特集、その他

20周年Pentiumで考える
「格安ゲームPC」のためのビデオカード選び

Watch Dogs、A列車で行こう、FF14、ヤギシミュレータ…… text by 石川ひさよし

 世間はすっかり夏休み。

 夏休みと言えばもちろんゲームなわけで、今夏も様々な話題作が登場している。

 ハッキングしながらアクションする新作アクションゲーム、Watch Dogs(ウォッチドッグス)や、定番MMORPG、Final Fantasy XIV 新生エオルゼアの最新アップデート「エオルゼアの守護者」、車両や建造物を追加、4Kにも対応したA列車で行こう9 Version 3.00など気になるゲームがある向きも多いだろう。

 また、最近一部で話題になっているのがPCならではのユニークなゲーム。「ヤギを操作して街を駆け、頭突きや後ろ蹴りで様々な物を破壊、果てはジェットパックを装着して空を飛ぶ」というヤギシミュレータGoat Simulator」や、自動車整備工シミュレータ「Car Mechanic Simulator 2014」、ゲーム内でも数時間のドライブになる長距離ドライブトラックシミュレータ「Euro Truck Simulator 2」、違法駐車をレッカー移動する「Towtruck Simulator 2015」など、実はPCには変わったゲームが色々ある。せっかくPCを買うのなら、こうしたゲームをプレイしてみたいと思う人も多いハズ。

 一方のPCシーンを見てみると、今シーズンの注目は、格安ながら倍率ロックが解除、オーバークロックできるCPU「Pentium G3258」が登場したこと。CPUを安価に済ませ、その分、ビデオカードに投資することで「ゲーム向けPC」を実現しやすくなったというわけだ。

 もちろん、こうしたPCでハイエンドゲームをプレイしようとするとCPUパワーが不足しがちになるが、「ある程度はPentium G3258をオーバークロックして対応、それ以上が欲しくなったらCPUをアップグレードする」とすれば、投資を最低限に抑えられるハズ。

 そこで今回は、このPentium G3258を活用することを基本に「格安ゲームPC」のためのビデオカード選びを考えてみた。

この夏の注目タイトルをまずチェック

 まずは今期の注目タイトルを、ざっとチェックしておこう。

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Watch Dogs(ウォッチドッグス)

ジャンル:アクション

 今夏新作ゲームの注目作だ。

 監視カメラや情報端末をハッキングしてゲームを進めていく、という近未来イメージのアクションゲームで、舞台はctOSと呼ばれるOSに管理されたシカゴ。

 ハッカーでもある主人公、エイデン・ピアースはctOSをハッキングすることで街中の人々の個人情報を抜き取ったり、監視カメラや情報端末を操作したり、あるいは交通網を操ることでストーリーが展開していく。ストーリーの進行とともに徐々に明らかになるctOSの秘密とは。

 フレームレート的には家庭用据え置きゲーム機でPS4版が900p/30fps、Xbox One版が792p/30fpsとあるため、PCで楽しむなら1080p/30fpsを狙いたいところだ。

 このタイトルについては、GeForce GTX 760以上のビデオカードにクーポンコードが添付されるNVIDIAのキャンペーンが実施されている。詳しい対象製品はややわかりにくいため、購入時、店頭などで確認した方が良いだろう。

Copyright 2014 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved
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Final Fantasy XIV 新生エオルゼア

ジャンル:MMORPG

 昨冬のゲーム紹介でも取り上げた国産MMORPGの代表的タイトル。

 発売後もアップデートが提供されており、7月8日には最新の「パッチ2.3 エオルゼアの守護者」が提供開始された。このパッチ2.3では、「PvPフロントライン」が追加されている。24人ずつ3つの勢力に分かれ、「アウトロー戦区」で戦う対人戦だ。

 基本的に30fps出れば十分なタイトルだが、現在のディスクリートGPUの性能ならエントリークラスの製品でも30fps程度は十分に出せる。より快適に楽しめる指標として60fpsを狙っていきたいところだ。

(C) 2010 - 2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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A列車で行こう9 Version 3.00 Build 1436

ジャンル:シミュレーション

 もうかれこれ30年近い歴史のある鉄道経営&都市開発シミュレーションタイトル。そのバージョンアップはグラフィックスの進化の歴史と言ってよい。

 豊富でマニアックな車両にも人気のひとつだが、美麗な3Dグラフィックスによる景観を楽しむことも人気だ。現行バージョンはA列車で行こう9 Version 3.0で、7月11日にリリースされたパッチBuild 1436が最新となる。

 シミュレーションタイトルなので、画面が静止しているような場合も多いが、動きのある映像シーンで30fpsを狙いたい。

Copyright 2014 ARTDINK. All Rights Reserved.
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Goat Simulator

ジャンル:山羊シミュレータ?

