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最長12年保証、高耐久PC電源を生み出すためのオウルテックのこだわり

サポート対応が新品交換な理由や、電源選びのポイントも聞いてみた text by 長畑利博

神奈川県海老名市のオウルテック本社にて今回インタビューを行った。
12年保証の電源「Seasonic PRIME Titanium シリーズ」。

 電源やケースといったPC関連製品から、スマートフォン向けのアクセサリーまでさまざまなジャンルの製品を扱うオウルテック。PC自作経験のあるユーザーなら、電源ユニットやリムーバブルケースなどでお世話になったことがあるのではないだろうか。

 なお、同社が取り扱うPC用電源ユニットは、製品保証期間が長いモデルが多い。最長保証モデルであれば12年、ミドルクラスのモデルでも3~5年前後のものが多く、安心感をウリとしている。

 保証期間の長い製品はユーザーからは支持されるが、メーカー側の負担は大きいため、簡単に長くすることはできない。長期間安定動作する品質があり、不良率も低くなければ長期保証を実現することは難しい。

 そこで、長期保証を実現するためにオウルテックがどのような取り組みを行っているのか、技術担当の方に話をうかがう機会を得たので、インタビューを行った。

 オウルテックが考える高品質な電源とはどのようなものなのかと合わせ、電源のより良い使い方や選び方なども聞いたので、これから電源を購入する予定があるユーザーは是非目を通してもらいたい。

フロッピーディスクドライブの取り扱いが原点のオウルテック現在ではスマホ関連製品も扱う周辺機器の総合メーカーに

株式会社オウルテック 技術グループ 鈴木智睦氏
フロッピーディスクドライブの取り扱いなどからオウルテックはスタートしたという

――はじめにオウルテックはどのような企業なのかお聞かせください。

[鈴木氏]会社としての成り立ちは、1992年のスタートとなります。創業者で代表取締役でもある東海林が従来、PC本体に内蔵するパーツの単体販売を行うようになったことが事業の出発点となります。

――当時はどのような製品を取り扱っていたのでしょうか。

[鈴木氏]ミツミ製のフロッピーディスクドライブなどの取り扱いからスタートしています。創業当初はLIAN LI製のPCケースなども取り扱っていましたが、国内メーカー製品の販売がメインでしたね。

 社内にミツミ製ドライブの開発などに携わってたスタッフなどもいたことから、技術的な面でも製品企画などに関わるようになり、日本向けにカスタムした海外ブランドの製品なども販売するようになりました。

 その後は、自社で企画開発した製品の販売も徐々に増えてゆき、今ではPC関連の製品だけでなく、スマートフォンのケーブル類やアクセサリー、ドライブレコーダーなどさまざまな分野の製品を取り扱っています。


リムーバブルケースのメーカーとしても有名だったオウルテック。
設立初期にはLIAN LIのアルミ製PCケースも取り扱っていた。
オウルテック社内の倉庫。天井の高さやラックの高さはPCケースなどに合わせたものだという。

社内展示ルームにて。現在のラインナップとしては、PC用周辺機器よりもスマートフォンアクセサリなどの取り扱いの方が多いそうだ。
iPhone用のケースカバーなどへのプリントサービスも行っている。社内にあるUVプリンタで小ロット生産も可能。
オウルテックは横浜マリノスとトップパートナー契約も結んでいる。

静音電源やセミプラグイン電源のトレンドを作ったオウルテックのSeasonic電源Seasonicの対応の良さから生まれた日本向け特別モデル

2000年代初頭に人気となった静音ケース「OWL-103-SILENT」。
オウルテックがSeasonic製電源の単品販売を開始したのは2001年の「SS-300FS」から。

――電源を取り扱うようになったのはどのような経緯からなのでしょうか。

[鈴木氏]設立当初はPC組込パーツを単品販売することからスタートしているとお話ししていますが、電源もその延長で取り扱いを始めました。

 最初に取り扱ったのはデルタ製の電源です。PCケース「OWL-602WS SE」の電源付きモデルでもデルタ製電源が搭載されていました。そのほかにはETASIS製のサーバー用電源の取り扱いもしていました。

 Seasonic製の電源ユニットは、静音ATXケース「OWL-103-SILENT」という当社のPCケースとセットになって販売されたのが最初です。2001年10月の話で搭載されていたのは「SS-300FS」というモデルですね。このケースとのセットが非常に人気が高かったこともあり、2か月後の2001年12月に電源単品でも販売を開始しました。

