特集、その他
GTX 960をOC+SLI、さらに高性能を引き出してみた
……もちろん小型PCで
ZOTAC最高峰「AMP Edition」レビュー text by 石川ひさよし
(2015/2/16 00:05)
NVIDIA GeForce GTX 960は、メインストリームゲーマー向けのGPUであるのは御存知の通り。
NVIDIAからは「リファレンス」クロックが公表されているが、リファレンスクロックの製品はほとんどなく、現在流通する製品はビデオカードメーカーが独自にオーバークロックを施した製品がほとんど。要は、どのくらいまでクロックを引き上げるのか、というレースになっている。
そんなGeForce GTX 960カードのなかでも、トップクラスのオーバークロックモデルがZOTACの「GeForce GTX 960 AMP Ediition」。設定はなかなかアグレッシブで、コアクロックは1,266MHz、ブーストクロックは1,329MHzにも及んでいる。
今回はその「AMP Edition」を使って、さらなるオーバークロック、そしてSLI動作に挑戦、元から高いGeForce GTX 960の性能をさらに引き出してみた。
独自クーラー「Ice Storm」を搭載カード裏面にはゲームのイラストも
さて、まずは製品の外観から紹介しよう。
ZOTAC GeForce GTX 960 AMP Ediitionは、デュアルファン仕様でカード長が208mmと、GeForce GTX 960カードのなかではスタンダードなサイズ。感覚をつかむために比較をすれば、およそスタンダードなmicroATXマザーボードの幅よりも若干短い。通常ハイトで2スロットぶんの拡張カードスペースを搭載するPCケースであれば、まず問題なく搭載可能だ。コンパクトなゲーミングPCを組むには狙い目の製品である。
搭載するクーラーは「Ice Storm」。新設計の、ZOTACオリジナルクーラーで、ヒートパイプをGPUから上下に2本、ヒートシンク全体へと引き回す構造をしている。
また、基板には電源のリアルタイム監視機能「Power+」を盛り込み、温度センサーと連動させることで新機能「FREEZE」を搭載してきた。FREEZEとは、GPU温度が59℃、あるいは消費電力が13Wを下回った際に、ファンの回転を止め、準ファンレス状態へと移行させる機能だ。
補助電源コネクタは6ピン×1基。GeForce GTX 960のリファレンス仕様での消費電力は120W(もちろんマージンを見込んでの数値である)とされる。
PCI Express x16スロットから75W、6ピンから75Wで計150W供給できるため、オーバークロックモデルであるが、電力的には間に合っている計算だ。オーバークロックモデルのなかには、6ピン×2などに電力供給を強化した製品もあるが、6ピン×1基であることは組み込みの際の手軽さという面で評価できる。
また、現在展開中の「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」のバンドルキャンペーン対象モデルでは、カード裏面のプレートに同タイトルのイラストがプリントされており、見た目のインパクトもある。クリアの側面パネルを採用するPCケースと組み合わせると、組込み後もイラストを眺められるだろう。
ではパフォーマンスを紹介しよう。計測したのは3DMarkとバトルフィールド 4だ。
まずは3DMarkから。
標準クロックでの測定値 | |
---|---|
Ice Storm | 165,146 |
Ice Storm Extreme | 141,376 |
Ice Storm Unlimited | 159,044 |
Cloud Gate | 23,651 |
Sky Diver | 20,887 |
Fire Strike | 6,847 |
まず、オーバークロックぶん少し高めのスコアが出ているのがポイントだ。
次のバトルフィールド 4については、最高画質、フルHD設定で検証したところ45.017fpsとなった。これでも十分なフレームレートであるが、画質プリセットを高画質へと一段落とせば、60fps前後の平均フレームレートが得られる。
このように、負荷の高いゲームタイトルを最高画質、フルHDでも30fpsを軽く超えるパフォーマンスを持っており、メインストリーム・ゲーマー向けとして十分期待に応えてくれる。また、軽量タイトルであれば、軽すぎるくらいであり、この点はこれから1~2年ぶんのゲームタイトルを快適に楽しむための備えとして確保できる。また、現行の軽量タイトルについては、DSRと呼ぶ機能を用い、ディスプレイの解像度を超えるピクセルでレンダリングした後、ダウンスキャンすることで細部をより精細に書き出すことも可能だ。
