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割安なQLC SSDはゲームに使っても大丈夫?PS4に「Samsung 860 QVO」を外付けして使ってみた

デス・ストランディングやモンハンなど大作4タイトルでテスト text by 坂本はじめ

QLC NANDはゲームにもパフォーマンスを発揮するのかテストしてみた

 4bit MLC(以下QLC)方式のNANDフラッシュメモリを採用したSamsungの2.5インチSSD「860 QVO」の1TBモデルに、数量限定でUSB 3.0対応外付けケースが付属するキャンペーンが11月よりスタートしている。

 税込みで約1万円と、大手メーカーの1TB SSDに外付けケースもついてくると考えるとかなり割安感があり、PS4用の外付けSSDとして使うにも適しているように思える。ただし、QLC NAND搭載SSDはまだ新しい製品ということもあり、性能面で不安を感じるユーザーもいるだろう。

 そこで、QLC NAND搭載SSDをゲームに使用しても問題ないのか、発売されたばかりの「デス・ストランディング(DEATH STRANDING)」をはじめ、PS4の大作ゲームを複数使いテストを行ってみた。

テストに使用したゲームタイトル
デス・ストランディング
モンスターハンターワールド:アイスボーン
レッド・デッド・リデンプション2
エースコンバット7 スカイズ・アンノウン

QLC NAND採用SSDの「860 QVO」、ゲーム用途でも問題がないのかチェック

現在キャンペーンで外付けケース付きで販売されている860 QVOの1TBモデル。

 まずは今回使用するSSDから紹介しよう。「860 QVO」はQLC方式のNANDを搭載する2.5インチSATA SSDだ。

 1つのメモリセルに4bitのデータを記録するQLCは、NANDチップに対してより多くのデータを記録できるため、容量単価が割安となるが、1つのメモリセルに3bitのデータを記録するTLCに比べ、書き込み速度や耐久性面では不利なことが知られている。こうした部分に不安を感じるユーザーもいると思うが、860 QVOは、大容量のSLCキャッシュ領域を併用することで速度と耐久性カバーする「Intelligent TurboWrite」機能を備えるなど、対策が取られている。

 860 QVOのスペックを確認してみると、リード最大550MB/s、ライト最大520MB/sという6Gbps SATA対応SSDとしては高水準な性能を備え、耐久性の指標となるTBWも1TBモデルで360TBに達している。TLC NAND搭載のSSDよりは低い値ではあるが、実用的には十分以上の書き換え耐久性を備えている。

Samsung 860 QVO 1TB(MZ-76Q1T0B/IT)。
PCにSATA接続した際のCrystalDiskMarkのベンチマーク結果。

 今回テストに選んだ製品は「860 QVO」の1TBモデルだ。冒頭で紹介したとおり、現在期間限定のキャンペーンで外付けケースとセットになったモデルが「MZ-76Q1T0B/OC」として販売されており、こちらを使用した。

 なお、このモデルは、本来はSSDへの換装を容易にするための製品とされており、Samsungが無料で提供しているデータ移行ソフト「Samsung Data Migration」を利用すれば、手軽にOSのクローンを作成してSSDの換装を行える。

 ちなみに、このキャンペーンでは、TLC NAND採用のSamsung製の2.5インチSSD「860 EVO」の500GBモデルとORICO製のUSB 3.0対応2.5インチ外付けケースがセットになったモデル「MZ-76E500B/OC」も販売されている。

キャンペーンで無償バンドルされるORICO製USB3.0対応2.5インチ外付けケース。
外付けケース経由でPCとUSB接続した際のベンチマーク結果。USB 3.0接続SSDとしては十分な速度といえるだろう。
Windows用のデータ移行ソフト「Samsung Data Migration」。Samsung製SSDユーザーは無料で利用できる。
ユーティリティソフトの「Samsung Magician」。Windows上からステータスの確認やファームウェアの更新が可能。

 スペックを見る限り、6Gbps SATA対応SSDとして上々の性能と耐久性を実現できている860 QVOだが、ユーザーとして気になるのはやはり実際に使ってみた際の性能だろう。

 はたして、QLC NANDフラッシュを採用したSSDはPS4でゲームのロード時間を短縮することが可能なのか、問題などは発生しないのか、実機で確認してみよう。

PS4 Proを使って大作4タイトルのロード時間をチェックQLC NAND SSDは問題なく使える?