 Seasonic製品の扱いが大きくなった経緯としては、人気があったこともありますが、弊社側の要望を多く取り入れてくれる小回りの良さも影響しています。


2006年には、山洋電気製ファンと日本メーカー製の105℃電解コンデンサを搭載した日本向けカスタムの「M12」や「S12」が登場。
高級モデルだけでなく、普及価格帯モデルでもオウルテックはSeasonicのカスタムモデルを投入している。

――Seasonicが今のような高品質電源ブランドとなった時期はいつ頃からでしょうか。

[鈴木氏]「SS-300FS」からは少し時間が空くのですが、PC用電源をオウルテックがどう扱っていくのか転換点になったのが2006年で、この時から変わったと言えますね。

 この年、Seasonic製のM12やS12シリーズを日本特別仕様にカスタマイズしたモデルの販売を開始しました。日本メーカー製の105℃電解コンデンサを搭載し、弊社で取り扱っていた耐久性が高い山洋電気製ファンを搭載した日本向けの特別仕様モデルです。

 M12シリーズはペリフェラルなどの各種ケーブルの取り外しが出来るセミプラグインモデルとしても、最初期に販売された製品にあたります。この頃には製品保証も3年間と、当時としては長めの設定になっています。

 電源の保証に関しては、日本メーカー製のコンデンサを使い始めた頃から徐々に長くする傾向になっています。電源の耐久性はコンデンサの寿命と直結している部分もあり、コンデンサの質が向上するにつれて保証期間もその分長くなるといった具合です。

 こうした品質重視の方向に舵を切ったのは、差別化が難しくなりつつあったPC用電源に特長を持たせようとしたことがきっかけだったりします。

 この時はまだ電源ユニットは安価なものがまだ主流で、単価の高い電源を受け入れてくれる市場はあるのか、ユーザーに手に取ってもらえるのかといった不安もありました。しかし、幸いにもPCの静音ブームであったり、採用パーツの品質に目を向けるユーザーが徐々に増えつつある状況に上手くマッチし、Seasonicの電源=高品質というブランドを作ることに成功しました。

――現在、新モデルを日本向けに発売する際、Seasonicへ要望を出している要素などはありますか。

[鈴木氏]Seasonicとは付き合いも長く、定期的に打ち合わせをおこなっているのですが、その時に日本とトレンドを話したり、日本のユーザーのニーズを伝えたりしています。

 実は、現在の電源はかなりの完成度で、こちらからSeasonicに要望を出すことがかなり減っています。以前のように搭載パーツの指定や仕様に関して注文を出すことが減ってしまったのはさみしい面もありますが、それだけ品質の良い電源が増えているということでもあります。

 こうしたこともあり、今は特にこのトレンドを盛り込んでほしいといった要望は出していません。打ち合わせ時にユーザーニーズなどを伝えておけばそれを反映したモデルをはじめから用意してもらえているといった状況にはなっていますね。

 これは要望とは別になりますが、日本で販売するモデルは90Vでも性能がしっかり出る製品のみに絞り込んでいます。Seasonic自身多数の製品ラインナップを抱えていますが、ワールドワイド向けのモデルは下限の性能保証が100Vまでといったモデルも多かったりします。こうしたモデルは、100V環境の日本で電圧が変動した際に本来の性能が発揮されない可能性があるので、マージンをとって90Vの環境下でも性能保証がうたわれているモデルに限定して国内で販売しています。


FSP製電源の定番モデルとなっている「RAIDER II」、高コスパな点が特徴。

――現在、Seasonic製以外にFSP製の電源などの取り扱いもありますが、ターゲットユーザーなどは異なるのでしょうか。

[鈴木氏]とくに明確には分けていないのですが、Seasonicがハイエンド帯で、FSPがミドルレンジからローエンドまでをカバーするかたちになっていますね。

 Seasonicも普及価格帯を販売していますし、FSPもハイエンドモデルを販売しているので、ターゲット層がオーバーラップしている部分もありますが、自然と分かれている感じはします。

