、イベントで最も注目されたのはVR向けのバックパックPC「VR GO Backpack」を紹介したJacky Haung氏のセッションだ。

 6月のCOMPUTEX TAIPEIで大きな話題になったので、覚えている人も多いと思うが、ケーブルを気にせずにVRヘッドセットを使うため、バッテリー内蔵の高性能PCを丸ごと背負ってしまう、という剛毅な製品だ。COMPUTEX TAIPEIのプロトタイプは布製バッグにPCコンポーネントを収納した状態だったが、今回の正式発表版は専用の硬質筐体が用意されている。

 VRにおける"背負い型"PCの一番のメリットは、配線を気にしなくて済むことだ。

 通常、VRコンテンツが動く高性能PCとVRヘッドセット(HTC Viveなど)の間には長い配線が存在する。そのため、体を動かすVRコンテンツを楽しむ場合は「配線に引っかからないよう、気にしながら楽しむ」か「配線を気にしなくて済むよう、介添人がつく」ことになる。この問題の解決を図ったのが本機の最大の特徴だ。

 「VR GO Backpack」の詳細な仕様はまだ固まっていないとのことだが、ビデオカードには最低でもGeForce GTX 1070を採用するという。日本での発売時期はアナウンスされていないが、海外では11~12月頃の発売を予定している。価格はおよそ3,000ドル前後の見込み。

 ZOTACのスタッフに尋ねたところ、VR GO Backpack使用時の総重量は5kg程度とのこと。VRの売りはヘッドセットを装着して映像作品世界に入り込んだかのような感覚が得られる没入感であるが、機材を背負うという特性上、体を激しく動かすタイプのコンテンツを楽しむ際には重量感を意識してしまうかもしれない。プロトタイプで不評だった「背中に熱が篭もる」問題については、先述の通り排気口を背面側に向けたことで緩和を図っている。

 また、外観を見る限りでは、背面側に排気口が見られるほか、上面と側面にHDMIやUSB 3.0などの入力端子が確認できる。また背面下部にはランプが設置されているが、これはバッテリー残量を示すインジケータの役割を果たす。ランプが2列あるのは、バッテリーパックを2つ内蔵するため。2時間の充電で最大2時間稼働する。

 インターフェイスは、右側面にLAN端子、DisplayPort、HDMIが各2つ、USB 3.0×4、SDメモリーカードスロット×1、ヘッドフォン端子×1、マイク端子×1、DC入力×1。上面にはUSB 3.0×2、HDMI×1、DC出力×1。左側面には電源ボタンを備える。

 駆動音もそれなりにするが、これはHMDと併せてヘッドフォンも併用するケースが多いというVRの特性もあって、問題にはならないだろう。

 ちなみに、ついつい「キワモノ」扱いしたくなるこの製品だが、同種のPCは、COMPUTEX TAIPEIでMSIも発表。製品化を競い合っている。面白いのは両者でアプローチが違うことで、例えばZOTAC製品ではヘッドセット接続ケーブルの長さを調整できるようにしてストレス軽減を図っているが、MSI製品では最短にすることでストレス軽減を図っている。最先端の製品だけに、発売時はさらに改良されている可能性もあるが、なかなか面白い状況と言えそうだ。

バックパックPCを解説したのはミニPC部門のJacky Haung氏。ちなみに同氏には以前こちらでインタビューをさせていただいた。
右側面には各種端子が見える
HTCVive+Viveコントローラ接続時の端子部
本体上面
バッテリーは左右1つずつ
電源ボタンは左側面上部
実際に背負っているところ
ケーブルがまとめられるようになっているほか、腰で重量を受けるウェストベルトも備える
ショルダーストラップがカモフラージュ柄のモデルも用意する

10周年記念の製品群を発表液冷ビデオカードに液冷仕様の自作キット、RGBで光るSSD

ZOTAC創業10周年を記念して発売する「ZOTAC GeForce GTX Arctic Storm Thermaltake 10Year Anniversary Edition」
背面
紹介された製品群

