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プロ向けの黒か、家庭向けの白か?
家庭〜企業向けまで70種類も出揃った「QNAP Turbo NAS」の選び方

色と型番で判別OK? text by 清水理史

 12月上旬、QNAPから新型の家庭向け2ベイNAS「TS-231」が発売された。

 「こだわりユーザーのNAS」として地歩を築いてきたQNAP Turbo NASシリーズだが、実はこの製品の登場で、エンタープライズ向けから家庭用まで、幅広いラインナップが出揃ったことになる。.

 選択肢がここまで豊富になると、ぴったりなモデルが選べる反面、そのモデルにたどり着くのもなかなか大変だ。そこで今回は、数あるモデルの中から、自分の用途や環境にあった機種を選ぶためのコツをまとめてみた。

「知る人ぞ知る」から「誰もが知る」存在へ

エンタープライズ向けから家庭向けまで幅広いラインナップを揃えるQNAPのNAS。モデル数はタワー、ラックマウント合わせて表にあるだけで72種類にも及ぶ
こちらはタワー型モデルに限定した一覧表。位置づけなどが判りやすい

 おそらく多くの人にとって、「QNAP」と聞いて思い浮かべるイメージは、数年前と今では、だいぶ異なるものとなっていることだろう。

 高いパフォーマンスと豊富な機能から、知る人ぞ知る「ツウ向け」の存在として国内での販売をスタートしたQNAPのNASだが、今ではNASの特集記事などの常連となったうえ、店頭などでも見かける機会が増え、以前に比べて遙かに身近な存在となってきた。

 海外製のNASということで、かつては一種の敷居の高さを感じていた人も少なくないが、今では、その信頼性の高さと圧倒的なパフォーマンス、豊富な機能、そして意外なほどの使いやすさから、「購入時の有力な選択肢」と考える人も多いほど、国内市場での存在感を高めつつある。

 そんなQNAPのNASが、今後、さらにその活動範囲を広げることになりそうだ。同社のTurbo NASシリーズに、ホーム向けの2ベイNAS「TS-231」が新たに追加され、エンタープライズ向けのハイエンド製品から、家庭向けまで、そのラインナップがきれいに出そろった。

 NASの用途やそれを利用する環境は、人や組織によってそれぞれ異なる。その細かな用途に、豊富なラインナップで応えられるようになったことで、性能的にも費用的にも、「ちょうどいい」製品を選ぶことが可能になったわけだ。

 では、実際に、どのようなシーンで、どのモデルを選ぶのがベストなのだろうか? 製品選びのコツを紹介しながら、QNAPの豊富なモデルを整理していこう。

ビジネス向けの黒と家庭向けの白

 QNAPの豊富なラインナップの中から、自分に合った製品を見つける際、まず注目してほしいのが本体の色だ。

 QNAPの製品には、本体の色が黒いモデルと白いモデルの2種類が存在する。AV向けのファンレスモデル(TS-210/HS-251)は例外となるが、企業向けのモデルは黒、基本的に家庭向けのモデルは白と覚えておくと、モデルを選ぶ際の参考になる。

同じ4ベイのNASでも企業向けのTS-453 Pro(左)は黒、家庭向けのTS-451は白となる
QNAPのNASはQTSと呼ばれる共通のOSを採用しているため、利用できる機能に大きな違いはない

 では、ビジネス向けの黒いモデルと家庭向けの白いモデルでは、何が違うのだろうか?

 まず、QNAPのNASは、一部の例外を除き、利用できる機能にモデルごとの差がほとんどないことを覚えておこう。QNAPのNASは、「QTS(最新はQTS 4.1)」と呼ばれる共通のオペレーティングシステムをすべてのモデルで採用している。このため、黒いモデルでも白いモデルでも、「できること」に基本的な違いはない。ファイル共有などの基本機能はもちろんのこと、バックアップや同期、クラウド連携、マルチメディア、モバイルアプリなど、QNAPならではの多彩な機能をどちらも利用できるし、後からアプリを追加して機能を強化することもできる。

 つまり、黒いモデルと白いモデルの差は、ほぼハードウェアの違いと考えていい。一部例外もあるものの、ビジネス向けの黒いモデルには、高性能なCPUや高速なメモリなどが搭載されていたり、本体に動作状況を確認するためのLCDパネルが搭載されていたり、HDDの盗難を防ぐためのロックがかけられるようになっている。