PS4 ProとSSDをUSB 3.0外付けケースで接続。

 今回は、1TB HDDを搭載したPS4 Pro (CUH-7000BB01)を使い、QLC採用SSDである860 QVOを使うことでゲームのロード時間を短縮することができるのかを確認する。

 PS4 Pro本体とSSDは、バンドルキャンペーンで付属するORICO製USB 3.0対応外付けケースを介して、拡張ストレージとして外付けにした。

 テストに用いるゲームは、コジマプロダクションの初作品として注目を集める「デス・ストランディング」の他、「モンスターハンターワールド:アイスボーン」、「レッド・デッド・リデンプション2」、「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」の4タイトルを用意。各タイトルでのロード時間を内蔵HDDと比較する。

テストに使用したのは、デス・ストランディング、モンスターハンターワールド:アイスボーン、レッド・デッド・リデンプション2、エースコンバット7 スカイズ・アンノウンの4本。
4タイトルのインストール容量は合計で約243GBだった。大作ゲームを多く遊ぶのであれば、容量は1TBくらいあるとゆとりがあって良いだろう。

デス・ストランディングは860 QVOを使うと40~50%高速に、SSDの効果大

「デス・ストランディング」

 最初にテストしたのは、小島秀夫監督が率いるコジマプロダクションの初作品として、11月8日発売された「デス・ストランディング」。

 このゲームでは、タイトル画面のLoad Gameからセーブデータを選択してからゲームが再開可能になるまでの「ゲームの再開」と、ゲームを進行すると解放される「ファストトラベル」を利用した際、この2か所でロード時間を測定した。

 なお、ロード時間はそれぞれ3回ずつ測定を行い、その平均値を比較に用いている。これは以降のテストでも同様だ。

 検証の結果だが、セーブデータの選択からゲームの再開が可能になるまでのロード時間は、内蔵HDDが約59.3秒であったのに対し、SSDの860 QVOは約34.6秒だった。ロード時間を24.7秒短縮し、内蔵HDDの約58%の時間でロードを完了している。

セーブデータを選択してからゲームを再開可能になるまでのロード時間を測定する。

 ファストトラベル利用時のロード時間は、内蔵HDDが約44.4秒で、SSDの860 QVOは約22.5秒。SSDの利用により短縮されたロード時間は約21.9秒で、内蔵HDD比で約50.7%にまでロード時間が短縮されている。

 デス・ストランディングはSSDの利用によるロード時間短縮の効果が大きなタイトルであることと、QLC採用SSDである860 QVOと無償バンドルされたUSB外付けケースが、内蔵HDDから大幅なロード時間短縮を実現できることを確認できる結果だ。

ファストトラベル機能「フラジャイルジャンプ」。拠点間を瞬時に移動できる。

860 QVOを使うと最大で3倍近く速くなるモンスターハンターワールド:アイスボーン

 モンスターハンターワールド:アイスボーンでは、セーブデータを選択してからロードが完了するまでの「セーブデータのロード」と、全体マップから渡りの凍て地へ探索に出発する際のロード時間「探索への出発」の2つを測定した。

 「セーブデータのロード」でのロード時間は、内蔵HDDが約52.3秒なのに対し、SSDは約17.6秒を記録。短縮されたロード時間は約34.7秒で、内蔵HDD比で約33.7%にまで大幅な短縮を実現した。

セーブデータを選択してからプレイ可能となるまでのロード時間「ゲームの再開」。

 「探索への出発」でのロード時間は、内蔵HDDが約78.7秒で、SSDは約30.3秒だった。短縮されたロード時間は約48.4秒で、SSDのロード時間は内蔵HDD比で約38.5%と、ここでも大幅なロード時間短縮を達成している。

