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データ用ドライブをSSDにすると超快適、4TB SSDを使ってPCをHDDレス化してみた

静音化の恩恵も大!普段使いのレスポンスも改善 text by 久保勇

 2TBや4TBといった大容量SSDもだいぶ手の出せる価格帯になってきています。そうなると、PCに搭載するストレージは全てSSDにしたいと思う人も多いのではないでしょうか。

 OS用のSSD + データ置き場用のHDDといった組み合わせは自作PCでは定番で、筆者宅の仕事用PCもこの構成になっています。実用上問題はありませんが、SSDの快適さに慣れると、HDDの動作音やちょっとした動作のもたつきなどが気になることもあります。ということで、データ用HDDをSSDにアップグレードするとどれくらい快適になるのか、今回実際に試してみたいと思います。

大容量でメインのデータ置き場にも使える4TB SSD定番のCrucial MX500シリーズの最大容量モデル

 今回、大容量のデータ置き場として使用するストレージは、Crucial MX500シリーズの4TBモデル「CT4000MX500SSD1」。

 500GBや1TBはOSやアプリケーション用のドライブとしては手頃な容量ですが、データ置き場としてHDDのように利用するには容量面で十分とは言えません。HDDを置き換えるなら、容量は4TBくらい欲しいところです。

MX500 4TB(CT4000MX500SSD1)。
本体裏面側。
本体の厚さは7mm。
現行のMX500シリーズはコンパクトなパッケージになっており、9.5mm厚対応の環境で使用するためのスペーサーが付属しています。

 MX500シリーズは250GB、500GB、1TB、2TB、4TBが現在ラインナップされており、速度は全モデルリード560MB/s・ライト510MB/sとされています。SATA SSDでは超定番モデルなので様々な用途に利用されていますが、OS起動用から外付けにしてデータの持ち運び、NAS用や今回のようなデータ保管用など、ニーズに合わせピッタリな容量が選べます。

静音仕様の仕事用PCをもっと静かに、データ用HDDをSSDに交換したい

 今回使用するPCは以下の自作PC。過去にレビューなどで使用したパーツを主に使い仕事用に組んだ1台で、ケースは静音PC向けのMini-ITXケース Fractal Design Define Nano S(ホワイト)に、Noctua製ファンの廉価モデル「Redux」を3基搭載し、なるべく静かにしつつ冷えるようにもしています。

メインの仕事用PC、コロナで出社日数が減った2年前に在宅ワーク用に組んだもの。
記事作成や社内システムへのアクセスが主な用途なので、静音仕様にしています。

 CPUはCore i9-9900K、メモリはDDR4-2666 32GB×2枚、SSDは1TB(M.2/NVVe)×1台、HDDは3TB(SATA)×1台、マザーボードはGIGABYTE Z390 I AORUS PRO WIFIといった構成になっています。ちなみに、メモリとSSDはCrucial製です。

 このPCを使用していて一番気になるのがHDDの音で、ほかが静かなのでブーンとうねるような回転音が目立ちます。また、PC起動時のHDDのスピンアップ待ちの時間もレスポンスの悪さを感じるところです。

 慣れというのは恐ろしいもので、HDDの回転音もハイスペックゲーミングPCの騒音に比べれば無視できる小ささで、スピンアップ待ちの時間も数秒といったところ。どんだけ神経質なんだよ!と言われるレベルかもしれませんが……、過去にテストしてデータ用HDDをSSDに変えれば解消することはわかっていたので、変えるチャンスをずっと待っていたというのが現状です。

仕事用PCのスペック
CPUCore i9-9900K(8コア/16スレッド)
マザーボードGIGABYTE Z390 I AORUS PRO WIFI
メモリDDR4-2666 32GB×2枚
OS用ストレージ1TB NVMe SSD
データ用ストレージ3TB SATA-HDD
OSWindows 10 Pro 64bit

