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「サポート付きWindows 8 DSP版」はなぜ誕生したのか?

これまでの経緯とサポート内容を聞く

 10月26日に発売されたWindows 8は、これまでのWindows OSとは販売形態が大きく変わった。詳しいことはわからないまでも、通常版のパッケージが存在しなかったり、サポートがなくなったりといった断片的な情報を耳にしている人は多いだろう。

 今回はその辺りの内容を整理するとともに、Windows 8から新たに登場した「サポート付きWindows 8 DSP版」について、販売代理店の旭エレクトロニクス、および販売店のビックカメラグループ(ビックカメラ、ソフマップ、コジマ)、ユニットコムグループ(TWOTOP、パソコン工房、Faith、Freet、グッドウィル)の担当者に、経緯と内容を聞いた。

企画のポイントとコンセプト

旭エレクトロニクス プロダクトマネージャーの西森政博氏
サポート付きのWindows 8

 販売代理店の旭エレクトロニクスからは、プロダクトマネージャーを務める西森政博氏に、製品誕生の経緯などをうかがった。

――まずはサポート付きのWindows 8が生まれた経緯を教えていただけますか。

[西森氏] DSP版では、Windows 7まではシステムビルダー、つまり販社やPCを組み立てる会社が直接サポートするという条項がOSのパッケージに書かれていました。Windows 7まではパーツバンドルまたはシステムインストールでの販売という縛りがあったのですが、Windows 8からは単品販売が可能になりました。

 DSP版パッケージは、赤いシールを切って封を開けた人がサポートを行なう、という契約になっています。今までは販売店やPCの製造社がシールを切っていたのですが、単体販売になると、エンドユーザーがシールを切ることになります。すなわち、エンドユーザーが自力でサポートをしなければならないということです。

――封を切った人がサポートをする、という基本条件になっているわけですね。以前はそうではなかったのですか?

[西森氏] 以前もそうだったのですが、Windows 7まではパーツバンドルで売るときに、封を切った上で、中身とパーツを売るという形でした。PCにシステムインストールする場合には、当然ながら封を切らなければメディアを出せません。それが単品で売れるとなると、その作業が要らなくなるので、封を切るのは必然的にユーザーということになるわけです。

 そしてもう1つ、いわゆるパッケージ版と呼ばれるリテール製品のほうで、クリーンインストールができるフル版がWindows 8からなくなりました。そうすると、新規インストールでフルパッケージのWindows 8を欲しいと思った場合、DSP版しか選択肢がないのです。そうするとフルパッケージ版を選んでいた方は、今までマイクロソフトが直でやっていたサポートを、これから誰がやるのか、という心配事が生まれます。

 その時に思いついたのが、ユニットコム様が500円ワンコインサービスのようなサポートをされていたことです。販社が独自に持っているサポート力をセットにすると、DSP版でも売れるし、DSP版の認知も上がると考えました。サポートも売られる店が担当するということになるので、お客様がそこに長く紐付く可能性が高く、意外と多くのメリットがあるのではないか、というところからこのサポートプログラムを考え始めました。

付属のリーフレットと「できるWindows 8アップグレード」
できるWindows 8アップグレード
「インストールを完了するには」

――具体的なサポート内容はどういったものでしょうか?

[西森氏] サポート内容は、販社ごとに異なります。今回ご紹介するのは、ビックカメラ様とユニットコム様のプログラムになります。まず両社に共通のサポートとして、FAQのサイトを弊社で用意しています。こちらはインプレスジャパン様の「できる」シリーズのオンライン版で、Windows 7の時には大手メーカーでもFAQとして提供された実績のあるものです。これをWindows 8版に改定し、無料で提供しています。

 またインストラクションシートも封入しています。通常のDSP版の場合、インストール方法などのガイドが一切付属していないので、Windows 8にちなんで8つのインストール手順を書いたリーフレットを封入しています。またWindows 8についてはタッチディスプレイの不足で操作周りに関していろいろ話が出ていますが、その対応の1つとすべく、キーボードのショートカット一覧も付属しています。

 さらに初回版限定になりますが、「ちょっとできる Windows 8アップグレード」という、過去のOSからのアップデートの手順を書いたリーフレットを添付しています。Windows 7からのアップグレードは簡単だと思いますが、Windows XPやVistaの場合は難しい部分があるので、そこをサポートしています。

 販社ごとの個別対応としては、ユニットコム様については、電話でのサポートがあります。また店頭サポートがウリのお店なので、ワンコインサービスを1回無料で提供したり、一部の有料サポートを半額で提供するなどの特典を用意しています。

 ビックカメラ様については、大手量販店というイメージがあると思いますが、グループにソフマップというPCに特化した会社をお持ちです。サポートはソフマップ様のコールセンターの方で電話サポートを請け負うという形になっています。ビックカメラグループ様の場合、有料のサポートプログラムがありますが、パッケージの中に初回サポート無料チケットを封入して販売されています。

――WEBのFAQサイトではどういったものが見られるのでしょうか?

