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ビットコインって怪しいの?仮想通貨をマイニングしているユーザーに最近の事情を聞いてみた

数年前とはいろいろ違う?PCマイニングの今、8月1日危機の話も text by 藤本健

無茶なマイニングで電源が火を噴く例も、PCマイニングを行う上での安全管理マイニングが行える環境をレンタルする企業が近い将来誕生する?

[藤本]実際のところ、マイナー太郎さんの場合、収入と電気代の関係って、どんなものでしょうか?

[マイナー太郎]稼いだ金額と電気代の比率は、仮想通貨の相場によっても変わってきます。5月のピーク時は、かなり割もよかったのですが、現在は稼ぎのうちの50%が電気代となっています。やはりイーサリアムの暴落の影響が大きいですね。

ちなみに、最近マイニングされた方の多くは、稼いだ仮想通貨をそのまま保有されることを目的としているので、実際の儲かっているか、損しているかわかりにくい面があると思います。しかし、私は、今後の事業化を目指していることもあり、ビットコインとして入手したら、即、円に換金しているので、損得も見えやすくなっていますね。

[藤本]事業化とはどういう意味ですか?

[マイナー太郎]法人化した上で、いわゆるマイニングファームを展開しようと考えています。つまり100台から3,000台くらいの大量のGPUを並べて工場のようにしてマイニングをしていく、というものです。

それを都内で行うと、家賃や電気代の面でも現実的ではないので、土地などの費用を抑えられる地方でと考えています。まだ更地ではありますが、すでに土地は抑えてあり、3,000台は置けるスペースです。田舎なので、治安もいいですしね。今はそこにどういう施設を建てるのが一番良いのか、見積もりをとっているところです。一方で、司法書士に頼んで法人化の準備も進めていますが、法人化できたら一緒に出資してくれる人を募ろうと思っています。

[藤本]いきなり3,000台という規模は難しいですよね。

[マイナー太郎]そうですね、ビデオカードは1枚3万円程度ですから、1,000万円の出資が集まれば300台くらいからスタートという感じでしょうか。

マイナー太郎氏は様々な機器をマイニングで使用できるのかチェックしているとのこと。
自宅には様々な検証機材が置かれていた。
ビデオカードやマザーボードだけで無く、ライザーカードなどの検証も行われている。

[藤本]実際にマイニングファームをしている人って、日本にいるものなんですか?

[マイナー太郎]日本には、まだあまりいないようです。たとえば電気容量の計算って、なかなか難しい点があるので、プロの電気工事士を付けて設計していく必要がありますし、電気代という面でも決して有利な国ではないので、手を出しにくいのかもしれませんね。

[藤本]私も、昨年、太陽光発電所のメンテナンスを目的に第2種電気工事士の資格を取ったところなので、何かできそうな気もしてきますね(笑)。でも実際に電気関係で何かトラブルことってあるものなんですか?

[マイナー太郎]私は海外のコミュニティーにも入って情報収集をしたりしていますが、海外での事故が2~3ヶ月すると日本でもおこる傾向があり、実際、いろいろなトラブルが出てきています。

たとえば、ケーブルが燃えたとか、電源が燃えたり、爆発した……なんてケースは増えています。変に安いブロンズ電源などは危険ですね。また細かい話ではありますが、SATA電源ケーブルを利用してライザーケーブルに電源供給してビデオカードを動かすことができるのですが、そもそもSATA電源はHDDなどを駆動するためのものであり、あまり大容量での利用は想定されていないんです。そのため、同じケーブル上に3枚以上のグラボに電力供給すると溶けて燃えてしまうんです。コミュニティーでのやりとりを見ていても、マックス2枚まで。何も考えずにタコ足配線をしてしまうケースがあるようですが、絶対に危険なのでやめてください。

一人暮らしの私が言うのもなんですが、常に人がいるところで見張っておく必要があると思います。よくチェックして、焦げ臭くないかなど、監視しておかないと火事になったりする可能性もありますからね。とりあえず、私のところは、耐熱マットなどを使って、もしも溶け落ちても火事にならないような対策はとっています。最近マイニングで自作PCに注目が集まっていますが、事故が頻発して、自作PCはダメなんて言われると困りますしね。

[藤本]なるほど、その点は定格容量なども、しっかりチェックして設計していかないと、危険ということですね。ところで、法人となると、課税がどうなるのか、というのも分かりにくいところですよね。

[マイナー太郎]私も税務署などにいろいろ聞いていますが、前例がないだけに、難しいようです。今のところ、トレードで得た利益は課税されるだろう、ということですが、マイニングで得た利益はわからないし、定義されていないみたいなんです。

[藤本]とはいえ、普通に考えれば、売り上げがあって、電気代などの経費があり、購入したGPUなどの資産に対しては減価償却で計算するか、そもそもが3万円の機材なので、経費として、その年の経費として引くけば利益が計算されますから、そんなに難しいことではないでしょうね。

[マイナー太郎]そう、即ビットコインを円に変換していれば、難しいことはないかもしれませんね。問題は、ビットコインなど仮想通貨のまま残して、その仮想通貨でモノを購入したら、どうなるかなどです。たとえば、GPUなどは仮想通貨のままで簡単に購入できる時代ですから。

[藤本]確かに。仮想通貨のまま残して、売り上げを小さく見せるといったことも含め、グレーな点は多そうですね。こうした仮想通貨がさらに普及していくと、極論すれば、国家の通貨の仕組み自体が危険にさらされる可能性だってあるわけですからね。

[マイナー太郎]そう思います。いまお金の概念がすごくあいまいになってきていると思いますし、そうした今が一番いいときなのでは……と考えています。今後、日本に限らず、世界中、どの国でも、仮想通貨に対する監視は強めてくると思うんです。そうなってくると、今ほど自由ではなくなる可能性がありますからね。

[藤本]でも仮想通貨になると、国は監視することすら不可能になるんではないのですか?

[マイナー太郎]いいえ、そんなことはないし、考えようによっては、円やドルのような通貨よりもはるかに透明性も高いと思うんです。たとえばビットコインの場合、ウォレットのアドレスが分かれば、そのアドレスがどのアドレスといくらやりとりしたのかを完全に捕捉することが可能ですから。

先日、ランサムウェアに対する支払をビットコインで……というものが大きな問題になりましたが、当然その振込先のアドレスは判明しているので、サイバー警察など、みんながそこからのコインの動きを監視しています。だから、現金化を図れば、すべてが芋づる式にバレてしまうため、大量に集まったコインは塩漬け状態なんですよ。一方で、完全に匿名性をうたったジーキャッシュなどもあります。詳しい方が仮想通貨での募金を募る際、あえてジーキャッシュなどを使っているケースもありますから、これからどうなっていくか、分からない点も多いですね。