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ノートPCの延命&高速化はWindows 10+SSDで、1TB=2万円時代のSSD換装術

「1TB HDD」なノートPCも現実的な価格で換装可能に

Windows 7プリインストールの東芝製ノートPC「dynabook T552/47FKD」、もちろんHDD搭載のモデルだ

 Windows 7のサポート終了(2020年1月)まで1年を切った。

 色々な理由でWindows 7のままだったPCも、そろそろOSをWindows 10にアップグレードしたいところだが、そうした人に気にしてほしいのがSSDの最新事情、特にその相場観だ。

 性能的にはすっかり円熟期に入ったSATA SSDだが、最近はその1TB品がなんと2万円前後で買えてしまう。昔は「1TB SSDへの換装」というと、高価で諦めざるを得なかったが、この価格であれば現実的といえるだろう。また、「Windows 7のPCをWindows 10にアップグレードする」ということは、「できるだけ長く使い続ける」ということだと思うが、どうせ長く使うならこの機会に快適にする、というのも一つの手だろう。

 そこで今回、「Windows 7のHDD環境からWindows 10のSSD環境への移行」をテーマに、2つの方法をテストしてみた。

 SSDへ換装してWindows 10を新規インストールするものと、HDDのWindows 7環境をSSDに複製してアップグレードインストールを行う方法だ

 それぞれの手順や手間などがわかると思うので、この機会にぜひ参考にしてほしい。

 なお、今回は、アップグレード前、アップグレード後の速度比較がしやすいよう、結果をまとめた比較動画を記事末尾に掲載している。手っ取り早く確認したい方は、ぜひこちらから確認してほしい。

今回はWD Blue 3D NAND SATA SSDを使用した。1TBモデルの価格は1万8000円前後。ほかに小容量の250/500GBモデル、大容量の2TBモデルもある。
Windows 10 Homeのパッケージ版。実売価格は1万8000円前後

6年半前のノートPCと最新 1TB SSDを用意

HDDは東芝のMQ01ABD075。2.5インチHDDでも低回転の5,400rpmモデルで、インターフェースはSerial ATA 2.0(3Gbps)、キャッシュは8MBというスペックだ
CrystalDiskMarkの結果もこの通り。シーケンシャル性能はそこそこのように見えるが、現在の2.5インチHDDなら100MB/sを超えてくる。それよりもランダムアクセス性能がかなりキビシイ

 さて、今回のテストで用意したPCは今から6年半ほど前、2012年6月に発売された東芝のノートPC「dynabook T552/47FKD」(型番:PT55247FBFKD)だ。

 CPUは第3世代Core iシリーズであるIvy Bridgeの2コア4スレッド品「Core i5-3210M」(2.5GHz)で、現在のメモリ容量は8GB、ストレージは750GBのHDD。

 メモリは拡張できるし、CPUは「用途次第でまだ頑張れる」といえるだろうが、ストレージはなかなか辛い状況だ。

 実際に電源を入れてみると、HDDによるランダムアクセスの遅さと、メーカー製のPCで常駐ソフトも多いことに加え、6年間使い続けたゆえの起動の遅さ。起動に要する時間は非常に長く、正直これはかなりのストレスだ。Windows 7では、それ以前のOSと比べて高速起動が実現されたが、その恩恵はみじんも感じられない。アプリも同様だ。

 Windows 7では「Superfetch」の機能などで、アプリケーションの高速起動が実現されていて、初回起動はかなり時間がかかるが2回目以降はいくぶんかマシになるはずだ。にもかかわらず、それでも待ち時間がかかる。ここではChromeとExcel 2010の起動をビデオにおさめてみたので確認してほしい。

 ※2/4更新 初掲載時にCPUの開発コード名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

Windows 7+HDD環境での起動時間
【Windows 7+HDDでのPC起動時間】

[Chrome起動時間|Excel 2010起動時間]

