【 2012年11月8日 】
液晶高解像度時代に突入、2,560×1,440ドット環境を考える
オンボードGPUでは難しい場合アリ、実は大切なビデオカード選び   
Text by 石川ひさよし


今回貸し出しいただいたWQHD対応ディスプレイ、ASUSTeK PB278Q。27インチのPLSパネルを採用している。ピボットにも対応しているほか、DVI、DisplayPort、HDMI、Dsub 15ピンという4系統の入力端子を備えている。店頭価格は5万5千円前後
 最近、2,560×1,440ドットを表示できるWQHD液晶に手頃な製品が登場しはじめた

 液晶ディスプレイは、フルHD(1,920×1,080ドット)が標準、という時期が長く続いていたが、これを超える高解像度環境の入手が容易になったというわけだ。

 しかし、「フルHD時代」が長かっただけに、WQHDならではの注意点やポイントが判りにくいのもまた事実。そこで今回は、「WQHD液晶を活用する」という観点で、環境構築のポイントやビデオカードの選び方を考えてみた。


 
オンボードGPUは「WQHD出力不可」の場合あり
Intel系でDisplayPortなしなら、ビデオカードが実質必須

フルHDとWQHDでExcelの表示領域を比較(1ピクセルの大きさを同一とした場合)。
フルHDはA1〜Z50、WQHDならA1〜AI70まで表示できる。作業効率がアップする
フルHDとWQHDでPremire Elements 11の画面を比較(1ピクセルサイズを同一としたもの)。
ぱっと見ではフルHDの方がタイムラインが多く表示されているようにも見えるが、これはタイムライン領域の高さがWQHDと比べ低いため、リサイズされた結果。WQHDはUIに要する高さや幅が画面に対して狭くなるため、プレビューやタイムラインのひとコマが大きく表示される

Visual C++ 2011 ExpressをWQHD表示した画面。やたらコードが横に長ったらしくなったとしてもOK。その昔1024×768ドットで開発していた筆者の印象としては……広すぎてむしろボー然!?
 さて、フルHD超の解像度でまず知っておきたいのが出力端子の仕様だ。

 まずHDMIは、ドライバ等の組み合わせでWUXGA(1920×1200ドット)まで出力できることもあるが、一般的にはフルHDまでのサポート。

 次にDVI。DVIには、シングルリンクとデュアルリンクがあるが、シングルリンクは最大WUXGAまでで、WQHDをサポートするのはデュアルリンクのみ。ビデオカードによっては、DVIを2系統出力できても、デュアルリンクは1系統のみ、ということもあるので注意したい。また、端子だけでなく、ケーブルもデュアルリンク対応のものを使う必要がある。

 そして最新規格のDisplayPort。DisplayPortはWQHDをサポートしており、ここまで紹介してきた端子のなかでは最も安心してWQHD出力が利用できる(ただしクセもある)。

 次に組み合わせるGPUについても説明しておこう。

 フルHD超を狙う際に問題となるのが統合GPU。統合GPUでは、フルHD超を出力できない場合があり、またパフォーマンスに問題が出る場合もあるからだ。

 パフォーマンスは後ほど検証するとして、「出力できるかどうか?」は、端子の項で説明したとおり、デュアルリンクDVIまたはDisplayPortが必要となる。統合GPUは、多くの方がIntel HDということになると思うが、Intel HDの場合、現行製品ではデュアルリンクDVIには対応していない。そしてフルHD超を出力できるDisplayPortを搭載するのは、ハイエンドモデルがそのほとんどだ。

 つまり、フルHD超の画面環境を構築するなら、マザーボード選択に注意するか、ローエンドでもビデオカードを導入するか、どちらかを選択することになる。また、ビデオカードを選択する場合は、出力端子の仕様をよく確認した方がいいだろう。


 
テスト機材は人気のIntelプラットフォーム+NVIDIA製GPU

 さて、今回使用した機材は、Intel Core i7-3770Kおよびその統合GPUであるIntel HD 4000、そしてASUSTeK製のビデオカード3製品。OSはWindows 8 Pro(64bit)を使用した。

 ビデオカードは、ローエンドGPUの代表としてGeForce GT 640を搭載した「GT640-2GD3」、ミドルレンジの代表としてはGeForce GTX 660を搭載する「GTX660-DC2T-2GD5」、ハイエンド代表はGeForce GTX 680を搭載する「GTX680-DC2T-2GD5」。ディスプレイ出力端子は各GPUとも標準的なレイアウトになっている。

 なお、今回使用したビデオカードのうち、GTX 660とGTX 680はASUS独自のオーバークロックモデル。各種ベンチマーク結果もそれぞれの出荷時設定であるオーバークロック時の値になっている。それぞれ、標準より高い性能が出ている点には注意してほしい。

