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「TITAN Xを上回るOC版GTX 980 Ti」を開発、GIGABYTEに聞くビデオカードの戦略
「G1」の意味は「GIGABYTE No.1」だった text by 石川ひさよし
(2015/6/30 11:30)
COMPUTEX TAIPEI 2015の開催前日にNVIDIA GeForce GTX 980 Tiが発表されたこともあり、会場では同GPUを搭載したオリジナルクーラーモデルが多数展示されていた。
GIGABYTEのオリジナルクーラー搭載モデルは「GV-N98TG1 GAMING-6GD」。こちらのモデルは一足早く、オリジナルクーラー搭載GeForce GTX 980 Tiカードの先陣を切って販売開始された。
そこで気になるのは、GV-N98TG1 GAMING-6GDのパフォーマンス、そしてGIGABYTE製ビデオカードの「今」だろう。そうしたところを同社Sharon Kao氏とRita Tsai氏にお聞きした。
また、「GV-N98TG1 GAMING-6GD」の実性能も合わせて検証。GIGABYTEのチューンによって、GeForce GTX TITAN Xを上回るパフォーマンスを発揮する同カードの性能も紹介しよう。
G1シリーズのネーミングの秘密、G1の意味は「GIGABYTE No.1」だった
――GIGABYTEのビデオカードは最上位がゲーミング向けの「G1」シリーズとなっています、スーパーオーバークロックモデル(SOC)を最上位とするメーカーが多い中、G1シリーズを最上位とした理由はどのあたりにあるのでしょうか。
[Rita氏]G1シリーズが提示する性能は、常時その性能が発揮されるものとなっています。SOCモデルのスペックは最大値とされていることが多く、常用を意識したものではない場合もあります。
ゲームなどの場合、安定してパフォーマンスが発揮されないのであれば、ピーク性能がいくら高くても意味がありません。ゲーマーにベストな製品とは、そのモデルが持つ最大性能が常に発揮されるべきだと考えています。こうしたことから、G1シリーズを最上位のモデルとしてラインナップしています。
また、「G1」の意味は「GIGABYTE No.1」という意味で捉えていただければ分かりやすいかと思います。自社製品の性能・品質ともに自身がありますし、G1シリースこそがゲーミングパフォーマンスを求めるユーザーにベストチョイスだと考えています。
ちなみに、全世界で見ると、同社のモデルではG1シリーズが最も売れています。欧米ではオーバークロックユーザーが多く、例えば米NewEggではGeForce GTX 970を搭載するG1シリーズモデル「GV-N970G1 GAMING-4GD」が大きなシェアを得ています。
とくにヨーロッパでのシェアは30%に達しており、ビデオカード、とくにクーラー技術については高い評価をいただいています。
日本でもNo.1になるよう活動していきますし、今年はeスポーツの方面にも力を入れていきます。現在、日本のゲーミングチームのスポンサードも行っており、動画サイトでのプロモーションなどにも力を入れることを計画しています。
G1 GAMINGシリーズは常用最高性能モデル、ゲーマーもオーバークロッカーにも最適
――G1シリーズが最上位モデルということはわかりましたが、SOCモデルに相当する製品は無いのでしょうか?
