【 2007年6月23日号 】
【特別企画】SSD×2台のRAID 0レビュー ~今手に入る未来?~
Text by 佐々木 勇

■SSDをデスクトップPCで使ってみる

SAMSUNG製SSD
SAMSUNG製SSD
MCAQE32G5APP-0XA
 SAMSUNG製の高速SSDが発売されてはや1ヶ月強。その省電力性やランダムアクセスの速さ、耐衝撃性、1.8インチHDDを超える高速性など、その評価も固まりつつある状況だ。ただし、トータル性能では2.5インチHDDの上位モデルや3.5インチHDDを超えたとは言い難く、今のところは「ノートPC用の高速ドライブ」としての評価が一般的だ。

 しかし、単ドライブでの高速化が難しいHDDと異なり、SSDはフラッシュメモリの内部並列アクセスで容易に高速化できる構造を持つ。こうした観点から、将来登場するであろうより高速な次世代、次々世代SSDをデスクトップPCで、と考えている読者も多いだろう。

 今回、SAMSUNG製SSDの輸入/国内流通を行っている興隆商事より2台のSSDを借用できる機会があったため、特別企画としてSSD2台でのRAID 0テストを行った。高速HDDとして人気のあるWesternDigital RaptorやDDR DIMMを使ったシリコンドライブの雄であるi-RAMとのRAID 0比較や、そうした高速環境でのWindows XP起動画面など、あまりお目にかかれないデータも掲載したので、是非参考にしてみてほしい。

 なお、借用期間の関係でSSD1台でのテストはベンチマーク中心の簡易なものに留めている。SSD1台での詳しいレビューについては僚誌PC Watchの関連記事を参考にするといいだろう。


 

■SSD-RAID 0はi-RAM-RAID 0に肉薄する快適さ

【SSD/i-RAM/高速HDDによるRAID 0動作の様子】

BIOS処理終了~OS起動完了まで / Photoshop起動 (37秒/684KB)

マザーボードBIOS表示~OS起動完了まで(38秒/761KB)
 まず、右の動画を見て欲しい。

 これは、SSD×2台のRAID 0、シリコンドライブ×2台のRAID 0、高速HDD×2台のRAID 0でそれぞれWindows XPを起動した様子だ。

 用意したSSDは2.5インチタイプのMCAQE32G5APP-0XAで、比較用メモリディスクにはGIGABYTE i-RAM(GC-RAMDISK)を、同じく高速HDDにはWesternDigital Raptor(WD740ADFD)を使っているが、単純に言ってi-RAM>SSD>Raptorの順になっているのがわかる。

 ベースとなるテスト環境は、マザーボードがP5N32-E SLI、CPUがCore 2 Duo E6700、メモリが4GB。各ドライブを接続するインターフェイスカードにはLaCie PCI-Express card 4Eを用意した。PCI-Express card 4EはPCI Express x8対応の4チャネルeSATAカードで、本来はRAID非対応。ただし、搭載チップ(SiI3124)自体はRAIDに対応しているため、今回はチップメーカーのSiliconImageが公開しているリファレンスBIOSに自己責任で書き換えて利用した。このリファレンスBIOSは一般に公開されているものだが、同じSiI3124を搭載しているカードでも、利用できる製品と利用できない製品がある。利用できない製品の場合、BIOS書き換えを行なうことでカードが動作しなくなる可能性も考えられるので、同じ構成にしたい読者は注意して欲しい。

 なお、このような手間をかけているのは、RAID動作時に速度ロスが少なく、SSD、Raptor、i-RAMとも相性問題を出さずに利用できる製品が少ないためだ。特にi-RAMは相性問題に厳しい製品のため、「この3製品が問題なく動作し、速度を引き出せるカード」として、ややイレギュラーだが、あえてこうした環境でテストしている。

 さて、用意したドライブは、SSDが2.5インチタイプのMCAQE32G5APP-0XA、i-RAMはGC-RAMDISKに1枚あたり4GBのDDR DIMMを搭載したもの、HDDはWD740ADFD。SSDは2.5インチコネクタのパラレルIDE対応品のため、市販の2.5インチ - 3.5インチIDE変換アダプタとパラレルIDE - Serial ATA変換アダプタ(エアリア W-SAID)を使用してRAIDカードに接続している。