型番で見分けられれば立派なQNAPツウ

 色だけでなく、微妙な型番の違いまで意識できるようになれば、立派なQNAPツウだ。

 QNAPのモデルの型番は、「TS-xxx」とTSに続く3桁の数字で表されている。この3桁の数字のうち、百の位がベイの数を示す。HDDを2本搭載可能な2ベイモデルなら「TS-2xx」、4台搭載可能な4ベイモデルなら「TS-4xx」という具合だ。

 搭載可能なHDDの数が多ければ、より多くのデータを保存できるので、ここまで判断できれば、ある程度の用途を想定できるはずだ。

 たとえば、自宅でPCやスマートフォンなど2〜3台のデバイスから使いたいなら、家庭向けの白モデルで、2ベイの「TS-2xx」を選べばいい。10人前後の社員がいる企業で使うならビジネス向けの黒モデルで、4ベイの「TS-4xx」といった要領だ。

2ベイのTS-251(左)と4ベイのTS-451(右)。最初の数字がベイの数を表している

 残りの下2桁は、用途ごとのシリーズやモデルの世代を表す。先に、「黒」「白」という色で、ビジネス向けと家庭向けというざっくりとした分類方法を紹介したが、その用途をもう少し細かく分類すると、以下の4つとなり、それぞれの用途に必要なCPUなどのスペックを備えたシリーズが展開されている。

TS-x80 Pro大企業などのエンタープライズ向け、基幹業務をサポートするデスクトップタイプの最上位

エンタープライズ向けの8ベイモデルTS-EC880 Pro。Xeonプロセッサや10GbEを搭載している

 QNAPのデスクトップタイプのNASの頂点に位置するのが、このTS-x80シリーズだ。大企業の基幹業務などを支えるストレージに適した製品となっており、サーバー向けの高性能なXeonプロセッサや信頼性の高いECC RAMなどを採用している。

【仕様のポイント】
Intel Xeon E3プロセッサ
DDR3 ECC RAM
フロントLCDパネル
1000BASE-T×4
10GbE対応可能(オプション)
mSATA SSDキャッシュ対応
USB 3.0サポート

 最大の特徴は、そのパフォーマンスの高さだ。特に10GbEに対応可能なことから、複数のサーバーや膨大なクライアントからの要求を処理するような環境でも、ネットワークの速度がボトルネックになることを避けられる。

【向いている用途】
・大企業のファイルサーバー
・サーバーのバックアップ
・仮想環境のストレージ
・データベース

 このため、利用者の多い大企業のファイルサーバーとしてはもちろんのこと、高いパフォーマンスが要求される仮想環境のストレージやデータベース環境での用途にも対応可能となっている。

 対応するベイの数も8、もしくは10と多く、大容量のストレージ環境を容易に構築することができる。

TS-x53 Pro中堅・中小企業および部門でのデータ保管向け

中堅・中小規模の企業向けとなる4ベイNASのTS-453 Pro。LCDパネル搭載で管理が容易なうえ、Celeron Quad Coreプロセッサ搭載で性能も高い

 TS-x53シリーズは、数十〜数百人規模の中堅・中小企業での利用が想定される製品だ。4つのコアを搭載したCeleron Quad Coreプロセッサを搭載することで、大量のアクセスを高速に処理したり、QNAPのNASならではの豊富な追加機能(Webサーバーやグループウェアなど)を快適に動作させることができる。

 上位モデルと同様にフロントにLCDパネルを搭載し、NASの状態を手軽に監視したり、各種設定などが本体から可能となっていることもビジネスシーンでは心強い。

【仕様のポイント】
Celeron Quad Coreプロセッサ
フロントLCDパネル
1000BASE-T×4
USB 3.0サポート

 また、TS-x80シリーズと異なり、10GbEには対応しないものの、LANポートを4つ搭載しており、サーバーを複数系統接続したり、複数のネットワークセグメントに接続することが可能となっている。

【向いている用途】
・中堅・中小企業のファイルサーバー
・拠点や部門単位でのファイルサーバー
・グループウェアなどの社内情報共有
・サーバーやクライアントのバックアップ
・仮想環境のストレージ
・社内向けやテスト環境向けWebサーバー

 2ベイから8ベイまでラインナップがあり、選択肢が豊富。全社向けのファイルサーバーとしてだけでなく、拠点や部門単位での導入にも適している。

 また、昨今では中堅・中小の環境でも仮想化技術を用いたサーバー集約などが一般的になりつつあるが、比較的小規模な仮想環境のストレージとしても適しており、さまざまな環境や用途に対応可能な懐の広いモデルとなっている。

