【 2010年7月10日号 】 | |
[不定期連載]PCパーツ最前線: Antecに聞く「PCケース新シリーズの狙い」 〜最新ケースDFシリーズのこだわりとは?〜 |
DF-85
Dark Fleetシリーズの最上位モデル。2.5インチドライブ向けのリムーバブルベイや3.5インチHDD用フリートスワップベイ、USB 3.0コネクタ、14cm×2+12cm×1のファンなどを搭載する。LED発光色は赤。「Antec」というと、高品質かつ個性的な機能を搭載したPCパーツの数々で著名なPCパーツメーカーだ。
同社は6月、PCケースの新シリーズ「DF(Dark Fleet)」として「DF-85」「DF-35」「DF-30」の3モデルを発売。「Antecの新シリーズ」としてパーツショップ店頭でも注目を集めているという。
今回は、同社の国内正規代理店であるリンクスインターナショナルの担当者 曲淵(まがりふち)氏に、DFシリーズのコンセプトや特徴から、Antecの新製品計画、さらにはマスコットキャラである「アンテッ子ちゃん」をはじめとするユニークなプロモーションなどについてお聞きした。
聞き手:橋本 新義、鈴木 光太郎
協力:リンクスインターナショナル
実施日:2010年6月24日(木)Antecの製品開発に共通する
「VIPポリシー」と「チャレンジ精神」
――まずは、Antecというメーカー全体についてお聞きします。「Antec」は自作派の定番ブランドのひとつになっている印象ですが、そうした評価の高さは、どのあたりに秘密があるのでしょうか?
株式会社リンクスインターナショナル 営業部 曲淵 友章氏。同社でAntec製品の仕入れを担当する、いわばAntecエキスパートである[曲淵 友章氏(以下曲淵)] Antec製品が日本市場で高く評価されるきっかけになったのは、4年前に発売したPCケース「P180」と「P150」、そして「Solo」ですね。
ポイントとしては、クオリティの高さが評価されたのではないかと思います。
例えば、ライバル製品に比べて使用している鋼材に厚みがあり、剛性が高く、振動を低減効果が高い点や、切削部分をユーザーの手の触れる部分に露出させず、手を怪我しないような加工をしている点などが挙げられます。これを実現するため、たとえば角などは、鋼材を3回折り曲げています。
――なるほど。確かにPCパーツショップやユーザーの間でも、Antec製品は高品質で知られているイメージがあります。
Valueとは、お客様が支払った対価に十分見合う製品の価値を持たせる、という意味です。
Innovationとは、製品の設計をお客様の視点で実行するという意味です。エンジニアの視点ではなく、お客様の視点が重要です。実際に弊社でも、ユーザーの皆様からいただいた製品改良の意見などを、Antecの製品開発責任者にフィードバックしています。こうした情報が製品開発に活かされています。
Performanceとは、高い性能という意味です。性能と言ってもPCケースにはいろいろな要素での性能がありますが、Antecは基本的な優先順位を決めています。
まず第一に静音性です。第二に冷却、つまりエアフロー、第三にユーザビリティ、第四にデザインです。
――優先順位があるとは面白い話ですね。これは、全製品共通なのですか? 他社ですと、シリーズごとに個性を出すため、あるシリーズは静音性優先、別のシリーズはデザインを優先……という話がありますが。
[曲淵] いえ。この優先順位はすべてのPCケースで共通です。もちろんシリーズごとの個性はありますが、優先順位自体は変わりません。
例えば、Antec製PCケースは、すべてのモデルに可変速仕様のファンを搭載しています。また、製品のパッケージには「Quiet Computing」というキャッチが書かれていますが、これは静音性を第一にしているという表明でもあります。
――Antecは複数のPCパーツを扱うメーカーのはしりでもあるのですが、そうした理由はなぜでしょうか?
[曲淵] それはAntecのチャレンシ精神によるものです。Antecは創業以来、市場の先駆けになるべく、いろいろなチャレンジを仕掛け、それがユーザーに認知されて会社の規模を拡大してきたのです。
例えば、弊社が扱う前の製品ですが、1991年には黒いPCケースを、1992年には温度によってファン速度が可変する電源ユニットを発売しています。最近ですと、オープンエア型PCケースである「Skelton」なども挙げられるでしょう。
――現在の製品ジャンルの広がりも、「他のメーカーにないものを」というチャレンジの結果、というわけですね。
[曲淵] はい。その通りですね。
DFシリーズの製品コンセプトとは?