 テスト環境のOSはWindows XP Professionalで、ベンチマーク/動画撮影は、各種デバイスドライバ、Photoshop、英字フォント500種類をいれ、デフラグを行った状態で行なった。

 SSDの起動時間は、今現在最速ドライブといえるi-RAMに肉薄しており、相当な速度が出ている。管理の手軽さや入手性などを考えると、SSDを高速な起動ドライブとして使うのはかなり魅力的な選択といえる。アプリケーションの起動などもSSDは高速だ。

 また、それぞれの環境を実際に使ってみると、SSDやi-RAMのRAID 0環境は動作が軽いという印象を強く受ける。例えば、フォルダやコントロールパネルを開く際や、アプリケーションを立ち上げる際など、HDDにはないレスポンスの良さがあり、ひと味違う快適感を実感できるだろう。もちろん高速HDDであるRaptorも一般的なHDDよりは高速だが、シリコン系ディスクとHDDの間には越えられない壁のような体感差があり、SSDが次世代ドライブとして期待されている理由を実感できる。

 ただし、こうした速度面での満足感も今のところは読み込みに限定されたもの。書き込み時は、2台構成のRAID 0でも普通の3.5インチHDD1台よりも遅くなる。これは体感でも判る遅さで、OSやアプリケーションのインストール時はフリーズしたのか?と思う場面もあったほど。テスト条件を整えるために全環境で実施したデフラグもかなりの時間がかかった。読み込みが速いだけにこの点だけは惜しいところだ。


今回のテストに使用したPC
SSDでのRAID 0環境 i-RAMでのRAID 0環境 HDDでのRAID 0環境
CPU Core 2 Duo E6700
マザーボード P5N32-E SLI
メモリ PC2-5300 1GB×4(合計4GB)
RAIDカード PCI-Express card 4E
ストレージ
(各2台ずつ使用)
SSD
(MCAQE32G5APP-0XA)
(2.5インチ - 3.5インチIDE変換アダプタ、
 IDE - Serial ATA変換アダプタを併用)
i-RAM
(GC-RAMDISK)
(i-RAM1枚あたりDDR DIMM 4GB搭載)
Raptor
(WD740ADFD)
ストレージ総容量 64GB 8GB 148GB
光学ドライブ DVR-A08-J
ビデオカード WinFast PX7800 GTX TDH


■ベンチマークに見るSSDの性能

 単体動作時のベンチマークは以下の通り。

 テストに使ったソフトはCrystalMark2004R2で、先に挙げたi-RAM/Raptorに加え、手元にあった2.5インチHDDや3.5インチHDDも同時に計測している。この調査では、上記PCのサウスブリッジにそれぞれドライブを接続し、同条件で計測を行なった。SSDに関しては変換アダプタを使ったSerial ATA接続時のものも調査している。

 結果を見ると、ランダムリード64Kなどの小サイズの読み込みではHDDを寄せ付けない性能が出ており、このあたりがSSDの最大の特性といえる。反面、書き込みに関してはタイプを問わずHDDより遅く、SSDの弱点となっていることが見てとれる。

 ベンチマーク結果をややおおざっぱに見ると、トータルでは2.5インチHDD以上、高速な3.5インチHDD以下といったあたりと言える。細かい点ではSerial ATA変換チップを介してもあまりロスが無い点は意外だった。

 なお、上記PCでは問題はなかったが、IDEコントローラによってはSSDとの相性問題がある可能性がある。具体的な問題に直面したのは手持ちのnForce 4マザーボードで、この際はシーケンシャルリードが20MB/secほどしか出なかった。まだ実績の多くない製品だけに、こうした相性が出るのはやむを得ないが、導入時の注意点として覚えておくと良いだろう。

【ベンチマーク結果 (1台動作時 [MB/s])】
  SSD
(IDE接続)
SSD
(SATA変換接続)
HTS541080G9SA00
(2.5インチHDD)
HDT725032VLA360
(3.5インチHDD)
WD74ADFD
(3.5インチHDD/10,000rpm)
i-RAM
シーケンシャル
リード
53.74 53.50 34.59 70.73 84.56 134.33
シーケンシャル
ライト
30.69 30.43 30.20 66.76 88.29 108.99
ランダムリード
512K
53.69 53.47 22.61 41.36 34.04 134.16
ランダムライト
512K
19.17 19.02 22.45 47.30 66.26 108.88
ランダムリード
64K
49.01 48.81 6.40 9.84 12.93 130.12
ランダムライト
64K
2.75 2.74 10.29 20.25 25.67 105.64