2TB SSDでは足りなかった、4TB SSDが必要になった筆者宅の環境

 そもそもデータ用のドライブにSSDを使う場合、何TBあればたりるのか調べるところから行きます。筆者の環境の場合、元が3TB HDDなので、4TB以上あれば確実に置き換え可能、使用容量次第では2TBあれば十分な可能性もあります。

 以下が実際に現在筆者が仕事用PCで使用しているデータの総容量で、合計1,87TBでした。

筆者が使用している仕事用PCのデータ総容量。
内訳はほとんどが写真などの画像データで、次いで動画でした。ほとんどがレビュー作成時に使用した元素材です。

 HDDやSSDは、販売される際の容量は、1,000B=1KB、1,000KB=1GB、1,000GB=1TBといった感じに1,000毎に綺麗に単位が上がっていきます。実際にフォーマットして使用する際は、1,024B=1KB、1,024KB=1GB、1,024GB=1TBといった感じに区切られる単位が表記とは異なり、1TBのSSDを購入しても実際に使用できる領域は1割前後減った値になります。

 以下はCrucial MX500 2TBをNTFS形式でフォーマットした際の状況ですが、実際に使用可能な領域は1.81TB。筆者環境のデータ量が1.87TBなのでギリギリ収まらず、2TB SSDでデータ用ドライブを置き換えることは今回の環境ではできません。

2TB SSDもデータ用ドライブとしては候補に入ります。
フォーマット後に使用できる空き領域は1.81TB。筆者環境の場合はギリギリ容量が足りない結果に。

 2TB SSDではデータが収まらないので、今回4TB SSDを選んだわけですが、4TB SSDをフォーマットすると利用可能な容量は3.63TBとなります。筆者環境のデータは1.87TBですが、これを入れても半分近く空き容量が残るので、そこそこ長い間使えそうです。

MX500 4TBのフォーマット後の空き容量、3.63TBが利用可能。

HDDレスにして静音化、かなり変わる動作音

HDD搭載時とそれをSSDに置き換えた場合での動作音をチェック。

 個人的に、仕事用PCでに一番気になっていたのが動作音です。静音仕様で組んでいるのでHDDから響いてくる回転音が結構気になっていたのですが、SSDに置き換えることでどれだけ変わるのかをチェックしてみたいと思います。

 下の画像がPCの真横に騒音計を置いて計測した値の違いです。左側がHDD搭載時、右側がHDDを外しSSDを搭載した際のものになります。

HDD搭載時の動作音。
HDDをSSDに換装後の動作音。

 HDD搭載時は42デシベル前後の動作音でしたが、SSDに換装後は33デシベル前後となりました。1デシベルで音の大きさは約1.12倍ほど変わるとされているので、2.5~3倍の間くらい騒音に差があることになります。

 HDD搭載時はブーンとうねるような低音が気になりましたが、それが無くなるのはかなり快適。SSDに換装後はエアコンなどがついていると動作音がわからないレベルなので、静音という観点ではかなり満足感のある結果になりました。

HDDが無くなるとOSの起動時間も速くなる!

HDD搭載時と、SSDに置き換えた場合でのOSの起動時間を比較。

 データ用HDDをSSDに置き換えて次にわかりやすかったのがOSの起動時間。

電源ボタンを押してから、Windows 10のログイン画面が表示されるまでの時間を計測してみました。結果は以下の通り。

 OSが起動する前には各デバイスを認識するためのイニシャライズが入り、この際、HDDの場合はスピンアップして認識されるまで若干の時間がかかります。OSの起動ドライブがNVMe SSDなので元々ある程度速いものの、速さに慣れてしまうとHDDのスピンアップ待ちの時間は気になったりもします。

 HDD搭載時は起動までに17.25秒かかっていましたが、HDDをSSDに換装することで11.37秒まで起動時間を短くすることができました。10秒程度だと電源を入れてすぐ使えるといった感じで、速くなったことが体感できる差があります。休止状態をあまり使わないで運用する人には結構恩恵がある変化です。

