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Synologyに聞く「NAS製品のポリシーと日本への取り組み」

実は古参&欧州ではシェア50%以上 text by 石川ひさよし

人気モデルになっているDS215j。Amazonなどのランキングで1位になっている

 最近、NASの売れ筋上位に製品が登場、評価も得ている「Synology」。

 日本では「新興」というイメージの強い同社だが、実は創業はQNAPより古く、ワールドワイドで見ると「世界3大NAS専業メーカー」に数えられるという。

 そして同社は、「今後、日本市場にますます力を入れる」という。そこで、COMPUTEX TAIPEI 2015でブースを構える同社に、SynologyのNASの特徴や設計について聞いてみた。

 お話をお伺いしたのはSales DirectorのMike Chen氏とSales ManagerのWille He氏だ。

SynologyはNASソフトウェアからスタートした

COMPUTEX TAIPEI 2015でブースを構えるSynology
セールスディレクターのMike Chen氏
セールスマネージャのWille He氏

――Synologyはどのような会社なのでしょうか。

[Mike氏] SynologyはNAS専業メーカーのなかでも歴史が古く、2000年1月、2人の創始者がマイクロソフトからから独立、NAS向けソフトウェアを開発する企業としてスタートしました。

 当初はソフトウェアプロバイダとしてスタートしましたが、2004年、ソフトウェアとハードウェアを同時に提供する「NAS製品」として「DiskStation DS-101」をリリースいたしました。

 以降、企業レベルのストレージ機能を、スモールビジネスユーザーや個人ユーザー向けに展開しておりまして、現在は30を超えるモデルを揃えております。そして従業員は現在、全世界で500人以上を抱えるまでに成長いたしました。

――NAS向けのソフトウェアプロバイダからスタートしたとのことですが、なぜNASだったのでしょうか。

[Mike氏] 当社が設立された2000年当時は、ちょうどインターネットが全世界規模で本格普及を始めた頃になります。ネットワークですべてが繋がる時代では、必ずストレージが重要になるとの思いからNASを開発するに至ったと聞いております。

今回はコンシューマ向け製品を中心に伺ったが、Synologyでは大企業向けの大規模ネットワークストレージシステムや、監視カメラ向けソリューションなども展開している
小規模事業向けのコンパクトな監視システム用NAS「NVR216」
監視システムを拡張したセキュリティソリューションもデモ展示

 ただし当時のNAS、主にNASの管理ソフトウェアについては、決してユーザーフレンドリーな設計ではなく、ネットワークに関する高度な知識を必要としていました。もちろん、機能もストレージに特化したもので、現在のように多機能ではありませんでした。

 しかし、時代は大企業だけでなく、中小企業や個人ユーザーも、手ごろで使いやすいNASを求めていました。Synologyは、そうしたニーズに対し、Ajaxベースのテクノロジと、ユーザーフレンドリーなGUIを管理OSである「DSM」(DiskStation Manager)に採用し、当時のNASインターフェースに新風を吹き込みました。DSMは同時に、様々なアプリケーションをインストールできるように設計されており、ビジネスユーザーにはデータを活用できるビジネスアプリケーションを、個人ユーザーにはマルチメディアアプリケーションを提供しております。

ソフトウェアからスタートした同社の独自管理ソフトウェア「DSM」。ブラウザ上で動作するが、OSのデスクトップ風UIで、マルチタスクも可能と言う
分かりやすいUIとともに、様々なアプリケーションを「追加」できることも特徴のひとつ。NASとひとくくりにしても個人向け、ビジネス向けと様々なニーズがあり、そうしたニーズをアプリケーションを追加していくことで実現している

――NAS製品を企画、設計、製造する際、大事にしていることなどはありますでしょうか?

[Mike氏] 弊社の特徴的なところとして、全社員の70%が設計開発や品質管理に携わっている点が挙げられます。

 新製品や新機能を考える時、「これはユーザーが今抱えている問題を解決できるだろうか?」ということを念頭に置いています。

 弊社では今でも、最高レベルのマネージャーを含むすべてのプロダクトマネージャーがユーザーからの質問、フォーラム、ソーシャルメディアでのフィードバックに毎週、目を通しています。こうした地道な作業により、ユーザーが抱える問題と本当のニーズというものを把握し、それを解決できる製品や機能を提供できるのです。

