特集、その他
Fractal Designの静音ケース「Define」が進化、さらに静かに
「冷却重視」へのカスタマイズ機能も強化 text by 石川ひさよし
(2014/11/25 12:05)
「PCケースのコンセプト」というと色々あるが、中でもポピュラーなのが静音タイプ。そして、そうした静音製品の人気シリーズの一つがFractal DesignのミドルタワーPCケース「Define」シリーズだ。
さて、そのDefineシリーズの最新モデル「Define R5」が発表された。現行のR4の後継モデルとなる製品で、基本的なデザインは受け継ぎつつも静音性を強化。そしてカスタマイズにより「超冷却仕様」に変化するのも特徴。発売は12月中旬予定とされている。
今回、製品を確認する機会があったので、さっそく評価してみた。
基本は「静音性重視」、シンプルかつスタイリッシュ
まずは外観から見ていこう。
Define R5のデザインは、基本的なところはR4を継承。フロントパネルもフラットで、シンプルかつスタイリッシュなデザインだ。
また、上部に設けた小さなスリットの奥に電源用LEDが設けられている。フロントパネルは左側を軸に開閉する。パネルを閉じることにより、内部の動作音を閉じ込める、静音性に優れたデザインだ。
また、フロントパネルを開けた際、上部にファンコントローラがある。3ピンコネクタタイプのファンを2系統、3段階で調節可能だ。天板前面に電源/リセットボタンやオーディオ用のジャック、USB 3.0×2、USB 2.0×2のインターフェースを備える。机の下に収納するような場合、ちょうど手が届きやすいところに位置している。
ケースのサイズは232(W)×521(D)×462(H)mm。高さは比較的抑えられている一方、やや幅広だ。重量は11.2kgあり、幅広ボディと合わせてどっしりした安定感がある。素材はスチールだが、この重量から分かる通り、比較的厚みのある板を採用していることに加え、各所に折り曲げ加工を施しているため、やたらと剛性が高い。ひと言で表せば「質実剛健」が似合うだろう。
背面は幅広なサイズに合わせて拡張スロット横のメッシュ部分も大きい。拡張スロットのブラケットは7段で、ブラケットにはパンチングが施されている。背面ファンは14cm角サイズ。電源は下部になるが、その左右にもけっこうなスペースがあることからも幅広デザインが分かる。前面、側面が密閉性にこだわっているのに対し、背面は通気性を良くしているのが特徴的だ。
静音=密閉が基本だが柔軟にいじれるレイアウト構成次第でエアフロー重視にも……
内部もブラック塗装だが、ところどころ白いカラーがアクセントになっている。ファンやブラケット、3.5インチシャドーベイおよび2.5インチベイのトレイといった4箇所だ。
まず、ベイのレイアウトは、5インチ×2、3.5インチシャドー×8となる。このほか、マザーボード裏のスペースには2.5インチベイ×2もある。ベイ数としては十分と言えるだろう。
ユニークなのは、3.5インチベイが上5段、下3段で分割でき、それぞれ着脱ができ、レイアウトを変更できるところ。合わせて5インチベイを外すことができ、ここに3.5インチベイを移設することも可能だ。5インチベイが取り外せるのはDefine R5の新機能。柔軟なレイアウトによって、様々なニーズに応えることができる。
長さのあるビデオカードを装着する場合も、レイアウトの変更で対応できるし、極端な話、2.5インチドライブしか使わないのであれば、全ての3.5インチ、5インチベイを取り払い、遮蔽物の無いスムーズなエアフローで究極の冷却&静音化を狙うこともできそうだ。なお、ビデオカードの長さについては、3.5インチシャドーベイ使用時で31cm、取り外し時で44cmとなる。
標準搭載ファンのレイアウトは、14cm角ファンを前面と背面に配置している。ファン自体は同社の「Fractal Design Dynamic GP14 140mm」になり、3ピンコネクタ式(PWM非対応)で最大1,000rpmとなる。
追加可能ファンは前面が12/14cm角×2、天板が12/14cm角×3、底面が12/14cm角×2、背面が12/14cm角×1、そして左側面が12/14cm角×1となる。
また、水冷ラジエータにも対応。天板と前面は360mm、底面は240mm、背面は140mmサイズのラジエータが装着可能だ。なお、ここがR4からの改良点でもある。R4の天板および前面は280mmサイズまでの対応だった。簡易水冷でも360mmサイズの製品が登場してきたところなので、そうした超大型ラジエータを使いたい場合には要チェックだ。
なお、天板および左側面部には同社が「ModuVent」と呼ぶカバーが装着されており、これを付けた状態なら密閉、開放してファンを搭載すればエアフロー&冷却重視の特性に変わる。基本的には密閉タイプの静音重視のケースだが、内部のパーツに合わせて冷却性能を調整できることに加え、将来、用途が変わったとしても対応できる。
