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BF4にFF14、ドラクエ、信長の野望……、この冬注目のPCゲームとその環境は?
~「据置ゲーム機制覇」のAMD製GPUでチョイスしてみた~ Text by 石川ひさよし
(2013/12/31 14:55)
例年、年末年始にはゲームの注目タイトルが揃うもの。そしてこれは家庭用ゲーム機のみならずPC用ゲームも同様だ。
今年は、バトルフィールド4やFinal Fantasy XIV 新生エオルゼア、ドラゴンクエストX、シムシティ、そして12月に発売された「信長の野望・創造」など、実力も知名度も高いゲームが目白押し。
もうすぐ新年、「さぁゲームだ」という人もいると思うが、今回は、そうした人気ゲームのための環境入門として、ビデオカード選びの情報をまとめてみた。
ちなみに、今回チョイスしたのは、据え置きゲーム機で覇権を握ったAMDのRadeonシリーズ。据え置きゲーム機と同様の「薄いレイヤー」の独自API「Mantle」をPC向けに発表するなど、同社はゲームに対して攻めの姿勢。ゲーム向けにビデオカードを買うなら、まずチェックして損はない、という考えだ。
この冬の注目タイトルをまずチェック
まずは今期の注目タイトルを、ざっとチェックしておこう。
バトルフィールド4
ジャンル:FPS
バトルフィールドシリーズの最新作。バトルフィールド3の舞台が中東、勢力がアメリカ対ロシアだったのに対し、バトルフィールド4では中国が舞台の中心で、勢力でもアメリカとロシアに加え中国が加わった。システム面では、マルチプレーヤーモードに新たなルールが追加されている。
Final Fantasy XIV 新生エオルゼア
ジャンル:MMORPG
ファイナルファンタジーシリーズとしては2作目のオンラインタイトル。2013年に入り長らくβテストが行われていたが、8月27日より正式にサービス開始した。従来シリーズ同様、カスタマイズ豊富なキャラクターメイキングや、クラス、ジョブといったシステムが採用されている。
ドラゴンクエストX
ジャンル:MMORPG
ドラゴンクエストシリーズ(1から続く正式シリーズ)としては初めてのオンラインタイトル。バージョン1の「目覚めし五つの種族」に続き、12月5日にはバージョン2「眠れる勇者と導きの盟友」が発売される。なお、バージョン2を楽しむにはバージョン1が必要というシステムだ。
信長の野望・創造
ジャンル:シミュレーション
PCゲーム黎明期から脈々と続く戦国シミュレーションゲームの第14作目。自分のプレイする戦国武将を選び、内政・外交・合戦を経て全国統一を目指す。城の数はシリーズ最多となる300城以上とされ、複数の城から軍団を出陣させ、複数の城を同時に攻撃するといった、タイミングを同時とした戦略が可能になった。全国の地図は、マウスで自由に拡大縮小/回転できる3Dマップで表現され、エリアの切り分けがない、自由な視点で戦略を立てられるのも特徴だ。
シムシティ
ジャンル:シミュレーション
こちらも歴史ある箱庭タイトル。市長となって自分のシティを発展させていくのが目的だ。ナンバリングもサブタイトルも無くなってしまったため、某タブレット風にシムシティ(2013)と呼ばれることもある。今作で第6作目となり、3Dグラフィックとネットワーク機能が強化された。余談だが、タッチ液晶で遊ぶのもなかなか楽しい。
このほか、大航海時代OnlineやTERAなどの既存オンラインゲームでも、年末に向けてアップデートが投入されたものが多い。
PCゲームを快適に楽しむには「ビデオカード/APU」がキーアイテム
「PCでゲームを楽しむにはビデオカード選びがキモ!!」。これはこれまでにも散々言われてきたことである。
チップセットにGPUが搭載されていた頃は、まだまだGPU性能が貧弱だったから、こうした自作PC格言が言われてきたわけだが、GPUがCPUに統合され、その性能も向上してきた今、「ビデオカード&APU選びがキモ」と言い換えてもいいだろう。
特にAMDのAPUではその性能も大きく向上、ブラウザゲームや低負荷のゲームはもちろん、シムシティのような3Dゲームでも設定や解像度次第で十分楽しめるようになってきた。とはいえ、バトルフィールド4のような最新技術を駆使したゲームは、やはりビデオカードの独壇場だ。
では、どのぐらいであればビデオカードが必須になるか、その「境目」はどれほどなのか?
