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成人向けVR対応ゲーム「カスタムメイド3D2」の体験イベントが再び開催

ユーザーの視線にキャラクターが反映するデモも実施 text by 関根慎一

 美少女ゲームブランド「KISS」のアダルト向け3Dゲーム「カスタムメイド3D2」のVR体験イベントが3月4日(土)に開催された。会場は秋葉原、廣瀬本社ビル5Fのイベントホール。事前申込み制で募集人数は200名。入場料は4,000円。なお、開催は今回で2回目。

 カスタムメイド3D2は、3Dモデルのメイドキャラクターを育成する趣旨のアダルトゲームタイトル。比較的自由度の高いキャラクターメイク、会話によるコミュニケーションや着せ替え、ダンスなどの各種イベントも楽しめる。

 イベントでは、カスタムメイド3D2が搭載しているVR機能を体験できたほか、出演声優のトークショーやライブなどを実施。VR体験イベントというよりはファンイベントの傾向が強く、会場のスタッフによれば、来場者の約3割は前回も参加した人だという。

 主なイベント内容は前回と同様だが、VR体験会後に実施しているライブを別会場とした。募集人数は前回の100名から200名に増員し、入場料も2,500円から4,000円に値上げしているが、VR体験会場は開場直後より多くのファンで賑わっており、ファン同士の交流も盛んな様子だった。

ファンイベントらしく、物販コーナーには長い列が形成された
物販コーナーの様子
VR体験中の様子
前回に引き続き、自分で作成したデータをQRコード化して読み込ませる仕組みを用意
男性向けタイトルだが、女性ファンも獲得している

視線の動きにも対応したVR HMD「FOVE 0」を使ったデモも実施体験用機材は前回から増強

 カスタムメイド3D2は、豊富な追加コンテンツと、業界最速レベルのVR対応アップデートが特徴のひとつとなっている。

 2月に公開されたパッチでは、開発キットが販売されている視線追従機能搭載VR対応HMD(ヘッドマウントディスプレイ)「FOVE 0」への暫定対応を行なっており、プレイヤーがメイドを見たとき、注視した部位によって異なる反応を返すようになった。

今回、初めて体験コーナーが設けられた「FOVE 0」
FOVE 0用のポジションカメラ
FOVE 0体験中の様子
2月のアップデートでFOVE 0に暫定対応した
FOVE 0を使って注視した部位によって表情が変わる
ポジションカメラが捉えている映像。FOVE本体内蔵のセンサー位置が白く表示されている

 VR体験会ではリリース前の新バージョンとして、UI「タブレットUI」を試せた。これは近日公開予定の「カスタムメイド3D2 バケーションパックVR」で実装される機能の一つで、新UIのほかにはメイドと遊べるいくつかのアクティビティが追加される。

 2016年にリリースしたVR対応パッチではVR HMD装着時の顔の向きに追従するUIを採用していたが、タブレットUIでは追従機能をなくし、さらにコントローラで掴んだUIを移動できたり、ベゼル部分にあたる枠をコントローラで掴んで拡大/縮小したりできるようになった。KISSのスタッフによると、旧UIに対する意見を可能な限り汲み取って実装したという。ただ、ユーザーが旧UIに慣れていることで、UIの大幅な変更により逆に使いにくくなる可能性もあることから、要望があれば旧UIに切り替えられるようにするかもしれないという。

新たに実装される「タブレットUI」。旧UIよりもすっきりとした見た目になっている
コントローラで快適に操作できる
キャラクターモデルを確認するのに邪魔な場合は、脇に寄せておける
夜伽の際の行為を選択するUIも、簡易なものに変わった
「バケーションパックVR」では、リゾート地を舞台にメイドと遊べるいくつかのコンテンツを追加した
嫁イドがベッドルームに起こしにきてくれるという内容の追加コンテンツのひとつ

 体験用の機材はHTC Viveが5台とOculus Riftが5台、そしてFOVE 0が1台の計11台体制。前回はOculus RiftとViveが各4台の8台体制だったので、体験の規模は拡大している。また、前回になかった要素としては、2016年末に発売されたOculus Rift用コントローラ「Oculus Touch」が使えるようになっていた(前回はReap Motionを使ってコントローラの代わりにしていた)。

HTC Vive
Oculus RiftとOculus Touch
試用機として提供されたパソコン工房のPC
同じく試用機のツクモ「G-GEAR」

VRデバイスの現状がわかる「VR講習会」を今回も実施Oculus Rift値下げや、VR・MRの新デバイスに言及

カスタムメイド3D2、VR対応の歴史

 事前告知にはなかったが、KISSの技術担当スタッフ、ねい氏によるトークセッション「VR講習会」も実施された。前回の開催時にも実施していたセッションだが、プレゼンする情報が一部更新されていた。

「VRデバイスは、基本的にスマホの部品で構成されています。以前は研究開発用で数百万円するような機械でしたが、現実的に買える価格まで低下したのはスマホが普及したおかげです」