「長く使う」からこその、ホットスワップ2.5"ベイ
――DFシリーズに関してですが、まずコンセプトについてお聞きします。外観はHundredシリーズと似ている印象を受けますが、後継機と考えてよいのでしょうか。
DF-35
DFリーズの中間モデル。サイズは小型化され、ファンも14cm×1、12cm×3に変更。3.5インチHDD用フリートスワップベイも搭載するが、USB 3.0コネクタは非搭載。LED発光色は白。
DF-30
DFシリーズの普及版。サイズはDF-35とほぼ同じ。2.5インチドライブ用リムーバブルベイは搭載するが、3.5インチHDD用フリートスワップベイは非搭載。LED発光色は青。
2.5インチホットスワップベイは3モデル共通装備。このように最上段に設置されている
ホットスワップベイのコネクタ部。延長基板を使った、シンプルかつ信頼性の高い構造だ。ケーブルは出荷時点で配線済みである
DF-85/35が搭載するフリートスワップベイをフロントパネル側から見たところ。SATA端子はホットスワップベイと同じ延長基板で接続される。ドライブの固定は側板を開け、右側からねじ留めする構造だ
DF-85のフロントパネルコネクタ。4基のUSBコネクタのうち、右端のみがUSB 3.0対応となっている
3モデル共通装備であるフリートリリースドア。1つのドアで3.5インチベイ3段分にアクセスできる
ファンフィルタはフリートリリースドアの内側に装着されているため、ドアを開けることで簡単に清掃が行なえる[曲淵] 違います。DFシリーズは、ゲーマー向けケースという点ではHundredシリーズと共通ですが、異なるシリーズとなります。新しいトレンドと、ユーザーからの声を反映して生まれた設計を各所に取り入れているのが特徴です。
たとえば2.5インチのSSDやHDDを手軽に取り付けられる「2.5インチホットスワップベイ」や、ホットスワップ可能でありながらケース内部で位置を変更できる3.5インチベイ「フリートスワップベイ」など、新機能を搭載しています。
また、Hundredシリーズは現行モデルをすべて併売していきます。
――シリーズ共通の特徴としては、2.5インチのホットスワップベイがありますが、これはSSD前提なのでしょうか? ユーザーからするとイマイチ使い方が見えてこないところもあるように思えますが…
[曲淵] 昨今SSDの価格が下がってきたことを見据えて搭載した機能なので、基本的にSSD前提です。ただしもちろん、HDDが搭載できないということではありません。
今後数年スパンで考えた場合、SSDがさらに低価格化することで、データ交換用にも使われるのではないかと想定しています。PCケースの場合、ユーザーが購入されてからの製品寿命が長いので、こうした将来を見据えた機能が重要と考えています。
――なるほど。PCケースの場合、良質な製品であれば3年や5年使うといったことも多いですから、その頃にはSSDを取り替えて使うのは十分ありそうです。
さて、フリートスワップベイに関してお聞きします。DF-30以外の2モデルに搭載されたこのベイですが、ホットスワップ可能という利便性がある一方、静音性や振動対策という点からすると固定ベイに比べて不利になると思います。そのあたりの対策はありますか?
[曲淵] 実はとくに専門の対策はしていないのですが、設計時点からそうした点が生じないようになっています。ケース側の剛性や精度が高いため、スムーズにホットスワップができますし、構造上もしっかりと固定される設計です。現在はまだ計画段階ではありますが、オプションでの増設用フリートスワップベイの発売も検討しています。
――機能面での注目点としては、DF-85に搭載されたUSB 3.0コネクタがあります。Antec製ケースとしても初めての試みですが、これはなぜ他のモデルには搭載されていないのでしょうか。
[曲淵] 全モデルに搭載されていないのは、USB 3.0の内部ピンコネクタが規格化されていないためです。
DF-85に先行搭載したのは、ハイエンドユーザー層では、USB 3.0搭載マザーボードや対応HDD、SSDなどの関連機器が登場してきているためです。やはりフロントにコネクタがあると、非常に便利ですので。
接続方法は、マザーボード背面のコネクタから延長ケーブル接続する形としました。
本来は、ピン配置が規定された時点で、全モデルに搭載する流れがよいとは思います。
――なるほど。ほかの特徴はどういったところでしょうか?