 「山羊シミュレータ」というゲーム名からしてどうにかしてる「おバカゲー」。PCならではのユニークゲームの代表として、今回テストすることにした。

 馬やラクダよりも古くから家畜化されたという説もある山羊。最近では団地の除草で大活躍の山羊。その山羊をシミュレータにしたのが本タイトル。

 ……といってもノンキに草を食むのではなく、落っこちても跳ね飛ばされても死なない不死身の山羊となって街中の物ををぶっ壊し、人々を恐怖のどん底に落という内容だ。10ドルという破格のタイトルで、公式にもバギーなことを認める中途半端なタイトルだが、とことん自由な世界と愛くるしい(?)山羊の表情に、日ごろの鬱憤も晴れることだろう。

 シミュレータといってもアクション要素が多いため、フレームレートは30fpsあるいは、より滑らかな描画が欲しい方は60fpsが目安になるだろう。

Pentium G3258で「格安ゲームPC」を作ってみよう

ビデオカードを重視すれば、安くゲームPCを自作できる?

 さて、早速PCの構成を考えていこう。

 まず、ゲーミングPCと言えば、「CPUもビデオカードもハイエンドクラス」という構成が一般的だ。実際、最新ゲームはハイエンド構成を要求するものもあるし、高性能なゲーミングPCであれば、「PCのスペックはどうだっけ?」と気にすることなく、快適なゲームプレイを実現できる。

 もっとも、PCスペックを良くするにはキリが無いし、そもそも予算という壁がある。

【今回使ったCPU・マザーボード】
CPU:Pentium G3258
デュアルコアでHyper-ThreadingやTurbo Boostには対応しないという制限はあるが、3.2GHzと高クロック。そして8,000円程度という店頭価格も魅力な製品。
マザーボード:GIGABYTE GA-H97-Gaming 3
今回のCPUが安いこともあり、それに釣り合うマザーボードとしてIntel H97チップセットを搭載した「GA-H97-Gaming 3」を選択してみた。Pentium G3258でOC狙いならIntel Z97マザーボードの方が魅力的だが、Intel H97の本モデルでもGIGABYTEが独自にOCを可能としている。オーディオ機能やLANも、ゲーミング仕様で、スタンダードモデルと比べるとオンボード機能だけで十分にゲームの魅力を引き出せる。

 そこで、3Dゲームに必要なビデオカードを重視し、CPUを最低限に抑えることで「最低限のゲーミングPC」をできるだけ安価に作ってみたい。

 今回、検証に用いたのはPentium G3258だ。このCPUの実売価格は8,000円前後で、同じLGA1150でもCore i7-4790Kのような最上位品の1/4ぐらい。ただし、同時実行スレッド数も1/4、つまり、Core i7-4790K(4コア、Hyper-Threading対応)は8スレッドなのに対し、Pentium G3258は2スレッド(2コア、Hyper-Threading非対応)だ。そしてCPU倍率が固定されていないと言っても、定格では3.2GHz程度でしかないため、CPU性能はかなり低い。ここがどのように影響するのかも明らかにするため、Core i3-4360(2コア/4スレッド、Hyper-Threading対応、3.7GHz)も用意した。なお、こちらの価格帯は、Pentium G3258の倍、およそ16,000円前後である。

 一方のビデオカードにはGeForce GTX 750 Ti/760/770を搭載する製品を用意した。今回、用意したのはGIGABYTEの製品で、もちろん「ゲーム向け」を旨とするもの。同社のビデオカードは独自のビデオカードクーラー「WINDFORCE」を搭載し、標準でオーバークロック仕様を採用。GPUのスペック以上の性能と静音性を両立できるとされている。搭載クーラーは、GeForce GTX 750 Tiモデルは2ファンタイプのWINDOFORCE、GeForce GTX 760/770モデルは3ファンタイプのWINDFORCE 3X。

 また、用意したマザーボードはIntel H97チップセットを搭載したGA-H97-Gaming 3。「オーバークロック」というポイントを考えると、Intel Z97マザーの方がよいのでは? と思うところだが、実はGA-H97-Gaming 3でもオーバークロックできたりする。Intel的には認めていない手法なので、今後この「穴」がふさがれてしまう可能性もあるが、「ひたすら安くゲーミングPCを作る」ならば、安価なH97マザーを利用するのがベストだろう。

