【 1999年11月6日号 】

Coppermineこと0.18μm版Pentium IIIがようやくデビュー
667MHz以外のデスクトップPC用は全モデル姿を現す

Pentium III 733MHz256KB On-Die Cache
【Pentium III 733MHz】【256KB On-Die Cache】
カッパーマイン登場価格がズラリ
【カッパーマイン登場】【価格がズラリ】
FC-PGA版733MHzマーキング
【FC-PGA版】【733MHzマーキング】
これは鉄火巻き?入荷しました!!!
【これは鉄火巻き?】【入荷しました!!!】

 25日の正式発表から約2週間が経過して、ようやく0.18μm製造の新Pentium IIIがアキバに流通し始めた。モバイル用とサーバー用を除いて全9モデルもあるデスクトップPC用新Pentium IIIのうち、リテールパッケージとバルク品を区別しなければ、667MHz以外は全てアキバに姿を現した。ただし、いずれも出回ったのは少量で、既に売り切れて姿を消してしまった製品もある。

 最速モデルのPentium III 733MHzも登場し、単純にクロックだけでみると、これでIntelはAMDからx86系CPUで最速の座を奪い返した格好。しかしi820の発表遅延が響き、新型Pentium IIIを新たな環境で活用するためのマザーボードが揃わないなど、なんともちぐはぐな状況になっている。

0.18μm時代に突入

 今回新たに登場した新Pentium IIIは、全て最新の0.18μmプロセスで製造されたCPUで、正式発表されるまではCoppermineという開発コードで呼ばれていた。この新Pentium IIIは、これまでのPentium IIIでは外付けだった2次キャッシュをダイに統合し、アクセススピードをコアクロック1/2からフルスピードアクセスに高速化している。2次キャッシュの容量が512KBから256KBに半減したとはいえ、フルスピードアクセス化とレイテンシの改善など、2次キャッシュ回りはかなりの改良が加えられている。

 パッケージ形状はこれまでのSlot 1用のSECC2が引き継がれているほか、新たにSocket 370用としてFC-PGA(Flip-Chip Pin Grid Array)も追加された。駆動電圧は600MHz以上のモデルが1.65Vで、600MHz未満は1.6V。製造プロセスが微細化されたことにより、駆動電圧も従来の2Vと2.05Vから大きく引き下げられている。これにより、発熱が従来より抑えられているのではないかとの期待がある一方、ダイサイズが小さくなったことにより、CPUクーラーとの接地面積も小さくなり、冷却が難しくなったのではないかとの不安の声もある。

モデルが多すぎてショップも混乱

 とにかく今回の新Pentium IIIはモデル数が多い。FSB 100MHz+SECC2では700MHz/650MHz/600E MHzの3モデル、FSB 133MHz+SECC2では733MHz/667MHz/600EB MHz/533EB MHzの4モデル、FSB 100MHz+FC-PGAでは500E MHz/550E MHzの2モデルと、計9モデルも用意されている。これだけでも混乱してしまうが、従来の製品も合わせて現行モデルを全て並べてみると、同じコアクロックで複数のモデルが存在するラインがあり、600MHzの製品では実に600MHz/600B MHz/600E MHz/600EB MHzと計4種類も存在している。どこのショップも、膨れ上がったラインナップに対応するのに苦労しており、商品棚の整理、名前と製品内容を覚えるのに四苦八苦している。

 そのうえ、i820チップセット発表遅延の影響で新Pentium IIIを活かすためのマザーボードも存在せず、新CPUが華々しく一挙に投入されたわりには混乱ばかりが目立つ状況となっている。

現状でFC-PGA版はまったく使えない

 FC-PGA版Pentium IIIは今のところバルク品のみが出回っているが、SECC2版の新Pentium IIIはそのほとんどがリテールパッケージで登場している。新プロセスで製造されたCPUだからといって、リテールパッケージのデザインには特に大きな変更は加えられていない。変わったのは、従来2次キャッシュの表記が「512KB L2 Cache」だったところが「256KB On-Die Cache」となった程度。

 一方、CPU本体の形状はというと、SECC2のモデルはやはりこれもまったくと言っていいほど変化なし。FC-PGAはすでに知られているように、今回から新たに追加されたパッケージで、Socket 370に対応している。緑色の基板の中央に小さなCPUのダイが載った格好で、ずいぶんと目新しい。

 しかし、FC-PGA版Pentium IIIはピンアサインがこれまでのCeleron(PPGA)とは異なるため、従来のSocket 370対応マザーボードでは動作しない。i810E搭載のマザーボードで動くことになってはいるものの、現状売られているi810Eチップセット搭載マザーボードは全てSlot 1用でSocket 370用は存在していない。さらに、FC-PGAは薄く作られているため、従来のCPUクーラーではSocket部分にヒートシンクが引っかかり、ヒートシンクとダイがきちんと接着しないという問題がある。リテールパッケージには、対応したCPUクーラーが付属しているはずだが、現状でFC-PGA版はバルク品のみが出回っている。従来のSlot 1マザーボードでFC-PGA版Pentium IIIを使用するためのSlot 1→Socket 370変換アダプタも発表はされているものの、6日(土)までの時点ではどこにもまだ入荷しておらず、まさに八方塞といった状態。FC-PGA版に関しては、来週にも登場すると見られるFC-PGA対応のSocket 370変換アダプタが出るまで、どうにも動かしようがない。あるショップはいち早く500E MHzを入荷したものの、「今のところ動かしようがないよ」と書いた貼り紙を出していたせいもあって、ほとんど売れなかったそうだ。

 そこへいくと、SECC2版はCoppermine対応をうたった比較的新しいマザーボードを使うことでほぼ問題なく動作するようだ。

環境が整うのはまだ先

 i820チップセット搭載マザーボードがアキバに入荷するのは早くて11月中旬と見られ、RIMMにいたってはほとんど供給の見通しが立っていない。Intelが想定していたCoppermineに最適化された新しい環境が揃うのはまだ当分先のことになりそう。現状では、Apollo Pro 133Aチップセット搭載のマザーボードを使用したり、440BXチップセット搭載マザーボードのクロックアップでFSB 133MHzの環境をつくるなり、自分の知恵と経験でなんとか新Pentium IIIの性能を引き出す労力が必要なようだ。

 前途多難なデビューとなったCoppermineコアの新Pentium III、当分は揺れ動く周辺の動向から目が離せそうにない。

 なお、実売価格などについては「今週見つけた新製品」を参照のこと。

□0.18ミクロン・プロセスの製品群(インテル)
http://www.intel.co.jp/jp/PentiumIII/18.htm

[撮影協力:PC-Successコムサテライト1号店PCiN秋葉原シスペックDOS/V組み立て工房]


[次の記事]: RIOWORKS製i820搭載マザーが16日発売と予告が出る

[ Back ]戻る