TS-x51小規模企業・SOHOで活躍する万能モデル

個人事務所や家庭での利用に適した4ベイモデルのTS-451。数人での利用なら十分すぎるほどの性能を備える

 社員数で10名前後、もしくは個人事務所などでの利用に適した製品が、TS-x51シリーズだ。前述した白モデルと黒モデルが混在するシリーズとなっており、2ベイのTS-251と4ベイのTS-451が白、6ベイのTS-651と8ベイのTS-851が黒となっている。

 小規模企業・SOHO向けのNAS製品の中にはAtomを採用した製品も少なくないが、このシリーズでは2コアのCeleron Dual Coreを採用し、同じ小規模・SOHO向けでも、パフォーマンスを重視しているのが特徴。ネットワークも1000BASE-Tを2系統搭載し、ネットワークトラブルなどに備えた冗長性も確保可能となっている。

【仕様のポイント】
Celeron Dual Coreプロセッサ
1000BASE-T×2
USB 3.0サポート

 白のTS-251/TS-451は、数人から数十人規模のファイルサーバーとして最適。黒のTS-651/TS-851は、利用者数が多い場合はもちろんだが、画像や映像、3Dなど、扱うデータの容量が多い環境での利用に最適。デザイン、設計などの現場向けにも対応できる。

【主な用途】
・数人から数十人規模のファイルサーバー
・デザインや設計などの大容量データ保存
・ビデオの保存、変換、表示
・外出先から利用できるパーソナルクラウド環境

 また、オンザフライでのフルHDビデオエンコード機能、HDMI出力にも対応しているため、映像の保管だけでなく、変換や表示用としても活用できる。

 ブラウザやスマートフォン向けのアプリを利用して、外出先から利用することも手軽にできるようになっているため、SOHOでのニーズの高いパーソナルクラウド環境としても活用できる。

TS-x31「はじめてのNAS」に最適なエントリーモデル

2ベイの新製品TS-231。コンパクトな家庭用製品として幅広い用途に対応できる

 TS-x31シリーズは、PCに保存されている文書や写真などのパーソナルデータを保管することを目的とした家庭向けの製品だ。

 家庭向けとは言え、そこはパフォーマンスを重視するQNAPらしく、ARM Cortex A9プロセッサを採用することで、家庭などで想定される用途や接続数に十分なパフォーマンスを確保。LANポートも1000BASE-T×2とビジネス向けと同等の数を搭載している。

 また、前述したように搭載OSが上位モデルと同じQTS4.1となっており、家庭向けとは言え、ビジネスシーンでも活用できる豊富な機能をそのまま活用することが可能となっている。

【仕様のポイント】
ARM Cortex A9プロセッサ
1000BASE-T×2
USB 3.0サポート
省電力

 PC内蔵のハードディスや外付けハードディスクの代わりに、家族みんなで使えるデータ保存先として手軽に利用できるのは大きな魅力。大切なデータをバックアップしておくことで、PCの故障やミスによるファイル消失などに備えることもできる。

【主な用途】
・文書や写真、ビデオなどのデータ保存と共有
・スマートフォンやテレビでの写真やビデオの観賞
・外出先からのデータアクセス
・友人などとのデータ共有

 保存したデータは、PC以外の端末からも参照可能で、スマートフォンやタブレットで写真を表示したり、ビデオをDLNA対応のテレビで楽しむことなどもできる。

 また、外部からインターネット経由で利用することも手軽にできるため、外出時にスマートフォンやタブレットなどからデータを参照することはもちろんのこと、友人に大きなサイズのデータを送ったり、写真を共有することも可能だ。

入門用のオススメは「TS-231」

QNAPのNASをはじめて使う人でも安心して使えるエントリー向けのTS-231

 このように、QNAPのNASの場合、本体の色と型番に注目することで、自分の環境にあったモデルを選択することができるが、これからQNAPのNASを始めようと考えている人は、まず入門用のTS-x31シリーズからはじめるのがおすすめだ。

 中でも、新たに登場した「TS-231」は、エントリー向けの製品ながら、QNAPならではの豊富な機能を存分に味わえるお得な製品となっている。

正面
側面
背面
HDDはフロントのトレイで手軽に脱着できる
HDD装着時のベンチマーク結果(WesternDigital WD20EFRXを装着し、ネットワーク経由で測定したもの)

 本体は2ベイのコンパクトな設計となっており、家庭内のリビング、オフィスのデスクや棚など、場所を選ばず設置することができる。ホーム向けのNASの中には、ハードディスクを搭載する際に、本体ケースを分解する必要がある製品もあるが、本製品ではフロントの脱着式のトレイを利用して搭載するため、初期設置や故障時の交換にも手間取らない。