 以下、今回使用するビデオカードについて軽く紹介しておこう。

●ASUS GT640-2GD3

ディスプレイ出力端子はDVI(デュアルリンク)×2、HDMI、Dsub 15ピンの計4系統。ローエンド製品では旧世代の液晶ディスプレイをサポートするためにDsub 15ピンを加える例が多い
 GeForce GTX 640を搭載するローエンドモデル。

 低発熱なGPUに合わせたシングルファン仕様、そして低消費電力なGPUに合わせた補助電源レスデザインが特徴。安定性向上や優れたオーバークロック耐性、長寿命などを特徴とするSuper Alloy Power仕様の部品を採用している。


□製品情報
http://www.asus.co.jp/Graphics_Cards/NVIDIA_Series/GT6402GD3/


●ASUS GTX660-DC2T-2GD5(オーバークロックモデル)

ディスプレイ出力端子はDisplayPort、HDMI、DVI(デュアルリンク)×2の4系統。DisplayPortと2基のデュアルリンクDVIでWQHDの3画面出力に対応することに加え、もう1系統WUXGAまでのモニタも接続できる
 GeForce GTX 660を搭載するミドルレンジ品で、コアクロックを定格の980MHzから1,072MHzに引き上げたオーバークロックモデル。

 ミドルレンジGPUだけに、かなりハードなゲームも遊べるパフォーマンスを持ち、2スロットサイズのDirectCU IIクーラーが静かに、かつ効果的な冷却を行うとされる。当然Super Alloy Powerを採用しているが、加えて6フェーズに強化された電源回路「DIGI+ VRM」も搭載。一般的なGeForce GTX 660カードよりも基板が長いが、安定動作と優れたオーバークロック性能を持つとされる。


□製品情報
http://www.asus.co.jp/Graphics_Cards/NVIDIA_Series/GTX660DC2T2GD5/

●ASUS GTX680-DC2T-2GD5(オーバークロックモデル)

ディスプレイ出力は先のGeForce GTX 660搭載モデルと同じレイアウト。サポートされるモニタ接続構成も同じだ。異なるのはSLIのサポートと補助電源コネクタ。GeForce GTX 680を搭載する本製品は3-wayまでのSLIをサポートし、補助電源コネクタもGeForce GTX 660搭載モデルの6ピン×1基に対し6+8ピンへと強化されている(GeForce GTX 680のリファレンスデザインは6ピン×2基)
 GeForce GTX 680を搭載する「全部入り」のフラッグシップ。

 Super Alloy PowerやDIGI+ VRMは当然搭載、そのDIGI+ VRMも8+2フェーズに強化されている。また、オーバークロックマニア向けに計測器を接続できるVGA Hotwireと言う接点も搭載している。

 クーラーは3スロットの大型版DirectCU II。また、コアクロックは定格の1006MHzに対し1137MHzへと大幅にオーバークロックされている。3Dパフォーマンス、静音性、オーバークロック性能と、スキを見せないフラッグシップモデルとされる。


□製品情報
http://www.asus.co.jp/Graphics_Cards/NVIDIA_Series/GTX680DC2T2GD5/


 
2Dだけでも効果あり?

 さて、パフォーマンス検証のメインになる3Dの前に、2Dでの検証結果を紹介しておきたい。

 Windows 7や8では、Webブラウザなどの2D描画もGPUが活用されており、搭載するビデオカードの性能でパフォーマンスが異なってくる。そこでデスクトップ・パフォーマンス、とくにHTML5関連のベンチマークを試してみた。


HTML5 の Webベンチマークの結果
 ではベンチマーク結果を見ていこう。

 右のグラフは「HTML5 の Webベンチマーク」というサイトのベンチマークを、Core i7-3770Kに統合されたIntel HD 4000と、ASUSTeKのビデオカードGT640-2GD3(GeForce GT 640)、GTX660-DC2T-2GD5(GeForce GTX 660)、GTX680-DC2T-2GD5(GeForce GTX 680)を用いてそれぞれ計測した結果だ。

 ベンチマーク自体は、懐かしのHDベンチをHTML5で実装したような内容。

 結果を見て分かるとおり、まず統合GPUはビデオカードと比べてスコアが低く、Textに至ってはビデオカードの半分となる。そして、Circleテストに関して見れば、搭載するGPUが高性能なほどスコアが高くなる。Windows 7以降(正確にはVista以降)、Direct2D、DirectWriteという具合に2D描画をDirectXでアクセラレーションするようになった。そのため、高性能なGPUを積めば、3Dのみならず2Dも、グラフィック全般が高速化できるようになったわけだ。