ファン停止機能に関しては、なかなか優秀だ。
非3D時のように負荷の軽い状態では、確かにファンは停止している。一方、3Dゲームを起動すると、ロードが完了したあたり(画面が切り替わったあたり)でファンが回転を始め、3DMarkを見ていると、とくに高負荷な際には回転数が上昇する。3DMark中でも基本的には静かであり、高負荷がかかった際、瞬間的にファンノイズも上昇するが、すぐに収まる。GPU-Zからモニタリングすると、GPU温度が80℃を超えた際、ファン回転数があがり、するとみるみる70℃台に落ち、同時にGPU Boostが効くようでGPUクロックが引き上げられ、その後80℃のやや下で平均的なGPUクロックの状態が続くといった具合だ。
確かに、高負荷時は一瞬だけ動作音が大きくなるが、それは持続せず、ゲームプレイ環境としてはなかなか快適。密閉性に優れたケースにおさめてしまえば、一瞬の回転数増大時でもほとんど気にならない。
まずはオーバークロック純正ツール「FIRESTORM」で、さらに+44MHz
また、ZOTAC製品ではおなじみの独自オーバークロックツール「FIRESTORM」も付属する。かなりオーバークロックされた本製品だが、さらなるオーバークロックも可能だ。そこで軽くオーバークロックも試みてみた。FIRESTORMの解説とともにオーバークロックの結果を紹介しよう。
FIRESTORMは、付属DVDまたはZOTAC Webサイトのサポート項からダウンロードしてインストールする。
UIは、中央に温度計、左にGPUクロックとメモリクロックのモニタ、そして右には各種機能の切り替えボタン、そして下部にはいくつかのインフォメーションを表示するボタンが並んでいる。右パネルは、標準で右端のQuick Boostが選択されており、その下の2D、3D、3D+といったボタンで簡易プリセットの切り替えが可能だ。ユーザーが細かな設定を行う場合は、Advanceボタンを押すことで、メインUIの下に各部を設定するパネルが現れる。ここでひとつひとつ調整していく。
オーバークロックでの3DMarkの結果は以下のとおり。Ice Stormでわずかにスコアが下がったところもあるが、Fire Strikeの結果を見る限り、狙い通りパフォーマンスは向上しているようである。
オーバークロックでの測定値(コア1.31GHz/メモリ7.312GHz) | |
---|---|
Ice Storm | 164,473 |
Ice Storm Extreme | 143,729 |
Ice Storm Unlimited | 160,713 |
Cloud Gate | 24,124 |
Sky Diver | 21,431 |
Fire Strike | 7,129 |
さらにSLIを組んでみた……しかもmicroATXケースでBF4のフレームレートは62%アップ
さて、GeForce GTX 960カードは店頭販売価格が3万円前後、ZOTAC GeForce GTX 960 AMP Ediitionもおよそ3万円強の価格で販売されているが、これをSLIしたらどのくらいのパフォーマンスになるか、気になる方もいるのではないだろうか。
GeForce GTX 960は電力効率にも優れ、GPUクーラー側がやや力を持て余している印象がある。多少のファンノイズ増大を気にしないのであればSLIも有効、それも、2枚のビデオカードが隣接するキビシイ条件でも現実的ではないかと考えた。
どうせなので、バラックでのベンチマークではなく、実際にケースに組み込んだ作例として紹介しよう。今回はmicroATXケースにmicroATXマザーボードという条件で組み上げた。
いちおうケースに関しては、動作がシビアなコンパクトなPCを目指しつつ、現実的に安定動作することを念頭に、microATXケースとしてはやや大型で、通気性のよいThermaltake「Core V21」を選んでいる。電源はThermaltake TR2 Gold 700Wを選んだ。電源出力の目安は、GeForce GTX 960(120W)×2に、Core i7-4790Kを用いたシステムとしておおよそ100Wをプラス、さらにこれが50%前後のロードで収まる計算で、700Wを算出した。とはいえ、合計でピークが350W程度のシステムなので、600Wクラスの電源でも60%ロードに収まる。いわゆるハイエンド向けパーツに手を出すことなく構成できてしまうので、SLIであってもシステムコストはかなり抑えられる計算だ。