[曲淵] 実は搭載されているファンがさらに静音化されています。従来製品よりブレードの形状が変更されているのです。また、正面からフロントパネルの一部を開けられる「フリートリリースドア」により、ファンのフィルタのメンテナンスが簡単になっています。
――DFシリーズは3モデル同時発売でしたが、Antecさんの製品投入はどちらかというと慎重で「1製品ずつ」という印象がありました。今回、同時発売をしたのはなぜでしょう?
[曲淵] 今回は製品の認知度向上を狙っています。COMPUTEX Taipei 2010で発表し、すぐに全ラインアップを発売することで、認知度が高くなったのではと考えています。
――自分として気になったのが、シリーズ3モデルの照明の色です。最上位のDF-85が赤、DF-35が白、DF-30が青と、LEDによる照明の色が3機種で異なっていますが、これは深い意味があるのでしょうか?
※記事初出時、DF-35とDF-30の発光色を逆に表記しておりました。お詫びして訂正させていただきます。[曲淵] DFシリーズだけではないですが、Antecはカラーバリエーションを重視しているためです。他のメーカーのゲーマー向けケースでは青色LEDが基準色になっていますが、Antecは一歩進んで、ユーザーの方に違った色を提供したい、という考えです。
――それぞれのモデルと色の関連性、というのはあるのでしょうか?
[曲淵] おそらくユーザーからの人気調査はしていると思います。DF-85に採用されている黒と赤などは、ハイエンドユーザーの間では人気の高い色ですので。
今後の製品計画について
P180、Soloの後継モデルも計画中
――今回シリーズ名として「ダークフリート」という名称が付けられているのですが、これにはどういった意味があるのでしょう?
DF-30の内部構造。Antec製ケースとしてはかなりシンプルだ。DF-10ではこれよりシンプルになると思われるが、どんな設計となるのか?
DF-30/35のフロントパネルコネクタ。USB 2.0コネクタが2基のみとなるなど、こちらもDF-85に比べるとシンプルな作りだ[曲淵] 強靱で、重厚感がある、というイメージで付けられた名称です。直訳すると「黒い戦艦」となるのですが、言葉自体の意味よりもイメージを優先しております。
これは私の予想なのですが、シリーズを揃えると「艦隊」になる、というイメージもあるのかもしれません(笑)。
――名称といえば、Hunderdシリーズの名前の由来というのはあるのでしょうか? PCパーツショップさんの間でも、なんで100(Hundred)なんだろう? という声を聞きます。
[曲淵] Nine HundredとTwelve Hundredはそれぞれベイの数が由来なのですが、Three HundredやTwo Hundredではそうではないですね(笑)。これはAntecの方に問い合わせてみます。もし間に合えば、7月10日と11日のAKIBAX 2010のAntecブースで公開できるかもしれません。
ちなみに、Nine Hundred ABの「AB」に関しては、実はAntecが正式名をつけております。ネットなどですと「“All Black”の略では?」と言われていたのですが、実は違うのです。こちらもAKIBAX 2010のAntecブースで種明かしをしようと思います。
――型番といえば、上位がDF-85、下がDF-35とDF-30ということで、妙に間が空いているのが気になります(笑)。このあたりは今後のラインナップを考えてなのでしょうか?
[曲淵] 計画自体はあります。まだ企画を進めている状態ですので、詳細は決定していないのですが。
また、それとは別に、エントリーモデルとなる「DF-10」を用意していて、これは早ければ年内登場予定です。DFシリーズのコンセプトを受け継ぎつつ、よりシンプル、かつ安価なモデルです。
――真ん中ではなくて下に行くのですか!!それは意外です(笑)。さて、最近はハイエンドマザーボードでHPTXやXL-ATXなど、大型のフォームファクターの製品が増えてきました。こうした規格への対応はいかがでしょうか。
[曲淵] 予定自体ははありますが、こちらもまだ開発段階です。また、DFシリーズで登場すると決まったわけでもありません。
――Pシリーズの新製品の予定などはありますか? 最近のAntec製PCケースはゲーマー向けモデルが中心なので、待望する声を聞くのですが。
[曲淵] はい。P180、Soloのシリーズとも後継機の予定があります。
具体的な時期はまったく未定ですが、既に企画・開発は進めております。私もAntec本社に行きまして、「外観のデザインを崩さずに、カードが長いハイエンドビデオカードを搭載できるようにしてほしい」とリクエストを送っています。ご期待いただければと思います。
――それは期待しているユーザーが多そうですね。PシリーズやSoloは似たデザインの製品がないので、他のケースは使えない、というユーザーも多いと思います。個人的にも非常に期待したいですね。
アンテッ子ちゃんにAntecマップ、スコット氏………
夏休みにはアンテッ子ちゃんのイベントも?