 ついでに、このPCの現在の性能として、Windows 7でも実行できるPCMark 8のWorkを選んでみたが、スコアは3075だ。このスコアも覚えておきたい。

PCMark 8のWorkのスコア。Windows 7でHDDを搭載した状態では、3075ポイントだった

 さて、このPCをWindows 10にアップグレード、SSDにも換装し、快適なPCにしてきたい。

手順その1:HDDをSSDに換装、Windows 10をクリーンインストール

WD Blue 3D NAND SATA SSD。今回用意した1TBモデルは1万8000円前後。ほかに小容量の250/500GBモデル、大容量の2TBモデルもある。余談になるが、WD Blue 3D NAND SATA SSDのNANDメモリはすべて日本で生産されたダイだそう。

 HDDからSSDに換装すると同時に、Windows 7からWindows 10へ移行する場合、どういった手順が必要になるのか、その流れを追っていこう。

 まずは、ノートPCが内蔵しているHDDをSSDへと換装する。

 今回用意したSSDは、Western Digital「WD Blue 3D NAND SATA SSD」の1TBモデル。HDD時代から続く安定感のあるブランドながら、価格がそこそここなれており、さらに全モデルにHDD移行に必要なクローンソフト「Acronis True Image WD Edition」のライセンスが付属しているのがポイントだ。

 容量は250/500GBモデル、1/2TBモデルがあるが、ここは予算と必要に応じて容量を選べばよい。後で足りなくなったりしなければよいだろう。

Windows 10 Homeのパッケージ版。実売価格は1万8000円前後ともっとも高価。事前に調査・準備ができれば、オンラインコード版やDVDメディア版、DSP版を選んでもいい
Windows 10 Homeのパッケージ版に同梱されたUSBメモリ。32/64bit両方のインストールができるインストールイメージが収められている

 また、インストールするWindows 10は、パッケージ版(USBメモリ同梱)やオンラインコード版、DSP版(DVDメディア同梱)から選ぶことになる。詳細はこちらの記事に記載があるが、クリーンインストールをするなら、SSDを購入するときにDSP版をセットで購入すれば若干予算を抑えやすい。

 dynabook T552には光学ドライブもあるので、今回はDVDメディア同梱のDSP版を選んでみた。手持ちのノートPCに光学ドライブがなければ、外付けのドライブを用意するか、USBメモリー同梱のパッケージ版を選ぶか、USBインストールメディアをあらかじめ作成しておく必要がある。

 USBインストールメディアの作成手順はここでは触れないが、空のUSBメモリーを用意した上で、Microsoftのウェブページから「Windows 10 メディア作成ツール」をダウンロードして実行し、その後は手順に従って進めていけば、問題なく作成できる。

「KURO-DACHI/CLONE/U3」(実売価格:4,500円前後)は、Serial ATA接続のHDDやSSDを2台を同時に接続して、PCレスで複製もアイテム。データの引っ越しやバックアップなどに大活躍間違いなし

 また、SSDに換装して取り出したHDDには、これまで使っていたデータが保存されている。これを新しい環境へ移行したいなら、HDDをUSB接続で外付けできるアダプターを用意しておこう。データの引っ越しが終わった後も、古いドライブをバックアップ先に利用できたりするので、必須とも言えるアイテムだ。

まずはHDDをSSDに換装

 換装に必要となるSSDなどのストレージや、Windows 10のパッケージ版、周辺機器類の用意ができたら、実際の換装作業を進めていこう。

 2.5インチHDDを搭載するノートPCは、底面にカバーがあるものが多い。この内部には、メモリスロットや2.5インチベイがある。

 dynabook T552も同様で、底面にはネジ1本でカバーを開けられ、メモリスロットと2.5インチベイにアクセスできるようになっている。2.5インチHDDは金属のカバーが付けられていて、1カ所飛び出している部分のネジを外してスライドさせれば、金属カバーごとHDDが取り出せる。

dynabook T552の底面。1本のネジで閉じられたカバーを外す
HDD用の金属カバーも1本のネジで固定されている
金属カバーごとHDDを取り出す
HDDにカバーを固定している4本のネジも外す
金属カバーをSSDに装着。Serial ATAコネクターの位置に注意して4本のネジを締め直す
そのままWindows 10をクリーンインストール

 ストレージを無事に換装できれば、あとはWindows 10をインストールするだけだ。

 USBメモリ版ならば、DVDメディアよりも若干短時間でインストールができる。購入後、まっさらな状態のSSDだけが繋がれた環境では、電源をオンにすれば、事前に接続しておいたUSBメモリから自動的に起動するはずだ。

 しかし、何らかの事情で、その機能がOFFになっている場合や、USBメモリからWindowsインストール画面を起動できなかった場合は、電源投入時にBIOSかUEFIを立ち上げて、ブートデバイスの優先順位を再設定しよう。

 インストール画面が表示されれば、あとは画面の指示に従っていけば、小一時間でOSがインストールできるはずだ。ところで、OSやアプリケーションの起動時間はどうなっただろうか?