 モンスターハンターワールド:アイスボーンでは、繰り返し実行することになるクエストや探索の開始時に、今回テストした「探索への出発」と同様のロードが発生するため、この大幅なロード時間短縮の効果は極めて大きなものだ。

全体マップからアイスボーンの新マップに出発する際のロード時間「探索への出発」。

レッド・デッド・リデンプション2は860 QVOが1分以上ロード時間が短縮する例も

 レッド・デッド・リデンプション2では、タイトル画面からストーリーモードを再開する際に生じるロード時間「ゲームの再開」と、ストーリーモード中にセーブデータを選択してゲームを再開する際のロード時間「セーブデータのロード」の2つを測定した。

 「ゲームの再開」でのロード時間は、内蔵HDDが97.4秒で、SSDは約36.9秒だった。短縮されたロード時間は約60.5秒と、1分以上の時間を縮めている。SSDのロード時間は内蔵HDD比で約37.9%だった。

タイトル画面からストーリーモードを再開する際に発生するロード時間「ゲームの再開」。

 「セーブデータのロード」では、内蔵HDDのロード時間が61.6秒であったのに対し、SSDは約37.2秒を記録。SSDは約24.4秒のロード時間を短縮し、内蔵HDD比で約60.4%の時間でロードを完了している。

「セーブデータのロード」。タイトル画面ではセーブデータ選択できないため、ゲーム再開後に「ゲームをロード」から任意のセーブデータを選択する。

エースコンバット7 スカイズ・アンノウンは860 QVOが20%前後ロード時間を短縮

 エースコンバット7 スカイズ・アンノウンでは、ミッションを開始する際に発生するロード時間「ミッション開始」と、ミッションマップを単機で自由に飛行できるフリーフライト開始時のロード時間「フリーフライト開始」の2つを測定した。

 なお、どちらのロード時間も「ミッション10」のステージで測定している。

 「ミッション開始」のロード時間は、内蔵HDDが約29.0秒、SSDは約21.2秒を記録した。短縮されたロード時間は約7.8秒で、内蔵HDD比のロード時間は約73.1%だった。

ミッションを開始する際のロード時間「ミッション開始」。

 「フリーフライト開始」のロード時間は、内蔵HDDが20.1秒で、SSDは約16.2秒だった。短縮されたロード時間は約3.9秒で、SSDのロード時間は内蔵HDDの約80.6%に短縮された。

 他のタイトルと比べるとややSSDの効果が薄くなっているが、これらのロードはプレイ時には不可避のロード時間であり、ミッションをプレイする度に2~3割のロード時間短縮は積もり積もれば大きなものとなるだろう。

フリーフライトを開始する際に発生するロード時間「フリーフライト開始」。

QLC SSDでもPS4ゲームのロード時間は大幅短縮低コストでPS4を高速化するなら860 QVOは狙い目

 4タイトルでのロード時間短縮効果を測定した結果、USB外付けケースを使って拡張ストレージとしてPS4に接続した860 QVOは、どのタイトルでも内蔵HDDから確実にロード時間を短縮していた。

 極めて大きな時間短縮を実現したモンスターハンターワールド:アイスボーンでの結果からも明らかなように、QLC方式のNANDフラッシュを採用した860 QVOでもPS4ゲームのロード時間を短縮することができた。また、プレイ中にフリーズなども発生しておらず、テストした範囲内では挙動の面でも問題無く使用できた。

 約1万円というコストで、1TBの大容量とHDDを圧倒するパフォーマンスを実現できる860 QVOは、PS4の拡張ストレージ用途に高い適正を持ったSSDだ。

 現在、外付けケースが付属するバンドルキャンペーンも行われており、低コストでPS4を高速化するチャンスといえるだろう。

[制作協力:ITGマーケティング]

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