[西森氏] Windows 8を使うに当たって使い始めでつまずきそうなところの答えを用意しています。Windows 7の時に頻繁にやりとりされたFAQをベースに、Windows 8でも想定される250問を掲載しました。

――それ以外のサポート内容は販社ごとに違うわけですね。

[西森氏] そうですね。ユニットコム様はパーツで買って自作するというお客様が中心になる販社です。もともとサポート対応を前面に出されていたので、自作ユーザーという基盤がありながら、自分なりのスペックのPCが欲しいという自作初心者の方が入って来られる受け皿として、サービスを用意されています。

 ビックカメラグループ様については、大手量販店の中ではDSP版はこれまでメジャーな製品ではなかったはずで、その中で差別化を立てたいというのが狙いです。またソフマップ様という自作市場の基盤がありますので、そういうお客様も気軽に入っていけるところとして選んでいます。両社が狙っているマーケットが少し違うので、サービスメニューも味付けの違いがあります。

――PCにインストール済みのWindows 8もあると思いますが、それに関しても同様のサポートは付いているのでしょうか?

[西森氏] ビックカメラグループ様の場合、このDSP版を使った組み立てPCは作られていませんので、同じサポートの製品はありません。各PCメーカー様のサポートとなります。ユニットコム様については、このDSP版を使っているものもありますが、そうでないものもありますので、購入時にご確認ください。

――DSP版に付属するサポートの期間や回数を超えた場合、ショップごとの有料サポートが用意されているという流れになるのでしょうか。

[西森氏] はい。今までは自力でやるか、ダメなら諦めるという形しかなく、サポートについても「サポートにお金がかかるなら要らない」という感じだったと思います。しかし、PCは生活の中での重要度が増してきていますので、サポートにかかる負荷も上がってきています。そういった意味でも、内容や難易度によってサポートに対価を払えば安心を買えるという考え方はアリなのではないかと思います。そうすることによって、サポートする側も質やリソースを上げていけますので。

――現在までにサポートに寄せられている問い合わせの内容は把握されていますか?

[西森氏] 電話サポートについては販社ごとなので見えないのですが、FAQについては現在集計をしています。このプログラムのもう1つの目的として、Windows 8につまずく人の傾向と対策みたいなものをノウハウとして形にできればと考えています。

――完成されているFAQではなく、更新されると。

[西森氏] 現状でも十分完成度は高いと思っていますが、更新する可能性もあります。あとFAQへのアクセスを分析することで、注目度が高い項目を調べるなどして、コールセンターに情報を共有してサポート力を高めたり、販売につながる施策が作れるかもしれないと考えています。

――代理店としては、これからWindows 8に対してどういう取り組みをしていきたいと考えていますか?

[西森氏] サポートからは離れますが、Windows 8で使える周辺機器がさほど認知されていないと感じています。年末年始に向けては、この製品はWindows 8と相性がいい、といったことをアピールして、インストールベースを増やすための施策を仕掛けなければいけないと考えています。

――最後に、個人的なことも含めてで構いませんので、Windows 8のどの辺りがいいと思うか、感想を聞かせてください。

[西森氏] とにかく早いところですね。アプリの起動やOSのブートも早いです。仕事だとOffice関係のアプリがメインになりますが、非常に早く起動してくれます。基本的にWindows 7で使えていたアプリは、ウイルス対策ソフト以外は動いているので、Windows 7の環境はそこそこ再現できています。

 タイルのインターフェイスでみなさん引いてしまうと思うのですが、マウスでも普通に使えます。マウスに関しては、マイクロソフトの「Touch Mouse」があります。最新のファームに変えると、3本指までのアクションが可能になってチャームに出したりできるようになります。こちらは昨年発売したもので、当時はあまり評判がよくなかったのですが、Windows 8で最新ファームウェアになった現在は、周囲でも使っている人が増えました。タッチパネルの導入がまだの人は、こういうものを使えば、Windows 8独自の機能をマウスで実現できるようになりますので、ぜひお試しください。


日本マイクロソフト Windows 8

(石田 賀津男)