 まだ具体的なかたちにはなっていないのですが、弊社でPCケースを取り扱っているドイツ「be quiet!」ブランドの電源ユニットを取り扱う予定もあります。こちらに関しては、ドイツの職人気質な面であったり、スタイリッシュさなどがウリとなっているブランドなので、Seasonicとは別路線のハイエンド製品として展開していくことになるかと思います。


be quiet!ブランドのPCケース。プッシュボタン一つでパネルが開くのでメンテナンスがしやすい。またドイツ製らしい重厚感のある作りと、独特の世界観を持つデザインが特徴。
ケースの防音材はかなり厚いものが採用されている。静音にこだわるメーカーだけあってこうした部分にもらしさが出ている。

be quiet!ブランドのファン。風量重視や静圧重視といった用途に合わせてフィンのデザインが変えられている。
オウルテックではbe quiet!製のPCケースやファン、CPUクーラーなどを取り扱っているが、同社製の電源の取り扱いも検討しているという。

ベース電源をチューニングして長期間使える電源にオウルテックと電源メーカーの協業から生まれる高耐久モデル

Seasonicの上位モデルであるPRIME AirTouchの内部構造。
オウルテックの要望を受けて搭載パーツの変更や設計変更などが行われることもある。
電源にさまざまな負荷を掛け検証できる専用のハードウェア。
検証ハードウェアの接続端子部分、PC用の各種コネクタが用意されている。

――電源の保証期間は、製造メーカー側から提示された年数になるのでしょうか。

[鈴木氏]逆ですね。保証期間に関しては、オウルテック側からリクエストを出すかたちになっています。

 Seasonicの場合ですが、例えば、5年保証で販売できる耐久性にして欲しいと要望を伝えると、それに合わせチューニングやカスタムでの対応が提案されます。必要であれば、使用素材の指定なども行うことが可能です。

 先ほど保証期間の話でも少し出ましたが、コンデンサの寿命は動作温度の影響を大きく受けます。コンデンサが発熱するのは、リプル電流や脈流などが発生するタイミングなどで、これらの影響が最小となるように回路設計や冷却構造をSeasonic側に最適化してもらうという感じですね。

 オウルテック側でも検証は行っています。100%、50%、70%と負荷を変えて搭載コンデンサの動作温度チェックしたり、内部でケーブルが接触したりしないよう結線の指定をしたり、グランドの処理の確認や、大型パーツの固定強度に問題が無いか、PSEなど各種規格に準拠したものになっているかなどなど、耐久性と合わせ構造的な部分も確認しています。試作段階で問題が見つかればフィードバックし、仕様変更など対策を取ってもらっています。

 最終的に実際の使用状況を想定してデータを取り、検証結果から寿命を計算して保証期間を決めます。概ね製品として完成するころには想定通りの耐久性となっていますが、中には想定以上の出来となるモデルもあり、そうした製品にはさらに長期保証を設定する場合もありますね。

 ちなみに、SeasonicのPRIMEシリーズの初期出荷モデルには「10+2年」という変わった表記の保証シールが貼ってありました。元々は10年保証を予定していましたが、実際にはもっと長く使える品質があり、他メーカーも同時期に10年保証モデルを投入してきたので、その対抗措置として変則的な対応をとりました。当然、現在は12年保証という表記になっています。

――12年保証ともなると、かなり高耐久・高品質なモデルになると思うのですが、不良率などもかなり低いのでしょうか。

[鈴木氏]12年保証のPRIMEはもちろんですが、弊社の取り扱いの電源で見ると、保証期間内に製品不良で戻ってくる個体はほとんどありません。年間で数台というレベルに収まっていると思います。なお、万が一、製品に不良が発生した場合、弊社は修理対応では無く、同型の良品との交換、または同等品との交換対応を行っています。

こちらも電源へ負荷をかけるための機器、モバイルバッテリーなどのテストに使用されているそうだ。

――ちなみに、12年保証の製品で11年目に壊れた場合、保証期間は延長されたりするのでしょうか。

[鈴木氏]個体交換後から12年の保証がスタートするわけでは無いので、さすがに保証期間は延長されません。購入時から12年間の保証になります。

 もし、個体交換後に新たに12年の保証が付与されるかたちだと、自分が生まれた時に購入した電源が1回の交換対応を挟んで成人するまで使えてしまったり、11年目に壊れ続けるといったような状況が続いた場合は、一度の購入で一生使えてしまう可能性もありますしね(笑)。

メーカーごとに異なる電源設計のコンセプトSeasonicは物量でギッチリ、FSPはシンプルさを追求

FSP RAIDER IIの内部。シンプルな設計を徹底することで筐体内のエアフロー性能を確保。部品点数が抑えられる分、パーツごとの不良率などは低くなるので、合理的な設計といえる。
Seasonic PRIME AirTouchの内部。非常に多くのパーツが実装されており、内部構造は複雑なものとなっている。熱籠りなどが起きないようヒートシンクなども積極的に利用されている。
電源は検証機器を使ったテストだけでなく、ユーザーの環境に近い自作PCでもテストが行われている。

