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CMR採用8TB HDDの新モデル「WD Blue WD80EAZZ」を買ってみた、コスパは最強?

実売は1万4千円前後、安価な8TB HDDの新モデル text by 瀬文茶

 いまもっとも注目を集めているHDD、WD Blueの8TBモデル「WD80EAZZ」を買ってみました。

 Western Digitalのデスクトップ向けHDD「WD Blue」の最大容量モデルとして、2021年11月下旬に発売されたばかりのWD80EAZZは、8TB HDDとしては最安クラスの1.4万円前後という価格でありながら、記録方式に従来型の「CMR」を採用していることで注目を集めています。

 今回は、記録方式と容量単価で注目を集めるこの新作デスクトップ向けHDDの実力を、ベンチマークテストやファイル転送テストで確認してみましょう。

CMR方式ながら最安クラスの8TB HDD

 冒頭で紹介した通り、「WD80EAZZ」はWestern Digitalのデスクトップ向けHDD「WD Blue」の最大容量モデルとして、2021年11月下旬に発売された8TB HDDです。

 フォームファクターは3.5インチで、インターフェイスは6Gbps SATA、回転数は5,640rpm。記録方式には「CMR」を採用しています。

WD Blueの8TB HDD「WD80EAZZ」。回転数5,640rpmの3.5インチHDD。
本体裏面。固定用のネジ穴は6点。
インターフェイスは6Gbps SATA。
側面のねじ穴は片側3点。
CrystalDiskInfoで表示したWD80EAZZの情報。

 いまWD80EAZZが注目を集めている理由は、「価格(容量単価)」と「記録方式」にあります。WD80EAZZの価格は1万4千円前後で、これは8TB HDDとしては最安級の価格です。実際、今回購入した際の価格も税込みで約13,852円でした。

 WD80EAZZが採用する記録方式「CMR」は、新方式の「SMR」より性能面では有利なものの容量単価が高くなるため、安価なデスクトップ向けHDDでは新たに採用されることが少なくなっている方式です。

 つまり、性能は高いが容量単価も高いCMR方式を採用しているにも関わらず、最安クラスの容量単価を実現してみせたことで、WD80EAZZは多くの方の注目を集めているという訳です。

ベンチマーク速度はなかなか優秀、新型8TB HDD「WD Blue WD80EAZZ」の性能

 ここからは、価格と記録方式で注目を集める新作HDD「WD80EAZZ」で、ベンチマークテストやファイル転送テストを実行し、その性能がどれほどのものなのかを確認していきます。

 WD80EAZZのテストに利用したのは、Core i9-12900Kを搭載するIntel Z690環境です。使用機材の詳細については以下の表をご確認ください。

CrystalDiskMarkはリード・ライトともに200MB/s超え

 定番のディスクベンチマーク「CrystalDiskMark」では、デフォルトモードでテストサイズを「1GiB」と「64GiB」にして実行した結果を取得しました。

 テストサイズを大きくすると、ランダムアクセス性能には低下がみられるものの、シーケンシャルアクセス性能はほぼ変化しておらず、リード210MB/s前後、ライト200MB/s前後という速度を記録しています。回転数5,000rpm台のHDDとしてはなかなかの速度であると言える数値です。

テストサイズ=1GiB。
テストサイズ=64GiB。

HD Tune Proも外周部は200MB/s超え、内周部でも80MB/sを以上維持

 HD Tune Pro 5.75では、外周から内周までの速度を測定する「Benchmark」で、リード速度とライト速度をそれぞれ測定しました。

 リード速度は最外周部で200MB/s前後を記録し、中間の4TB付近でも150MB/s以上を維持しています。以降も7.2TB付近までは100MB/sを維持していますが、最内周部では85MB/s程度まで低下しています。ライト速度については、リード速度より若干遅いものの、速度変化の傾向はほぼ同じです。

リード速度。
ライト速度。

約30GiBの動画・写真ファイルの転送時間と速度を計測、書込みは少し苦戦?