 このほか、10周年記念の製品群として「ビデオカード」、「ミニPC自作キット」、「SSD」、「HB SLI Bridge」が発表された。

 まず、ビデオカードは液冷専用モデル「ZOTAC GeForce GTX 1080 Arctic Storm Thermaltake 10 Year Anniversary Edition」などを展示。主なスペックは、ベースクロックが1,657MHz、ブーストクロックが1,797MHz、VRAMは8GB GDDR5X、メモリクロックは10GHz。インターフェイスはDisplayPort×3、HDMI×1、DVI×1。「液冷専用」であるあたり、ハイパフォーマンス指向を強く念頭に置いたモデルといえる。このほか、「GeForce 1080 AMP EXTREME」や「GeForce GTX 1060 MINI」も展示していた。

 ミニPC自作キット「MAGNUS EN1080」は、ミニなのに液冷、さらに最大32GBまでのメモリを搭載可能なハイエンド仕様。液冷なのはビデオカードとCPUで、それぞれGeForce GTX 1080とCore i7-6700(3.4GHz)を搭載、VR用途にも耐えるという。主なインターフェイスはHDMI×3、DisplayPort×2、USB 3.0×4、LAN端子×2。本体サイズは203×225×128mm(幅×奥行き×高さ)。

 SSD「10 Year Anniversary Edition SONIX SSD」は現行製品「P3400 SSD」とスペック上の仕様は同一だが、10周年を記念したRGB対応LEDを搭載しているのが特徴。単色LEDを搭載したモデルは昨今のトレンドの流れに沿って出始めているがRGB LED対応のモデルはおそらく初めて。RGB対応LEDを搭載したマザーボードやビデオカードがハイエンドモデルとして登場してきているが、SSDにもこうした流れが達してきたと言えそうだ。

PCに組み込んだ作例。マザーはASRock、ケースはThermaltake。ちなみに、近年ZOTACはASRock、Thermaltakeの2社とコラボレーションすることが多いが、これは本社主導の“たまたま”だそう。日本人としては、「日本国内代理店が共通(ASK取り扱い)」という理由もありそうに思えるが、特にそうした理由はないとか
「GeForce 1080 AMP EXTREME」を組み込んだPCの作例
「GeForce GTX 1060 MINI」を組み込んだPCの作例。短いクーラーを活かした液冷PCの構成となっている
ビデオカード部門のDanny Wong氏。同氏のこだわりもこちらで掲載済み
NVIDIAのVP of Sales、John Milner氏も登壇
ミニPC「MAGNUS EN1080」
「10 Year Anniversary Edition SONIX SSD」
力の入れ具合の反映なのか「10周年記念ケーキ」としてEN1080を模したケーキが用意されていた。ベース部分も食べられる
関係者で記念撮影

ZOTAC主催のゲーム大会も実施

ZOTAC 10th Year Anniversary World Cup
ルールは16本先取の。引き分け時は2本先取のBO3となる

 なお、「ZOTAC創業10周年記念イベント」の一環として、ZOTACが定期的に開催しているゲーミング大会「ZOTAC CUP」のオフライン版として、FPSタイトル「CounterStrike Grobal Offensive」で覇を争う世界規模の大会「ZOTAC 10th Year Anniversary World Cup」が開催された。

 この「ZOTAC CUP」、今のところ日本で積極的な展開はなされていないが、日本からも4dimensioN.eTROVE(4dN)が出場、世界の各地域(アメリカ、韓国、中国、日本、香港、ヨーロッパ)と争うかたち。大会で使われた機材は同社のミニPC「MAGNUS EN1070」(GeForce GTX 1070とCore i5を搭載)だった。

 話をゲームに戻すと日本の4dNは、3位決定戦で欧州のプロチーム「Kinguin」に惜敗。最終成績は全6チーム中4位という結果になった。大会はややクローズド気味のものだったが、地元香港の一般選手も応援に駆けつけ、eスポーツならではの盛り上がりを見せていた。

出場した4dNの選手たち
試合前、持ち込んだデバイスをセットアップする選手たち
大会には地元香港のチームも出場していることもあり、一般の選手も応援に駆けつけた
【ゲーム大会の模様】