欧米での高いシェアと顧客満足度を得るSynology

DS215jの人気は高い。Amazonランキングでも長期間1位を維持している
Amazonドイツサイトでのランキング

――Synologyのメイン市場はどの地域になるのでしょうか。

[Mike氏] Synologyの現在の主力市場は欧米になります。特にヨーロッパでのシェアは50%以上で、もちろんシェアトップです。

 また、米国では同じく2ベイ以上のNAS製品が「Amazon Best Selling model」をいただいておりますし、著名なITマガジンであるPC Magazineでも2年連続で「most recommended and reliable NAS brand」に選出されました。

――そうしたシェアを獲得できた要因はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

[Mike氏] それはユーザー様にお聞きしたいところですね(笑)

 私共が考えるところでは、「製品自体が評価をいただいている」というのもありますが、Synologyは早くより米国市場とヨーロッパ市場に注力し、かれこれ10年以上活動している成果だと思います。

 中でも「ユーザーの声を重視してきたから」というのは大きい、と思っています。

 前述したように、ユーザーから頂いたフィードバックは非常に重視していますし、その結果は年2回のメジャーアップデートに反映するようにしています。

 また、多くの国ではユーザーとの交流イベントを毎年開催していまして、そうしたイベントで直接お伺いした意見も製品の改良に役立てるようにしています。これについては、近い将来、日本でも実施したい、と思っています。

 このほか、ヨーロッパでは「24時間リプレースメントサービス」として、サポート体制を充実させております。製品だけではなく、継続したサポートでもお客様の信頼を得ることができているのだと思います。

――では日本市場はいかがお考えでしょうか。

[Mike氏] 日本市場は、中国を除けばアジア・パシフィックで最大の市場です。1億人を超える人口がおりますし、伸び代はまだまだあるでしょう。市場規模としては「Unlimited」だと考えております。

 コンシューマ向けでは、こうした人口のポテンシャルが大きいと思います。一方でビジネス向けにつきましては、成功のヒストリーを積み重ねていくことで、Synologyの知名度を高めていきたいと考えております。

 日本でのビジネスはまだ始まったばかりです。コンシューマ向けでは2ベイモデルの「DS215j」がご好評いただいております。DS215jの成功は、日本のユーザーが優れたNAS製品を求めていることの証です。そしてそのフィードバックにより、パフォーマンスやエコロジー設計、ユーザーフレンドリーなUI、豊富なウェブアプリケーション、そしてモバイル・アプリなどにご満足いただけていることを確認できました。

 引き続き、日本のコンシューマ市場に注目し、クラウドやエンターテインメント分野のニーズに応える新製品、新機能をお届けしていきます。そしてもっと多くの方にSynologyのNASを知っていただけるよう努力してまいります。

――日本のビジネス市場についてはいかがでしょうか。

[Mike氏] DS215jをお買いになったお客様の中にはビジネスマンの方も多くいらっしゃるでしょう。DS215jで得られた評価が、ビジネス市場へと土台になることもあると考えています。ユーザーとともに成長できれば幸いです。

ハードウェア、ソフトウェア両面から使いやすさを追求

メディアサーバ機能はDSMのなかでも人気の機能

――SynologyのNASの特徴についてお聞かせください。

[Mike氏] Synologyは、NASのハードウェアとソフトウェアをともに開発している会社です。

 まず、ソフトウェアでは、先にご紹介したとおり「DSM」が特徴になります。

 デスクトップ風UIのDSMによって、NASにあまり詳しくない方にも(DSM上のQuickConnectから)簡単にネットワークのセットアップができます。また、DSMにはパッケージという形でアプリケーション機能を追加することができます。現在、我々のパッケージセンターでは85ものアプリケーションが登録されており、お手持ちのNASをニーズに合わせて拡張し、多機能に仕上げることができるようになっています。

 ハードウェアでは、信頼性を重視して設計しております。

 とくに重要なのが熱への対策と、振動への対策です。筐体のデザインは通気性を重視して、耐振動では耐震ゴムを採用しております。また、ユーザービリティ(使いやすさ)も重視しております。例えばHDDトレイですが、クイックリリース可能なベイ、ツールの要らないスクリューレスデザイン、2.5インチドライブへの対応、先に紹介した耐震ゴムの採用や通気性に優れたデザインなど、トレイひとつにもユーザービリティへのこだわりを込めています。これがシステムになりますと、とてもこのインタビュー中にはご紹介しきれないほど多くのこだわりが詰め込まれています。

