特集、その他
KaveriのTDP設定機能「Configurable TDP」を試す
A10-7850Kでテスト、TDP 45W設定時は温度/消費電力ともにはっきりと低下
(2014/2/18 12:30)
秋葉原では、入荷してもすぐに売り切れてしまうほど人気のAMD最新APU、A10-7850K。AMD最新のアーキテクチャを組み合わせて作られたKaveriベースのAPUであるA10-7850Kは、MantleやHSAなど、さまざまな新機能を備えています。
今回は、熱設計電力であるTDPを引き下げることにより、CPUの発熱と消費電力を抑制する機能「Configurable TDP」についてテストしてみました。
UEFIで目標TDPを設定
現在発売されているKaveriベースのAPU、A10-7850KとA10-7700Kは、いずれもTDP95Wの製品なのですが、Configurable TDP対応マザーボードを利用することで、TDPを65Wまたは45Wに引き下げることが可能とされています。
今回テストに利用するASUS A88X-PROもConfigurable TDP対応マザーボードの一つ。A88X-PROでは、UEFIに「TDP Configuration」という項目が用意されており、45W~65Wの範囲で、目標となるTDPを1W刻みで設定できます。
では実際にConfigurable TDPを使うと、APUはどのように動作するのでしょう。今回は、A10-7850Kの定格動作と、Configurable TDPを利用してTDPの動作を45W、65Wに設定した際の動作をモニタリングしてみました。
APUの動作状況については、CPU電圧とCPU・GPU温度の確認に「HWMonitor Pro」、CPUクロックの確認には「Core Temp」をそれぞれ利用しました。なお、CPUクロックについては、Core Tempが正式にKaveriをサポートしておらず、実際の動作クロックとズレが発生してしまうため、ログデータを元に計算し直した数値でグラフ化しています。
CPU AMDA10-7850K
マザーボード ASUSA88X-PRO(UEFI:0802)
メモリ DDR3-2400 8GB×2 (OCMEMORYOCM2400CL11D-16GBN)
CPUクーラー サイズ兜2(SCKBT-2000)
SSD IntelSSD 510 120GB
電源 SilverStoneSST-ST85F-G
OS 日本マイクロソフトWindows 8.1 Pro(64bit)
VGAドライバ AMDCatalyst 14.1 Beta
室温 26.0±0.5℃
CHINEBENCH R15でテスト、Configurable TDPの効果を大きく発揮
まずは、CPU系ベンチマークテスト「CINEBENCH R15」実行時のログデータから見ていきます。
各設定時のモニタリングデータを見てみると、TDP 95W動作である定格動作時のCPUクロックが3.7GHz~3.9GHz程度で動作しているのに対し、65W設定時は3.0~3.5GHz、45W設定は2.4~3.0GHzと、TDP値を低く設定した時のデータほど、CPUの動作クロックが低くなっています。
CPUクロック同様、電圧と温度も設定したTDPに応じて低くなっています。特にCPU温度については、80℃弱に達する定格動作に対し、45W設定時は60℃未満に留まっており、負荷時の発熱が大きくカットされていることが確認できます。
CINEBENCH R15は、CPUのパフォーマンスがスコアに直結するベンチマークテストであるため、テスト実行時にCPUクロックが低下する45W設定時と65W設定時のスコアは、定格動作時のスコア比でそれぞれ約75%、約87%となっています。
スコアの低下はなかなか大きいのですが、テスト実行時の消費電力はそれ以上に低下しており、システム全体の消費電力は、定格時の118Wに対し、65W設定時は91W(約77%)、45W設定時には40Wも低い78W(66%)となっていました。ワットパフォーマンス的には、より低いTDPに設定した時の方が良い結果と言えます。
FF14ベンチマーク実行時は差が縮まる傾向に
続いて、「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」実行時のログデータをチェックしてみます。
CPUクロックのログを比較してみると、65W設定時と定格時は負荷状況に応じて1.7GHzと3.0GHzを行ったり来たりしているのに対し、45W設定時は3.0GHzで動作している時間が短く、代わりに2.4GHzで動作している時間が長いことがわかります。
ベンチマークスコアに関しては、定格時のスコア比で65W設定時は約98%、45W設定時でも約92%と、CINEBENCH R15の結果に比べ、スコア差は小さくなっています。スコアに差がない分、消費電力差も最大11W差と小さくなっています。
65W設定時のCPU・GPU温度と消費電力を考えると、温度や消費電力を理由にクロックを抑制する理由が見あたらず、定格時のCPUクロックはもう少し高くてもいいように思えます。ところが、定格時のCPUクロックが3.0GHzを超えている時間はほとんどありません。
CPU使用率を元にクロックを調整しているのか、はたまたGPU側がボトルネックとなり、CPUをフルで動かす必要が無いのか。CPUクロックが定格クロックを割り込んでいる理由はいくつか考えられますが、GPUがメインとなるベンチマークテストでは、設定TDPの差がパフォーマンスと消費電力に与える影響は少ないという結果となりました。
手軽に発熱と消費電力をカットできるKaveriのConfigurable TDP
今回のテストでは、Configurable TDPによりTDP値を制限すると、CPUに高負荷のかかるCINEBENCH R15で、パフォーマンスと引き換えに消費電力と発熱がカットされる一方、GPU負荷メインのファイナルファンタジーXIVでは、パフォーマンス、消費電力、発熱いずれも微減に留まり、Configurable TDPの効果が薄いという結果になりました。
この結果とログデータの傾向から考えると、どうやら、KaveriのConfigurable TDPでは、主にCPUクロックと電圧を調整することで、設定されたTDPでの動作を達成しようとしているようです。
定格時のTDPは95Wと比較的大きなA10-7850Kですが、Configurable TDPによって発熱や消費電力を抑制すれば、よりコンパクトなCPUクーラーでの冷却が可能となり、電源ユニットへの要求も軽くなります。電源やヒートシンクの制約がつきまとうコンパクトなケースを使って、APUマシンを作ろうとしたとき、手軽に発熱と消費電力をカットできるConfigurable TDPは重宝しそうです。