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仕事場にゲーミングチェアはかなりアリ!「AKRacing Overture」を導入してみた

座りっぱなしの仕事も「戦闘モード」で1日取り組める! text by 日沼 諭史

AKRacingのゲーミングチェア「Overture」はデスクワークにも最適?

 大事なことなので何度でも言いたいのだが、あくまでも仕事のためにAKRacingのゲーミングチェア「Overture」を導入した。

 結論から言ってしまうとゲームにはゲーミングチェアが最高・最強なのだが、その「ゲーミングチェアは仕事で使っても快適なの?」といった部分も紹介したい。

 というのも筆者、2017年3月に会社をつくって、シェアオフィスの片隅に陣取り、1人で仕事をしているのだけれど、イスはそのシェアオフィスに備え付けのものをそのまま使っていたのだ。もちろん備え付けだからそれほど高価なものでもなく、だからといってその場で投げ捨てるほどの安物でもなく、ごくごく普通の、無難なイス。

 取材のための外出が多く、時期によっては1カ月のうち半分以上オフィスを空けている場合もあり、いつしか「可もなく不可もなく、とりあえず座れるからいいか」くらいの感覚になっていた。本当はシェアオフィスを借りる時「コイツは真っ先に変えてやろう」と思っていたほどなのに。

 しかしながら、オフィスにいる時は1日中だいたい座りっぱなし。そうすると、なんだかやっぱり座り心地に不満を覚えてくるものだ。座面が薄いのでクッション性に乏しく、同じ姿勢で座り続けていると、どうやら無意識のうちに10分おきに座り直すくらい不快に感じていることにも気付いた。これでは原稿執筆が全くはかどらない。そうか、原稿がさっきからちっとも進まないのはイスが良くないんだ。全部イスのせいだ!

 そういうわけで、2017年12月23日に発売したばかりのAKRacingの新ゲーミングチェアシリーズ「Overture」(税込49,800円)を、この年末年始、我がオフィスに迎え入れて使っているのである。

 なお、「Overture」は、国内ではヨドバシカメラ先行販売モデルとなっており、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaやヨドバシカメラ 新宿西口本店には自由に座れる状態のデモ機が用意されている。また、ヨドバシカメラの他店でもデモを予定しているとのことだ。

実はデスクワークでゲーミングチェアを使うと疲れ知らず?

2017年末に発売されたAKRacingの新ゲーミングチェア「Overture」(レッド)

 「ゲーミングチェア」と聞くと、「ゲームプレーに特別に最適化されたイスなんだろうな」と思ってしまうのではないだろうか。

 いわゆる“ゲーマー”ではない筆者も最初はそう思っていた。長時間ゲームをプレーしたり、短時間に集中力を研ぎ澄ませてゲームする用途に、イスとして何が求められ、何がゲームに最適なのかは正確にはわからないのだが。

 けれど、ゲームとはさほど無関係なライターの筆者が長時間集中してデスクワーク(原稿執筆)に取り組むのに必要な要素と、ゲームプレーを快適にする要素は、そう遠く離れてはいないはずだ。むしろ、通常のデスクワークより激しくキーボードやマウスを使うことの多いゲーム環境に最適化されているイスの方が、一般的なオフィスチェアよりも姿勢の保ちやすさや疲労軽減に関する工夫の度合いが大きいところもあるのでは?

 それを確かめるべく、筆者はアマゾンの奥地に……ではなく、とりあえず手元に届いたOvertureを組み立てることにした。

15分で完成!工具もセットになった組立て簡単モデル

オフィスに届いたOverture

 Overtureが梱包されているダンボール箱はわりと巨大。88×68×38cmというサイズは、身長177cmの筆者が中に入ってうずくまれば、そのまま閉められそうなほど。

 シェアオフィスのスペースは、仕事柄こういう大きな荷物が届くことも想定して一番広い小間を選んだのだが、デスクや棚もあるので開封するとけっこうギリギリ……。皆さんもOvertureを購入したら、組み立てる前に作業スペースを確保しておいてほしい。箱の周りに立てるスペースくらいあればとりあえずはOK、1畳分ほどのスペースがあればゆとりをもって作業できる。

オフィスで開封したら結構ギリギリだった
きれいに収まっている部品を取り出していく
手順書、工具のほかに軍手まで同梱しているのがうれしい

 開封したら箱にきれいに収まっている部品類を取り出し、同梱されている手順書を読みながらイスを組み立てていく。

 組み立てると言っても、特別な工具や準備は不要だ。ボルトを締めるための六角レンチなどの工具も付属しているし、万一のケガを防止する軍手も用意されている(これはなにげに気が利いていてうれしい。途中まで装着するのを忘れていたが)。