 ここからは、WD80EAZZとシステム用NVMe SSD(CORSAIR MP600)の間で実際にファイル転送を行い、転送時間とデータ転送レートを測定します。

 今回は「HWiNFO64 Pro」で取得したモニタリングデータをもとに、HDDへのアクセスが発生した瞬間から、ディスクアクティビティが50%を割り込んだ瞬間までを「転送時間」として測定し、HDDからNVMe SSDへの転送を「読み出し」、NVMe SSDからHDDへの転送を「書き込み」としています。

テスト用の動画ファイル。合計サイズは29.8GiBで、ファイル数は14個。平均ファイルサイズは約2.1GiB。
テスト用の写真ファイル(RAW)。合計サイズは29.6GiBで、ファイル数は1,000個。平均ファイルサイズは約29.6MiB。

動画ファイルの転送は、リードはベンチマークと同等で高速、ライトは平均127.5MB/sほどに

 1ファイルあたりの容量が大きい動画ファイルを転送してみました。転送した動画ファイルの合計容量は29.8GiBで、ファイル数は14個、平均ファイルサイズは約2.1GiBです。

 読み出し時の転送時間は156秒で、書き込み時の転送時間は250秒でした。CrystalDiskMarkやHD Tune Proなどのベンチマークテストでは、リード・ライトともにほぼ同じ数値が出ていましたが、実際のファイル転送ではリードの方が明確に高速となりました。

 動画ファイル転送時のデータ転送レートは、読み出し時が204.4MB/sで、書き込み時が127.5MB/s。データ転送レートの推移グラフを確認してみると、読み出し時は200MB/s前後で比較的安定しているのに対し、書き込み時は速度変動の幅が大きく、ピーク速度の200MB/sに達する時間は限定的であることが分かります。

写真ファイルの転送もリードがライトに対して高速な結果に

 動画ファイルより1ファイルあたりの容量が少ない、RAW形式の写真ファイルを転送した際のパフォーマンスを確認します。転送した写真ファイルの合計容量は29.6GiBで、ファイル数は1,000個、平均ファイルサイズは約29.6MiBです。

 ファイルの転送時間は、読み出し時が157秒で、書き込み時が249秒でした。転送時間は合計容量が同程度だった動画ファイルの転送時とほぼ同じで、やはり読み出しの方がだいぶ速度が出ているようです。

 写真ファイル転送時のデータ転送レートは、読み出し時が204.0MB/sで、書き込み時が128.6MB/s。データ転送レート自体は動画ファイルの転送時と近い数値ですが、推移グラフをみると書き込み時の速度は終始大きく変動し続けており、動画ファイル転送時とはだいぶ異なるものとなっています。

低回転数HDDらしく発熱は控えめ、振動や騒音も小さく静粛性も優秀

 テストサイズ64GiBでCrystalDiskMarkを実行した際のステータス情報をHWiNFO64 Proで取得し、HDD温度などの推移グラフを作成してみました。

 室温約22℃の環境下において、アイドル時は30℃だったHDD温度は、10分程度CrystalDiskMarkを実行したことで32℃まで上昇しています。冷却ファンなどによる風の影響を受けないパッシブクーリングでこの程度の温度なのですから、WD80EAZZの発熱は小さなものであると言ってよいでしょう。

 WD80EAZZは低発熱なだけでなく静粛性にも優れており、特にディスクの回転による振動や騒音は非常に小さなものとなっています。読み書き時にはヘッドが稼働するため、それなりに動作音が発生しますが、3.5インチHDDとしては静かな製品だと思います。

 回転数が5,640rpmのWD80EAZZは、低回転数らしく発熱や静粛性の面では扱いやすいHDDであると言えるでしょう。

容量単価に優れたデスクトップ向け8TB HDDの新モデル速度より扱いやすさを求めるユーザーに好適

 WD80EAZZがCrystalDiskMarkやHD Tune Proで示した速度はなかなかのものでしたが、実際のファイル転送ではベンチマークほどのライト速度は出ませんでした。とはいえ、そのライト速度も同クラスのHDDと比べて特に低いという程でもなく、低回転数のデスクトップ向けHDDとしては標準的なものです。

 特別な性能こそないものの、デスクトップ向けHDDとして標準的な性能を備えつつ、8TBという多くのPCユーザーを満足させられる記憶容量と、HDD最安クラスの容量単価を実現したWD80EAZZは、データの保存先やバックアップ用のHDDとして魅力的です。

 低回転数HDDらしく低発熱で静粛性にも優れているので、HDDに性能より価格や扱いやすさを求めている方にはマッチする製品であると言えるでしょう。