 インターフェイスも豊富で、フロント×1、リア×2のUSBポートはすべてUSB3.0に対応。USB3.0対応の外付けハードディスクなどをバックアップ用に活用したり、既存の外付けハードディスクなどからデータを高速に転送することができる。

 また、前述のTS-x31シリーズの紹介でも触れた通り、背面には1000BASE-Tポートが2つ搭載されている。ホーム向けのエントリーモデルでLANポートが2つ搭載されているのは珍しく、ネットワークトラブルに備えた冗長性を確保できるだけでなく、1つはLANでのファイル共有用、残りは特定のサーバーのバックアップ用などと、使い分けることも可能だ。

 ARMプラットフォームのエントリーモデルということでパフォーマンスを気にする人もいるかもしれないが、ネットワークドライブとして割り当てた共有フォルダに対してCrystal Disk Mark 3.0.3aを実行した結果は、右の通り、シーケンシャルリードで95MB/sと非常に優秀だ。写真やビデオなど、大きなサイズのデータを保存しても、高速に読み取ることが可能となっている。

 セットアップも容易で、ブラウザで「http://start.qnap.com」にアクセスすると、ハードディスクの装着方法やLANケーブルのつなぎ方などがイラストで丁寧に表示されるうえ、そのままLAN上のTS-231を自動的に認識し、Webページから初期設定を手軽に実行できる。

 設定完了後、すぐにPCから共有フォルダを利用できるのはもちろんのこと、初期設定時に「myQNAPcloud」と呼ばれるリモートアクセス環境も同時にセットアップできるため、外出先などから「http://www.myqnapcloud.com/」で自宅のNASにアクセスすることもすぐに可能だ。

ハードディスクの装着から、外出先からのアクセス、RAIDの構成まで、ブラウザを利用して簡単にセットアップ可能
スマートフォンやタブレット向けに豊富なアプリが提供されている(詳細はこちら
スマートフォンアプリ「Qfile」を利用すればスマートフォンを利用して外出先から自宅のNASのファイルを参照できる

 もちろん、スマートフォンなどからもアクセス可能で、「Qfile」などの無料で提供されているアプリを利用することで、自宅のNAS上のデータを外出先でも利用できる。

 このほか、以下のようなアプリが提供されており、スマートフォンやタブレットからもNASを活用可能だ(一部NAS側に機能を追加する必要あり)。

【QNAPのスマートフォン向けアプリ】
・Qfile NAS上のファイルを参照できる
・Qmanager NASの状態を確認したり起動・再起動ができる
・Qmusic NAS上の音楽を再生できる
・Qphoto NAS上の写真を参照できる
・Qvideo NAS上の動画を再生できる
・Qnotes メモをNAS上に保存できる
・Qget NAS上にファイルをダウンロードする
・Vmobile 監視カメラの映像を表示する
・Qremote HDMI接続時のリモコン

「自分に合ったNAS」が一番

 以上、豊富なQNAPのNASの中から自分の環境に合った機種を見つける方法、および初めてのユーザーにおすすめできる新製品「TS-231」の簡単なレビューをお届けした。

 「NASを導入してみたいが、どのモデルを選べばいいのかがわからない」と途方に暮れていた人の助けになれば幸いだ。もちろん、安い買い物ではないので、慎重に製品を選ぶべきではあるが、何度も触れたように、QNAPのNASは、エントリーモデルでも比較的性能が高く、機能的にも上位モデルと同等のものが利用できるようになっている。

 特に、最後に紹介したTS-231は、まさにそんな機種の1つなので、ぜひ一度使ってみることをおすすめする。将来的に上位モデルに移行する必要があったとしても、コンパクトなのに多機能なTS-231ならリモートアクセス専用として運用したり、新たに購入した上位モデルのバックアップ用としてデータを同期させつつ待機させることなどもできる。

 また、QNAPのNASは、下位モデルのHDDをそのまま上位モデルに移行することが可能となっている。こういった点も、将来のステップアップが見込まれる場合の安心材料だ。

 最近ではクラウドサービスの普及で、インターネット上にデータを保管する機会も少なくないが、ローカルでデータを利用する場合、圧倒的なパフォーマンスなど、NASの利便性は非常に高い。その上で、外出先からの利用などクラウド的な活用もできるので、QNAPのNASを利用して、この機会に家庭やオフィスのストレージ環境を見直してみるといいだろう。

(清水 理史)

QNAP Turbo NAS