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強力なキャッシュで高速、SanDiskのSSD「Ultra II SSD」を試す

コスパの高い2.5インチ/TLC NANDモデル、ミドルクラスながら上位に迫る速度 text by 坂本はじめ

 SDカードやコンパクトフラッシュなどを手掛けるフラッシュメモリメーカーとして、性能と信頼性の両面で評価の高いSanDisk。

 今回は、そのSanDiskが自作市場向けに発売しているSSDシリーズの一つ「Ultra II」についてチェックする。

 「Ultra II」シリーズの店頭価格は、120GBモデルが8,000円、240GBモデルが税込み10,000円前後、480GBモデルが税込み19,000円前後、960GBモデルが税込み38,000円前後とコストパフォーマンスに優れるモデルだ。

NANDの一部がSLCとして動作する独自技術「nCache 2.0」を採用したメインストリームSSD

 2015年9月現在、SanDiskはコンシューマ向けのSATA 6Gbps対応SSDとして、性能重視の「Extreme Pro」、コスト重視の「SSD PLUS」、そして今回テストするメインストリーム向けの「Ultra II」、以上の3製品をラインナップしている。

製品シリーズSSD PLUSUltra II SSDExtreme Pro
容量(GB)120/240120/240/480/960240/480/960
フラッシュメモリMLCTLCMLC
キャッシュ技術なしnCache 2.0nCache PRO
インターフェース6Gbps SATA6Gbps SATA6Gbps SATA
1GB単価約45.8~55.0円約41.7~66.7円約49.0~62.5円
保証期間3年間3年間10年間

 Ultra IIシリーズのSSDは、現在のラインナップの中で唯一TLC(Triple Level Cell、3bit MLC)のNANDチップを採用した製品で、120GB~960GBまでの容量が用意されている。

Ultra IIシリーズの転送速度公称値
容量120GB240GB480GB960GB
連続読出し550MB/s550MB/s550MB/s550MB/s
連続読出し500MB/s500MB/s500MB/s500MB/s
ランダム読出し8.1万IOPS9.1万IOPS9.8万IOPS9.9万IOPS
ランダム書込み8.0万IOPS8.3万IOPS8.3万IOPS8.3万IOPS

 TLC NANDは、SLCや2bit MLCに比べ容量を稼げる反面、耐久性や書き込み速度の面で劣ると言われるが、SanDiskのUltra IIでは、nCache 2.0と呼ばれる独自のキャッシュ技術を採用することで、パフォーマンスの向上と長寿命化が図られている。

 nCache 2.0は、TLC NANDの一部をSLCとして動作する書き込みキャッシュとして利用する技術。SLCとして割り当てられた領域は高速かつ書き換え耐性が高いので、データを書き込む際にSLCブロックを介することで、データ保存領域であるTLCブロックへの書き込み回数を抑制するとともに、高速なデータ転送を可能としている。

 このnCache 2.0の採用により、Ultra IIのスペック上の転送速度は上位モデルであるExtreme Proと比べて遜色ないほど高く、3年間の製品保証も付与されている。

寿命が簡単に確認できるユーティリティが付属、SSDコントローラはMarvell、フラッシュメモリはSanDisk製のTLC NAND

 今回はUltra IIシリーズ製品のうち、最大容量の960GBを除く4製品中3製品をテストした。

 容量ごとの外観に目立った差は無く、SATAや電源などのコネクタ、ネジ穴の位置などは、7mm厚の2.5インチSSDとして標準的なものだ。

SanDisk Ultra II SSD。写真は480GBモデル。
インターフェースは6Gbps SATA。
左から120GB、240GB、480GB。容量ごとに外観上の違いは見られない。

 Ultra IIの製品パッケージには、マニュアル、7mm厚のSSDを9.5mm厚に変換するためのスペーサー、「SSD Dashboard」のダウンロードURLが記載された紙が同梱されている。

 SSD Dashboardは、SanDisk製SSDについて、S.M.A.R.T.に基づくSSDの状態確認や、書き込み寿命の確認、ファームウェアのアップデートなどが行えるユーティリティ。SanDisk製のSSDを使っているなら、インストールしておいて損はないだろう。

付属品一覧。SSDの他には、7mm→9.5mm厚スペーサー、マニュアル、SSD Dashboardの案内が付属する。
SSD Dashboard。寿命の確認など、使用中のSSDの状態について確認できる。

 以下の写真はUltra IIの480GBモデルを分解したものだ。

 SanDiskロゴの入った基板上にコントローラ、DRAMキャッシュ、8枚のNANDフラッシュが実装されていることが確認できる。また、基板上のチップは金属製の筐体と熱伝導シートで接続されており、発熱を筐体外部へ放出しやすい仕様となっている。

SanDisk Ultra IIの480GBモデルの内部。金属製の筐体と各種チップを熱伝導シートで接続して、放熱を促進している
基板表面。コントローラ、DRAMキャッシュ、NANDフラッシュは全てこの面に実装されている。
基板裏面。

 実装されているチップは、コントローラがMarvellの「88SS9189-BLD2」、DRAMキャッシュはMicronの4Gbit(512MB)DDR3Lメモリ「D9QLJ」、NANDフラッシュはSanDisk製の「05444 064G」。NANDフラッシュのSanDisk 05444 064Gについては8枚で480GBの容量を実現していることから、64GBの容量を持つTLC NANDフラッシュであると思われる。

コントローラ「Marvell 88SS9189-BLD2」
DRAMキャッシュ「Micron D9QLJ」
NAND フラッシュ「SanDisk 05444 064G」

