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「アニソンはハイレゾだとひと味違う?」
“ASUSのNAS”をオーディオプレイヤーにするイベント実施

text by 日沼諭史

NASを使ってハイレゾのアニソンを体験

 オリオスペックは12日(土)、ハイレゾ環境とハイレゾ音源、NASを使ってアニソンを聞く体験イベントを開催した。

 解説は、オーディオライターの野村ケンジ氏と、ASUSグループのNASメーカー「ASUSTOR」の国内代理店であるユニスターの越沼哲史氏。

 ちなみに、そもそもこのイベントを企画したのは、「ハイレゾオーディオに強いASUSTOR製NASの特徴をより多くに知っていただき、“ハイレゾオーディオのNAS=ASUSTOR”というイメージをつくっていきたいから」(越沼氏)という。

 イベントでは、大容量になりがちなハイレゾ音源ファイルの保管と、ハイレゾ再生に適した機能をもつNAS「AS-202TE」のセットアップ方法、実力を紹介したほか、アニソンのハイレゾ対応に関する裏話も飛び出した。

「ASUSTOR=ASUSグループのNAS」はサウンドも得意

オーディオライターの野村ケンジ氏
ASUSTORの国内代理店、ユニスターの越沼哲史氏

 さて、今回のイベントで使われたAS-202TEは、まさに「ハイレゾ向けのNAS」と言える製品。USB DACやアンプ、ハイレゾ対応スピーカー、ハイレゾ音源をそろえるだけで、ハイレゾ環境を構築できる。

 メーカーは先述したとおりの「ASUSTOR」で、同社は「ASUSグループのNASメーカー」をウリにしていることでも知られる。

 今回のイベントは、野村氏が個人的に購入したAS-202TEのセットアップから始まり、その後ハイレゾ音源のアニソンを参加者とともに聞くという内容の濃いものだ。

 さて、イベントの「前半」は開梱とHDD装着、USB DACの接続、そしてハイレゾ再生の準備完了まで。

 初期セットアップを終えるとNASのアップデートが始まり、その後ハイレゾ再生用ソフト「Hi-Res Player」をインストールすることになるが、説明しながらのセットアップでも所要はおよそ1時間。「簡単さと素早い処理が身上」(越沼氏)なASUSTOR製NASの特徴をアピールする内容となった。

 以下、主な手順を紹介していこう。

開梱してセットアップを始める野村氏
内蔵するHDDはWestern DigitalのNAS用HDD RED 4TB×2台
慎重にフレームに取り付けていく
付属ソフト「Control Center」でLAN内のAS-202TEを検出
セットアップ手順は、最新OSへのアップデート、初期設定、RAID環境の構築、という流れ。シャットダウンと再起動が高速なのも特徴だ
ミラーリングで使用するため、総容量は約半分の4TB以下に
管理画面にアクセス
ハイレゾ再生前にあらかじめ設定しておくべき箇所がある
App Centralで「Hi-Res Player」をインストール
関連する必要なアプリも自動でインストールされる
次に設定画面で「メディアモード」をチェック。こうすることで楽曲再生などの処理が優先される
USBポートにUSBメモリを接続し、音源をコピー
管理画面上からファイルコピーできるほか、Windowsエクスプローラを使ってファイルコピーすることも可能
USB DACを接続後、Hi-Res Playerを起動。設定画面で使用するUSB DAC以外のデバイスはオフに。こうすることで安定性が増すという
「Hi-Res Player」の画面。ここまでで1時間弱。
コストパフォーマンスに優れたNAS「AS-202TE」
HDMIポートを使うと管理画面などをテレビに出力可能。音声も出力されるので、テレビとNASだけで音楽再生環境が整う(写真では上位機種AS5002Tを使用)

 なお、今回の「AS-202TE」は、2ベイタイプの製品。

 デュアルコアの1.2GHz Intel Atomプロセッサー、1GB RAMを搭載、実売2万5000円前後とリーズナブルな価格設定ながら、この価格帯では珍しいHDMIポートを搭載。管理画面や内蔵アプリで再生した映像・音声を簡単にテレビ出力できるなど、コストパフォーマンスに優れた1台となっている。

 また、USB 3.0ポートとUSB 2.0ポートを2つずつ用意しており、ここにUSBメモリやUSB HDDなどを接続してデータのコピーやストレージの拡張が可能。

 NAS上で動作する内蔵メディアプレーヤーアプリ「Hi-Res Player」では、USBコネクタに接続したUSB DACで、ハイレゾサウンドを出力できる。つまり、PCなどを使うことなく、ダイレクトにオーディオシステムに接続してハイレゾ再生できるユニークな仕組みを備えているわけだ。