――最後に、御社がAntec製品で行っている、数々の面白いプロモーションについてお伺いします。Antecに関連したサイトとして、Antecマップがあるのですが、あのサイトはどういった位置付けなんでしょうか?
アンテッ子ちゃん
Antecショールームではこんなイラストがよく描かれている
スコット氏。同社イベントでの「顔」とも言える[曲淵] Antecマップは弊社がAntec側に許可を取って運営しているサイトです。ユーザー同士、もしくはユーザーとメーカーの間とで、気軽に情報交換ができるためのサイトとして解説しました。メーカー側への要望や使いこなしの情報などの意見を交換できる場を提供したい、という思いからですね。
――Antecファンのための一種のSNSみたいな位置付け、という感じですか。
[曲淵] そうですね。他のメーカーさんでは似たサイトは見られないですし、投稿などもコンスタントになされているので、成功しているのでは、と思います。これからも改良する点を直しつつ、継続していきます。
――次に、マスコットキャラクターの「アンテッ子ちゃん」についてですが。
[曲淵] アンテッ子ちゃんはAntec公認キャラクターで、Antecにも喜んでもらっています。大々的にではないのですが、最近では、Antecが他の国でのプロモーションでも使われているという話も聞いています。
そういえば、これまでに作ったアンテッ子ちゃんノベルティはAntec側に送っているのですが、それらもかなり喜んでいただいてます。とくにチロルチョコは非常に好評でした。
――最近、一部のパーツショップさんがアンテッ子ちゃんをホワイトボードやBlogに使っておりますが、ああいった活動についてはどう思われますか?
[曲淵] ショップさんが使われるのは、面白いので大歓迎です(笑)。
こうしたプロモーション活動は、PCパーツショップさんと連携して、市場を盛り上げるための下地作りとして考えています。弊社としては、やっぱりPCパーツショップさんを盛り上げて、ショップやお客さんに喜んでもらうのが重要なのです。
実はお盆休みに、アンテッ子ちゃんスタンプラリーを企画しておりまして、現在アンテッ子ちゃんスタンプを作っております。詳細はまだ話せませんが、Antec商品取り扱いショップを回ってAntecショールームに来場していただくとノベルティをプレゼントする……といった企画になると思います。
――Antec関連のキャラとしては、「スコットさん」こと上級副社長のスコット・リチャーズ氏も人気が高いです。AntecマップのサイトやショールームのPOPですと、わりと「いじられている」印象なのですが、あれは正直ご当人にとってはOKなのですか?(笑)
[曲淵] OKなようです(笑。実はご当人がああいうキャラクターで、人柄がよく、とてもユーモアがあるのです。なのでああいった露出も喜んでくれています。
―なるほど(笑)。本日はどうもありがとうございました。
[曲淵] こちらこそありがとうございました。あと前回、岩田が出た時と同じパターンで恐縮なんですが、今回も宣伝がありまして(苦笑。実はツクモさんでANTEC PCケース祭りを開催中でして、DFシリーズも7月9日(金)まで対象製品になってます。
また7月10日・11日のAKIBAX 2010のイベント開催期間中、DFシリーズをご購入いただくと、ANTEC製CPUクーラーをプレゼントする、というキャンペーンも行っています。レシートをAntecショールームまでお持ちいただければプレゼントいたしますので、皆様よろしくお願いします。
※読者プレゼントのお知らせ Antecよりご提供いただいたDF-85/35/30を各1名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は以下のフォームより必要事項をお送りください。応募期限:2010年7月23日(金) 20:00
プレゼントの受付は終了しました
□Antec
http://www.antec.com/□DF-85
http://www.links.co.jp/items/antec-case/df85.html
□DF-35
http://www.links.co.jp/items/antec-case/df35.html
□DF-30
http://www.links.co.jp/items/antec-case/df30.html
□AKIBAX2010
http://akiba-agf.jp/akibax2010/□関連記事
【2010年5月22日】DF-85/35(今週見つけた新製品)
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http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20100626/etc_akiba2.htmlAntec製品 [取材協力:リンクスインターナショナル]