今回はまず、そうした点を検証してみた。
検証に使ったのは、数あるGPU内蔵CPUの中でも随一の3D性能を持つAMDのAPU、「A10-6800K」。内蔵GPUはRadeon Coreを384基搭載した「Radeon HD 8670D」だ。
このA10-6800KとDDR3-2133メモリを搭載したシステムを用い、フルHD環境でベンチマークを行うと、まず「ドラゴンクエストX」では、オフィシャルベンチマークソフトでは「とても快適」(標準品質時)や「普通」(最高品質時)となる。しかし、同じスクウェアエニックスの「Final Fantasy XIV 新生エオルゼア」では、オフィシャルベンチマークで「快適」(デスクトップPC標準画質時)~「要再設定」(デスクトップPC高画質時)という状況。
そして「シムシティ」では、オプション設定次第で146fps(最低設定時)から24fps(中設定時)、11fps(最高設定時)になるといった具合。「シムシティ」のようなゲームでは、一般に30fps以上あれば快適にプレイできるため、十分快適にプレイできるが、画面描画の質は上位GPUには及ばない、というイメージだ。
つまり、バトルフィールド4のようなハイエンドゲームはもちろん、中堅クラスのゲームでも「本格的にこだわるならGPU」ということになる。APUの位置づけを考えると、「入門にはAPU、こだわるならばGPU」ということになるだろう。
今回の注目は「ゲーム機制覇」のRadeon
さて、ディスクリートGPU(拡張カードとして追加するGPU)には、AMD RadeonとNVIDIA GeForceがあるが、今回取り上げるのはRadeonだ。
Radeonと言えば、次世代ゲーム機と言われるPlayStation 4、Xbox One双方に採用されているGPUブランドであり、しかもそのアーキテクチャ「GCN」は、現行Radeonと同じである。つまり、家庭用ゲーム機との親和性という点でリードしているのだ。
また、AMDはGCN向けのグラフィックAPI「Mantle」をリリースした。Mantleは、GCNアーキテクチャのGPUに対し、直接制御できるAPIとされ、これを利用したゲームタイトルでは、特定のグラフィックス処理が、従来の方法よりも軽い負荷で実行できるという。
従来のGPUでは高負荷な、しかしMantleでは低負荷にできるという処理があれば、そうしたシーンにおけるフレームレートの落ち込みを解消できるわけだ。このMantle、最初の対応タイトルはバトルフィールド4が予定されている。既にバトルフィールド4はリリースされているが、無償パッチという形で対応できるとされている。
このパッチは今のところリリースされていないが、当初「12月中」と発表されていたこともあり、そんなに先のことではないと思われる。今回は試用バージョンを含めて間に合わなかったため、通常版のパフォーマンスを計測しているが、AMDのMantle版バトルフィールド4のパフォーマンスに自信を見せており、パッチ登場後はさらにフレームレートが向上する可能性があるだろう(AMDでは「1桁%ではない」と明言している)。
今回用意したRadeonは、ハイエンドのR9-290、アッパーミドルのR9-280X、ミドルレンジのR9-270、そしてローエンドのR7-240という4枚だ。うちR9-290はリファレンスカード、R9-280XはGIGABYTE「GV-R928XOC-3GD」、R9-270はASUSTeK「R280-DC2OC-2GD5」、R7-240はGIGABYTE「GV-R240OC-2GI」となっている。一方、計測を行うタイトルは、バトルフィールド4とFinal Fantasy XIV 新生エオルゼアに絞り込んだ。
【バトルフィールド4の場合】Radeon R9-280X以上がオススメ
バトルフィールド4で勝ち抜くというのは、反射神経が第一であり、その判断基準となる画面の情報もより速くより正確であることが重要だ。
ガチでプレイするならマルチGPU構成にする方も多く、そして表示する液晶側も、視界を稼ぐためのマルチモニタ構成や細部まで精細な高解像度WQHD液晶、GPUパフォーマンスをフルに引き出すための120Hz表示対応液晶といった具合にそれなりの装備を整えて望む世界である。
そんな潤沢な軍資金があるならばGPU選びも「常に最新ハイエンド一択」なわけで、あらためて解説をするまでもない。今回は1基のGPU、フルHDで快適に楽しむためのGPU選びを提案する。フレームレートの目安は60fps。これを少し超えるくらいの余裕を持つのが理想だが、fpsはあくまで平均フレームレートであるため、55fps以上出ていればプレイ中の大半のシーンで60fpsを超えているとも判断できる。