キャッシュ機能の「nCache 2.0」は強力、TLCとは思えない速度を発揮

 つづいては、Ultra II SSDのパフォーマンスをベンチマークテストでチェックする。

 ベンチマークテスト環境として、Core i7-6700Kを搭載したASUS Z170-A(Intel Z170 チップセット)を利用。Windowsをインストールするシステムストレージは、Ultra II SSDとは別に用意している。

 まずはストレージベンチマークテストの定番、Crystal Disk Mark 5.0.2の結果だ。

Crystak Disk Mark実行結果
120GBモデル
240GBモデル
480GBモデル

 シーケンシャルリードは、515~546MB/sといずれも公称値の550MB/sに近い値を記録。シーケンシャルライトに関しては、全てのモデルが公称値の500MB/sを超える結果を残した。

 ランダムアクセスの速度を測る「4K Q32T1」のスコアを見てみると、容量が増加する毎にリードとライトの速度が上昇していることが確認できる。このあたりも各モデルのスペックに準じた結果と言えるだろう。

 ATTO Disk Benchmarkでは、240GBモデルは読み出しで550MB/sを割り込んでいる数値が目立つが、書き込み速度に関しては、120GBから480GBまで全てのモデルが500MB/s以上を記録している。Crystal Disk Markの結果と合わせて、Ultra IIシリーズのSSDは、ほぼスペック通りのパフォーマンスを発揮していると言って良いだろう。

ATTO Disk Benchmark実行結果
120GBモデル
240GBモデル
480GBモデル

 書込み速度で不利なTLC NANDを用いたSSDでありながら、容量に関わらず、読み出し550MB/s、書き込み500MB/sというスペック通りのパフォーマンスを発揮するUltra II。それを実現しているのは、独自のキャッシュ技術nCache 2.0によるものだろう。フラッシュメモリの弱点を上手く補完するnCache 2.0のノウハウは、流石SanDiskと言ったところ。

 上記のようにトップスピードは文句なく高速なUltra IIだが、TLC採用モデルなので万能というわけではない。特定条件下に限定されるが、TLCが故の特性が出てしまうケースを紹介する。

120GBモデルへの大容量ファイルの書込みテスト
480GBモデルへの大容量ファイルの書込みテスト

 こちらのスクリーンショットは、約5.8GBのISOファイルをUltra IIの480GBから120GBへコピーしているところを撮影したもの。ある程度ファイルの転送が進んだところで、急激に転送速度が低下していることが確認できる。

 nCache 2.0はTLCへの書き込み前にSLCブロックを介することで高いパフォーマンスを維持しているが、利用可能なSLCブロックを大きく超えるサイズのデータ転送が発生した場合、nCache 2.0による高速性が発揮されなくなる。

 480GBモデルでも同じように約5.8GBのISOファイルのコピー試してみたが、480GBモデルでは、SLCブロックの容量が違うためか、約5.8GBのデータ転送では速度低下はみられなかった。480GBモデルでもSLCブロックの容量を大きく超えるファイルを連続で転送すれば速度低下は起きると思われるが、Ultra IIではSLCブロックをより多く確保している大容量モデルの方が、高いパフォーマンス発揮できるといえる。

 なお、OSをインストールするシステムストレージとして使うような場合、このような速度が低下起きる場面に遭遇することはそうそう無いだろう。一方で、4Kの映像を編集したり、大容量ファイルの一時保管場所に使用するといった使い方には、Ultra IIシリーズは不向きといえる。そうした用途には、ビデオ編集向けをうたう上位のExtreme Proが用意されているので、そちらを使用する方が良いだろう。

120GBモデルの約半分の容量を埋めた状態で実行したCrystal Disk Markのスコア。

 また、SSDは容量の半分以上が使用されると性能が低下するケースも存在するため、約半分ほどの容量をデータで埋めた状態で120GBモデルの速度を計測してみたが、こちらは大きな速度低下は見られなかった。

 Ultra IIはnCache 2.0をうまく使うことで空き容量が少ない状態でも速度低下が起きにくい特性を持っている可能性はある。

・テスト環境機材
 CPU IntelCore i7-6700K
 マザーボード ASUSZ170-A(UEFI:0901)
 メモリ DDR4-2133 4GB×2
 GPU IntelHD Graphics 530
 電源 SilverStoneSST-ST85F-G(850W、80PLUS GOLD)
 OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)

価格を抑えつつも高速な「Ultra II」、SSDも用途に合わせて選びたい

 TLCという要素に不安を感じるユーザーも少なくないだろうが、Ultra IIシリーズのSSDに関しては、パフォーマンス面でTLCのデメリットが現れる場面はごく限定的であり、実用的な部分では高パフォーマンスを発揮できている。特に速度面ではSanDiskはTLC NANDをかなり使いこなしていると言えるのではないだろうか。

 寿命については長期テストをしてみないとわからない面もあり、未知数な部分もあるが、フラッシュメモリを知り尽くしたSanDiskが3年の製品保証を与える品質は確保されていると考えて良いだろう。

 SanDiskのSSD製品はシリーズ毎に性能面での差別化が図られており、動画編集で大容量ファイルを扱う作業スペースとしてSSDを使うなら「Extreme Pro」、低価格でMLC NANDの安心感を求めるなら「SSD PLUS」と言った具合に特性が異なる。今回テストした「Ultra II」であれば、OS用のシステムディスクなどに適した設計になっている。

 HDDは用途別にモデルを選ぶ流れが定着しつつあるが、SSDも同様に用途に合わせモデルを選ぶ時代になりつつあるといえるだろう。モデルによって搭載されるNANDや搭載機能、特性などが異なるなるため、自分の用途に合わせたモデル選択がコストパフォーマンスの良し悪しに繋がる。性能を最大限活かす意味でも用途にあった最適なSSDを選びたい。

[制作協力:SanDisk]

坂本はじめ