――現在取り扱われているSeasonicとFSPの電源ですが、内部構造などにメーカーごとの特徴などはあるのでしょうか。

[鈴木氏]SeasonicとFSPは構造に大きな違いがありますね。設計思想の違いが製品にも表れています。

 FSPは、基本的にシンプルさを追求した設計になっているモデルが多い傾向がありますね。FSPは非常に大きい電源メーカーで、多くのラインナップも抱えています。用途や仕様に合わせ最適化を突き詰めていった結果、シンプルで合理的な設計に行きついたのではないかと思います。

 パーツ数を抑えることで筐体内のエアフローが確保できるので、冷却面で非常に有利なのと、部品数を抑えることができれば、その分不良率を下げることもできます。こうした部分は電源寿命に直結する面もあるので、大きなメリットといえますね。当然コスト面でも有利です。

 Seasonicはパーツを詰め込む傾向があります。物量を投入して品質を高め、良い電源を長く使ってもらうという考え方がベースになっていますね。

 また、Seasonicはバラツキや誤差にもシビアな面が見られます。ATX規格では電源の許容誤差がプラスマイナス5%とされていますが、Seasonicは誤差を1%から0.5%といったギリギリまでに調整しているといった特徴があります。ATXの規格としては過剰品質なのですが、Seasonicではこれをタイトレギュレーションと呼んでおり、こうした部分にも非常にこだわるメーカーです。

 方向性は大きく異なりますが、2社ともにこだわりが見られて職人気質な面を感じさせられますね。

故障の際は修理せず良品と交換、新品交換保障にこだわるオウルテック長く電源を使うならエアフローを確保して動作温度は低めに維持

電源が故障した際、新品との交換で対応している。
プラグイン電源の場合、好きなコネクタを利用して問題ないが、メイン基板に近いコネクタを使った方が電流のブレなどを抑えて使用できるそうだ。

――電源が故障した際、修理対応では無く新品交換対応をとっていますが、これはなぜでしょうか。

[鈴木氏]ユーザーを待たせないためというのが一番の理由ですね。修理を行う場合はやはり時間がかかりますし、PCが使えなくなって困っているユーザーに最速で対応する方法は何かと考えると、現状は新品交換がベストなかたちだと考えています。

 社内に技術者がいるので修理自体は可能ではありますが、修理対応を行うとなると専任の担当を置くなど、それなりの規模の体制を整える必要があります。不良率の話で弊社が扱っている電源は不良で戻ってくることが少ないとお話ししましたが、現状で修理対応の体制を作ると開店休業状態になることが想定されるので、そうした部分も要因になっています。

――新品交換対応となった場合、交換にどの程度の時間がかかるのでしょうか

[鈴木氏]交換品は2~3日前後でお送りするようにしています。修理対応の場合、問題が起きた個体の検査、それから修理となるので、この日数で対応するのはほぼ無理だといえます。

 新品交換対応となった場合は、端子などに問題が無いか、正常に動作するかなど、念のためチェックしています。不良率自体低いので確率的にはほぼないのですが、交換品が不良だったということを起こさないための対策もとっています。

 なお、長期保証モデルの場合、故障した際には終息品となっているといたケースが考えられますが、その場合は同等クラスの製品をお送りするかたちで対応しています。

――新品交換がメリットの大きい保証だというのはわかったのですが、そもそも保証を受けるような事態にならいことも大事だと思います。電源を故障させないで長く使うためのポイントなどはあるのでしょうか。

[鈴木氏]使用環境の温度が高温になりすぎないというのはポイントになりますね。単純に動作温度が高くなればそのぶんコンデンサの寿命が短くなります。ケース内のエアフローを良くして温度を低く保つことは有効です。

 また、動作温度を低く保つことは電源に搭載されたファン寿命への影響を減らす効果もあります。40℃の環境で使用するのと60℃の環境で使用するのではファンのベアリングの流体の粘度も変わってきますし、動作温度を低く保つにこしたことはありません。

