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GIGABYTEのGTX 700世代はクーラー強化、
冷却性能450Wの新「WINDFORCE」の技術を聞いてきた

Text by 石川ひさよし

GIGABYTEのRita Tsai氏(左)とEiten Tsai氏(右)

 5月下旬、NVIDIAはGeForce GTX 700世代のGPU、「GeForce GTX 780」「GeForce GTX 770」を相次いでリリース。大手PCパーツメーカーであるGIGABYTEも、同GPUを搭載した「GV-N780OC-3GD」「GV-N770OC-2GD」を投入した。

 これら世代のビデオカードでは、同社オリジナルのGPUクーラー「WINDFORCE」がさらに進化。例えばGeForce GTX 770でも前世代のGeForce GTX 680を超える工夫が凝らされているという。そこで今回、COMPUTEX TAIPEI 2013に出展する同社のプライベートショーケースで、同社最新ビデオカードの開発コンセプトと、その技術についてお聞きした。

 お話をお伺いしたのは、同社Graphics Card部門のRita Tsai氏とEiten Tsai氏だ。

展示されていた同社のGeForce GTX 700シリーズビデオカード。左から「GV-N770OC-2GD」「GV-N780OC-3GD」で、一番右はGeForce GTX TITANを搭載する「GV-NTITANOC-6GD-B」。
なお、NVIDIAとしてはまだGeForce GTX TITANをリファレンスデザイン以外で出荷していないため、GV-NTITANOC-6GD-Bは、リファレンスカードにオリジナルクーラーをバンドル、ユーザーの手でクーラー交換する方法を模索しているという。

新WINDFORCE 3Xがスリム化と冷却性能アップを同時に実現

新WINDFORCE 3Xのファンカバー。素材を樹脂から金属に変更、無稼動時は触った際に冷たさも感じる。各所の肉抜きは、エアを敢えて逃がすためのものという。これは、後述の「気流」を念頭に設計されたもので、静音化を実現するためのものでもある
分解モデルで分かるヒートシンクの傾斜構造(右側のヒートシンクと左側のヒートシンクの角度が微妙に異なっている)。Inclined Fanとこの傾斜によってエアフローが向上するとされる
同社がTriangle Coolと呼ぶ技術。GPU直上のヒートシンクに金属充填処理をし、熱伝導率を高めるというもの。従来のWINDFORCE 3Xよりも大型化することで性能も向上したとのこと

――まずはじめに、今回のシリーズからGPUクーラーのデザインが変更されましたが、新しいGPUクーラーはどのように呼べば良いでしょうか。

[A]GIGABYTEでは、従来のシリーズより「WINDFORCE」という名称を用いております。GeForce GTX 680ではファンを3基搭載した「WINDFORCE 3X」を採用しました。そしてGeForce GTX 770でも引き続き「WINDFORCE 3X」の名称を用います。ここでは仮に新WINDFORCE 3Xと呼ぶことにしましょう。

――WINDFORCEと新WINDFORCEではどのような点が改良されたのでしょうか。

[A]ひとつはファンカバーを従来の樹脂製のものから、メタル素材に変更しました。ふたつ目は「Inclinedファン」です。こちらは復数並んだファンの間の乱気流を抑える技術になります。よく見ていただけるとわかりますが、ヒートシンクも約15度傾けた設計にしておりまして、エアフローの効率が高まります。また、「コンポジットヒートパイプ」は今回のキーフィーチャのひとつです。外見からは分かりませんが、銅パイプにもう1本銅パイプをはめ込んだような構造をしておりまして、その間にあるわずかなスペースがさらに熱の輸送効率を高めています。


GPU接触面は銅製。グラフィックメモリも表面側に実装することで同じヒートシンクから放熱できる
ファン部分を含め、従来2.5スロットサイズだったクーラーが、今回は2スロットサイズに収められた。それでいてなお冷却性能はアップしていると言う

 さらにもうひとつの注目点として、進化した三角構造の「Triangle Coolテクノロジ」があります。これは冷却効果を高めるGIGABYTEの独自構造ヒートシンクですが、今回、金属面を大型化することで熱伝導率が向上しています。この2つの技術と「Inclined」ファンはまさに新WINDFORCEのストロングポイントです。

