1999年1月30日号

早くもKNI搭載のPentium III 500MHzがフライング販売
500MHzのみで価格は10万円前後

Pentium III 50個バルク品販売中
【Pentium III 50個】【バルク品販売中】
SECC2形状OLGAのコア
【SECC2形状】【OLGAのコア】
シリアルなどSRAMチップ
【シリアルなど"】【SRAMチップ】

 またしてもIntel未発表の新CPUがアキバでフライングのデビューを飾った。今度のCPUは、これまで「Katmai」の開発コードで呼ばれてきた、新命令セットKNI(Katmai New Instructions)を搭載した「Pentium III」。この製品はブランド名自体はすでに発表されてはいるものの、詳細な仕様や出荷の正式アナウンスはまだで、製品発表は2月下旬から3月初旬になると言われている。現在販売中のものは全て動作クロック500MHzのバルク品で、30日(土)時点で在庫を持って販売していたショップは2店確認できた。このほかにも予約を受けつけているショップや、すでに完売したというショップなどもあり、Pentium IIIの取り扱いに関して公にしているショップは多数存在する。

 実売価格は98,800円~128,000円。また、後日入荷分の予価を98,000円としているショップもある(詳細は「今週見つけた新製品」参照のこと)。

2月第1週に大量入荷か

 30日(土)時点で実際に在庫を持った状態で販売していたのは、確認できた範囲ではパソコンシティ支店パソコン工房秋葉原1号店の2店のみで、価格はそれぞれ98,800円と128,000円。このほか、ZOAが店内に99,800円の価格を出して実物を展示しているものの、その展示品は「売約済み」の札が貼り付けられた状態で、パソコン工房秋葉原3号店は128,000円の価格で入荷直後に完売してしまったという。しかし、OAシステムプラザ秋葉原店アイ・ツー DOS/V専科 東京3号店では2月第1週に入荷する予定のあることを張り紙などで告知しており、ほかにも2月第1週に入荷予定のあるというショップを取材で複数確認している。流通関係者の間でも、複数の並行輸入業者が2月第1週にかなりの量を卸すという情報が流れており、来週以降にはあちこちでPentium IIIが販売される光景を見ることができそうだ。また、時期はまだ確定していないとしながら、このあと価格的にだいぶ差をつけた状態で450MHz版が流通するという人もいる。

現状では単なる高速な「Pentium II」

 Pentium IIIの最大の特徴は、KNI(Katmai New Instructions)の仮称で呼ばれる新命令セットを搭載していること。このKNIでは「SIMD(Single Instruction Multiple Data)」技法によって、複数のパック化されたデータに対し、同じ処理をひとつの命令で同時実行することができ、さらに新たなレジスタの新設や命令を追加したことで、アプリケーションがこれに対応すれば飛躍的なスピードで実行できると言われている。わかりやすい例としては、3DゲームやDVDで使われるMPEG-2のデコードなどが高速に処理できるという。

 しかし、これまでに明らかになっている情報だけで判断すると、Pentium IIとの違いは動作クロックを除けばこれしかないとも言える。Powerslideという海外製のゲーム用のパッチとして、「Support for Katmai enhanced instructions」をうたったファイルも出てはいるが、基本的に現状ではKNI完全対応のアプリケーションはなく、現在販売されているPentium III 500MHzは今は「単なる高速なPentium II」でしかない。ショップの評価テストやパワーユーザーによってネット上に掲載されたテスト結果を見ても、1次キャッシュや2次キャッシュの容量も含めてまったくPentium IIと変わるところがなく、ベンチマークでもあくまでPentium II 500MHz相当の結果がでるだけという。現段階では、このあたりの事情を理解しつつ、誰よりも早く新CPUを入手してさまざまなテストをしようと意欲を燃やす、チャレンジ精神旺盛な「人柱」ユーザーのみが手を出すべき製品と言えそうだ。

製品カバーにPentium IIIのプリントなし

 さて、そのPemtium IIIの実物はというと、形状がSECC2になっているため、見た目がPentium II 350MHzのSECC2版とほとんど変わらない。構造的にはまったく同じだ。ただし、よく見ると決定的に違う点が2つある。そのひとつはプラスチックカバーの表面に製品名のプリントがまったくないこと。プラスチックカバーの形状はPentium IIとまったく同一であるものの、Pentium IIが白インクで「Pentium II」と製品名がプリントされているのに対し、現在出まわっているPentium IIIにはまったく製品名のプリントがなされていない。もちろん彫り込みになっている「intel」の文字や、シリアルナンバーなどはしっかり読み取れるものの、製品名のあるべき部分がのっぺらぼうになっているため、なんとも奇妙な印象を受ける。これが出荷された頃にはまだ「Pentium III」という名前が決まっていなかったからではないか、と邪推する向きもあるが、今後どうなるのかも含めて真相は不明だ。

 もうひとつの決定的な違いは、裸で剥き出しになっているCPUコア部分のパッケージがOLGAという形状になっていること。これまではコア部分がCeleron PPGAがそのままついたような格好をしていたが、OLGAでは全体的にサイズがやや小さくなっているほか、中央に青い丘状の台があり、その周辺に茶色のフィルムを貼り付けたような格好になっている。Pentium II 350MHzのSECC2形状のものと比較すると、「製品名のプリントがないこと」「コアの形状が異なっていること」という2点が大きく違うということになる。ちなみに、シリアルナンバーなどが書かれている部分には「500/512/100/2.0V S1」「99030073-0142 MALAY」「i(m)(c)'98 SL365」と書かれており、この文字列の並び方はPentium II XeonやPentium II 350MHz SECC2版で新しく採用されたフォーマットと同じになっている。

貴重なレア物?

 技術的な部分はともかく、現在出まわっているPentium IIIは、もしかすると大変なレア物になるかもしれない。製品名のプリントがないというのももちろんだが、Pentium IIIにはシリアルナンバーがCPUの中に埋め込まれており、それと組み合わせてインターネットなどでのセキュリティチェックに使おうという計画をIntelが発表してから、一部では「プライバシーの侵害につながる」としてIntel製品の不買運動が起き、このシリアルナンバーに関する機能の出荷時の有効/無効の仕様が流動的な状況になっている。可能性としては現在出まわっているものと、正式発表後のものとは内部的な仕様や設定が変わってくる可能性がある。これに何かしらの魅力を覚えるというマニアックな人は、今のうちに買っておくのもいいかもしれない。

 500MHz動作のPentium IIが欲しい人、クロックアップ耐性などを実験して調べたいという人、実際に入手してKNIの仕様を自分で研究したいという人、新CPUは何が何でもとりあえず入手しておきたいという人、男は黙ってPentium IIIと考えている人…などなど、そんなマニアックな人は今からアキバに行けば誰よりも早くPentium IIIの実物が入手可能だ。また、2月第1週にも各店に入るのが確実のため、とりあえず給料日後に考えてみる余裕もあるだろう。

 とにもかくにも、アキバでは未発表のPentium IIIを入手するのも金次第、という状況に早くもなっている。

□Intel
http://www.intel.com/
http://www.intel.co.jp/
・Pentium III
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press99/990112.htm
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/dp011199.htm
http://www.intel.com/intel/inside/branding.htm?iid={whatsnew=brands}
□Powerslide
http://www.ratbaggames.com/
・Powerslide Patch v1.01
http://www.ratbaggames.com/home/B_down/B3_patch/patches.html

[撮影協力:パソコンシティ支店パソコン工房秋葉原1号店、ほか]


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