【今回使ったビデオカード】
GeForce GTX 750 Tiモデル:GIGABYTE GV-N75TWF2BK-2GI
通常モデルと異なり、出荷前に7日間の耐久試験を実施され、それをパスした製品ということで「BLACK EDITION」として販売されている高耐久性モデル。搭載クーラーは2連タイプのWINDFORCEで、GPUの動作クロックは1,163MHz(ブースト時1,242MHz)。
GeForce GTX 760モデル:GIGABYTE GV-N760OC-2GD-FF
アッパーミドルGPUのGeForce GTX 760を搭載するOCモデル。このクラスからビデオカードは大きめとなり、冷却には3連ファンのWINDFORCEが組み合わされている。高性能GPUと言ってもWINDFORCEによって動作音は比較的静か。GPUの動作クロックは1,085MHz(ブースト時1,150MHz)。
GeForce GTX 770モデル:GIGABYTE GV-N770OC-2GD
ハイエンドGPUの下位に位置するGeForce GTX 770を搭載。さらに上にはGTX 780や780 TiといったGPUもあるが、かなり高価。GTX 770の本製品なら4万円前後と、今回のコンセプトのようにCPUをケチってGPUにつぎ込むとなると、お買い得度が出る上限ラインだろうか。搭載クーラーは冷却力が強化された3連タイプのWINDFORCE 450Wで、GPU性能に比べ動作音は静か。GPUの動作クロックは1,137MHz(ブースト時1,189MHz)。

 では、ベンチマークの結果を見ていこう。

【Watch Dogsの場合】できればGeForce GTX 770級、ガッツリやるならCPUもCore i3以上で

 Watch Dogsは、ゲーム開始から少し進んだところでパトカーとのカーチェイスシーンがある。動きが激しいためGPU負荷も高く、比較的長時間逃げることが可能(ゲームオーバーになりにくい)なので、このシーンを用いてFRAPSから1分間のフレームレートを計測した。

 結果はビジュアル重視のアクションタイトルだけに、比較的GPUパワーを必要とすることがハッキリした。画質設定が「中画質」程度であれば、Pentium G3258+GeForce GTX 760/770の格安PCでも30fpsを超え、GeForce GTX 750 Tiとの差が明確になっている。

 ただし、グラフを見ていただけるとお分かりの通り、低画質、中画質でのGeForce GTX 760/770搭載ビデオカードのフレームレートは30fps少々で頭打ちになっている印象だ。これはCPUの力不足が表れている状況で、実際、CPUをCore i3-4360に交換しただけでスコアが一気に向上した。

 とはいえ、最高画質で30fpsを狙う場合は、GeForce GTX 770あたりが必要となる。それでも31fps程度なのでギリギリだ。今回のGV-N770OC-2GDのように、OCモデルでなければ、30fpsを割り込むところだっただろう。

【Final Fantasy XIV 新生エオルゼアの場合】フルHDならGeForce GTX 750 Tiクラス、GTX 760なら4Kも

 Final Fantasy XIVは、現在のミドルレンジGPUの性能であればかなり快適に楽しめるタイトルだ。

 今回のテストでの最下位となるGeForce GTX 750 Tiでも、フルHD、最高品質設定で48fpsあり、余裕を考えても十分と言える。それよりも上のクラスのGPUでは、リフレッシュレートの上限に張り付く格好だ。

 しかし、これではGeForce GTX 760と770のパフォーマンス差が分からない、ということで4K解像度(3,840×2,160ドット)でのテストも実施してみた。こちらは、GeForce GTX 770が35fps、760が29fps。どちらも「まずまず快適」と言える数字だが、GeForce GTX 760は30fpsギリギリなので、シーンによっては映像にカクツキが出てしまうかもしれない。

 このように、フルHDならGeForce GTX 750 Tiで十分、4Kを狙うならGeForce GTX 770もよいという結論だ。今回の検証的にオススメしたいのはGeForce GTX 750 Tiを搭載するGV-N75TWF2BK-2GI。コスト面も魅力だが、MMORPGは長時間プレイになりがちなゲームのため、信頼性をとくに重視したい。1週間の連続稼働テストをパスした「BLACK EDITION」であるため、長時間プレイという面ではお墨付きの製品と言えるだろう。

【A列車で行こう9 Version 3.00の場合】A列車に求められるのはCPUパワー

 A列車で行こう9は、およそ30fpsあれば快適にプレイできる。ただし、マップの開発規模によってフレームレートが変化するため、ベンチマークは至難だ。そこで、ガッツリ楽しむ方を想定し、十分に開発が進んだデータを用意し、そのフレームレートを計測した。