【AKRacing Overture組み立て動画(タイムラプス 28秒)】

 作業を効率的に進めるには、当然ながらできるだけ広いスペースを確保するのがおすすめ。

 動画や以下の写真にあるように、筆者の狭いシェアオフィスのスペースでも問題なく組み立てることができた。かかった時間はたった15分。開封して箱から部品を取り出す時間を含めても20分ほど。朝届いたら、始業前の準備運動にちょうどいいかもといった感じだ。

複雑な作業はなく15分ほどで組み立てられる。工具もセットになっておりお手軽だ。

前のめりな姿勢でもバッチリ、机に長時間向かっても疲れないゲーミングチェア

 組み上がったOvertureを見ての第一印象は、「カッケー&デカい!」。

 落ち着いた色合いが施されていることの多いオフィスチェアとは違い、ゲーミングチェアということで、シャープでビビッドな感じのデザインではあるのだが、それでも決して派手すぎることはなく、周辺のデスクなどとのマッチングも特に気にならない。

カッケー!
デケー!
でもそんなに派手すぎるわけでもない!

 シェアオフィスにいる他の人たちの感想も「デカいけどいいね!」というポジティブなもの。こちらから言わなければ「ゲーミングチェア」であることにもほとんど気付いていなかった。

 オフィス全体で完全に什器のデザインやブランドを統一している中だと“浮く”可能性はあるけれど、そうでなければ意外に「ちょっと立派なオフィスチェア」として通用しそうだ。

 で、Overtureを実際にデスクワークに使うとどうなのか。筆者は主な仕事が原稿執筆ということで、普段使っているのはノートPC。ノートPCは画面の位置が低く、視点が下に向くので、姿勢がやや前のめりになりやすい。この点は、多くの場合ディスプレイモニターとデスクトップPCを使っているであろうゲーミング環境と大きく異なる部分ではないだろうか。

 ところが、この前のめり気味の姿勢であっても、Overtureの座り心地には全く違和感がない。それどころか安定感が抜群に高いと思える。座面などに使われている高密度・高反発のモールドウレタンフォームによるものなのか、座面前端の角に太もも裏を押しつける力が少し大きくなるような座り方でも、ブレず、滑らず、しっかり保持してくれる。しかもそれが長時間続いたところで疲れが蓄積することはない。

デスクワークで使用中。こうしてみるとゆったり座っているように見えるが、気持ちとしては少し前のめり気味だ
強度の高いPUレザーの座面。内部には高密度・高反発のモールドウレタンフォームが仕込まれている

 ノートPCの使用中は、リクライニングはほぼ90度に直立させておくのが最も快適だ。背もたれと背中がある程度密着し、ランバーサポートが腰を守るように支えている状態だと、若干前のめりの姿勢でも身体を包み込むようにホールドしてくれているようで、安心感がある。

 さらに昇降機能のあるアームレストの高さを体格に合わせて調整すると、肘周辺を支点に手や腕を動かせるので、余計な力が入らず安定したキーボード・マウス操作が行えるのもポイント。というわけで、Overtureがデスクワーク用途でも十分にその本領を発揮してくれるのは間違いない。適度な座面の固さでなんとなく「戦闘モード」の気分でいられるのが、より仕事向きとも思える。

体格に合わせてアームレストの高さを調整できる

フルキーボード + マウス環境ならぴったりなサイズ感ノートPCメインだとアームレスト位置を少し内側にしたいかも?

アームレストを支点にして操作すると比較的楽ではあるが、ノートPC環境だともう少し狭い方がありがたい

 デスクワークにおいて全ての面でOvertureがベスト、というつもりはない。欲を言えばアームレストの左右位置を(内側方向に)調整できると、ノートPCのキーボード操作がより快適になりそうだな、と思う。

 Overtureのアームレストの位置はフルキーボード+マウス操作の幅を想定しているのか、ノートPCメインのデスクワークではちょっと広いように感じたのだ。

 ただ、そこはゲーミングチェア専門メーカーというべきか、痒いところに手が届くモデルもラインナップされている。アームレストも含め細かい調整機構を備えたを「AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェア」が販売されているので、完璧にフィットするモデルを求める場合はこちらも選択肢に入れると良いだろう。

背もたれの高さがあるためか、なかなかの迫力

 Overtureの“大きさ”についても少し気にかけておいた方がいいかもしれない。今回の筆者のシェアオフィススペースのようにあまり余裕のない空間だと、Overtureの前後左右方向の大きさよりも、どちらかというと高さ方向(背の高さ)が目立ち、外から眺めると圧迫感がある。