バトルフィールド4では、大きく2つのモードがある。ネットワークに接続して多人数でドンパチ楽しむマルチプレーヤーモードと、一人シナリオに沿ってミッションを進めるキャンペーンモードだ。現在までに筆者が試した限りでは、キャンペーンモードの方がマルチプレーヤーモードよりも高負荷な印象。ただ、どちらも楽しむだろうことから、ここでは2つを切り分けてフレームレートを計測してみた。画質設定は最高画質。キャンペーンモードは、自動でシナリオが進むシーンを用いているため、各GPUでほぼ同一の負荷になるが、マルチプレーヤーモードは計測毎に負荷が変わるため、基本的には「参考データ」ということになる。
では計測結果だが、より負荷の高いキャンペーンモードでは、Radeon R9-280Xが及第点。Radeon R9-290なら間違いなく合格といったラインだ。
Radeon R9-270のフレームレートは38fps程度であり、30fpsというハンデを飲めば楽しめるが、涙をのんで画質オプションを落とし、フレームレートを引き上げるのが得策だろう。
(12/31 23:00更新)初出時、判例中のGPU名に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
一方、マルチプレーヤーモードでは、Radeon R9-280Xも十分合格点。
ただし、急に高負荷になるような場合は60fpsを大きく割り込むこともあるため、シビアに考えるなら、Radeon R9-290がやはり良い。こちらは60fpsに対して大幅に余裕があり、同じような高負荷時でも、落ち込みが軽く済む。
Radeon R9-270は、30fpsに対し、10fps程度の余裕が生まれたが、そもそものフレームレートが低いため、フレームレートの落ち込みが数値以上にガタつく印象。そうした「隙」が生死を分けるタイトルだけに、ガッツリ楽しむならより上のクラスのGPUを選択したい。
(12/31 23:00更新)初出時、判例中のGPU名に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
【Final Fantasy XIV 新生エオルゼアの場合】Radeon R9-270クラスから
Final Fantasy XIV 新生エオルゼアは、MMOのアクションRPGという位置づけになるため、反射神経は必要なものの、FPSタイトルほどシビアではない。
一般的には30fps程度が求められ、実際にオフィシャルベンチマークでも30fpsが判断基準となっているようだ。ただし、液晶ディスプレイは60Hzが一般的なので、60fpsに近いパフォーマンスが出ればより快適であることは間違いない。そこで、「30fps以上でできるだけ余裕が大きいこと」が快適度のひとつの判断基準になるだろう。なお、実際のタイトルでは30fpsまたは60fpsというフレームレート上限が設けられているため、ここを60fpsに設定したうえで計測している。
計測結果を見ると、Radeon R7-240は13fpsと、快適ラインの30fpsには遠く及ばない。一方でRadeon R9-270だと30fpsを大きく超えて60fpsに迫った。つまり、この中間、Radeon R7-260Xあたりがコストパフォーマンス的にちょうどよいのかもしれない。
なお、目指すターゲットを60fpsとして見ると、Radeon R9-270とR9-290の差はほとんど無いように見える。こうなると60fps以上のフレームレートを出せるパフォーマンスは「無駄」にも思えてしまうが、実際には違う。先のバトルフィールド4と同様、急に負荷の重いシーンに差し掛かるとフレームレートがガクッと落ち込む。大きく割り込むほど、割り込む回数が多いほど、平均fpsの値は60から下に離れていくわけだ。
では、「60fps以上の余裕」を、フレームレート上限の無い同タイトルのベンチマークソフトから見てみよう。
なお、Radeon R7-240の先の実プレイ中のフレームレートとベンチマークでのフレームレートを照らしあわせてみると、ほぼ同じだ。その点から、Final FantasyXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編は、実際のプレイにおける快適度の目安を測る意味で信頼できるベンチマークと言える。
60fpsゾーンのGPUで見ると、最高画質でのパフォーマンスはRadeon R9-270に対しR9-280Xは実に2倍。ただ、「30fpsあれば十分なタイトル」ということを考えると、ややオーバースペックともいえる。よって、フルHD&最高画質で楽しむ程度なら、Radeon R9-270で十分と判断できる。
一方、30fpsゾーンのGPUで見ると、標準品質まで落としてRadeon R7-240がようやく「快適」となったが、30fpsギリギリである。先の通り、おそらくRadeon R7-260Xでも大丈夫と思われるが、計測した範囲から求められる推奨GPUはRadeon R9-270以上としておきたい。
APUもここまでできる!