 これらの技術を用いることで発熱が高いハイエンド製品でも確実に冷却が可能となり、その結果、完全な2スロットサイズに収めることができました。ハイエンド製品を確実に冷却するために2.5スロットや3スロットサイズの製品も存在しますが、GIGABYTEの新WINDFORCEは2スロットサイズでも大型クーラーと同等の高い冷却能力を発揮できます。

ヒートパイプにヒートパイプを通したような構造のコンポジットヒートパイプ。Zalmanの技術とされるもので、外側は細かな凹凸を施した構造、内側はウィック(Wick:ろうそくの芯のような構造)処理を施してあると言う。このコンポジットヒートパイプにより、熱の輸送効率は50%高まるとされる

TITANでも250Wなのに……TDP 450Wまで冷やせる新WINDFORCE 3X

450Wの冷却能力をアピール
内部構造と気流の概念図

――冷却性能はどのように進化したのでしょうか。具体的な数値があれば教えて下さい。

[A]冷却性能は450Wとなっています。GeForce GTX 770のTDPが230W、780とTITANが250Wですから、余裕をもって冷却できます。

――静音性はいかがでしょうか。ファンは少ないほうが静かと考える人もいますし、復数あったほうが静かという人もいます。

[A]GIGABYTEのGPUクーラーの設計では、常に気流の流れを念頭に開発されています。これはWINDFORCE 3Xにも受け継がれており、ファンの役割りは主に「気流の調整」になるという設計です。ファンの力のみで冷却しているのではありません。だから静かであり、回転数もあまり高くは無いのです。

大幅OCを実現したのは新クーラーの性能と確かな基板設計

――ところで、今回のGeForce GTX 770はOCモデルですが、クロック設定はどのようなコンセプトで行なっているのでしょうか。

[A]「GPUにとってちょうどいいクロック」といったところでしょうか。我々はゲームで使われることを念頭に開発していますので、長時間のプレイでもオーバーヒートしないことが重要ですし、末永く使えるよう、耐久性を下げるような過度なクロックには設定していません。

――過度なクロックではないとしても、GeForce GTX 680モデルが定格クロックから65MHzのOCだったのに対し、GeForce GTX 770モデルではプラス91MHzとOC幅が増えています。これを可能にしたのは、これまで紹介されたクーラーの性能ということでしょうか。

[A]クーラーの性能はもちろんですが、電源回路設計も変更しました。採用しているのは8フェーズデザインで、リファレンスデザインの6フェーズと比べると、2フェーズ増やしたことになります。

 また、Ultra Durable VGA基準の設計を採用しております。マザーボードでのUltra Durableに準じ、高品質なコンポーネントを採用し、2オンス銅箔層を用いたオリジナルPCBとなっています。また、ハイエンドGPUを搭載するビデオカードですので、台湾工場で製造しております。

――GPUクーラーの設計は、どのようなサイクルで行われているのでしょうか。また、従来のGeForce GTX 680では、リファレンスモデルにOCモデル、「GV-N680SO-2GD」のようなスペシャルモデルがありました。今回のGeForce GTX 770はOCモデルのみですが、バリエーション展開の予定はありますか。

[A]基本的にGPU毎、その特性に合わせて開発しています。ただし、GeForce GTX 770と780、TITANは同じ系統なので今回は共用しております。

将来の製品について言及するのは難しいですが、今回、優秀なクーラーを開発できたことで、現在の1モデルのみでもゲームやOC、全てのニーズを満たすことが出来ると考えています。

新WINDFORCE 3Xを搭載したGV-N770OC-2GD。コアクロックの引き上げ幅は定格の1,046MHzに対し+91MHzの1,137MHz
旧WINDFORCE 3Xを搭載したGV-N680OC-2GD。コアクロックの引き上げ幅は定格の1,006MHzに対し+65MHzの1,071MHzだった

GIGABYTEのOCモデルは「1ランク上」?