HDDからSSDへの置き換えでデータ転送速度もアップ外付けドライブからのデータ取り込みも高速に

 HDDからSSDへ換装することで当然速度も上がりますが、効果が大きい場面としては外付けドライブからのデータ転送時の時間が挙げられます。外付けドライブの速度にも影響されるところですが、外付けSSDなどを使っている環境では効果が体感できる差があります。

 まずはデータ用に使っているHDDとそれを置き換えるSSDの速度差ですが、SSDに換装することでシーケンシャルアクセスでで2.5倍~2.7倍ほど高速になります。以下はベンチマークの結果ですが、左が元々のHDDの値、右側が換装に使用しているMX500 4TBの物になります。

データ用HDD 3TBのベンチマーク結果。
換装したCrucial MX500 4TBのベンチマーク結果。
Crucial X8 Portable SSDからのデータ転送速度をテスト。

 今回は最大1,050MB/sをうたう外付けSSDのCrucial X8 Portable SSDを使用し、HDDとSSDそれぞれに約30GBの写真データを転送した際の様子を確認してみました。

 左がHDDで、右がCrucial MX500 4TBのものになります。キャッシュなどが効くので初速はどちらも6Gbps SATAの帯域いっぱいくらいまで速度が出ている表示になりますが、途中からディスクの素の速度の値となり、HDDは最終的に約100MB/s前後、4TB SSDは530MB/s前後で転送できていることが確認できました。

 実利用時の速度はベンチマーク以上の差があり、外付けSSDなどを使用している人はデータ用ドライブもSSDにすることでデータ転送時の待ち時間をかなり減らすことができます。

外付けSSDから内蔵HDDにデータを転送した際の様子。
外付けSSDから内蔵SSDにデータを転送した際の様子。

地味に効いてくるレスポンスの良さ、大量の画像ファイルの扱いもちょっと快適に

 これまで紹介した3点よりは地味な部分になるのですが、画像ファイルのサムネイル作成などもSSDが若干快適で、多数のファイルを扱う人にもデータドライブのSSD化はお薦めです。

 以下のGIFアニメーションはHDD上にある画像ファイルのサムネイル作成のスピードとSSD上にある画像ファイルのサムネイル作成のスピードを比較したもので、左側がHDD、右側がSSDとなります。

 1枚当たりの作成スピードは非常にわずかな差となていますが、塵も積もれば~といった感じで多数のファイルを扱う際にはわかるレベルの差が出てきたりします。SSDはちょっとした引っ掛かりなども無いので、普段使いの快適さも無意識のうちに底上げされるかたちになります。

HDDとSSDのサムネイル作成スピードの比較。

予算が許すならデータ用ドライブもSSDにしたい!4TB SSDでPCをフルSSDに

 今回紹介しているMX500の4TBモデルは、秋葉原の安値店では4万5千円前後で販売中。気軽に買える価格までもう少しといったところですが、PCをHDDレス化することで得られる恩恵はなかなか大きいものです。個人的には体感して嬉しいレベルの変化というか、一つ夢がかなったくらいに満足感のある変化が得られました。

 導入の価値は大きいものの、もちろん予算の問題はあります。2TBモデルであれば2万2千円前後で入手できるので、データ容量がそこまで多くない人にはこちらも選択肢になるはずです。

 SSDの大容量化と低価格化が進めば、近い将来データ用ドライブもSSDという人が増え、PCにHDDを搭載しないケースが増えていくとは思います。ただ、HDDが不要になるわけではなく、HDDはバックアップ用として超大容量品にニーズが集まり住み分けが進むはず。

 ストレージの進化は体感に大きくかかわる部分なので、大容量SSDが手軽に導入でき、そのバックアップもHDDに手軽に行えるといった状況が一日も早く到来して欲しいところです。

[制作協力:Crucial]