 Hi-Res Playerは、MP3などの圧縮音源に加え、WAV/FLAC/DSDフォーマットの再生に対応。DLNAサーバーとして稼働させる場合でも同様のフォーマットに対応する。なお、DSDは11.2MHz(DSD256)までサポートする充実っぷり。Hi-Res Player以外にも独自のアプリが豊富に用意され、ユーザーの好きなように新しい機能をNASに追加していけるのも特徴だ。

アニソンをがっつり試聴繊細な音や「ボリュームMAXでも割れない音」がハイレゾのポイント

DENON PMA-50
DALI ZENSOR1
iFIオーディオ Retro Stereo 50
ELAC BS243 Black Edition

 試聴に使用した機材は、DENONのUSB DAC(アンプ)PMA-50にスピーカーDALI ZENSOR1を組み合わせたシステムと、iFIオーディオのアンプRetro Stereo 50にスピーカーELAC BS243 Black Editionを組み合わせたシステムの2種類。前者はAS-202TE上でのテスト再生に用い、後者はあらかじめ用意してあったAS-202TEの上位機種AS5002T上でのアニソン試聴に用いた。

 1曲目は、アルバム「JAM Project 15th Anniversary STRONG BEST ALBUM MOTTO! MOTTO !! -2015-」から。影山ヒロノブらのアツい歌声に、ギター、ドラム、ストリングスなどが「これでもか」というくらいに分厚く詰め込まれたハードロックだ。ファイルフォーマットは96kHz/24ビットのWAV形式。

 ハイレゾ音源は繊細な音の変化も表現できる幅広いダイナミックレンジが特徴の1つで、その特徴を活かした音量低めの曲がよく聞かれるが、「JAM Project」の曲は逆に全ての楽器、歌声をボリュームMAX、音圧重視で収録している。しかし、ハイレゾのおかげで音割れは一切なく、大ボリュームの中でも楽器や音の聞き分けが可能になっていることが分かる。野村氏はこれを初めて聞いた時に、「ハイレゾはこういう風にも使えるのか」と関心したという。

「ハイレゾだから聞こえる秘密」も

μ'sの「Snow halation」を再生

 2曲目は、爆発的な人気を誇るアニメ「ラブライブ!」からμ'sの「Snow halation」をセレクト。

 同楽曲は以前から48kHz/24ビットで配信されていたが、8月に新たに配信が開始した96kHz/32ビット WAVを試聴した。元々のマスター音源は48kHz/32ビット(Float)だが、新しいものはそこから「32ビット相当のマスタリングをやり直す形で、1音も漏らさずに」32ビット(Integer)化したというこだわりのアルバムだ。

 そしてこの新しい音源には、従来の48kHz/24ビットのものとは明らかに異なる表現力を感じた。

 筆者は普段、スピーカーはDALI MENTOR MENUET、ヘッドフォンはSONY MDR-Z7を使用しており、機材と環境が全く異なるので一概には比較できないが、それらで聞いていた48kHz/24ビットの「Snow halation」と比べると、楽器1音1音の粒度、ボーカルの音像定位がより明瞭。全体的な「音の曇り」の膜が1枚取り払われたような印象を受ける。

 明瞭になったおかげで、逆にコーラス部の声の重なりがずいぶんすっきりした気がしたが、その後、野村氏から「フレーズ毎にコーラスは何人なのかといった部分も聞き分けられるようになる」とのコメントがあり、納得。

 48kHz/24ビットでにぎやかに聞こえていた部分は、それはそれで楽しさはあるものの、より“原音”に近づいたことでその曲の本当の姿が見えてくる。こんな風に新たな楽しみを発見できるのも、ハイレゾの面白さだろう。

 その後は、同じくμ'sの「Wonderful Rush」(96kHz/32ビット、WAV)、分島花音の「RIGHT LIGHT RISE」(48kHz/32ビット、WAV)、fhanaの「いつかの、いくつかのきみとのせかい」(96kHz/24ビット、WAV)を再生。ハイレゾならではの透明感、臨場感のあるサウンドを堪能した。

 もちろんこれは、音飛びが一切なく、終始安定してハイレゾ再生をこなしたAS-202TEの高い性能のおかげでもあるだろう。

左が発売予定のローレンジモデルのNAS。デザインは最近のASUSのWi-Fiルーターによく似ている

 最後に越沼氏からはASUSTORのさらなるローレンジモデルのNASが近日中に発売されることも明らかにした。HDMIポートを備えず、ハードウェアスペックもAS-202TEより低めになるとみられるが、ソフトウェア面の機能に変わりはなく、ハイレゾ再生も同様に行えるとのこと。価格は未定ながら、2万円前後での販売を計画しているようだ。

 また、オリオスペックでもAS-202TEなどで利用可能なUSB DACの対応情報を随時公開していくとのこと。基本的にはUSB Audio Class 2.0対応のUSB DACであれば問題なく使えるとしているが、機種ごとの対応・非対応が明確になれば、手持ちのUSB DACにNASを追加してハイレゾ環境を構築したいと考えているユーザーにとって選択肢が広がることになるだろう。