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カノジョとVRデート……に必要なPCスペックってどれぐらい? VR用PCの話をツクモに聞く
VRアダルトゲーム「VRカノジョ」を堪能するならGeForce GTX 1080 text by 関根 慎一
2016年12月26日 00:10
今年2016年は、Oculus RiftやHTC Vive、PlayStation VRの国内発売や、コンテンツ販売サイトの相次ぐオープンといった出来事を筆頭に、VRゴーグルとコンテンツの供給が本格化した年だ。
対応ゲームなども増えつつあり、秋葉原の店頭では複数ショップがVR体験コーナーを展開している。
そんな中、ツクモVR.では、一部でかなり注目されている「VRカノジョ」のデモを行っている。今回実際にゲームを体験し、「VRカノジョ」をはじめとするVR向けゲームを遊ぶ際、PCはどのような部分を重視すべきなのか、ツクモVR.の新宅氏に聞いてみた。
なお、「VRカノジョ」は、アダルトゲームブランド、イリュージョンのVR専用タイトル。デモに使用されているのは過激なシーンなどが無い体験版だが、体験できるのは18歳以上のみ。
製品版はVive ControllerとOculus Touchへの対応が発表されており、発売予定日は2017年2月28日、予価は税込4,980円。
「VRカノジョ」体験版は動作確認とベンチマークがメイン過激な描写は無いものの体験は18歳以上のみ
国内産のアダルト向けVRコンテンツの本命として注目を集める本作は、いくつかの店舗型VR体験スペースで体験版を遊ぶことができる。ツクモVR.もその中のひとつ。
体験用に用意されているデバイスはHTC Vive+Vive Controller。メニューの選択のみVive Controllerで行なう。主な内容としては、自分でヒロインの居室内を歩き回って、周囲を見回したり、しゃがんで視点を動かしてみたりできるといったもので、それほど動きのある内容ではない。体験時間もごくわずかである。
だが、実際に体験してみると、確かに目の前のキャラクターを中心に動くようになるし、キャラクターモデルに接触しないよう近づく距離を自然とセーブしてしまう。実際にそこにあるのは何もない空間なのだが、あたかも人が存在するように動かないではいられない。脳がまんまと騙されている感覚があった。
VRカノジョを最高画質で遊ぶならGeForce GTX 1080VRゲームはGPUが重要、現行タイトルであればCPUはCore i5で十分
ツクモVR.でVR向けBTO PCの販売や、体験デモを担当している新宅洪一氏にお話を伺い、VRに適したPCのスペックやVR体験の現状についてお聞きした。
――体験スペースには、どういった動機を持って来場される方が多いですか?
[新宅氏]やはり「購入を決めたけど、買う前に触っておきたい」方と「興味があるからやってみたい」という方が多いですね。男性が多いですが、年齢層は男女問わず20~60代くらいまで、とても幅広いです。
――店頭ではVR向けPCの販売も行なっていますよね。複数モデルあるようにお見受けしますが、どう違うのでしょうか。
[新宅氏]基本的にはビデオカードの違いですね。デモ用のPCにはGeForce GTX 1080の最上位モデルを使っています。体験スペースの開設当初は、デモPCにGeForce GTX 1070を使っていたのですが、「VRカノジョ」はVR用タイトルの中でもとりわけ高負荷なタイトルなので、安定してフレームレートが出るように切り替えました。
――VR向けPCを組み上げる上で留意するべきポイントはありますか?
[新宅氏]まずはコンテンツに対してビデオカードの性能が足りているかどうかを確認してください。常時90fpsの性能が出ていないと、快適にVRを楽しめません。なので90fps出る性能は必須条件といっていいでしょう。
また、現在のVRコンテンツは基本的にSLIが効かないので、1枚で強力なカードを選ぶ必要があります。HDMIポートが2つあるモデルなら、別途ディスプレイを接続できるのでセットアップが楽ですよ。
冷却機構も重要です。同じスペックのビデオカードでも、搭載しているクーラーによって性能が変わってきますから。でもこのあたりは、お使いのケースによって選んでもいいのかなと思います。
ちなみにツクモのVR向けBTO PCではMini-ITXのケースを使っていますので、外排気型のビデオカードを採用して、冷却には特に気を遣っています。小さなフォームファクタでも、快適にVRを楽しめる環境は構築できます。もしご興味があれば、ご相談いただければと思います。
――VRコンテンツを遊ぶことを視野に入れたPCのスペックとして、最低限必要なラインを教えてください。
[新宅氏]ビデオカードは、900番台ならGeForce GTX 970、1000番台ならばGTX GeForce 1060です。Radeonであれば、PolarisアーキテクチャのRX 480は欲しいところ。
コンテンツにもよりますが、CPUは現行のCore i5で十分です。でも今後、DirectX 12ベースのコンテンツが出てくることを見越すなら、Core i7で組んでおいてもいいと思います。DirectX 12なら、コア数が多い方が性能が出ますからね。メモリは最低限8GBあれば大丈夫です。
――VRにおけるフレームレートの落差は、どのくらいまで許容できるものなのでしょうか?