[Rita氏]現在、SOCと命名したシリーズはありません。しかし、G1シリーズのGPUは、より高クロックで動作する選別品を用いており、高いオーバークロック性能を持つという点ではSOCに近い仕様のモデルです。ポジションとしては、G1シリーズがゲーマー向けとオーバークロック向けの両方を賄っています。
――やはりオススメはG1シリーズでしょうか。
[Sharon氏]我々は全ての製品で信頼性を重視していますが、なかでもG1シリーズはきわめて不良率が低く、この点でもユーザーの皆様に高い評価をいただいております。
G1シリーズは、常用で最高性能と言えるスペックを備えています。どれだけ長時間プレイしてもGPU温度が上がらず、常に最大のBoostがかかった高クロックでゲームがプレイできます。こうした技術や設計が評価され、ゲームだけでなくGPGPU分野でも活躍しています。
G1シリーズのWINDFORCE 3Xは、現在TDP 600Wまでの冷却が可能な設計になっております。例えば50%でも300Wです。一般的にはそれより低いTDPで使用されるため、冷却性能的にはかなりの余裕を持っています。だから長時間使用してもGPU温度が上がらず、圧倒的な静音性を実現できるのです。
また、G1シリーズという名前からご想像のとおり、このビデオカードは、例えばマザーボードのG1シリーズと組み合わせれば、ベストなゲーミングパフォーマンスを手に入れることができます。
2015年のGIGABYTEビデオカードラインナップの見分け方、ファンの数で3ライン
――GIGABYTEのグラフィックスカードのラインナップは現在どのようになっているのでしょうか。
[Sharon氏]まずファンが一つのものは「IXOC」シリーズとして展開しています。GeForce GTXでは970と960、2つのGPU搭載モデルを用意しています。
こちらのシリーズの特徴としましては、カードが小さいため、ご家庭で使うPCや一人暮らしの学生のように、コンパクトなPCを求めるニーズに適しています。また、ショート基板はとくに日本のPC事情にもマッチしていると考えています。
そして、3連ファンでトップ性能の(スーパー)オーバークロックモデル、2連ファンで一般的なオーバークロック仕様のモデルをラインナップしています。開発の順番としては、3連ファンモデル、2連ファンモデル、シングルファンモデルの順になっており、エンジニアはGPUの特製とオーバークロック性能を考えて開発しています。
2連ファンのモデルは「WINDFORCE」を略した「WF」シリーズとして展開しています。こちらは、標準的なサイズであることもあり、一般ゲーマーやライトなオーバークロッカーに適しています。
こちらもGeForce GTX 970と960をご用意しています。クーラーの設計に関しては、こちらもGPU毎に独自の設計をしておりまして、GeForce GTX 970モデルと960モデルでも異なる設計になっています。
3連ファンモデルは「G1」シリーズです。現在のGPUは、GPU温度が低ければガンガンBoostが効きますので、冷却性能が高いクーラーはより高クロックで動作し、パフォーマンスもその分高まります。
G1シリーズが選別品のGPUを用いたモデルということもあり、WFシリーズのオーバークロック性能が霞んで見えるかもしれませんが、WFシリーズでも一般的なオーバークロックでは問題ありません。そのうえでG1シリーズは「もっと上」を目指せると捉えていただければ幸いです。
パフォーマンスで言いますと、G1シリーズがトップ、続いてWFシリーズ、コストパフォーマンスではWFシリーズがG1シリーズよりも上になります。
――GIGABYTEビデオカードのそのほかの特徴について教えて下さい。
[Sharon氏]まず映像出力端子は、DVI端子をプラス1ポート搭載しています。これにより、変換アダプタを利用する機会を減らし、利便性を向上させています。
また、補助電源コネクタを減らすということはしません。例えばGeForce GTX 750 Tiは、リファレンス設計では補助電源レスを実現できます。NVIDIAもそこをアピールしているのですが、我々は補助電源コネクタを6ピン1基搭載しました。
もちろん、ほかより消費電力が多いわけではありません。補助電源レスも可能ですが、安定動作を担保するもの、GPUを保護するものとして補助電源を敢えて搭載しているのです。
水冷ハイエンド「WATERFORCE」の2015年モデルはGTX 980を搭載