■ベンチマークに見るSSDの性能(RAID 0動作時)

●コラム
  ~SSDのRAID 0ストライプサイズ~

 効率の良いRAID 0を構築するためには、一般に「ストライプサイズ」の設定が必要になる。ストライプサイズは各HDDに対する書き込み単位で、サイズが大きいとシーケンシャルアクセス性能優位、サイズを小さいとランダムアクセス性能優位となるのが一般的な傾向だ。
 今回のレビューでは、レビューに先立って8K~128KのストライプサイズでSSD-RAIDアレイの性能を測定し、最適と思われる8K設定でベンチマーク/動画撮影を行なった。各ストライプサイズでのベンチマーク結果は以下の通りだ。
 結果からみるとSSDはストライプサイズの影響を受けにくい特性をもっており、シーケンシャルアクセスに関してはほぼ変わらず、小サイズのランダムアクセスに関してはストライプサイズが小さい方が若干速度が出ている。

  ストライプサイズ
8K 16K 32K 64K 128K
シーケンシャル
リード
98.27 98.21 98.28 98.22 98.76
シーケンシャル
ライト
49.01 49.91 49.68 48.84 50.86
ランダムリード
512K
98.11 98.16 98.07 97.96 98.50
ランダムライト
512K
38.10 37.21 37.87 36.56 37.36
ランダムリード
64K
83.88 83.91 83.89 68.11 56.86
ランダムライト
64K
21.93 18.44 18.46 17.15 16.96

 次のベンチマークはRAID 0構成時のもの。こちらはSSD、Raptor、i-RAM各2台ずつでRAID 0構築したもののみをテストした。

 テスト環境はほぼ同じだが、各ドライブはPCI-Express card 4Eに接続して計測している。

 SSDのランダムリードの高速性はRAID環境でも十分に発揮されている。特にランダムリード64KはRaptorを寄せ付けない速度が出ており、このあたりの性能がOS起動時間の速さや、体感速度の速さに結びついていると思われる。ただし、書き込み性能に関してはRAID 0でも単体の3.5インチHDD並みにとどまっており、当然Raptorにもかなりの差がつけられている。

 なお、相性問題なのか、希にSSD環境の書き込み速度が極端に落ちることがあったが、そうした例はベンチマーク結果からは取り除いている。

【ベンチマーク結果 (RAID 0構成時 [MB/s])】
  SSD (RAID 0) Raptor (RAID 0) i-RAM (RAID 0)
シーケンシャル
リード
98.27 169.19 255.86
シーケンシャル
ライト
49.01 157.29 242.48
ランダムリード
512K
98.11 63.94 254.50
ランダムライト
512K
38.10 110.20 241.25
ランダムリード
64K
83.88 12.24 232.69
ランダムライト
64K
21.93 25.63 219.30


■現時点ではHDDとの併用がベストか

 以上、動画とベンチマークでSSD-RAID 0環境を見てきたが、数字で見るとSSD/i-RAM/Raptorの3製品に絶対的な差があると感じられる人は少ないだろう。筆者自身、ベンチマークを測定した段階ではあまり期待感を感じなかったというのが正直なところだ。しかし、実際にOSをインストールして利用すると、その体感差には驚くものがある。冒頭の動画でその一端を示したつもりだが、できれば店頭などで、是非一度体感してほしい。

 ただし、「手放しでSSDを勧められるか?」というとまだ難しいところ。書き込みに関してはHDDより遅い上、ブロックごとに10万書き込みサイクルなどとされるフラッシュメモリ特有の書き換え制限なども考えると、現時点ではHDDとの併用がベストな選択肢と言えそうだ。


□関連記事
【2007年6月16日】SSDの店頭デモがスタート、OS起動で速度を体感可能
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【2007年3月23日】HDDとSSD、消費電力と性能の違いを調べる~SSDの今と今後(PC Watch / 笠原一輝のユビキタス情報局)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0323/ubiq181.htm

 (SAMSUNG製SSD)

[機材協力:興隆商事]

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。

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