 直近のトピックとしては、3月からOculus Riftがコントローラ込みで3万円程度値下げされたことを挙げている。

「このタイミングでなぜ大幅に値下げされたのかは謎ですが、Oculus Rift CV1については直接の後継機の話も聞かないので、在庫処分という感じではないです。鼻当ての部分がフィットしないなどサイズ感がアメリカンなのと、オフィシャルのソフトウェアが時々誤動作するなど問題点もありますが、手に入りやすくなったことは歓迎したいですね」

「Oculus Riftの次期製品としては、『Santa Cruz』と呼ばれるスタンドアロン型のVRゴーグルがリリースされるようです。モバイル向けと目されていて、処理能力もそこそこあると予想されています。カメラが内蔵されており、これは一時的に(現実世界の)周囲を見渡せる安全性のためとも言われていますが、画像認識によるトラッキングに使う可能性もありうるでしょう。ポイントはやはりケーブルレスという部分で、このイベントに来場されている方からも『ケーブルは邪魔だなあ』というご意見をよくお聞きしますね。スタンドアロンなので、装着感としては後頭部にあるバッテリーの重量が気になるという話も聞きます」

VRデバイスはスマホの部品で構成されているという
Oculus Rift雑感
スタンドアロンで動作するOculus Santa Cruz
HTC Vive雑感

 一方のHTC Viveに関しては、幅広いゲームタイトルへの対応と、堅牢性が特徴と話した。

「重量はありますが、Oculus Riftよりも丈夫な点が評価されて、アミューズメント施設などで導入されているケースはHTC Viveの方が多いように思います。サードパーティ製の無線アダプタも開発が続いており、どうやら遅延も小さいようなので期待しています。後頭部のバッテリーが大きめなので、アダルトコンテンツで使用することを考えると、横になって使いにくいところが気になるかもしれません」

サードパーティが開発中のHTC Viveワイヤレスアダプタ
貼り付けたものをなんでもViveコントローラにできる「Viveトラッカー」
Oculus RiftとHTC Viveの仕様比較。Oculus Riftは最近価格が改定され安価になった
ねい氏べた褒めのPSVR
PSVRとOculus Riftの仕様比較

 また品薄が続いているPSVRについても、VRプラットフォームとしての強さを評価する見解を述べている。

「PSVRはハードウェアのクオリティも秀逸ですし、着脱のしやすさはVRデバイスの中でも随一だと思います。できるだけドット感(スクリーンドア効果)を感じさせない工夫もすごい。今のところ公式に『バイオハザード7』がVRで遊べる唯一のプラットフォームというのも強いですよね。品薄が続いているのは、単に生産が間に合っていないだけだと思います」

「PSVRをPCでも使えるようにするドライバが有志によって開発されていますが、うちでは試していないです。非公式なのでセキュリティ面でも推奨できませんが、純粋に技術的な観点では興味があります」

 カスタムメイド3D2は新しいVRデバイスに積極的に対応するタイトルだが、今後もユーザーの意見を取り入れつつ新対応と改善を続けていきたい意向を示した。

「VRの良さは、体験しないと伝わらないものなので、イベントの体裁を採っています。最近はいわゆる"スマホVR"で手軽にVRを体験しやすくなってきていますが、ヘッドトラッキングができないので、スマホVR向けのコンテンツは周囲を見回すコンテンツが中心です。動き回れないんですよね。なのでスマホVRだけを体験して『VRってこんなものか』とは思わないでほしい、というのは繰り返し申し上げていきたいところです」

5K解像度と軽量さが特徴のStar VR
MRデバイスも紹介
一向に詳細が明らかにならないMagic Leap
パソコン工房のVR向けBTOPCの一例
こちらはツクモのVR向けBTO PC

アダルト分野に定着しつつあるVR、コンテンツの充実は継続課題

 来場者の傾向について、前回の開催と比べて変化のあったところは、来場者がVR慣れしてきているという点だ。前回の開催では「VRを体験しに来た」来場者が多かったのに対し、今回は「コンテンツ自体のアップデートを体験しに来た」人が多い印象を受けた。

 会場のスタッフからも、来場者のうち半数以上はPC上のVRコンテンツを体験済みで、イベントに来場する人は、ほとんどが「『嫁イドを愛でる』というコンテンツのファン」という話を聞くことができた。

 もちろん、来場しているのはVR対応に熱心なKISSのユーザーという点も忘れてはならない。しかし前回(2016年12月)の開催時に来場者の間にあった「VRそのものに対する物珍しさ」は薄まり、VRというプラットフォームを前提として「次はどんなコンテンツを見せてくれるのか」に期待する空気があったことは確かで、VRというプラットフォームがアダルトというカテゴリに馴染んできたように感じられた。

 それは裏を返せば、VRだけでは人を呼べなくなる段階に近づきつつあるということでもあり、今後はコンテンツの強度がより重要になるのは間違いない。これからはVRデバイスに限らず、VR対応のコンテンツにも注目していきたいところだ。