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東京・神保町で軽食付き懇親会「自作PCの夕べ」が開催、名物ライター陣のトークや殻割り体験で盛り上がった4時間超をレポート
Kaby Lakeの極冷で7GHz超達成、背負い型PCの体験やWindows 10 Proの解説まで……
2017年3月6日 00:00
2月25日(土曜日)に東京・神保町のインプレス社内にて、DSP版Windows 10 Pro購入者向けの懇親会「自作PCの夕べ」が開催された。同イベントは、DSP版Windows 10 Proを購入し、キャンペーンに当選した方々に向け、自作PCの楽しさを紹介するという趣旨。
本誌やDOS/V POWER REPORTで人気のテクニカルライター諸氏による3部のセッションを中心に、インテル製CPUのヒートスプレッダー外し、いわゆる「殻割り」を体験できるコーナーや、ZOTAC製バックパックPC「VR GO」とHTC Viveで構成された、ケーブルレスで歩き回れるVR体験コーナーなど、最新の自作PC事情を体験できるコーナーが設けられた。
開場は18時からと、文字通り「夕べ」の開催となったが、軽食やアルコールを含んだフリードリンクが振る舞われ、またセッションの聴講も席替え自由となるなど、ゆったりした雰囲気での進行となった。
高橋+加藤コンビのトークは、やっぱり危険発言も!?
セッションの皮切りとなったのは、DOS/V POWER REPORTでもおなじみ、高橋敏也氏と加藤勝明氏による『最新自作事情まとめ+業界裏話』。
今回は「Kaby Lakeってホントのところはどうなのよ?」「GeForceとRADEONの話」「ら、Ryzenってどうなんですか?」「テクニカルライターをやっていて○○と思った瞬間」の4点のテーマで、両氏がボケとツッコミを披露しつつコメント。
「Kaby Lakeは、OCで攻められるCore i7-7700Kとi3-7350K、4スレッドになって性能向上が大きなPentium G4600に比べるとi5系が弱いのが気になる」(加藤)や「自作派にとってはチップセットの強化が大きく、むしろ『マザボが主食』的では。マザーボードをじっくり選ぶと楽しめます」(高橋)
「ビデオカードの値段が全般的に上がっている中でRADEON RX480と470は安い。この価格ならいい選択肢だと思います」(高橋・加藤)「3月にNVIDIAの新製品発表があり、そこでGeForce GTX 1080Tiが出るのでは言われていますが(注:この時点では発表前)、このタイミングというのはVegaシリーズこと次期RADEONの性能が判明したからでは」(加藤)といった、冷静かつ自作派の同意感が強いコメントの数々を、笑いを交えつつ披露。
ホットになったのは、発売直前となったRyzenの話。高橋氏が「やっぱりこの価格なら1800X買うでしょ」と買う気満々の発言からスタート。
対して加藤氏は「公式発表では低消費電力とは言っているが、ワットパフォーマンスや実電力に関する情報が出てこないので、そこが気になってます。TDPもインテルとは測定方法が違うはずですし」「マザーボードメーカーに聞くと、CPUが来たのがかなりギリギリと言いました。AMDってこれまでもマザーやCPUクーラーとの連携が良くない時があり、そこはとても勿体ない」と冷静なコメントを。後者に関しては高橋氏も「悪いところでAMDらしいよね」と頷いており、このあたりはぜひ改善してほしいと要望していた。
ただし加藤氏も、性能的には期待はしており、また「DOS/V POWER REPORTでは、ライターの競作で自作例を出すのですが、そこでCPUが被りにくくなるのは大きい」と、本音度の高い(?)コメントも飛び出していた。
阿久津氏のセッションではハード性能を活かすProの機能が丸わかり
続いてのセッションは、マイクロソフトウォッチャーとして知られるライター、阿久津良和氏による「Windows 10 Proの『良いところ』」。トークには高橋氏も入り、Win 10 Proの良さを紹介する……予定だったのだが、冒頭は阿久津氏が20年ほど前のPC誌で編集をしていた頃の高橋氏の話からスタート。予想外から責められた高橋氏がめずらしく受けに回る一幕も。