――G1シリーズに対し、WATERFORCEはどのような位置づけなのでしょうか
[Sharon氏]WATERFORCEは、以前のSOCよりもさらに高価ですし、SOCを超えるスペシャル製品と言ったほうが適しているでしょう。
――今年のWATERFORCEはどのようなモデルでしょうか
[Sharon氏]今年のモデルでは、GPUをGeForce GTX 980にアップデートしています。基本的には、コントロール・ステーション(ラジエータボックス)などGeForce GTX TITAN BLACKモデルと同じで、GPU温度やファン回転数、ポンプ回転数などのモニタリングやターゲットの指定が可能です。
また、今年はGPU水冷ヘッド部分の分解展示しています。通常の水冷キット組み込みモデルでは、GPUは水冷できるものの、メモリやレギュレータなどは空冷に頼ることがあります。それらに対してWATERFORCEでは、メモリやレギュレータの熱をヒートパイプで輸送することで、水冷ヘッドひとつでこれら全てを冷却するメカニズムを採用しています。
――水冷の今後について
[Sharon氏]今年はハイエンドゲームタイトルが多数リリースされる予定です。そうしたハイエンドゲームを快適に楽しめるビデオカードとして、水冷をアピールしていくとともに、水冷技術で他社をリードしていきたいと考えています。GeForce GTX 980 Tiでの展開も検討しておりますので、ご注目ください。
最新Gaming G1シリーズ「GV-N98TG1 GAMING-6GD」をベンチマーク、性能はTITAN X超え
ここからは、COMPUTEX TAIPEI 2015閉幕後、お借りしたGV-N98TG1 GAMING-6GDを用いて、そのパフォーマンスを検証してみよう。
GV-N98TG1 GAMING-6GDは、既にGeForce GTX 980 Tiのオリジナルクーラーモデルの先駆けとして販売開始している。ざっとスペックを確認しておくと、GPUクロックは1,152MHz、Boostクロックは1,241MHz、メモリクロックは7GHzとなっている。
ご存知のとおりGeForce GTX 980 Tiの定格クロックは、GPUクロックが1,000MHz、Boostクロックが1,076MHzだ。GPUクロック側で見ると実にリファレンスに対して115%の高いオーバークロックを実現していることになる。
また、興味深いのはGIGABYTE自身が、GV-N98TG1 GAMING-6GDのパフォーマンスを「GeForce GTX TITAN Xよりも高速」とうたっている点だ。
GeForce GTX TITAN Xと比べると、わずかにCUDAコア数が少ないGeForce GTX 980 Tiだが、僚誌PC Watchのレビューでも明らかなとおりGeForce GTX TITAN Xとの間のパフォーマンス差はわずかだ。
ならばGV-N98TG1 GAMING-6GDの高いオーバークロック設定であれば、これを逆転することも可能だろう。では実際のベンチマークスコアを紹介していこう。
まず定番ベンチマークの3DMark。GeForce GTX TITAN Xに対し、ここまで明確に差を付けられるとは度肝を抜かれた。負荷が高いFire Strike Ultraですら250ポイント超のスコア差を付けている。
比較的負荷の軽いファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでは、DirectX 11版の最高品質、そして4K解像度でテストしたが、ご覧のとおりスコアでは500ポイント近く、フレームレートでも4fps近く差を付け、GV-N98TG1 GAMING-6GDが上回っている。
負荷的には中ぐらいとなるThief、こちらもプリセットをVery High、解像度を4Kとしてより負荷を高めているが、平均44.5fps、最小でも37.6fpsを記録し、スムーズにプレイできる。
比較的負荷の高いBattlefield 4も、同様に4K解像度と最高画質でテストした。こちらも最小、最大、平均の各fpsで、1~2fpsの差が現れている。そしてさらに負荷の高いGrand Theft Auto Vでは、さすがに負荷が高すぎたのか、差もわずかとなってしまった。
ただ、確実にGeForce GTX TITAN Xよりも高い平均フレームレートを記録している。フレームレート自体は、Battlefield 4で42fps、Grand Theft Auto Vで25fpsなので、もう少しフレームレートを稼ぎたいところもある。