さて、検証に移ろう。筆者にとっては久しぶりのSLIの検証となるが、まず、PC起動時などセカンダリGPUに負荷がかからない際にはファンが停止しているというところに感心した。また、ベンチマークで負荷をかけても、しばらくの間であれば、セカンダリGPU側はファンが停止したまま、GPU温度が上昇してからファンを回転し始めるようで、このあたりの制御もしっかりしている様子だ。では3DMarkの結果を紹介しよう。
SLIでの測定値(クロックは製品標準のコア1.266GHz/メモリ7.01GHz) | |
---|---|
Ice Storm | 173,186 |
Ice Storm Extreme | 166,714 |
Ice Storm Unlimited | 140,267 |
Cloud Gate | 28,828 |
Sky Diver | 28,789 |
Fire Strike | 10,833 |
3DMarkスコアの向上は微妙なところで、しかしFire Strikeの結果を見る限りはSLIが効いていると確認できる。Sky Diverにも若干の向上が見られるが、それ以下のテストに関しては、まだGeForce GTX 960が登場したてとあって、今後ドライバやBIOSによるチューニングが進むのではないかと考えられる。
続いて実タイトルのバトルフィールド 4の結果を見てみよう。条件は先のシングルGPU時と同じだが、フレームレートは72.8fpsに向上した。向上率ではおよそ62%アップだ。また、少なくともベンチマークで用いたシーンに関しては、最小fpsで60fpsを割り込むことがなかった。これなら、V-SYNCをオンにした状態で、快適なプレイが見込めるだろう。
動作音に関しては、さすがにシングルGPU時と比べて大きくなるが、ケースに組み込んだことで消音効果もあり、微増といったところだろうか。
ただし、GPU温度はさすがに上昇した。3DMarkをIce StormからFire Strikeまで実効した際のGPU-Zのログを確認すると、GPU#1に関しては最大86℃、GPU#2に関しては最大78℃で、シングルGPU時が最大74℃だった際と比較して高い。ファン部分に隙間のないGPU#1側で80℃を超えてしまってはいるが、ログのGPU温度を見る限り、冷却に関してはそこまでシビアではなく、しっかりと冷却が効いているようで、80℃を超えれば速やかにファン回転数が上昇し、70℃台まで冷却されている。GPU#1、#2の平均GPUクロックは1.2GHz前後。これもシングルGPU時と変わらなかった。
このように、GeForce GTX 960 AMP EditionでのSLIは、動作面、温度、動作音、実用的な範囲で実現できた。また、カード自体がコンパクトなため、microATXであっても、組み立ての手間は比較的少ない。「コンパクトさと性能の高さを両立するゲームPC」としては、GeForce GTX 960クラスのSLIは、なかなか現実的な選択肢になりえる印象だ。
ZOTAC長年のノウハウが生かされた「静かで高クロック」なビデオカード
GeForce GTX 960カードは各社から登場しており、形状やクロックなど様々だ。そんななか、ZOTACのGeForce GTX 960 AMP Editionは、標準でかなり高クロックであることが最初のポイント。同じGeForce GTX 960カードのなかでも、ちょっと上のパフォーマンスを手にできる。
価格に関しても店頭販売価格で3万2千円前後であり、高いオーバークロック設定の製品ながら、そこまで高価というわけではない。コンパクトであること、補助電源端子が6ピン1基であることから、組み込みやすさもかなりよい。
動作音に関しては、従来のアッパーミドルGPUカードと比べると、常時かなり静かであり、低負荷時にはファンが停止するため快適度はグッと高い。同じGeForce GTX 960カード同士で比べると、クロック設定やクーラーのサイズの違いなどもあるため、ずば抜けた静音カードとは言えないが、それでもやはり長年、GeForceカードの設計ノウハウが生かされており、十分に静かで快適だ。
このあたりはケース側の静音性でカバーできるところであり、CPUファンやケースファンの選択を誤れば台無しになってしまうシビアな部分である。GPUクーラー側がせっかく静かなので、システムトータルでの静音化を目指してみるのが、自作PCとして面白く、満足度もグッと高まるのではないだろうか。今回の作例を参考に、快適なゲーミングPCを目指して見て欲しい。