さて、本編の進行としては、まずはProだけが使える重要機能として、2TBまでのメモリサポートや、純正のリモートデスクトップといった、ヘビーユーザー向けの有り難い機能について紹介。
「Windows Updateでの更新一時停止」や、ストレージ暗号化「BitLocker」、各種リムーバブルドライブの暗号化「Bitlocker To Go」といった機能を紹介。とくにBitlockerとTo Goはベンチ結果を交えて「今のドライブではあまり遅くならない。情報漏洩対策としても有効なので、ぜひ活用してほしい」とアピールした。
後半には、次のWin 10大型アップデートとして期待される「Creator Update」の新機能についても紹介。結論として、「ハードウェアの性能を最大限に引き出すにはやっぱりPro」とまとめた。
極冷OCセッションは清水氏が無事7GHzオーバーを達成
最後のセッションとなったのが、プロオーバークロッカー清水貴裕氏によるCore i7-7700Kの液体窒素冷却オーバークロック(OC)の実演だ。今回はCINEBENCH R15での高クロックチャレンジと、動作クロック7GHzオーバーの2点への挑戦。
「極冷時に起動に手こずることはあるものの、心情的には『i7-7800K』ぐらいの伸びを見せる当たり石」と清水氏が語るCPUと、ASRockのマザーボード『Z170M OC Formula』をベースにした、同氏が普段使っている極冷環境でのアタックとなった。
清水氏は「設定は(UEFI上の文字が)真っ赤です。空冷でこの設定だとマザーボードが(過電圧で事故が起こって)光るので真似しないでくださいね」といった冗談で会場を沸かせつつ、クロックを順調に上げていき、テストを実行。
結果としては、CINEBENCH R15のマルチスレッドでは、6.755GHzでの4コア動作で「1493CB」を記録。起動クロックでも再起動時に苦戦しながらも、無事7GHzオーバーを達成し、大成功となった。なお、Kaby Lake全体での極冷OCでの特性傾向に関しては、「Skylake比でもプラス300MHzぐらいが狙えて、やはり優秀です。ただしOC時では発熱が高い傾向で、コア電圧が1.22Vぐらいでも、クロックを上げるとコア温度が80℃出てしまう。Skylakeを同条件にすると、だいたい1.28Vぐらいで同程度の温度という感じです」とコメント。
「クロックを見るだけなら5.4から5.5GHzまでは空冷でも行きますが、5.6GHzは難しい感じ。合わせてコア温度の高さから、本格的にOCをするにはSkylake以上に『殻割り』は必要です」ということで、優秀ながらも発熱対策に関してはより厳密に行う必要があるとまとめた。
OSに関しては「最近のCINEBENCHはWindows 10環境で良い結果が出るため、競技OCでも10を使う人が増えている。ただしクロックに関しては10は全てのスレッドに負荷を分散するためか、XPのほうが有利」と、Win 10は極冷OCの世界でもメリットがある点もアピール。
なお、アタック終了後は、来場者が液体窒素を注いで試せる状態に。「起動すれば基本的に冷やせば冷やすほどいいので、以前のCPUのような液体窒素の供給量を調整しての温度コントロールは必要ありません。その点では楽です」ということで、清水氏は「参加者にどんどん注いでください」と薦めていた。
VR体験や殻割り+OC体験コーナーなども盛況
セッション会場のほかには、冒頭で紹介した殻割体験コーナーや、VR体験コーナーなど、最新の自作PC事情を体験できるコーナーも常時設けられており、セッション中の休憩時間などを中心に人気を博していた。
殻割り体験コーナーでは、清水氏や清水氏のチーム「OC部」部員の鈴木海斗氏による簡易OC耐性テスト、および鈴木氏によるi3-7350KのOC実験などを実施。後半では発売されたばかりのASUS製マザーボード「ROG MAXIMUS IX APEX」とi7-7700Kによる極冷テストなども実施された。
最後には高橋氏の「では皆さん、2日の夜にお会いしましょう」という言葉と、それを受けた参加者の笑いで締め。
賑やかながらも落ち着いた感じで進行した本イベントは「自作PCの夕べ」という緩めのタイトルのごとくゆったりしつつも、アツい参加者の皆さんも相まって、実に濃厚なものとなったのが印象的だった。