 エアフローを意識するという点では、ほこりが溜まった状態で使用するのもお勧めしません。定期的にメンテナンスすることをお勧めしたいですね。メンテナンスの際はエアダスターなどで吹き付けると電源筐体内の奥にほこりが入り込んでしまったりするので、吸いだして除去することがおすすめです。

――寿命とは関係がないと思うのですが、プラグイン対応の電源委は多数の接続コネクタがあります。より有利な接続順や、優先的に使った方が良いコネクタなどはあるのでしょうか。

[鈴木氏]現在の電源は高性能なので、特に使い方を気にする必要はありません。ただし、些細なレベルにもこだわるのであれば、より安定性を高める使い方はあります。

 構造的に、電源のメイン基板から一番離れているところに負荷かかかると、下流のほうで電圧変動が生じやすくなります。このため、メイン基板に近いコネクタから優先的に使った方がよりよい条件で電源を運用できます。

 また、複数のドライブやビデオカードを使用する際、一本のケーブルにたくさん機器をつなげるよりは、たくさんのケーブルを使ってそれぞれに機器を分散してつなげた方が電圧変動は少なくなります。

 もちろん、1本のケーブルに多数の機器を接続してもトラブルが起きるような電圧差は発生しませんが、より安定動作させたいといった場合には有効です。ケーブルもコネクタと同じで、基板に近い側のコネクタから優先的に使った方が有利ではあります。

内部を分解せずにチェックするためのX線検査機も備えている。オウルテックには非破壊検査が可能な環境も整えられている。
X線検査機で断線したケーブルを撮影したところ。
事故の起きたUSB TyepeCケーブルのトラブルを検証しているところ。よく見ると端子の一部が断線してしまっている様子が分かる。
こちらは顕微鏡。故障時などだけでなく検証などにも利用される。


静音にこだわるなら大容量電源がおすすめ電源は使用したい期間と用途に合わせて選ぶ時代に

――今後のトレンドなどを考慮した取り組みなどはおこなっているのでしょうか。電源のロードマップなどがあれば教えてください。

[鈴木氏]営業側から上がった市場のトレンドなどのデータを元にして、各電源メーカーに情報の提示はしています。ただし、80 Plusの競争が一服したこともあり、今のところ次の明確なトレンドは見えていない状態ですね。

 ある意味現在の規格に対しては完成形に近い電源が販売されている状況なので、買い時といえるかもしれません。

――電源を今購入するのであれば、どのような部分を意識して選ぶべきでしょうか。

[鈴木氏]容量の大きいモデルを選んだ方が一般ユーザーは良いかもしれません。

 電源は価格優先で選ばれてしまうことも多いPCパーツですが、負荷が低い時にはファンレス動作となるモデルも増えており、静音効果なども考えると、ゆとりある容量のモデルがおすすめになります。

 PCへの負荷が100%状態の消費電力に対し、ちょうど足りる容量の電源を選ぶ方もいらっしゃいますが、最大消費電力とほぼ同じ容量の電源を選ぶのではなく、余裕を持った容量や品質の電源ユニットを使った方がトラブル無く安心して使えると思います。電源の効率が最も高くなるのは負荷50%の時ですしね。

 最近は相性の話も聞かなくなりましたが、消費電力の大きなビデオカードを容量の小さい電源で使用していると、立ち上がりが遅くなったりするケースもあるので、大容量モデルを選んでおいた方が良いことも増えています。

 1~2Wの消費電力の差にこだわるユーザーであれば、自分が使用している状況の消費電力傾向から計算し、ベストな容量のモデルを選ぶべきではありますが、現在は大容量のモデルを選んでおいた方が手軽といえます。

――最後にメーカーからユーザーへコメントをお願いします。

[鈴木氏]電源に関してはSeasonicもFSPも優れた電源メーカーでいいラインナップがたくさんあります。

 Windows 7のサポート終了の影響もあり、PCの買い替えを検討しているユーザーも多いと思いますが、電源は自分の使用スタイルに合わせて選んでもらえればと思います。

 長期間使いたいのであれば、保証期間の長いSeasonicのPRIMEシリーズは非常に良い選択肢になりますし、数年ごとにシステム一式を入れ替える人であれば、FSPのコストパフォーマンスに優れるモデルをその都度乗り換えていくといった使い方が良いかと思います。

 容量や品質といった点はもちろん最重要となる部分ですが、それだけではなく、自分がどのような使い方をするのか意識し、それに合わせて電源を選んでもらえると嬉しいですね。

――ありがとうございました。

[制作協力:オウルテック]