GV-N770OC-2GD。前世代のGV-N680OC-2GDと同じくOC仕様だが、コアクロックの引き上げ幅は伸びている

――店頭でも定格クロックモデルとOCモデルがありますが、より安い定格モデルを選んでしまうというユーザー心理もあると思います。OCモデルのパフォーマンスというのはどのくらいと考えればよいでしょうか。

[A]GIGABYTEでは、先のとおり「GPUにとってちょうどいい」クロックを設定していますが、最終的にOCモデルのパフォーマンスは、およそ「1ランク上」になることが多いです。

 例えば「GV-N780OC-3GD」の場合、おおよそパフォーマンスはGeForce GTX TITANクラスに相当します。GeForce GTX TITANの流通量はかなり少ないので、OCモデルを選択していただくことで、GeForce GTX TITAN並みのパフォーマンスが得られるコストパフォーマンスは魅力だと思います。

――最後に、今回のモデルのキーポイントをまとめていただけますでしょうか。

[A]ひとつはハイエンドでも薄いクーラー、もうひとつは450Wまで冷却できるクーラー性能だからこそ何をしても冷えるという点です。WINDFORCEには我々の持つ数々な特許技術が詰まっており、自信を持ってオススメできる製品に仕上がっております。是非日本のユーザーさんもお手にとってみてください。

--ありがとうございました。

GIGABYTEブースで見つけたその他の注目アイテム

GA-Z87X-UD5-THはメインストリーム向けのThunderbolt対応マザー。無線LAN&BluetoothのPCI Express Mini Cardも搭載する

 そのほかGIGABYTEブースでは、マザーボードやノートブックPC、マウスやキーボードといったペリフェラルまで、幅広い製品が展示されていた。

 マザーボードでは、Intel Z87チップセットを搭載するマザーボードの第2弾として「GA-Z87X-UD5-TH」とその上位モデル「GA-Z87X-UD7-TH」が展示されていた。「TH」と付くのは同社Intel Z77モデルと同様、Thunderboltに対応していることを示す。その上でGA-Z87X-UD7-THは、OC向けマザーボードの最上位モデル「GA-Z87X-OC Force」をベースに開発されたフラッグシップと呼べる製品だ。

 ほかに、AMD CPUファン向けにはOCできるSocket FM2 Mini-ITXマザーボード「GA-F2A85XN-WIFI」が展示、デモされていた。Mini-ITXマザーボードながらかなりOCできるとの話なので、小さくてもパフォーマンスに妥協したくない方にピッタリだ。

スタンダードシリーズの新フラッグシップモデル「GA-Z87X-UD7-TH」
GA-Z87X-UD7-THは多フェーズ設計&マルチGPUサポートのマザーボードにThunderbolt×2基を組み合わせている
GA-F2A85XN-WIFIはOC機能が魅力のMini-ITXマザーボード
キーボードやマウスも多数展示
タッチセンサー操作のスピーカーもGIGABYTEの製品。他にも電源、ケース、サーバー向けボードなど、かなり広範囲な製品が展示されていた

 また、キーボード・マウスでの注目製品は、ゲーマー向け有線/無線マウス「Aivia Uranium」。

 レシーバー部のミニディスプレイとマウス操作からプロファイル切り替えができる。そしてエアマウス・レーザーポインター機能付きの「Aivia Neon」は、収納可能なレシーバー部がそのまま充電アダプタとなり、これ1台で全てをこなす万能プレゼンテーション向けマウスとなっている。

 GIGABYEのマウス製品は、どこかユニークで意外と便利な機能が搭載されている注目株だ。

Aivia Uraniumは、ミニディスプレイ付きレシーバーを備えるゲーマー向けマウス。ミニディスプレイにはマウスのステータスも表示でき、ほかレシーバー部にプロファイルを保存したり、ミニディスプレイ下にマウス&汎用充電用USBケーブルを備えたりと多機能だ
Aivia Neonは1台で全てをこなせるプレゼンテーションマウス。エアマウスには側面ボタンのダブルクリックで切り替え、逆にテーブル上に置けば自動的にデスクトップマウスモードへと戻る

石川 ひさよし