フレームレートを稼ぐ際の設定としては、画質設定を一段引き下げるという選択もあるが、今回は解像度側の調整でテストしてみた。
まずBattlefield 4は、2,560×1,440ドットで81.244fps、1,920×1,080ドットで125.75fpsとなった。一般的なWQHDディスプレイであれば十分すぎる余裕があり、FHDディスプレイであれば高リフレッシュレートのゲーミング液晶ディスプレイのパフォーマンスを活かせるだろう結果だ。
ちなみに、2,560×1,440ドットでは2.5fps、1,920×1,080ドットでは5.5fps程度、GeForce GTX TITAN Xを上回るフレームレートだった。
Grand Theft Auto Vだが、こちらも2,560×1,440ドットで49.777fps、1,920×1,080ドットで63.854fpsだった。30fpsあればプレイ可能だが、60fpsを求めるのであれば1,920×1,080ドットのほうがよいだろう。
ただし、Grand Theft Auto Vは画質オプションが充実しているので、高解像度のまま画質設定でフレームレートを向上させるのもよいかもしれない。プリセットが用意されていないので、設定を出すのが少々難しいが、設定ごとに必要となるビデオメモリの容量が表示されるので、それが一つの目安になる。
GV-N98TG1 GAMING-6GDは、6GBのビデオメモリを搭載しているので、試した限りでは、TXAAを利用する前提なら4K解像度でも全てのオプションを最大に引き上げて可能だった。また、こちらも、GeForce GTX TITAN Xと比べ、どちらの解像度も2~3fpsほど高かった。
さて、Grand Theft Auto Vベンチマークを実行中のGPUクロックや温度、ファン回転数のログを計測してみたので、こちらからも分析してみよう。
まず、GPUクロックは、GV-N98TG1 GAMING-6GDが最大1366.5MHz、GeForce GTX TITAN Xが最大1202.3MHz。その差は164.2MHzとなる。製品定格クロックで150MHzの差があるわけだが、Boostの最大値でも同様、さらに差をつけて高クロック動作だったわけだ。
また、GeForce GTX TITAN Xは、180秒後にそれまでの最大クロックである1202.3MHzから、1189.7MHzへとわずかにクロックを下げている。これに対してGV-N98TG1 GAMING-6GDはベンチマーク終了までクロックを下げる素振りがなかった。
このことはGPU温度の推移からも分かる。GV-N98TG1 GAMING-6GDのGPU温度は最大61℃で、対するGeForce GTX TITAN Xは最大81℃に達していた。
つまりGV-N98TG1 GAMING-6GDの冷却性能が十分であるために高クロックがキープされたわけだ。そして温度の上昇カーブもゆるやかである。長時間プレーのように負荷をかけ続けても、最後まで高パフォーマンスを維持するというのはこうしたデータからも裏付けられる。
ファン回転数の推移を見れば、さらに驚く。GV-N98TG1 GAMING-6GDは、ベンチマーク開始からかなり長くの時間、ファンを停止した状態で3D映像を描画し続け、約180秒後のGPU温度が57℃に達した時点でファンの回転をスタート、開始から300秒後の45℃に下がった時点で再びファンの回転を止めていた。
ファン停止中に聞こえるのはケースファンとCPUクーラーのファン、電源のファンといったビデオカード以外からの音のみだ。そして回転を始めたとしても、回転数はGPU-Zのデータで1,489rpmで、GeForce GTX TITAN Xの1,843rpmよりも低かった。
このように、GV-N98TG1 GAMING-6GDのGPUクロックはGeForce GTX TITAN Xを大きく上回り、GPU温度は20℃も低かった。さらに前後に向けたクーリング時間を差し引いても、負荷中の約半分はファンが止まった状態、さらに回転し始めてもファンの回転数が低く静かというのがこの製品の特徴だ。
確かに大型カードであるのだが、いわゆるゲーミングPC向けのケースであれば搭載できる長さではある。GeForce GTX 980 Tiの高いパフォーマンスを、さらにGeForce GTX TITAN X超にまで高め、さらに静音性をキープする本製品で、快適なゲーミングPCを構築してみてはいかがだろうか。
[制作協力:GIGABYTE]