Windows 10をクリーンインストールで動作させた際の起動時間
【Windows 10+SSDでクリーンインストールした場合のPC起動時間】

[Chrome起動時間]

CrystalDiskMarkの結果はシーケンシャルリードが500MB/sを超にスピードアップ。ランダムアクセスはもちろんHDDと比べるまでもなく超高速化を果たした

 HDDをSSDに換装したことで、転送速度も大幅にアップ。PCMark 8(Work)のスコアも3623ポイントに向上している。ずいぶんキビキビと動くようになったのではないだろうか?

PCMark 8(Work)のスコアは、クリーンインストールでほかの常駐ソフトがないことも影響してか、後述のアップグレード時のスコアよりも高かった

手順その2:「SSDのWindows 7環境」を作ってからWindows 10にアップグレード

WesternDigitalのSSDなら「Acronis True Image WD Edition」のライセンス権が付属するので、クローン作成に別途コストはかからない

 次に紹介するのは、Windows 7+HDDの環境をそのままSSDに複製、その「Windows 7+SSD」環境をWindows 10にアップグレードする、というやり方を紹介しよう。

 この方法ならば、Windows 7のアプリケーションやデータを残したまま、Windows 10のSSD環境を構築できる。ただし、最初に補足しておくと、この方法ではDSP版を選んで費用を抑えることはできない。DSP版のライセンスでは、新規インストールしかできないためだ。必要なパーツや周辺機器は、クリーンインストールと変わらないが、この方法の場合、Windows 10の選択肢はパッケージ版またはオンラインコード版に限られる。

 また、HDD内容をSSDに複製する、いわゆる「クローンソフト」も必要だ。ただし、WD Blue 3D SSDの場合は、製品を購入すれば「Acronis True Image WD Edition」のライセンスが付属する。True Image 2019の通常版とは若干機能が異なり、システム移行(クローン)に特化した機能しか利用できないが、今回のような用途では必要十分なものだ。

まずはHDD→SSDにデータコピー

 まずWindows 7&HDDの状態のPCに、SSDを装着したSATA→USB変換アダプタ「KURO-DACHI/CLONE/U3」を接続してから、True Image WD Editionを起動し、画面左にある「ツール」を押して表示される5つのメニューから「ディスクのクローン作成」を選ぶ。

 「ディスクのクローン作成ウィザード」画面が表示されるので、ここでは「自動(推奨)」を選んで、移行元の「ソースディスク」にHDDを、移行先の「ターゲットディスク」にUSB接続のSSDを選択し、次の画面で「実行」ボタンを押せば、Windows 7が再起動し、独自OS上でHDDの内容が丸ごとSSDに複製される。

最初の画面でツールから「ディスクのクローン作成」を選ぶと、「ディスクのクローン作成ウィザード」が表示される。ここでは「自動(推奨)」を選ぶ
ソースディスクの選択画面。ATA接続のHDD「MQ01ABD075」を選択
ターゲットディスクにUSB接続の「WDC WDS100T2B0A-00SM50 X611」を選択
警告が表示されることもあるが、これはSSDが領域確保されていた場合のもの。SSD上のデータを削除しても構わないかどうかの確認だ
最後に「実行」ボタンを押して作業開始。すぐに再起動を促すメッセージが表示され、その後独自OS上によるクローニングが実行される

 複製作業は、HDDに多くのデータが保存されているほど時間がかかる。

 ドキュメントやピクチャ、ビデオ、ミュージックといったフォルダーに保存してあるデータを、あらかじめ別のUSB外付けドライブなどに退避させ、HDD内のデータを可能な限り減らしておけば時間を短縮できるが、HDDの内容をSSDへ複製するのに要する時間は、HDDの速度、PCの処理速度などにも依存し、実際には一晩はかかると思った方がいい。