[新宅氏]VRの場合、フレームレートは常時90fpsくらいは出ていないと、自分の動きに画面が追従するのが遅れるので、酔いやすくなります。
「VRカノジョ」では画質設定が5段階あるのですが、GeForce GTX 1070では4段階目、GeForce GTX 1080なら5段階目で90fpsを実現可能です。GeForce GTX 1070で5段階目の設定にした場合は、だいたい80fpsくらいまで下がります。80fpsくらい出ていれば、まあそれほど違和感はないのですが、これが50~60fpsくらいにまで落ちると、かなり強い違和感があります。
――90fpsが出れば、画質にはそれほど気を遣わなくてもいいのでしょうか。
[新宅氏]一概にそうとも言えません。例えば「VRカノジョ」は女の子の3Dモデルが売りですが、レンダースケールを初期設定(100%)の半分(50%)にすると、かなり輪郭がぼやけてしまって、著しく臨場感を損ねます。キャラクターが売りのコンテンツならば、画質に妥協はしないほうが良いと思います。
――酔いやすい内容の傾向はありますか?
[新宅氏]レースゲームやフライトシミュレータのように、自分ではなく外の景色がめまぐるしく変わるタイプのシミュレータ系タイトルは酔いやすいです。まさに乗り物酔いと同じような感じになります。
視界の移り変わりと、体の感覚に乖離があるコンテンツ、例えばジェットコースターの映像だと、視界が猛スピードで動いているのに自分の体は静止しているわけですから、これは人によってはかなり「くる」と思います。マルチモニタにはない臨場感という点で相性はすごく良いんですが、それゆえに、といったところでしょうか。
VRカノジョのチラシはあっという間に無くなった!おおっぴらには言えないけど「VRにはエロが求められている」
――体験コンテンツとして「VRカノジョ」を選んだのはなぜですか?
[新宅氏]PlayStation VRにできなくて、PCでできることは何かといえば、一番違うのは「成人向けコンテンツ」ですよね。PC向けVRにおいて、そういった方面への関心は元々高かったのですが、ちょうどツクモVR.を開設したタイミングでイリュージョン(アイワン)さんからお声がけをいただいたこともあって、体験できるようにしました。
お客様の反応も良くて、置いてあったチラシもあっという間に無くなりました。みんなあまりおおっぴらには言いませんが、VRにエロを求めている方は多いです。
――ツクモVR.で体験できる中で、人気のあるコンテンツはどういったものでしょうか。
[新宅氏]一番人気はやはり「VRカノジョ」ですが、「シリアスサム」のようなFPSや、ゾンビが出てくるゲームも人気がありますよ。個人的には、NVIDIAの「VR Funhouse」がおすすめですね。VR空間の中でできるアクションが一通り試せます。ゲームとしてなら、わたしはゾンビゲーが好きです。
――全国的に「VR体験の機会」はまだまだ少ないと思うのですが、これに関して思うところはありますか?
[新宅氏]VRを体験できる機会は、もっともっと増えてほしいですよね。今はスマートフォンでもVRはできますが、それは本格的なVRを想像するための入り口にすぎなくて、わたしとしては、PCで本格的なVRを体験してほしいと思っています。それは画質もそうですが、センサーによる位置トラッキングによって、物が近づいたり、遠ざかったりして、現実に即したより複雑な行動ができる、バーチャルの世界に干渉できる点で大きな違いがあります。
VRは体験しないと絶対に理解できないので、もし機会があって、少しでも興味があるのであれば、どんどん体験してほしいですね。機会がなくても出かけていって体験してほしいくらいですよ(笑)。
――これからVRデバイスが進む方向性は、どのようなものになると思いますか?
[新宅氏]ふたつあると思っています。ひとつは「高解像度化」、もうひとつは「無線化」です。
高解像度化について、4K対応のVRゴーグルというのはすでに存在するらしいのですが、プラットフォームとして動かすにもハードウェアがついてこないので、まだしばらくはPC側の進化を待つ必要があるでしょう。
無線化はもう少し現実的で、HTC ViveやOculus Riftの次期バージョンでは早くも無線化すると言われていますよね。コードはVR空間への没入感を阻害する要因です。HTC Viveの無線化キットというのもあるのですが、日本では技適(総務省技術基準適合証明)を通っていないらしくて、現状、日本では使えません。
そのほかのハードウェアとしては、グローブ型の触覚VRデバイスの噂も聞きますので、これも製品レベルのものが手に入れば置きたいところです。直近では、MSIやZOTACがVR向けの背負いPCを発表していますが、これも準備ができれば体験できるようにしたいと思っています。なんでもかんでも置きたいですね(笑)
――「VR」は普及すると思いますか?
[新宅氏]すると思います。今年は「VR元年」なんて呼ばれていますが、肌感覚として「元年」にしては勢いが良すぎるんですよね。具体的な数字は申し上げられないのですが、HTC Viveの売れ行きもかなり好調です。100本くらい仕入れたのですが、ちょうど今(取材のタイミング)は在庫もかなり少ないですし。
[新宅氏]特に勢いがよかったのは、PlayStation VRが出たときですね。12月も、ボーナスが支給される時期だからか本数が出ています。次は「VRカノジョ」の製品版が発売されたときにもうひと波来るのではないかなと予想しています。
VRコンテンツは、大手のゲームメーカーも開発に着手していると聞きますので、それらの大作ラッシュが来たときにどうなるかは気になりますよね。時期的には来夏くらいでしょうか。家庭で遊べる体感型のゲームが増えたらいいなと思っています。
――ありがとうございました。
[撮影協力:ツクモVR.]