 まあ筆者の場合は自分1人しか使わないスペースなので、一度座ってしまえば気にならないし、それまで使っていたフツーのオフィスチェアと比べて前後左右への移動の自由度が少なくなった感じもないから、特にデメリットとは思っていないのだけれど。

 ただ1点注意すべきところは、リクライニングしていったとき。背もたれの高さがあるおかげで、あまり大胆に倒すと、狭いスペースのために背後のパーティションにつかえてしまう。背もたれが180度まで倒れるOvertureのポテンシャルの高さを活かしたいところではあるが、筆者の環境では難しそうだ。

筆者の環境で倒すのはこれが限界、150度くらいだろうか。スペースがあれば180度までリクライニング可能だ。
休憩したいときはこれくらいの角度でも十分。しばらく同じ姿勢で休んでいてもお尻がしびれたりはしない。

 とはいえ、ちょっと休憩したいな、と思ってリクライニングするときは、100度とか110度くらいで十分。ヘッドレストやランバーサポートがしっかり仕事をしてくれているのか、尾てい骨付近にかかる負担が軽く、お尻がしびれるような不快感(国際線をエコノミークラスで乗った時のようなアレ)が一切ないのもうれしい。

ヘッドレスト(写真左)とランバーサポート(写真右)。休憩スタイルでは特にこの2つの装備が活躍してくれる

仕事場でのゲームは要注意、時間を忘れて没頭させてくれる快適さ

たまたまインストールしていた「Cities: Skylines」などをプレイ

 オフィスでゲームすることはまずないのだけれど、時にはどうしても、イヤイヤながらゲームをプレーしなければいけないこともある。例えば今回のようにゲーミングチェアのレビューとなれば、当然のようにゲームプレーにおける座り心地や使い勝手がどうか、という視点は外せない。

 そういうわけなので、普段はサブマシンとして眠っているWindowsデスクトップPCを使い、たまたまPCとペアリングしていたPlayStation 4のゲームパッドとともに、たまたまインストールしていたSteamで、たまたま年末のセールで購入していた「Cities: Skylines」などをプレーしてみた。

 ゲームプレー時の座り方は、デスクワークのそれと違い、高い位置にある一回り大きなディスプレイとゲームパッドを使うので、どちらかというと背もたれやヘッドレストに体重を預けてリラックスする形になる。キーボード・マウスでプレーする場合や、集中力を要するFPSのようなゲームでは、気持ちデスクワーク寄りの座り方になるだろう。

なんとか街の危機を脱した。やっぱゲーム最高! ゲーミングチェア最強!

 さて、ゲームプレーにおけるOvertureの快適さについて、結論から言えば、めちゃくちゃ水質に気を使ってめちゃくちゃ病院も建設しているのに、一向に改善しないヘルスレベルと死者数と、絶え間なく行き交う救急車のサイレンにうんざりしながら、それでもあきらめずに対処して街作りしていたら、いつのまにか没頭して3時間経過していたほどだった。

 いや、Cities: Skylinesというゲームが面白かったということではなく、Overtureの座り心地に違和感がなさすぎて、本業のデスクワークのために姿勢を変えるタイミングを計り損ねた、という意味で。

 やはりゲームにはゲーミングチェアが最高・最強なんだな、と改めて実感するとともに、最近話題のPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」のようなアクションゲームやFPSはどれだけ快適にプレーできるのかしら! などと、にわかにゲーム熱を帯びてきた次第。残念ながらPCスペックが圧倒的に不足していて、いくらゲーミングチェアが快適でもゲームを楽しめないため今回は試さなかったけれど。

 そんな風に「新しいゲームにチャレンジしたい」あるいは「常に戦闘モードでデスクワークに当たりたい」と思うくらいに、Overtureのゲーミングチェア兼オフィスチェアとしてのパフォーマンスは高いと言えるのではないだろうか。

 冒頭でも述べたが、Overtureはヨドバシカメラで店頭デモも行われているので、気になる読者は是非店頭で座り心地を確認してもらいたい。

秋葉原では、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaで展示デモが行われており、座り心地や使用感などを確認できる。取材時は、ブルーモデルはゲーミングPCコーナー、ピンクモデルはVRコーナーに設置されていた。
ブルーモデルは3画面ディスプレイやステアリングコントローラーなどと合わせ、本格的なレースゲームが体験できる状態になっていた。設置スペースは広く、リクライニングの度合いを確認したりもできる。

[制作協力:テックウインド]