 SSDへの複製が完了したら、上で紹介した手順と同じく、本体側のHDDを取り外してSSDに置き換える。その後に電源を入れて、無事に起動すれば、作業は成功だ。

 SSDからの起動確認は、万が一の複製作業失敗に備え、ネジ止めなどをしない仮組みの状態で作業したほうがいいだろう。起動を確認したら金属カバーと本体カバーを閉じることも忘れずに。

Windows 10をアップグレードインストール

 SSDへの換装作業が終わったら、続いてWindows 7からWindows 10へのアップグレードインストールを行う。アップグレードでは、もともと使っていたアプリケーションやドライバーが原因となり、クリーンインストールと比べてトラブルが生じる可能性が増す。

 ただし、今回のアップグレードでテストした環境では、東芝のプリインストールソフトやワイヤレスディスプレイが利用できなくなったものの、そのほかの動作や互換性には問題が出なかった。

USB版のフラッシュメモリを挿し、そのなかのSetup.exeを実行してアップグレードを行なう
各種の下準備を終えればアップグレード作業が開始する。クリーンインストールと比べると、かなり時間を要する

 また、交換したSSDには、Windows 7からWindows 10へのアップグレードに十分な空き容量も必要だ。その意味で、もともと使っていたHDDよりも大容量のSSDを選んでおくのがベター。容量でケチった結果、データ退避用の外付けHDDが必要になるようでは、財布にとってむしろ大きな痛手となりかねない。こうした理由もあって、大容量が安くなってきた今が、SSDの買いどきであり、OSを移行する絶好のタイミングと言える。

従来の環境を残していることもあり、クリーンインストール時と比べるとやや遅いが、元のHDDの転送速度と比べればはるかに速い

 アップグレードが無事完了したら、それまで使っていたアプリケーションが無事起動するのか、一つ一つ起動して確認してみることをオススメする。では、こちらも環境が整ったところでOS・アプリケーションの起動速度を測り、ベンチマークを実行してみよう。

Windows 10をアップグレードインストールさせた際の起動時間
【Windows 10+SSDでアップグレードインストールした場合のPC起動時間】

[Chrome起動時間|Excel 2010起動時間]

PCMark 8(Work)のスコアは3252ポイント。いくつかの常駐ソフトがWindows 10に引き継がれなかったが、それでもまだ何個か常駐している状態で、元のWindows 7+HDDのスコアより向上している

しっかり計画を立て、余裕をもって望みたい

 以上のように環境移行を検証したが、今回の検証結果は「使い古したPC」なのがポイントだ。

 OSをインストールした直後のクリーンな状態ではなく、長年使い込んだWindows 7 PCは、CPUの性能はもちろん、本来のHDDの性能と比べても「もっさり」とした動作になってしまう。そこをSSDに交換するだけで、OSの起動もアプリケーションの起動も高速になる。

 もちろんCPU性能は変わらないが、処理のボトルネックになっていたストレージが高速化することで、「ちょっとキビシイ」と感じていたPCが、「もうちょっとイケるかも」と思えるようになるわけだ。

 冒頭に書いたように、Windows 7のサポート終了までいよいよ1年というタイミングになってきた。Windows 10への移行手順やニーズは個々で様々と思うが、もし環境を残したままアップグレードしたいなら、非常に時間がかかる。

 業務などでは互換性検証も必要そうだが、2020年1月のサポート終了ギリギリまでねばってからでは間に合わない可能性もある。しっかりと計画を立て、余裕をもって望むほうがいいだろう。

 また、SSDは「相場モノ」でもある。今後、相場がどうなるかは何とも言えないが、下手に待ってタイミングを逃す可能性を考えると、納得のいく相場の時に購入してしまうのがオススメだ。


比較動画編

 以上で検証は終了だが、今回は横並びでの比較がしやすいよう、簡単な解説付きの比較動画も作ってみた。
動画は、PC起動時間編、アプリ起動時間編の2つにわけたので、気になる方は是非確認してほしい。

【【PC起動時間編】6年使ったPCをWindows 10+SSDにして高速化&延命】
【【アプリ起動時間編】6年使ったPCをWindows 10+SSDにして高速化&延命】

[制作協力:WesternDigital]