大きな背面ファンで十分なエアフローを確保しつつ動作音を抑えている
シンプルに見えるHDDトレイひとつにも多くのこだわりを詰め込む

 そして、ハードウェア、ソフトウェアともに、3〜5分でインストールができるよう設計されております。買って直ぐに使いたいというユーザー様にとって、できるだけ早く、できるだけ簡単にセットアップできることはとても重要だと考えています。また、NASは毎日使うものですので、モダンな外観デザインを心がけています。

――そのほか、「ここはSynologyのNASのポイント」というところはございますでしょうか。

[Mike氏] まず、出荷前に全製品をテストしていますので、とても信頼性が高いのがポイントです。具体的な数字で表すと、1%以下という返品率の低さがよい例かと思います。

 また、日本市場でご好評をいただいているDS215jのように、コストパフォーマンスにも注力しています。

 設計面ではIntel、ARMなど様々なCPUを採用し、キーとなるパーツに関してはパフォーマンスとコスト両面から十分に吟味して選んでおります。機能の面では、様々なデバイスからのアクセスをサポートしています。iPhoneやAndroid、WindowsはもちろんMacにも対応しています。

各種のスマートフォン・タブレットからもNASを参照したり、データをコピーしたりできる
写真はビジネス向けモデルだが、1ベイから8ベイを超えるモデルまで、柔軟なベイラインナップを揃え、ストレージの拡張ニーズに対応する

コストパフォーマンスならDS215j、メディア機能ならDS214playをプッシュ

――日本市場に向けて、現在オススメの製品を教えて下さい。

[Mike氏] 弊社の製品ラインナップでは、Jシリーズがコストパフォーマンス向けモデル、Jの付かないモデルや「Play」モデルは多機能モデル、Plus(+)シリーズは中小企業以上に向けたパフォーマンス向けモデルとシリーズ分けしています。

 コンシューマ向けのイチオシはやはりDS215jですね。低価格な2ベイモデルで、もちろんDSMによりメディアサーバ機能やパーソナルクラウド機能の追加が可能となっております。このモデルはアマゾンやカカクコムでもNo.1の評価をいただいたベストセラーモデルですので、自信を持ってオススメできます。

ハードウェアエンコーダーを搭載するDS214playには、同じシリーズで4ベイの「DS415play」も展開している

 また、コンシューマ向けでさらに快適な機能をお求めでしたら、「DS214play」はいかがでしょうか。こちらはフルHD対応のハードウェアエンコーダーを搭載しておりますので、プレイヤー側の対応フォーマットを考える必要なく、ストリーミング映像をお楽しみいただけます。

エコを強化した新製品「DS216se」

 このほか、近々リリースする予定の製品としましては「DS216se」があります。2ベイのモデルで、DLNA対応のメディアサーバ機能を搭載するとともに、省電力機能を強化したエコ設計が特徴となっています。

NASはIoTの時代でより重要な役割を担っていくだろう

――最後に、NAS製品の未来について何かありましたらお聞かせください。

[Mike氏] これからも、ありとあらゆる製品がネットワーク化されていくと思います。そうした世界で、NASがそれらをコントロールできるセンターハブとなっていくでしょう。全てのデータを管理、活用する中心としてNASは引き続き大きな役割を担っていくと考えております。

Synologyブースでは、同社初のネットワークルータ「RT1900ac」も展示されていた。NAS自体もネットワーク機器であり、そのノウハウがフィードバックされた製品だ
DSMで培った分かりやすくマルチタスクのデスクトップ風UI「SRM」を採用しているのが特徴だ。スピードや安定性を求めるパワーユーザーを想定し、150〜180米ドル前後で販売される見込みとのこと

Synologyはユーザーの視点に近い!?

店頭イベントの実施例

 今回、お聞きしてきた話を振り返ると、Synologyは「ユーザーとともに成長していきたい」という思いの強いメーカーという印象だ。

 日本市場参入から比較的まだ日が浅く、日本法人を置かず、代理店を通しての販売形態であることもあると思われるが、まずは個人の顧客を大切にし、そこで実績を積み、ビジネス顧客へと繋げていこうという話が、こうした歴史あるメーカーから出てくるのは珍しい。

 今年に入ってからの同社は、秋葉原で定期的にイベントを開催しているので、気になる方は今後の同社の活動にも要チェックだ。

[Amazonで購入]

[取材協力:Synology]

(石川 ひさよし)