 そしてもうひとつグラフを紹介しよう。


WebVizBenchの結果
 このグラフは、WQHD液晶を1面、2面、3面と増やしていった際の「WebVizBench」のベンチマークスコアだ。

 WebVizBenchもHTML5系のベンチマークで、アニメーションや動画再生を多様したかなりの負荷をかけるテストだ。

 2Dでも、解像度が高まるにつれGPUへの負荷が高まり、パフォーマンスが低下していく。一方で、GeForce GTX 660とGeForce GTX 680ではほとんど差がない(GPU以外にボトルネックがある)状態だが、WQHD×3面まで十分なパフォーマンスが得られる。そしてWQHD×1面までに限ればGeForce GT 640も十分に通用する。ただしIntel HD 4000となると少々心許ない、という具合だ。フルHD超を狙うビデオカードを検討するにあたり、2Dに関して言えば、ミドルレンジGPU以上を狙っていくのがベストと言える結果である。

 また、Intel HD 4000とGeForce GT 640(GT640-2GD3)については、「不可」とした解像度がある。Intel HD 4000に関しては、先に述べた出力端子による制限のためだ。一方のGeForce GT 640も同様に出力端子による制限がある。GT640-2GD3の場合、DVIは2系統でそれぞれデュアルリンク対応だが、DisplayPortは搭載しておらず、代わりに解像度が1920×1200ドット程度に制限されるHDMIを搭載している。つまりWQHD×2面までしか対応できないわけだ。

 ほかのGeForce GT 640製品を見渡しても、ローエンドGPUということもあり、DisplayPortを搭載している例は少ない。HDMIや今や昔のDsub 15ピンなど、ローエンドニーズに合わせた端子に変更したものがほとんどだ。


<安くピクセル数を増やす方法?>
 ローエンドGPUの場合、WQHDに固執せずフルHDでマルチモニタを狙っていく手もある。例えばDVI 2系統とHDMIを組み合わせれば、フルHD×3台までは対応できる。また、WQHD液晶が安くなってきたとはいえ、安いものでも4万円前後はしてしまう。1台ぶんの価格で、フルHD液晶が2〜3台、場合によっては4台程度買えてしまう。低コスト狙いならフルHD液晶のマルチモニタというのが狙い目だ。
 また、GeForce GTXミドルレンジ以上を搭載するビデオカードは、そのほとんどがDVI×2系統、DisplayPort、HDMIという構成で、1枚で4画面出力が可能。フルHDでも4台あれば、WQHD液晶×2台の総ピクセル数を軽く超える。WQHD液晶1台分の価格を抑えつつ同等以上の解像度を得る方法として検討したい。

パネル枚数による総ピクセル数と価格例

 1台2台3台4台5台6台
1920×1080(ドット数)2,073,6004,147,2006,220,8008,294,40010,368,00012,441,600
2560×1440(ドット数)3,686,4007,372,80011,059,20014,745,60018,432,00022,118,400
1920×1080(価格例)13,000円26,000円39,000円52,000円65,000円78,000円
2560×1440(価格例)55,000円110,000円165,000円220,000円275,000円330,000円
※価格はASUSTeK VS229H(フルHD、IPS、LEDバックライト)と同PB278Q(WQHD、PLS)で計算。なお、1000ピクセルあたりの単価は、VS229Hが6.27円、PB278Qが14.92円となる

 
ゲームを考えるならビデオカード必須
できればミドルレンジ以上


Street Fighter IV

MHFベンチマーク

PSO2キャラクタークリエイト

バトルフィールド3
 さて、今度は3Dに話を移そう。

 まずWQHD×1画面におけるパフォーマンスをチェックしておきたい。WQHDの場合、フルHDの約1.6倍のピクセル数があり、GPUへの負荷も1.6倍以上と考えられる。例えば、フルHD程度でそこそこ遊べたゲームでも、WQHDでは速度が落ちる。これは、統合GPUで顕著な問題だ。

 まず上記2つのベンチマーク結果のとおり、Intel HD 4000ではWQHDでベンチマークが実行できなかった。これはVRAM容量をマザーボードの最大容量である1GBに引き上げても変わらない。つまり、WQHDでゲームをするならビデオカードが必須(AMD APUの場合はまた異なる)と言えるだろう。

 また、ローエンドビデオカードとなるGeForce GT 640は、Street Fighter IVなら画質を若干落とすことで楽しめそうだ(今回は比較的高画質、高負荷な設定で計測している)が、MHFベンチマークを見ると、こちらは少々つらそう。PSO2キャラクタークリエイト体験版も、高負荷設定とはいえゲームを楽しむにはつらいところがある。

 せっかくの高解像度液晶。ゲームを楽しむ可能性があるなら、最低でもローエンドビデオカードを、できればミドルレンジビデオカード以上を組み合わせたい。そしてバトルフィールド3のようにGPU負荷の高いタイトルとなると、ハイエンドビデオカード一択となる。


 
さらに2画面、3画面と増やしてみた
3画面なら7,680×1,440!