 また、開発マップ画面と、ビューワ等での空撮シーン、列車などの車窓映像といった各場面でフレームレートが変わってくる。

 開発マップでは、動きが少ないためフレームレートが低くてもあまり問題にならないが、都市を眺める空撮シーンや車窓映像はかなりフレームレートが落ち込むため、それらのスムースさがポイントになるだろう。今回は、この2つのシーンで、できるだけタイミングを合わせ、FRAPSから1分間のフレームレートを計測した。

 A列車で行こう9は、GPU性能もさることながら、それ以上にCPU性能が大きく影響するようだ。まず空撮も車窓も、Pentium G3258使用時はどのGPUでもほとんど差が出なかった。そこで、Core i3-4360に交換後に計測したところ、それぞれフレームレートが上昇し、とくに車窓シーンについてはGPU性能の違いがしっかりとフレームレートでも差となって表れた。

 A列車で行こう9でのCPUの必須環境はCore 2 Duo、推奨環境はクアッドコアCPUのCore i7-860となっている。Pentium G3258の場合、必須側と同等くらいだろうか。少なくとも推奨環境にはやや遠い印象だ。一方、推奨環境におけるGPUはGeForce GTS 250とされており、GeForce GTX 750 Tiでもこれを上回る。確かに、空撮や車窓をあまり使わず、メインとなる開発マップに関していえばGeForce GTX 750 Tiでも十分に楽しめる。

 一方で空撮や車窓を楽しみたい方は、GeForce GTX 770のように高性能なビデオカードを選ぶとよいのではないだろうか。とはいえ、今回の趣旨であるPentium G3258がCPU性能不足となると、CPU予算が増大する。

 価格バランスから検討すると、今回テストした中ではGeForce GTX 760搭載のGV-N760OC-2GDあたりがちょうどよいのではないだろうか。この製品では製品の定格クロックである980MHzに対し、1085MHzと100MHz以上のOCが施されており、この点で並のGeForce GTX 760よりも高い性能と言える。そこが空撮や車窓シーンで効いてくることだろう。

【Goat Simulatorの場合】快適さを求めるならGeForce GTX 760クラス

 シミュレータと言ってもアクションゲームなので、しっかり30fps出せる環境が望ましい。ただしそこまで負荷は高くないようだ。

 画質プリセットは無いため、アンチエイリアスを含めすべての設定を最高まで引き上げた状態でテストしたが、GeForce GTX 750 Tiでも38.225fpsと、十分に楽しめる。また、それ以上のGPUなら50fpsを超えたが、GeForce GTX 760とGTX 770の差は小さく、どうやらこれもCPUがボトルネックになっている印象だ。

 例えばPentium G3258で楽しむのであれば、基本のチョイスはGeForce GTX 760で、あえてその上を狙うほどではない、と考えられる。なお、あくまでも一般論だが、こうしたユニークなゲームが要求するPCスペックはそれほど高くない。GeForce GTX 750 Tiや、GeForce GTX 760があれば、こうしたゲームを十分楽しむことが出来るだろう。

 なお、「パフォーマンスに余裕がある上で」という視点なら、静音性を考慮するのもいいだろう。ゲームプレイはやはり夜、ということになる人も多いと思うが、そうした際、やはり爆音、というわけにいかないだろう。今回の製品が採用するWINDFORCEのような静音クーラー搭載モデルを検討するのもいいだろう。

Pentiumでも「ライトなゲーム+α」は十分イケるCPUパワーをどうするかが腕の見せ所?

 以上、「Pentium G3258で低価格なゲーミングPC」という目論見でPC構成を考えてみたが、Final Fantasy XIVやいわゆる「おバカゲー」など、ライトなゲームについてはPentium G3258+ミドルレンジGPU、というのはそれなりに現実感のある構成だろう。

 特に、CPUのコストを削減した分、今回テストしたGIGABYTEのビデオカードのような「ちょっと上」のビデオカードのはメリット。標準でオーバークロックされていたり、静音性の高いクーラーを搭載する分「ちょっと高め」なこうした製品だが、浮いたコストでパフォーマンスと静音性を強化できる、というのはポイントになるだろう。

 その一方、Watch DogsやA列車で行こう9などはCPUパワーが不足する場面もあり、Pentium G3258で作るなら「これをどう補うか」がポイントになる。手としては、「必要になったら後日アップグレードすると決めてしまう」「最初から上位CPUにしてしまう」「CPUをオーバークロックしてしまう」など色々あるが、ニーズに合わせて色々できるのが自作PCの良いところ。ゲームと一緒にPC自作も楽しんでいただきたい。

石川 ひさよし

GIGABYTE GV-N75TWF2BK-2GI