マザーボードスペースは、いちおう「最大サイズがATX」という仕様だが、実測で26cm程度の幅があった。ユニークなのは、マザーボード搭載面がやや窪んでおり、それ以外の部分は盛り上がっているところ。マザーボード裏のスペースも、十分にケーブルを這わせることができるだけのゆとりがあるが、それ以外の部分にはさらに余裕のスペースがあり、ATX24ピンなどの太いケーブルは十分にスペースがある盛り上がった部分に通せば簡単かつ綺麗にマネジメントすることができる。
電源は底面配置で、現在のPCケースのトレンドに沿ったものだ。マザーボードは通常の向きに装着するため、一般的にEPS12Vなどのコネクタは一番上の位置に来る。注意するとすれば、この配線に対応するだけのケーブル長のある電源を選ぶ、あるいは延長ケーブルを用いるといった対処が必要なところだろう。
裏面のスペースは、前述のとおりかなりゆとりがあり、マザーボード裏の部分に2基の2.5インチベイを備えるほか、ケーブルタイにより、フロントインターフェース用のケーブルや、ファンコントローラ用のケーブルが既に配線された状態だった。
「リア通気」構造で静音と冷却を両立ファンコン最小ならほぼ無音、ビデオカードなどの消音性能も良好
では簡単にDefine R5の性能を測定してみよう。とはいえ、モノがケースなので内部に搭載するパーツ次第で大きく左右される。そこで、ごく基本的な性能、具体的には本製品の特徴でもある「静音性」に絞ってテストしてみた。
まず、搭載するシステムについて説明しておこう。今回のパターンは2つで、ひとつ目はケースファンとファンコンによる動作音を検証する目的のとにかく静かな構成。Intel Z97マザーボードにCore i7-4790Kを搭載し、統合GPUを用いるものだが、バラック状態ではアイドル時、高負荷時とも30dB以下(CPUファンから20cm)の構成にしている。
この環境をDefine R5に組み込んだ場合の最大の動作音は、ファンコンの最大時、フロント側約20cmで31.0dB、リア側で36.6dBだった。またファンコン最小時はフロント/リアともに30dBを下回り計測不能域になってしまった。ファンコン最大時は確かにファンの動作音が聞こえてくるものの、通常の設置スタイルで使えばかなり静かだ。最小時はほとんどといって良いほど無音だ。
ふたつ目の環境は、動作音の抜けを確認するために、ひとつ目の環境にビデオカードを追加したものとした。ビデオカードにはGeForce GTX 970のリファレンスデザインカードを用いた。とはいえ、あまり動作音が大きいものではない。バラック状態で、GPUクーラーのファンから20cmで測定した場合でアイドル時が31.5dB、高負荷時が35.4dB前後である。
この環境をDefine R5に組み込んだ場合の最大の動作音は、フロント側が30.3dB、リア側が33.7dBとなった。リア側で1.7dBほど、フロント側では5.1dBほど動作音が小さくなった。カバーによる密閉や吸音材が功を奏したのだろう。もちろんこれはファンコンを最小に絞った場合のものだ。ファンコンを最大にするとフロント側が32dB、リア側が38.7dBとなった。
リア側に関してはメッシュを多用しているために音が抜けやすいが、フロント側はしっかり消音する。それも、今回はケースから20cmというかなり近い距離で計測したので、机の下に納め、椅子に座ってPCを使う場合は、これよりもさらに静かになるわけだ。
優れた静音性と、冷却・拡張両面での柔軟性が魅力
以上見てきたが、Define R5は、確かに静音性能に優れたケースといえる。そして、その上で、冷却性能についても、カスタマイズで性を大幅に向上しているのがポイントだ。標準では「静音重視」でも、ファンを追加したり、大型ラジエータの水冷キットを組み込んだりすれば、「超冷却性能重視」のケースに変身する。つまり、様々な用途に対応できるし、長期使用するなかでPCハードウェアの趣向が変わったとしても対応できる万能ケースといえる。また、向きの変更や着脱、移設ができるベイカートリッジも、様々な用途への対応という点でポイントだ。
また、検証中に感じたことは、「ファンコンを最大にする理由」はあまり無さそうだという点。最小では確かにエアフローが弱いが、後部はメッシュなのでそこまで熱がこもる印象はない。統合GPUを用いるのであれば、これで十分だし、ビデオカードを搭載するにしても、ミドルレンジクラスまでなら中あたりで大丈夫だろう。
ハイエンドビデオカードを使う場合は最大にすべきなのかもしれないが、ここまでくると低回転のファンを数多く搭載するほうが静音性の面では良さそうな印象だ。もっとも、この製品の場合、最大回転+ファンコン最大でもフロント側であれば動作音が大きいわけではなく、ビデオカードなどの動作音もフロント側なら5dBほど低く抑えられた。
仮に動作音の大きなハイエンドビデオカードを使ったとしても、その動作音をしっかり抑えてくれるわけで、静音性にすぐれたビデオカードと組み合わせて、ギリギリまで静音なハイエンドで環境をも作れる、というのもこの製品の魅力といえる。