Surroundを有効にすることで、独立した3画面のモニタを1画面のモニタへと仮想化する

画面の解像度から見ると、7,680×1,440ドットの1画面となっていることがわかる。ゲームの解像度設定にも(ゲーム自体が対応していれば)7,680×1,440ドットが追加されるのでこれを選べばよい。なお、ゲームをしない、独立したマルチモニタ環境でよい、という場合でも、Windows 8から各モニタにタスクバーを延長できるようになったため、不便に感じることが減った
 基本的な検証は以上で全てだが、さらなる高みとして、WQHDをさらにマルチモニタ化することを検討したい。

 3Dゲームにおけるマルチモニタは、3画面が基本だ。2画面の場合、fpsでの照準のある正面中央にちょうどベゼルが重なるため、もう1画面増やして正面、左右という3画面を構成するわけだ。

 そして3画面でゲームを楽しむ際にはもうひとつお作法がある。それがNVIDIAで言えば「Surround」という設定だ。Windowsでは、アプリケーションのウィンドウを最大化すると、1画面に最大化されるが、マルチモニタ化した場合も「そのうちの1画面だけで最大化」になってしまう。Surroundは、3画面を仮想的にひとつの画面として扱い、3画面のフルスクリーン状態でゲームが楽しめる、というものだ。

 なお、Surroundはゲームだけではない。通常のアプリケーションでもSurroundなら最大化時に3画面全てを使えるため、いちいちマウスでウィンドウ幅を大きくする作業から開放される。ただし注意しなければならないのが、3画面で1セットという縛りだ。2画面ではSurroundはグレーアウトして利用できない。なお、AMDのRadeonもEyefinityという同様の仕組みを持っており、とくに上位モデルでは1枚のビデオカードから最大6画面の出力をサポートしているため、GeForceよりも枚数の多いマルチモニタを構築する際はチェックしておきたい。



ロストプラネット2(WQHD1画面)

ロストプラネット2(WQHD3画面)

バトルフィールド3(WQHD3画面)
 では、マルチモニタ環境によるゲームベンチマークの結果を見ていこう。

 まず、ロストプラネット2では、3画面時、1画面の半分のフレームレートに落ち込むことがわかる。バトルフィールド3では、画質設定ごとの計測結果も加えているが、60fpsを超えられるのは基本的に1画面時のみ。GeForce GTX 680でもギリギリ2画面、それもLow画質設定でようやくと言ったところだ。このクラスのタイトルとなるとハイエンドGPUの2-way、3-way、場合によっては4-way SLIというマルチモニタ構築をもはるかに上回る高価なGPU環境が必要になってくる。

 ただし、下の画面キャプチャを見ていただくと実感いただけると思うが、ゲーム中の視界の広さ、臨場感はハンパない。とくにFPSタイトルの場合、視線を動かすだけで画面の隅にいる敵を発見できるのは非常に有利。WQHDであれば「何が見えるのか」も判りやすいわけで、何がしか有利になるのは間違いない。

 また、上で挙げたように、作業環境や開発環境でも「広いデスクトップ」は当然便利だ。

 WQHDを3画面用意するにはそれなりの予算が、そして快適に動作させるためのビデオカードにもさらなる予算が必要だが、自作PCの究極の目標として、心に焼き付けておくのも良いだろう。


【WQHDマルチモニタの画面例】
バトルフィールド3をフルHD画面とWQHD×1〜3画面でそれぞれ表示した例。設定は(フレームレートを無視して)Ultra High画質。ただでさえ高精細なWQHD解像度がアンチエイリアスも効くことで違和感が減り、さらに左右のサラウンド感も加わる。もしこれがヌルヌル動くのであれば究極のゲーム環境と言えるだろう
© 2012 Electronic Arts Inc.

PSO2をWQHD×3画面で表示した例。横画面の広がりが判りやすい
© SEGA

□ASUSビデオカード
http://www.asus.co.jp/Graphics_Cards/
□PB278Q(ASUS)
http://www.asus.co.jp/Display/LCD_Monitors/PB278Q/

□関連記事
【2012年8月18日】2,560×1,440ドットの格安液晶が発売、39,980円
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20120818/etc_unitcom2.html

ASUS ビデオカード

[協力:ASUS Japan]

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。