さて、ここまで2タイトルをGPUで検証してみたが、残るシムシティ、ドラゴンクエストX、信長の野望・創造についてはAPU(A10-6800K)で簡単に検証してみた。
先にも述べたように、ゲーム環境を整えるには十分な性能があるAPUだが、単体GPUのような「フルHD+最高画質+30fps以上」はさすがに無理なゲームが多い。今回ピックアップしたタイトルのうち、それを実現できたのは「信長の野望・創造」(常時60fps)の1本だけだった。ただし、少しだけ画質を落としたり、フルHDをあきらめて720p HDに設定すれば快適度がグッと増す。
結果は下の表にまとめたが、ドラゴンクエストXならフルHDでも「標準画質」へと落とすだけで「とても快適」という判定に、シムシティなら中画質より下に設定することで30fpsを超えるという結果。ちなみに、「Final Fantasy XIVで30fps」は、フルHDであれば標準画質で、1,280×720ドットでよければ高画質程度で実現できた。
なお、このテストの環境は前述したもので、A10-6800KにDDR3-2133メモリ8GB×2を組み合わせている。A10-6800Kは現在の主流のDDR3-1600メモリも利用できるが、DDR3-2133メモリを使うことで、統合GPUのグラフィック性能を余すところなく活用できる。APUのゲームPCを作る場合は必ずメモリ速度を気にしたい。
低品質 | 標準品質 | 最高品質 | |
---|---|---|---|
1,920×1,080 | とても快適(8,763) | とても快適(7,712) | 普通(4,775) |
1,280× 720 | とても快適(9,549) | とても快適(8,865) | とても快適(7,153) |
最低 | 中 | 最高 | |
---|---|---|---|
1,920×1,080 | 146.35 | 23.367 | 11.217 |
1,280× 720 | 193.9 | 42.1 | 16.183 |
標準画質(デスクトップ) | 高画質(デスクトップ) | 最高品質 | |
---|---|---|---|
1,920×1,080 | 快適(3,647) | 設定変更を推奨(1,803) | 設定変更を推奨(1,772) |
1,280× 720 | とても快適(6,839) | 快適(3,517) | やや快適(3,421) |
今まさにビデオカードがお買い得!
以上、駆け足で「ゲームとGPU/APU」を紹介してみたが、読者の方々がゲームを楽しむ際の目安となれば幸いだ。
現在、GPUは28nmプロセスの第2世代にあたり、性能はもちろん安定感も、そして何よりコストパフォーマンスが高まってきている。なにせ最新FPSのバトルフィールド4が3万円台後半から入手できるアッパーミドルGPUで楽しめるのだ。ひと昔前ならハイエンドGPUでもギリギリで、マルチGPUが求められたセグメントだけに、現世代のお買い得度は高い。
現時点ではまだ不確定要素が大きいが、この上、Mantleも来る見込み。欧米のゲーム開発会社を中心に採用するという話も聞こえてきており、おそらく洋ゲー好きの方を中心にこの恩恵が受けられる日が間もなく来るだろう。